職場トラブル解決ガイド
13. 社会保険
法律上の重要なポイント
常時5人以上が働く個人事業所(飲食業、サービス業、農業、漁業などを除く)と、すべての法人事業所は、健康保険、厚生年金保険が強制適用となります(健康保険法第13条、厚生年金保険法第6条・第9条)。
また、2016年10月以降、社会保険の適用拡大により、一定の要件を満たす短時間労働者も社会保険への加入が義務づけられています。
詳しい解説
加入要件について
パートタイム労働者、アルバイトでも、事業所と安定した雇用関係にある場合や、下記の1または2のすべてに該当する場合は保険加入者となります。
1.従来の基準
- 1週間の決められた労働時間および1ヶ月の決められた労働日数が通常の働く人の4分の3以上(一般的に週30時間以上)
2.短時間労働者の基準(2016年10月以降)
以下のすべてに該当する場合:
- 週20時間以上
- 月額賃金8.8万円以上
- 勤務期間2ヶ月を超える見込み
- 学生でないこと(休学中や夜間学生は加入対象)
- 特定適用事業所または任意適用事業所に勤めていること(国、地方公共団体に属するすべての適用事業所を含む)
特定適用事業所の範囲拡大
- 2022年10月より:「従業員数101人以上」
- 2024年10月より:「従業員数51人以上」
2022年10月より、年金制度改正法により従業員数101人以上の事業所はすべて適用事業所となっています。
また、従業員数100人以下の事業所でも、労使が合意すれば適用拡大が可能です。
加入対象外となる人
- 日々雇い入れられる人で1ヶ月を超えない範囲で働く人
- 2ヶ月以内の期間を定めて働く人(決められた期間を超えて働くに至った場合はその日から保険加入者となる)
- 所在地が一定しない事業所で働く人
- 季節的業務(4ヶ月以内)で働く人
- 臨時的事業(博覧会等)で働き、6ヶ月を超えない人など
加入の手続きをしない場合
加入資格があるのに、会社で手続きをしないことは、5日以内の手続き(日本年金機構への保険加入者資格取得の届出)を義務づけた法律違反です。
年金事務所で状況を説明し改善を求めてください。
任意適用事業所について
法人でない常時5人未満の事業所と、人数に関係なく下記の業種の任意適用事業所では、働く人の2分の1以上の同意を得て日本年金機構に申請することによって加入することができます。
任意適用事業所の対象業種
- 農林・水産・畜産
- 理美容・クリーニング
- 映画・演劇・興業
- 旅館・飲食・接客・娯楽
- 弁護士・公認会計士
健康保険の被扶養者:収入要件
以下の条件を満たす場合、被扶養者となることができます。
収入の基準
- 年間収入130万円未満(60歳以上または障害者の場合は、年間収入180万円未満)
同居・別居による基準
- 同居の場合:収入が扶養者(保険加入者)の収入の半分未満
- 別居の場合:収入が扶養者(保険加入者)からの仕送り額未満
収入に含まれるもの
被扶養者に該当する時点および認定された日以降の年間の見込み収入額です。
被扶養者の収入は、雇用保険の失業等給付、公的年金、健康保険の傷病手当金や出産手当金も含みます。
介護保険について
40歳以上65歳未満の人は、介護保険の被保険者となり、保険料は健康保険料とあわせて徴収されます。
給付は、要支援・要介護になった場合のみ受け取れます。
詳細について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/index.html
関連する法律条文
健康保険法第13条
厚生年金保険法第6条、第9条
追加情報
職場トラブル解決ガイド一覧
- 1.退職の権利
- 2.労働基準法上の管理・監督者
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- 5.妊産婦保護、妊娠に伴う不利益取扱い
- 6.就業規則
- 7.労働者派遣と派遣会社・派遣先会社の責任
- 8.倒産と未払い賃金の立替払い
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- 13.社会保険
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