職場トラブル解決ガイド
27. 最低賃金
「アルバイトだから」と、地域別最低賃金より少ない時給しかもらえません。
地域別最低賃金は、原則としてすべての働く人に適用されます。
法律上の重要なポイント
会社は、原則として、労働基準法第9条に規定する働く人には、最低賃金額以上を支払わなければなりません。
最低賃金額に達しない契約はその部分が無効となり、会社は差額を支払わなければなりません(最低賃金法第4条)。
詳しい解説
国が定める最低賃金制度について
最低賃金制度の種類
最低賃金制度には以下の2種類があります(最低賃金法第3条)。
- 地域別最低賃金:当該地域(都道府県)のすべての働く人に適用される
- 特定(産業別)最低賃金:当該地域(都道府県)の特定産業の基幹的働く人に適用される
いずれも時間額で示されます。
契約の無効と差額請求
最低賃金額に満たない賃金の労働契約は、その部分が無効となります。2020年4月1日以降に支払われるはずであった賃金については当面の間3年さかのぼって会社に最低賃金額との差額の支払いを請求できます(最低賃金法第4条、労働基準法第115条)。
対象とならない賃金について
最低賃金には、以下の賃金は含まれません(最低賃金法第4条)。
- 臨時に支払われる賃金(結婚手当等)
- 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(一時金等)
- 残業・休日・深夜の割増賃金
- 精勤手当・通勤手当・家族手当
減額の特例について
以下に該当する働く人については、会社が都道府県労働局長の許可を受けた時は、減額して適用されます(最低賃金法第7条)。
- 精神・身体障害のため著しく労働能力の低い人
- 試用期間中の人
- 認定職業訓練を受けている人
- 軽い業務に従事する人
- 断続的労働に従事する人
派遣社員の適用について
派遣社員には、派遣先の地域別最低賃金または特定最低賃金が適用されます(最低賃金法第13条、第18条)。
周知義務について
最低賃金の適用を受ける働く人がいる場合、最低賃金の改定がある際には、当該最低賃金の概要を、常時作業場の見やすい場所に掲示し、またはその他の方法で働く人に周知させるための措置を取らなければなりません(最低賃金法第8条)。
罰則について
- 地域別最低賃金に違反した場合:適用となる働く人1人につき上限50万円の罰金(最低賃金法第40条)
- 特定最低賃金の違反の場合:賃金の全額払い違反(労働基準法第24条)が適用され、上限30万円の罰金(労働基準法第120条)
関連する法律条文
- 労働基準法第24条、第115条、第120条
- 最低賃金法第3条、第4条、第7条、第8条、第13条、第18条、第40条
詳細について
以下のURLをご参照ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/index.html
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