退職代行ローキ(労働基準調査組合)

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職場トラブル解決ガイド

7. 労働者派遣と派遣会社・派遣先会社の責任

Q 派遣契約の労働時間内に業務が終わらなかったため、派遣先の会社で残業を命じられました。
A 派遣先の会社が派遣社員に残業をさせる場合には要件が定められており、要件を満たさない場合には命じられません。

法律上の重要なポイント

派遣先の会社が派遣社員に残業をさせる場合には、以下の要件が必要です。
派遣会社における36協定(残業に関する労使協定)の締結・届出、派遣会社の就業規則におけるその旨の記載、雇用契約で明示された就業条件にその旨の条項があること、派遣会社・派遣先会社間の派遣契約にその旨の規定があること。

詳しい解説

派遣会社・派遣先会社の責任について

労働者派遣法では、派遣で働く人の保護のため、派遣会社・派遣先会社に対して様々な責任を定めています。

労働時間の枠組みの設定は派遣先会社が行いますが、派遣先会社が派遣社員に残業や休日労働を行わせるためには、派遣会社が36協定の締結・届出を行い、働く人へ周知することが必要です。

派遣会社が責任を負う主な事項
労働基準法関連
  • 労働契約
  • 賃金(残業等の割増賃金を含む)
  • 変形労働時間の定め
  • 残業・休日労働の協定の締結・届出
  • 年次有給休暇
  • 産前産後休業
  • 災害補償
  • 就業規則等
労働安全衛生法関連
  • 一般的健康管理(定期健康診断等)のための衛生管理体制
  • 雇い入れ時安全衛生教育等
男女雇用機会均等法関連
  • 妊娠・出産等を理由とする解雇その他不利益取扱いの禁止
  • セクハラに関する雇用管理上の措置等
派遣先会社が責任を負う主な事項
労働基準法関連
  • 労働時間、休憩、休日、深夜業の管理
  • 育児時間の管理
  • 生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置等
労働安全衛生法関連
  • 安全衛生管理体制(一般的健康管理を除く)
  • 働く人の危険または健康障害を防止する措置等
男女雇用機会均等法関連
  • 妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止
  • セクハラに関する雇用管理上の措置等
派遣会社が講じるべき主な措置
  • 有期雇用派遣社員等の雇用の安定等のための措置
  • 均衡を考慮した待遇の確保のための措置
  • 派遣社員等の福祉の増進
  • 適正な派遣就業の確保
  • 待遇に関する事項等の説明
  • 派遣社員であることの明示等
  • 派遣社員に係る雇用制限の禁止
  • 就業条件等の明示
  • 労働者派遣に関する料金の額の明示
  • 派遣先への通知
  • 派遣受入期間の制限の適切な運用
  • 派遣先及び派遣社員に対する派遣停止の通知
  • 日雇い労働者についての労働者派遣の禁止
  • 離職した労働者についての労働者派遣の禁止
  • 派遣元責任者の選任
  • 派遣元管理台帳
  • 性・年齢による差別的な取扱いの禁止等
派遣先会社が講じるべき主な措置
  • 労働者派遣契約に関する措置
  • 適正な派遣就業の確保
  • 派遣受入期間の制限の適切な運用
  • 派遣受入期間の設定方法等
  • 派遣社員への労働契約の申込み義務
  • 派遣社員の雇用の努力義務
  • 離職した労働者についての労働者派遣の役務の提供の受入れの禁止
  • 派遣先責任者の選任
  • 派遣先管理台帳
  • 派遣社員を特定することを目的とする行為の制限
  • 性別・年齢による差別取扱いの禁止
雇用契約の締結について

派遣社員は派遣会社と雇用契約を結びます。その際は、派遣会社は派遣社員に労働条件を書面で明示し、交付しなければなりません。また、労働者派遣法では、派遣会社は派遣社員に派遣先での就業条件を書面で明示し、交付しなければなりません。この場合、厚生労働省のモデルに従った書面交付が法令上義務づけられています。

派遣社員は書面で明示された契約内容以外の仕事を指示されても、それに応じる義務はありません。その場合は派遣会社を通じて派遣先会社に是正を求めるべきです。また、契約内容と実際の労働条件が異なっていれば、派遣会社との雇用契約を即時に解除できます(労働基準法第15条第2項)。

労働条件(派遣社員の「同一労働同一賃金」)について

労働者派遣法では、派遣社員と派遣先の正社員との間で不合理な待遇差を禁止する規定(均等・均衡待遇)が設けられており、2018年の労働者派遣法改正でこれが強化されました。

特に重要なポイント

派遣先会社が派遣先の正社員の待遇情報を派遣会社に提供し、その情報を元に派遣会社は派遣社員の待遇を、派遣先の正社員と均等・均衡のとれた内容にすることが義務化されました(労働者派遣法第30条の3「派遣先均等・均衡方式」)。

例外的な方式

派遣会社と派遣会社の過半数労働組合(もしくは過半数代表者)との間で、派遣社員の待遇改善に関する労使協定を締結して、その協定に基づく待遇決定も認められます(労働者派遣法第30条の4「労使協定方式」)。ただし、協定が守られていない場合は、原則の派遣先均等・均衡方式に戻ります。

詳細について

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/index.html

関連する法律条文

労働基準法第15条第2項。労働者派遣法第30条の3、第30条の4

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