退職代行ローキ(労働基準調査組合)

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職場トラブル解決ガイド

5. 妊産婦保護、妊娠に伴う不利益取扱い

Q 妊娠したので残業を断りたいのですが、会社が認めてくれません。
A 妊娠中・産後の女性が請求した場合、会社は残業・休日労働・深夜勤務をさせてはいけません。

法律上の重要なポイント

男女雇用機会均等法、労働基準法によって、妊娠中および産後1年を経過していない女性(妊産婦)に対する健康管理や残業の制限、業務転換、産前産後休業などが定められています。

詳しい解説

妊娠中および出産後の健康管理に関する措置

妊娠中および産後1年を経過していない女性が申請すれば、年次有給休暇とは別に、母子保健法による保健指導または健康診査を受けるために必要な時間を確保できるようにしなければなりません(男女雇用機会均等法第12条)。

健康診査の頻度
  • 産前。妊娠23週まで4週に1回、妊娠24週から35週まで2週に1回、妊娠36週から出産まで1週に1回
  • 産後。医師や助産師の指示による
妊娠中・産後の女性の業務について

会社は、上記の保健指導または健康診査に基づく指導事項を守ることができるよう、勤務時間の変更、勤務の軽減等必要な措置を講じなければなりません(男女雇用機会均等法第13条)。

妊産婦とは、妊娠中の女性および産後1年を経過しない女性を指します。

軽易業務への転換請求

妊娠中の女性は、ほかの軽い業務への転換を請求することができ、会社はこれに応じなければなりません(労働基準法第65条第3項)。「軽い業務」とは、原則として請求した業務です(新たに軽い業務を作ってまで与える義務はありません)。

残業の制限

妊娠中・産後の女性から請求があった場合は、残業、休日労働および深夜勤務をさせてはいけません。各変形労働時間制(フレックスタイム制を除く)による場合でも同様で、請求があれば対象者から除外することになります(労働基準法第66条)。

危険有害業務への就業制限

女性については、妊娠中・産後の女性を中心とした就業制限が定められています(女性労働基準規則)。24の業務が対象として列挙され、業務ごと・対象者ごとに就業禁止、本人の申し出による就業禁止、制限なしと定められています。

産前産後休業
  • 産前休業。産前6週間(双子などの場合は14週間)以内の期間は、本人の休業請求により就業禁止となります。
  • 産後休業。産後8週間は原則的に就業禁止ですが、6週間を経過後で本人が希望した場合で、医師が支障がないと認めた業務には働かせても構いません。

この期間の起算日は出産日となり、「出産」とは妊娠4ヶ月(85日)以上の分娩を指し、死産や流産、人工中絶の場合も含まれます(労働基準法第65条)。

これらの休業期間は、年次有給休暇の発生要件である出勤率の計算においては出勤したものと取り扱われます(労働基準法第39条第8項)。

休業中の賃金について

有給か無給かは就業規則等の定めによります(労働基準法には特段の規定なし)。なお、健康保険の被保険者は以下を受給できます。

  • 出産育児一時金。原則42万円(産科医療補償制度加算対象出産ではない場合は40万8千円。うち1万2千円は産科医療補償責任保険契約の保険料分)
  • 出産手当金。休業給付として、1日につき標準報酬日額の3分の2相当額
社会保険料の免除

産前産後休業中の社会保険料は免除されています。

解雇制限

産前産後休業期間中の女性(休業請求をせず働いている女性を含む)を解雇することはできません(労働基準法第19条)。妊娠中・出産後1年以内の女性に対する解雇は、会社が妊娠・出産等を理由とするものでないことを立証できなければ無効となります(男女雇用機会均等法第9条第4項)。

不利益取扱いの禁止・防止措置義務

会社は、妊娠・出産や産前産後休業を請求したことその他の妊娠または出産に関する事由を理由として、解雇その他不利益な取り扱いをしてはいけません(男女雇用機会均等法第9条第3項)。

また、上司・同僚が職場において、妊娠・出産・育児休業・介護休業等を理由とする就業環境を害する行為を行わないよう、会社は防止措置を講じなければなりません(男女雇用機会均等法第11条の2、育児・介護休業法第25条)。

「妊娠又は出産に関する事由」の具体例
  • 妊娠したこと、出産したこと
  • 母性健康管理措置を求め、またはその措置を受けたこと
  • 各種業務制限関連事項
  • 産前休業を請求し、もしくは産前休業をしたこと、または産後の就業制限の規定により就業できず、もしくは産後休業をしたこと
  • 軽い業務への転換を請求し、または軽い業務に転換したこと
  • 各種労働時間制限等に関すること
  • 育児時間の請求をし、または育児時間を取得したこと
  • 妊娠または出産に起因する症状により労務の提供ができないこと、もしくはできなかったこと、または労働能率が低下したこと
「不利益な取扱い」の例
  • 解雇すること
  • 期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと
  • あらかじめ契約の更新回数の上限が明示されている場合に、当該回数を引き下げること
  • 退職または正社員をパートタイム労働者等の非正規社員とするような労働契約内容の変更の強要を行うこと
  • 降格させること
  • 就業環境を害すること
  • 不利益な自宅待機を命ずること
  • 減給をし、または賞与等において不利益な算定を行うこと
  • 昇進・昇格の人事考課において不利益な評価を行うこと
  • 不利益な配置の変更を行うこと
  • 派遣労働者として就業する者について、派遣先が当該派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を拒むこと
育児時間

生後満1年に満たない子を育てる女性は、就業時間中の通常の休憩時間のほか、1日2回少なくとも各30分の育児時間を請求できます(労働基準法第67条)。なお、土曜日の半日勤務や短時間勤務の場合など1日4時間以内の労働の場合には、1日1回でも可となっています。育児時間の賃金は労使の話し合いによります。

生理休暇

生理日の就業が著しく困難な女性が請求した場合には、休業することができます(労働基準法第68条)。

罰則

労働基準法第64条の2、第64条の3、第64条の5~第67条違反は6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金。第68条違反は30万円以下の罰金。

関連する法律条文

労働基準法第12条、第19条、第39条第8項、第64条の2、第64条の3、第64条の5~第68条。男女雇用機会均等法第9条、第11条、第12条、第13条。男女雇用機会均等法施行規則第2条の2。育児・介護休業法第25条。健保法第101条、第102条

詳細について

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12602000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Roudouseisakutantou/0000124019.pdf

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