職場トラブル解決ガイド
34. 雇用形態の違いによる不合理な待遇差禁止
通勤交通費はもちろん、基本給・賞与の格差、テレワーク等働き方も問題となります。
法律上の重要なポイント
パートタイム・有期雇用労働法(第8条)で、正社員と短時間・有期で働く人との不合理な待遇差が禁止されており、さらに、正社員との待遇差の内容や理由などに関する会社の説明義務の強化、行政による事業主への助言・指導や裁判外紛争手続(行政ADR)の整備等について規定されています。
詳しい解説
対象となる労働条件(パート・有期で働く人の「同一労働同一賃金」)について
賃金や労働時間等の狭い意味での労働条件だけではなく、労働契約の内容となっている以下のすべての労働条件が含まれます。
- 災害補償
- 安全管理
- 服務規律
- 教育訓練
- 福利厚生
重要なポイント
とりわけ、賃金のうち、基本給・賞与が対象として明示されたことは重要です。
均衡・均等待遇規定の整備について
パートタイム・有期雇用労働法では、正社員と短時間・有期で働く人の間に待遇の違いがあれば、以下の3つの要件に照らし合わせて、不合理があってはならないとしています。
3つの判断要件
- 職務内容
- 職務の内容と配置の変更範囲
- その他事情
(第8条・均衡待遇規定)
均等待遇規定
また、正社員と短時間・有期で働く人の間で、職務の内容、職務の内容と配置の変更の範囲が同じ場合は、待遇に関して差別的取り扱いをすることを禁止しています(第9条・均等待遇規定)。
待遇差が不合理か否かの判断について
基本給・賞与や、「○○手当」「××休暇制度」といった、個別の待遇ごとに、それぞれの待遇の目的や性質を照らした上で、待遇差の不合理の有無を判断します。
重要な注意点
年収や月収ベースといった待遇全体で、正社員と短時間・有期で働く人の待遇のバランスを取ればよいということにはなりません。
待遇に関する説明義務の強化
雇い入れ時の説明義務
会社は、短時間・有期で働く人を雇った時は、均衡・均等処遇について、以下に関することを速やかに説明しなければなりません(パートタイム・有期雇用労働法第14条第1項)。
- 賃金決定の勘案要素
- 実施している教育訓練・福利厚生
- 通常の働く人への転換制度に関すること
求めがあった場合の説明義務
また、短時間・有期で働く人が求めた時は、会社は、通常の働く人との待遇差の内容や理由についての説明をしなければなりません(パートタイム・有期雇用労働法第14条第2項)。
不合理な待遇の相違の解消にあたって
会社が、正社員と短時間・有期で働く人との待遇相違の解消等を行うにあたっては、労使での合意を基本とし、正社員の待遇を引き下げるようなことは望ましい対応ではありません。(同一労働同一賃金ガイドライン「第2 基本的な考え方」)
関連する法律条文
パートタイム・有期雇用労働法第8条、第9条、第14条第1項、第14条第2項
詳細について
以下のURLを参照してください
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_03984.html
職場トラブル解決ガイド一覧
- 1.退職の権利
- 2.労働基準法上の管理・監督者
- 3.労災保険
- 4.変形労働時間制
- 5.妊産婦保護、妊娠に伴う不利益取扱い
- 6.就業規則
- 7.労働者派遣と派遣会社・派遣先会社の責任
- 8.倒産と未払い賃金の立替払い
- 9.健康診断
- 10.休憩時間
- 11.有期労働契約から無期労働契約への転換
- 12.休業中の賃金
- 13.社会保険
- 14.妊娠・出産、育児休業等に関するハラスメント
- 15.セクシュアル・ハラスメント
- 16.いじめ、パワー・ハラスメント
- 17.高齢者雇用(定年後の継続雇用制度)
- 18.ストレスチェック
- 19.育児休業・介護休業
- 20.育児・介護休業取得に伴う不利益取扱い
- 21.パートタイム労働者の税金
- 22.求職者支援制度
- 23.雇用保険
- 24.一時金・退職金
- 25.業務上のミスに対する損害賠償責任
- 26.賃金支払と一部控除
- 27.最低賃金
- 28.割増賃金・固定残業代
- 29.みなし労働時間制(職場外)
- 30.みなし労働時間制(裁量労働制)
- 31.高度プロフェッショナル制度
- 32.年次有給休暇
- 33.解雇
- 34.雇用形態の違いによる不合理な待遇差禁止
- 35.有期労働契約の雇い止め
- 36.有期労働契約の中途解除
- 37.労働者代表選出と労使協定
- 38.求人票・求人広告と労働条件の明示
- 39.採用内定の取り消し・延期について
- 40.36協定と特別条項付き協定について