職場トラブル解決ガイド
35. 有期労働契約の雇い止め
法律上の重要なポイント
期間の定めのある労働契約(有期労働契約)であっても、更新を繰り返して期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態に至っているような場合や、繰り返し更新の実態、契約締結時の経緯等から雇用継続への合理的期待が認められる場合は、解雇権乱用に関する法理(労働契約法第16条)が同じように適用される場合があります。
詳しい解説
暗黙の更新について
有期労働契約は、期間が満了すれば契約が終了するものですが、期間満了後も働く人が働き続け、会社もこれに異議を述べなかった場合には、暗黙の更新があったものとされ、同一の労働条件での契約が締結されたものと推定されます(民法第629条第1項)。
雇い止めに関する法理(解雇権乱用に関する法理の類推適用)
契約の形式が有期労働契約であっても、以下の場合には、解雇権乱用に関する法理が同じように適用されます。
適用される場合
- 契約が期間の定めのない労働契約と実質的に異ならない状態で存在していた場合
- 働く人が雇用継続を期待することに合理性があると認められる場合
- 業務内容の継続性
- 当事者の言動・認識
- 契約更新の状況など
効果
この場合、雇い止めに、客観的合理的理由と社会的適切性が認められない場合は、契約が更新されたのと同様の法律関係が生じるとされています(労働契約法第19条)。
働く人が行うべき申し込みについて
法律では、以下の場合の雇い止めの無効性を想定しています。
- 契約期間満了までの間に働く人が更新の申し込みをした場合
- 契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の申し込みをした場合
重要な注意点
- 働く人からの「申し込み」はできるだけ明確な形(書面など)で行っておくことが望ましいです
- 雇い止め後に争う場合には、団体交渉の申し入れや労働審判の申し立て等は早期に行い、働く人の意思表示を「遅滞なく」行っておく方がよいでしょう
雇い止めに関する基準
雇い止めを巡るトラブルが多いことから、会社が講ずべき措置について厚生労働大臣が基準を定めています(有期労働契約の締結、更新及び雇い止めに関する基準)。
雇い止めの予告
会社は、以下の場合には、有期労働契約を更新しないようにするときは、少なくとも、契約期間が満了する日の30日前までに、その予告をしなければなりません(基準第1条)。
- 雇い入れの日から1年を超えて継続勤務している場合
- 3回以上更新されている場合
雇い止めの理由の明示
働く人が更新しない(更新しなかった)理由について証明書を請求したときは、会社は遅滞なく交付しなければなりません(基準第2条)。
契約期間の配慮
会社は、契約を1回以上更新し、かつ、1年を超えて継続して雇用している有期契約で働く人との契約を更新しようとする場合は、以下に応じて、契約期間をできる限り長くするよう努めなければなりません(基準第3条)。
- 契約の実態
- その働く人の希望
関連する法律条文
労働契約法第16条、第19条 民法第629条第1項
詳細について
以下のURLを参照してください
https://www.mhlw.go.jp/content/001249464.pdf
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