職場トラブル解決ガイド
38. 求人票・求人広告と労働条件の明示
求人票・求人広告の内容だけでなく、採用時の労働条件通知書の確認が必要です。
法律上の重要なポイント
労働条件の明示(労働契約締結時には、賃金・労働時間等に関する事項については書面による明示)は求人時・採用時にも義務づけられています(職業安定法第5条の3、労働基準法第15条)。
詳しい解説
求人時の労働条件明示
明示義務の対象
以下に対して、労働条件の明示が義務づけられています。
- 公共職業安定所及び職業紹介事業者
- 働く人の募集を行う人および募集受託者
- 求人者等
例外的な対応
求人票のスペースが足りない等、やむを得ない場合には「詳細は面談の時にお伝えします」などと記載した上で、労働条件の一部を別途明示することは可能です。
重要な条件
この場合は原則として、初回の面接等、求人者と求職者が最初に接触する時点までにすべての労働条件を明示することが求められます。
変更時の対応
また、当初明示した労働条件の変更がされる場合は、変更内容について速やかに求職者に知らせなければなりません(職業安定法第5条の3)。
罰則
「虚偽の広告をなし、又は虚偽の条件を提示して、職業紹介、働く人の募集若しくは働く人の供給を行った者又はこれらに従事した者」に対して、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金(職業安定法第65条)。
採用時の労働条件明示
書面明示の義務
次の事項は労働条件通知書等の書面で明示しなければならず、本人へ交付することは会社の義務です(労働基準法第15条および労働基準法施行規則5条)。
電子的交付について
ただし、働く人が希望した場合は、プリントアウトできる形であれば、FAX・電子メール・SNS上での交付も可能です。
必須明示事項
- 労働契約の期間に関する事項(期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項や、業務変更の範囲も含む)
- 就業の場所(変更の範囲も含む)および従事する業務に関する事項
- 労働時間関連:始業および終業の時刻、決められた労働時間を越える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに就業時転換に関する事項
- 賃金関連:賃金の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切および支払いの時期並びに昇給に関する事項
- 退職に関する事項(「解雇の事由」を含む)
罰則
労働基準法による労働条件の明示義務違反は30万円以下の罰金(労働基準法第120条)。
パートタイム労働者の場合
基本的な明示義務
上記の明示義務はパートタイム労働者も同じで、就業規則か雇い入れ通知書などは書面によることが義務づけられています。
特別な明示事項
パートタイム労働者の場合は、以下についての文書交付が義務です(パートタイム・有期雇用労働法第6条)。
- 「昇給の有無」
- 「退職手当の有無」
- 「賞与の有無」
- 「相談窓口」
罰則
違反した場合は10万円以下の過料(パートタイム・有期雇用労働法第31条)。
有期雇用契約の特別な明示
- 更新上限の有無と内容の明示
- 労働契約締結時より後に更新上限を新設・短縮する場合には、その理由をあらかじめ説明する必要があります
無期転換に関する明示
- その明示
- 無期転換後の労働条件の明示
若者雇用促進法について
努力義務
若者雇用促進法に基づき、新卒者の募集を行う企業に対しては、企業規模を問わず、幅広い情報提供を努力義務としています。
情報提供の義務
応募者または応募の検討を行っている人から求めがあった場合は、以下の3類型ごとに1つ以上の情報提供が義務づけられています。
-
募集・採用に関する状況
- 過去3年間の採用者数および離職者数
- 平均勤続年数
- 過去3年間の採用者数の男女別人数
-
企業における雇用管理に関する状況
- 前年度の育児休業の取得状況
- 前年度の有給休暇の取得状況
- 前年度の決められた時間外の労働時間の実績
- 管理職の男女比
-
職業能力の開発・向上に関する状況
- 導入研修の有無
- 自己啓発補助制度の有無
採用後の労働条件変更
労働契約時の労働条件を後から変更する必要が生じた場合、労使間の合意が必要です(労働契約法第8条)。
関連する法律条文
労働基準法第15条、第89条、第120条 労働基準法施行規則第5条 労働契約法第8条 職業安定法第5条の3、第65条 パートタイム・有期雇用労働法第6条、第31条
詳細について
職場トラブル解決ガイド一覧
- 1.退職の権利
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- 7.労働者派遣と派遣会社・派遣先会社の責任
- 8.倒産と未払い賃金の立替払い
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- 37.労働者代表選出と労使協定
- 38.求人票・求人広告と労働条件の明示
- 39.採用内定の取り消し・延期について
- 40.36協定と特別条項付き協定について