職場トラブル解決ガイド
39. 採用内定の取り消し・延期について
会社から採用内定を取り消されました。これは認められるのでしょうか?
会社が勝手に採用内定を取り消すことはできません。
法律上の重要なポイント
詳しい解説
採用内定とは何か
採用内定が出た時点で、入社日から働き始める約束(労働契約)が成立します。これは口約束でも有効です。ただし、一定の条件に該当する場合は契約を解除できる権利も含まれています。いわゆる「内々定」も、状況によっては正式な内定と同じ扱いになります。
内定取り消しが認められる条件
内定取り消しは非常に厳しい条件の下でのみ認められます。最高裁判所の判例によると、以下の条件を満たす場合に限られます。
- 内定を出した時点では分からなかった事実が後から判明した
- その事実により内定を取り消すことが客観的に見て合理的である
- 社会一般の常識から見ても妥当と認められる
これらの条件を満たさない場合、内定取り消しは無効となります。
内定取り消しが認められる具体例
- 学校を卒業できなかった
- 業務に必要な免許や資格を取得できなかった
- 健康状態が著しく悪化し、仕事に重大な支障が生じる
- 履歴書などに重大な嘘があった
- 重大な犯罪を犯した
会社の経営悪化による内定取り消し
「経営が苦しいから」という理由だけでは内定取り消しはできません。会社は以下の点を総合的に検討し、やむを得ない場合に限り認められます。
- 経営状況の深刻さ
- 内定取り消し以外の方法の検討
- 取り消し対象者の選定の合理性
- 手続きの適正さ
単に「将来が不安定だから」という曖昧な理由では認められません。
採用延期について
内定が出た時点で労働者としての地位が発生するため、会社都合で入社を延期する場合は、会社は休業補償を支払う義務があります。
内定取り消しを受けた場合の対処法
- 証拠を保存する
- 内定通知書
- 入社に関する案内書類
- 研修の案内など
- 取り消し理由を確認する
- 内定通知書に記載された条件と照らし合わせる
- 相談窓口を利用する
- 都道府県の労働局
- 労働基準監督署
- 法的手続きを検討する
- 従業員としての地位確認
- 賃金の仮払い請求
- 採用延期の場合
- 延期期間の明確化を要求
- 延期期間中の賃金補償を求める
国のガイドライン
厚生労働省のガイドラインでは、企業に対して以下を求めています。
- 内定取り消しを行わないこと
- 取り消しを避けるため最大限の努力をすること
- やむを得ず取り消しを検討する場合は、事前にハローワークに相談すること
- 内定者の就職先確保に最大限努力すること
- 補償要求には誠意を持って対応すること
まとめ
採用内定は法的に保護されており、会社が一方的に取り消すことは原則として認められません。取り消しを受けた場合は、一人で悩まず専門機関に相談することが大切です。
詳細について
以下のURLを参照してください職場トラブル解決ガイド一覧
- 1.退職の権利
- 2.労働基準法上の管理・監督者
- 3.労災保険
- 4.変形労働時間制
- 5.妊産婦保護、妊娠に伴う不利益取扱い
- 6.就業規則
- 7.労働者派遣と派遣会社・派遣先会社の責任
- 8.倒産と未払い賃金の立替払い
- 9.健康診断
- 10.休憩時間
- 11.有期労働契約から無期労働契約への転換
- 12.休業中の賃金
- 13.社会保険
- 14.妊娠・出産、育児休業等に関するハラスメント
- 15.セクシュアル・ハラスメント
- 16.いじめ、パワー・ハラスメント
- 17.高齢者雇用(定年後の継続雇用制度)
- 18.ストレスチェック
- 19.育児休業・介護休業
- 20.育児・介護休業取得に伴う不利益取扱い
- 21.パートタイム労働者の税金
- 22.求職者支援制度
- 23.雇用保険
- 24.一時金・退職金
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- 26.賃金支払と一部控除
- 27.最低賃金
- 28.割増賃金・固定残業代
- 29.みなし労働時間制(職場外)
- 30.みなし労働時間制(裁量労働制)
- 31.高度プロフェッショナル制度
- 32.年次有給休暇
- 33.解雇
- 34.雇用形態の違いによる不合理な待遇差禁止
- 35.有期労働契約の雇い止め
- 36.有期労働契約の中途解除
- 37.労働者代表選出と労使協定
- 38.求人票・求人広告と労働条件の明示
- 39.採用内定の取り消し・延期について
- 40.36協定と特別条項付き協定について