- モラハラは立場の上下に関係なく行われる精神的な嫌がらせ。暴力を含まない点でパワハラと区別されます
- 「モラハラ罪」という法律はありませんが、民法709条の不法行為として慰謝料の対象になり、内容によってはパワハラ防止法の対象にもなります
- 迷ったらまず日時・場所・相手・内容を記録すること。会社が動かないときは公的窓口や労働組合に相談できます

これってモラハラ?それとも自分が気にしすぎなだけ?



証拠もないのに相談したら、大げさだと思われないかな…
モラハラとはモラルハラスメントの略語で、相手に精神的ダメージを与えるために行われる嫌がらせやいじめのことです。
ちなみにモラルとは「道徳」や「倫理」の意味です。モラル・ハラスメントとは社会的な道徳や倫理に反する行為ということになります。
夫婦間で起きるモラハラは時折話題になっていますが、職場でもモラハラが横行している場合があります。
モラハラとパワハラの違い
モラハラと似たようなハラスメントにパワハラ(パワーハラスメント)があります。
パワハラもモラハラと同様に、暴言を浴びせたり無視をするなどの行為が特徴です。
モラハラとパワハラとの違いは、加害者の立場の違いにあります。
自分の上司や雇用者のように、立場の人間が加害者の場合はパワハラになります。
一方、モラハラでは加害者の立場が自分よりも上かどうかに関係なく、同等の立場の人間が加害者の場合も含みます。
モラハラは、相手の立場が上でなくても成立します。同僚や部下からの行為も対象です。
また、パワハラには暴力など肉体的にダメージを与える行為も含まれますが、モラハラには暴力は含まれず、精神的な苦痛を伴う行為のみが対象となります。
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| 種類 | 加害者の立場 | 主な行為 | 会社に防止義務を課す法律 |
|---|---|---|---|
| モラハラ | 上下関係を問わない(同僚・部下も含む) | 無視、暴言、過度な干渉など精神的な行為 | モラハラ単独の規定はない。内容に応じてパワハラ防止法などの対象になる |
| パワハラ | 優越的な関係が背景(上司のほか、知識や経験で上回る同僚も含む) | 精神的な攻撃に加え、暴力などの身体的な攻撃も含む | 労働施策総合推進法30条の2(パワハラ防止法) |
| セクハラ | 上下関係を問わない | 性的な言動 | 男女雇用機会均等法11条 |
| マタハラ | 上下関係を問わない | 妊娠・出産・育児を理由とする不利益な扱い | 男女雇用機会均等法11条の3、育児・介護休業法25条 |
職場のハラスメントの種類と、会社に義務を課す法律
- パワハラ:職務上の優位性を背景とする
- モラハラ:言葉や態度による精神的な攻撃が中心
- 重なる場面も多く、明確に分けられないこともある



「モラハラは同僚からでも成立する」という点が、パワハラとの一番の違いです。相手が上司でないからと諦める必要はありません。
職場でのモラハラに該当する例
- あいさつを無視される
- 人前で繰り返し否定される
- 不必要に仕事を与えられない、または過大に与えられる
モラハラは、はっきりとした定義がなく、何がモラハラに該当するのか曖昧な部分もあります。
ただし、社会的常識に照らし合わせ、人の尊厳を傷つけるような言動はモラハラになる可能性が高いでしょう。
職場で行われるモラハラの具体例には、次のようなものがあります。
- 受けた言動を記録せず、記憶だけに頼る
- 社内の窓口だけに相談し、対応されないまま我慢する
- 体調を崩すまで、一人で抱え込む
- 皆の前でわざと叱責をしたり暴言を浴びせる
- わざと仕事を与えない
- 業務に必要な連絡をしない
- 飲み会の参加を強要する
- 容姿や人格について否定的なことを言う
- プライベートな事柄について過剰に干渉する
- 家族や配偶者の悪口を言う
- 無視をする
- 周囲に悪口やネガティブな噂話を流す
- 本人に聞こえるように悪口を言う
- 相手の自尊心が損なわれるような見下した態度
これらのように、職場での業務を進めるにあたり必要な範囲を逸脱した行為を繰り返し続けることは、モラハラになりえます。



どこからがモラハラか、線引きを知っておくと動きやすくなります。
モラハラの相談窓口
- 言われた内容と日時のメモ
- メールやチャットの記録
- 体調の変化がわかる受診の記録
職場でのモラハラの相談窓口として、国の機関が提供している無料サービスのものがあります。
1.厚生労働省:総合労働相談コーナー
総合労働相談コーナーは、厚生労働省が設置している相談窓口です。
全国の労働基準監督署と連携をしているため、問題解決のためのアドバイスをもらえることもあります。
また、紛争調整委員会のあっせんにより、あっせん委員が介入して問題解決をはかることもあります。
2.法務省:みんなの人権110番
みんなの人権110番は、法務省によって設置された窓口です。電話とメールでの相談が可能です。
モラハラについて人権問題の視点から助言をもらえるため、自分が受けた言動が人権侵害に該当するかどうかの判断がクリアになります。
3.都道府県労働局 雇用環境・均等部門
都道府県労働局の雇用環境・均等部門は、職場のハラスメントについて法律にもとづいて対応する窓口です。
会社が防止措置を取っていない場合、労働局から会社への助言・指導や勧告が行われることがあります。相談は無料です。
会社との間で紛争になっている場合は、無料で調停制度を利用できることもあります。
4.弁護士
上記の国の相談窓口では、問題の根本的な解決が難しかったり、解決策が法的な効力を持たなかったりします。
会社がモラハラの対応を拒んでいたり、モラハラの加害者や会社を相手取った慰謝料の請求を考えている場合は、弁護士への相談をおすすめします。



