有期雇用の中途解約での退職は可能でしょうか?
- 2023.05.23
- 2023.05.23

退職豆知識
有期雇用契約でも勤務期間が1年以上経過した場合は無期雇用契約同様に最長2週間で退職可能
契約期間が1年未満でも「やむを得ない事由」があれば、退職することが可能
形式上は有期雇用契約だが実質的には期間制約がない雇用状態の場合は最長2週間で退職可能
1. 無期雇用契約と有期雇用契約の違い
2. 契約が満了により退職可能
3. 勤務期間が1年以上経過した場合は退職可能
4. 勤務期間が1年未満で中途解約して退職の場合でも「やむを得ない事由」があれば退職可能
5. 契約社員である雇用期間が決まっていると言うのが形だけの場合
6. まとめ
契約社員などの期間の定めが有る有期雇用契約の方で、契約社員でも退職代行を利用して契約期間満了前に中途解約での退職は可能なのか不安に思われている方もいらっしゃることでしょう。
当組合にも契約社員の方から実際にそのようなご相談を度々いただいております。
下記は実際にいただいたご相談内容になります。
「契約社員ですが、契約社員の場合は退職の申し出を2週間前までに行えば退職できるという法律が適応されないと聞きました。契約期間満了まで退職することが出来ないというのは本当でしょうか?」
結論から申し上げますと、本当です。
ただし、例外がございます。
こちらにつきましては、後述で詳しく説明させていただきます。
この記事では期間の定めが有る有期雇用契約の方で、契約社員でも退職代行を利用して契約期間満了前に中途解約での退職は可能かどうかについて詳しく解説いたします。
結論から申し上げますと有期雇用契約の方でも退職は可能です。
ではまず、無期雇用契約と有期雇用契約の違いについて下記で説明させていただきます。
それではみていきましょう。
無期雇用契約と有期雇用契約の違い
無期雇用契約(期間の定めなし)
無期雇用とは一体何なのでしょうか。
あなたが無期雇用契約の労働者であれば、雇用期間は基本的に定められていません。
これは一般的に、契約が労働者自身または雇用者によって解約されるまで、または従業員が定年を迎えるまで、働き続けることが可能な雇用形態を指します。
雇用契約書を手に取ってみると、無期雇用契約の労働者の場合、契約期間の欄に「期間の定めなし」と明記されているはずです。
全社員が無期雇用契約になるわけではないため、雇用形態に惑わされず、しっかりと契約書を確認してみましょう。
そして無期雇用契約には特徴的な規定があります。
それは、労働者が自由に契約を解約できるという点です。
具体的には、日本の民法627条第1項により、原則として2週間前に退職の意志を伝えることで、特別な理由がなくてもいつでも労働契約を解約することが可能となっています。
(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
引用:民法第627条(e-GOV 法令検索)
無期雇用契約は、その特性上、雇用の安定性を提供します。
それは雇用者にとっても労働者にとっても、一定の安心感をもたらします。しかし、契約内容や自身の働き方について理解することが重要です。
契約の詳細を理解することで、自身の権利と義務をしっかりと把握し、働く上での安心感をさらに高めることができるでしょう。
有期雇用契約(期間の定めあり)
有期雇用とは一体何なのでしょうか。
具体的に言うと、それはある特定の期間で働くという合意に基づいた働き方を指すものです。
この形式の雇用契約では雇用契約書には「期間の定めあり」という言葉が記述され、その下には具体的な契約期間が明示されます。
重要な点として有期雇用契約は民法第628条により特別な事由がない限り、契約期間の途中で一方的に解約することは許されません。
その背後には雇用期間が双方の合意に基づいて決定され、お互いにその合意を守るべきであるという原則があります。
なぜなら期間を途中で退職する行為は雇用者から見ると、予め約束した一定期間勤務するという合意を反故にされることを意味するからです。
これは、労働者と雇用者の間で結ばれた雇用契約の信頼性と誠実性を損ねる行為と言えるでしょう。
(やむを得ない事由による雇用の解除)
第六百二十八条 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
引用:民法第628条(e-GOV 法令検索)
とはいえ、この規定には特定の例外が存在します。
例外に該当する場合、雇用者の意向にかかわらず契約期間の途中での退職が許されるのです。
これらの例外については、後ほどさらに詳しく見ていくことにしましょう。
それではここからは、契約社員が労働者側から一方的に退職出来るケースはどのような場合なのか。
以下で詳しく説明させていただきます。
まずはじめに、どのような場合に労働者側から一方的に会社を辞めることが可能なのか詳しく説明させていただきます。
契約が満了により退職可能
