職場トラブル解決ガイド
15. セクシュアル・ハラスメント
ない場合は労働組合のセクハラ対策担当者、都道府県労働局へ相談してください。
法律上の重要なポイント
男女雇用機会均等法は、会社に「職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上」の措置義務を規定しています(第11条)。
詳しい解説
セクシュアル・ハラスメントについて
セクシュアル・ハラスメント(以下「セクハラ」)に関する裁判では、企業の責任が問われるケースも増えています。企業には「従業員が働く上で権利を侵害されないよう会社として配慮する義務」があります。
男女雇用機会均等法第11条では、職場におけるセクハラについて、会社に防止措置を講じることを義務づけています。
会社は、働く人個人の問題として片付けるのではなく、雇用管理上の問題ととらえ、適切な対応を取る必要があります。
職場におけるセクハラとは
「職場」において行われる、「働く人」の意に反する「性的な言動」に対する働く人の対応により労働条件について不利益を受けたり(対価型セクハラ)、「性的な言動」により職場環境が害されたりする(環境型セクハラ)ことで、異性だけでなく同性に対するものも含まれます。
また、被害を受ける人の性的指向や性自認にかかわらず、「性的な言動」であれば該当します。
職場について
会社が雇用する働く人が業務を遂行する場所を指し、勤務時間外の「宴会」「懇親の場」などであっても実質上職務の延長と考えられるものは「職場」に該当します。
その判断には、職務との関連性、参加者、参加が強制か任意かといったことを考慮して個別に行う必要があります。
職場の例
- 出張先
- 業務で使用する車中
- 取材先
- 取引先の事務所
- 顧客の自宅
- 取引先と打ち合わせをするための飲食店(接待の席も含む)
働く人について
正社員だけでなく、パートタイム労働者・有期雇用労働者など雇用するすべての働く人が対象です。
派遣社員については、派遣会社だけでなく、派遣先の会社も措置を講ずる必要があります(労働者派遣法第47条の2)。
性的な言動について
行為者は会社、上司、同僚だけでなく、取引先、顧客、患者、生徒なども該当します。
「ホモ」「オカマ」「レズ」などを含む言動や、性的性質を有する言動もセクハラに該当します。
対価型セクハラ
意に反する性的な言動や行動に対する対応によって、働く人が不利益を受けるものです。
典型的な例
- 性的関係を拒否したことにより解雇
- 車中で身体に触られ、抵抗したことにより配置転換
- 性的な発言に抗議したことで降格
環境型セクハラ
意に反する性的な言動により、職場環境が不快になり、看過できない支障が生じるものです。
典型的な例
- 上司がたびたび身体に触れたことによる苦痛と意欲低下
- 同僚が取引先に性的な情報を流布し苦痛を感じる
- ヌードポスターの掲示により業務に専念できない
会社が雇用管理上講じるべき措置
具体的内容は指針で定められています。派遣社員については派遣先も措置が必要です。
プライバシーの保護について
相談者のプライバシーを保護し、不利益な取り扱いを受けないよう配慮が必要です。
セクハラの被害を受けた場合の対処法
記録をとる
- 日時、場所、やりとり、周囲の状況など
- 録音や手紙の保存も有効
相談する
一人で悩まず、以下に相談してください。
- 会社の相談窓口
- 労働組合のセクハラ対策担当者
- 都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)
- 弁護士など
紛争解決の援助
都道府県労働局長による助言・指導や、「紛争調整委員会」による調停も利用できます。
裁判所での紛争解決
行政による解決のほか、本訴や労働審判で損害賠償請求も可能です。
関連する法律条文
男女雇用機会均等法第11条、第30条
労働者派遣法第47条の2
詳細について
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000181888.pdf
職場トラブル解決ガイド一覧
- 1.退職の権利
- 2.労働基準法上の管理・監督者
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- 4.変形労働時間制
- 5.妊産婦保護、妊娠に伴う不利益取扱い
- 6.就業規則
- 7.労働者派遣と派遣会社・派遣先会社の責任
- 8.倒産と未払い賃金の立替払い
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