有期雇用契約の特徴として重要な点はその名の通り、一定の期間が設定されていることです。
つまりその期間が終了すれば雇用者は自然と契約終了となり、退職となるのです。
これは無期雇用契約の社員、通常は正社員として働く人々とは明確な違いを示しています。
契約期間が終了したのにも関わらず、勤務を続けることを強いられる行為は法に反するものです。
たとえ過去に契約を結んでいたとしても契約が終了した時点で、働く義務は存在しないのです。
例えば引き継ぎ作業が長引いたり、引き続き指示や命令を受け続けたりするような場合も契約終了後には不適切な行為となります。
このことを知っておくことは働く側にとっても、雇用者にとっても重要です。
結果として雇用契約はお互いの利益を守るために存在するのです。
適切な理解と適用によって、良好な労働関係を維持することが可能となるのです。
以上のことから契約満了により退職可能です。
また、契約社員として1年以上勤務期間が経過している方も退職可能となりますので以下で詳しく説明いたします。
勤務期間が1年以上経過した場合は退職可能
有期雇用契約では契約期間が極端に長いと不公正に拘束されてしまう恐れがあります。
しかし、ここで労働基準法の一部規定が重要な役割を果たします。
労働基準法の第137条では1年以上の期間を設けた契約については、1年経過後にはいつでも契約を解除することが可能とされています。
つまり、この法律によれば契約期間が定められていても、1年以上勤務していれば特にやむを得ない事由がなくても退職することが許されるのです。
この規定は民法の第628条の規定を上書きする形となります。
第百三十七条 期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が一年を超えるものに限る。)を締結した労働者(第十四条第一項各号に規定する労働者を除く。)は、労働基準法の一部を改正する法律(平成十五年法律第百四号)附則第三条に規定する措置が講じられるまでの間、民法第六百二十八条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から一年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。
引用:労働基準法第137条(e-GOV 法令検索)
上記の2つのケースに該当する場合は、労働者側から一方的に会社を辞めることが可能です。
また前述でも述べましたが、有期雇用契約期間の途中での退職が許される例外としては以下の2つの例外がございます。
1つ目が勤務期間が1年未満で中途解約して退職の場合でも「やむを得ない事由」があれば退職可能。
2つ目が契約社員である雇用期間が決まっていると言うのが形だけの場合。
それでは上記の例外について、まずは1つ目の例外から下記で詳しくみていきましょう。
勤務期間が1年未満で中途解約して退職の場合でも「やむを得ない事由」があれば退職可能
これは法律上しっかりと定められております。
有期雇用契約では通常、契約期間が満了するまで解約することはできません。
これはあらかじめ契約期間が定められているからこそ、その期間の終わりまで働くことが期待されているためです。
この期待は法律によって保護されています。
しかしながら、これには一定の例外が存在します。
例えばやむを得ない事由がある場合には、契約期間が満了する前でも解約することが許されます。
このやむを得ない事由とは、法律による期待が保護されないほど重大な事由を指します。
以下では、これらやむを得ない事由に該当する具体的な状況について詳しく解説します。
体調不良やケガによる就労不能
有期雇用契約では労働者が働くことが物理的または精神的に不可能となる状況が、解約を認められるやむを得ない理由となります。具体的にはケガや病気、または精神的な体調不良といった働くことができない状況を指します。
これらの事情は退職を求める労働者にとって重要なものであり、例えば退職代行業者を利用する多くの方々が何らかの体調不良を抱えています。
体調不良はそのまま仕事を続けることで身体を壊してしまう可能性がある場合、特に重大な問題となります。
精神的な体調不良がその一例であり、これによって就労不能となる場合、契約期間中であっても退職することが認められます。
しかし労働者が体調不良を理由に退職を希望した場合、それを雇用主側が受け入れざるを得ないのは明らかです。
なぜなら、働くことができない状態の労働者を引き留めたり休職させたりすることは企業にとっても大きな負担となるからです。
なお退職を求める際の重要な点として就労不能状態が一過性のものではなく、契約期間中に継続する可能性があることを示す必要があるということを明記しておきます。
つまりこの就労不能状態が一時的なものでなく長期にわたり継続する可能性があることを明確にすることが、退職の正当性を証明するために必要です。
親の介護などの深刻な家庭の事情
やむを得ない理由の一例として、家庭環境の深刻な変化が挙げられます。具体的には家族が重病になる、または介護が必要になるなどの事態が該当します。
しかしながら、こうした状況が退職の理由となるためにはその事情が相当に深刻であることが求められます。
有期契約の雇用形態を選ぶ人の中には、家族の状況を優先するためにこの形態を選ぶ人もいます。
そしてそうした家族の状況が重大に変化する場合、自分自身の問題ではなくてもそれが退職するためのやむを得ない理由となり得るのです。
会社の違法行為
会社の違法行為も退職の理由として十分にやむを得ないものとして認識されます。これは企業の違法な行為はその企業の責任でありその結果として働く意欲を失った場合、退職するのは当然だからです。
例として挙げられるのがハラスメントです。
職場で不適切な言動によって精神的な苦痛を受けている場合、それは退職の十分な理由となり得ます。
自身を守るためそういった状況を我慢して働き続ける必要はありません。
同様に、過労や違法な残業代の未払いも退職の正当な理由と認識されます。
企業側としてはもし従業員に退職されたくないのであれば、これらの違法行為を改善する手立てを講じるべきです。
自身の違法な行為を放置し続ける企業で働き続けることを求められるのは、従業員にとって非常に困難なことです。
上記では1つ目の例外として、「やむを得ない事由」がある場合について詳しく解説いたしました。
それでは2つ目の例外について以下で説明いたします。
それではみていきましょう。
契約社員である雇用期間が決まっていると言うのが形だけの場合
日本の職場では、試用期間の設定が一般的になっており試用期間を設定している企業は多く存在します。
試用期間は通常3ヶ月程度でこの間は一種の契約社員として扱われ、試用期間が経過すると正社員として働くというのがよくあるパターンです。
しかし試用期間については契約書に注意深く目を通す必要があります。
契約書の雇用期間の欄には、場合によっては「退職するには6ヶ月前に通知しなければならない」と記載されていることがあります。
ここで疑問に思うかもしれません。
3ヶ月だけ勤務するという約束なのに、なぜ6ヶ月前に退職の通知を求められるのでしょうか。
これは実質的には無期雇用(つまり正社員)として働くことを前提にしているからです。
表面的には有期雇用、つまり一定の期間で働くという形をとっていますが実際には期間に制約がない働き方が期待されているのです。
同様に契約が3ヶ月ごとに更新されると言われつつも実際には更新手続きが行われなかったり、更新時の契約書が存在しなかったりすることもあります。
これらは全て表面上だけの期間雇用で実態は期間制約のない雇用契約となっています。
そのような場合、民法627条によれば2週間の通知で退職が可能となります。
つまり、安心して2週間経過するのを待つだけで退職できるというわけです。
まとめ
契約社員や有期雇用契約の方々が契約期間満了前に中途解約での退職を検討する際、不安を感じることがあります。
そこで退職代行業者に相談することで解決できるのか、本記事では詳しく解説してまいりました。
本文中でも述べましたが、有期雇用契約でも退職は可能です。
ただし、契約期間が満了するまで解約することは原則としてできません。
しかし、いくつかの例外が存在します。
1つ目の例外は、契約期間が1年未満でも「やむを得ない事由」があれば退職することができます。
具体的には体調不良や重大な家庭の事情、会社の違法行為などが該当します。
これらの事情は、退職代行業者への相談材料となります。
2つ目の例外は、形式上は契約社員ですが実質的には期間制約がない雇用状態の場合です。
このような場合、民法627条によれば2週間の通知で退職が可能です。
退職代行業者を利用することで、スムーズな手続きが可能となります。
退職代行業者を利用することで、有期雇用契約の中途解約での退職は可能です。
ただし個別のケースによって異なるため、具体的な状況に応じて専門家の助言を受けることが重要です。
退職代行業者は労働者の権利保護やスムーズな手続きをサポートする役割を果たしています。
退職に関する疑問や悩みがある場合は、安心して相談できる退職代行業者の専門知識を活用することをおすすめします。
退職代行コラム編集者

労働基準調査組合執行委員長
徳野 雄一
私自身、離職率が非常に高い同族経営の会社に11年勤務し役職者でした。
私の目の届かないところで普段から自身の部下に経営陣からハラスメントが横行しており、育ては部下が退職する繰り返しの会社でした。
入社して11年目に私宛の部下の辞表に経営陣からの酷いパワハラとも取れる内容が赤裸々に綴られており、今までその事に気づかなかった自分に腹が立ちそして、会社の将来を見据え、その事を経営陣に指摘した途端に私は懲戒解雇を言い渡されました。
その後、懲戒解雇の事を調べ上げ簡単には認められない事を知り、会社側に撤回させ自主退職し今に至ります。
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