一人で抱えず、まず記録を残すところから始めてください。
モラハラは法律でどう扱われるのか
- 労働施策総合推進法(パワハラ防止法)
- 会社には防止措置を講じる義務がある
- 状況によっては不法行為として損害賠償の対象になり得る
「モラハラ」は法令に出てくる言葉ではありません。しかし、だからといって我慢しなければならないわけではなく、次のような形で法律が関わってきます。
① 会社にはハラスメントを防ぐ義務がある
パワハラ防止法(労働施策総合推進法30条の2)により、事業主にはハラスメントの防止措置が義務づけられています。大企業は2020年6月から、中小企業は2022年4月から対象です。相談窓口の設置や、相談したことを理由とする不利益な取り扱いの禁止もこの義務に含まれます。
モラハラであっても、優越的な関係を背景とした言動であればこの対象になります。性的な言動であれば男女雇用機会均等法11条、妊娠・出産に関する言動であれば同法11条の3が根拠になります。
② 加害者本人に慰謝料を請求できる場合がある
人格を否定するような言動が繰り返されている場合、民法709条の不法行為として、加害者本人に慰謝料を請求できる可能性があります。名誉を傷つける発言であれば、侮辱罪や名誉毀損罪の問題になることもあります。
③ 放置した会社の責任が問われることもある
会社には、労働者が安全に働けるよう配慮する義務があります(労働契約法5条)。ハラスメントを知りながら放置していた場合、加害者だけでなく会社の責任が問われることもあります。



法律に「モラハラ」という言葉がないからといって、泣き寝入りするしかないわけではありません。会社には職場環境を整える義務があります。
会社と直接やり取りせずに辞めたいときは
- 退職の意思を伝える
- 有給消化や退職日の交渉
- 離職票など必要書類の請求
相談窓口を回っても状況が変わらず、心身が限界に近いのであれば、退職は逃げではなく身を守る手段です。ただ、ハラスメントを受けている相手に「辞めます」と伝えるのは、想像以上に負担が大きいものです。
退職代行ローキは労働組合が運営しているため、団体交渉権にもとづいて会社と直接やり取りができます。あなたが会社へ行ったり、上司と話したりする必要はありません。
料金は19,800円(税込)で、内訳は組合加入費2,800円+組合費17,000円です。追加料金は原則不要です(※振込手数料やコンビニ後払いの手数料4,000円などを除きます)。相談はLINEか電話でできます。※LINEの相談は24時間受け付けていますが、会社への連絡は年中無休8時から18時までです。終業時間間際は担当者が不在のことが多く、翌日に折り返しとなる場合があるためです。
これ以上我慢して続ける必要はありません。
退職代行ローキは労働組合として会社と直接やり取りします。
料金は19,800円(税込)で、相談は無料です。



退職の連絡だけでなく、有給休暇の消化や離職票などの書類のやり取りも、私たちが会社との間に入ってお伝えします。あなたが上司と話す必要はありません。
まとめ
精神的苦痛を伴う嫌がらせやいじめがモラハラにあたります。
実際に自分が職場で受けた言動がモラハラにあたるかどうかは、ケースバイケースの部分もあります。
悩んでいる場合は、国の設置窓口や弁護士などに相談するのがよいでしょう。



受けた側が我慢して収まる問題ではありません。
よくある質問(FAQ)
モラハラとパワハラはどう違いますか?
加害者の立場と、暴力を含むかどうかが違います。パワハラは優越的な関係を背景とした言動が前提で、暴力などの身体的な攻撃も含みます。モラハラは立場の上下を問わず、精神的な苦痛を与える行為が中心です。
「モラハラ罪」という罪はありますか?
ありません。モラハラという言葉自体が法令上の用語ではないためです。ただし内容によっては、民法709条の不法行為として慰謝料を請求できる場合や、侮辱罪・名誉毀損罪にあたる場合があります。
無視されるだけでもモラハラになりますか?
なる可能性があります。業務に必要な連絡をしない、集団で無視するといった行為は、厚生労働省がパワハラの類型として示す「人間関係からの切り離し」にあたります。1回きりか繰り返されているかが判断の材料になります。
証拠がなくても相談できますか?
できます。総合労働相談コーナーなどの公的な窓口は、証拠がそろっていない段階でも相談を受け付けています。ただし会社への働きかけや法的な手続きに進む場合は記録が重要になるため、相談と並行して日時・場所・内容を残しておくことをおすすめします。
会社の相談窓口に言ったのに何も変わりません。
社外に相談先を移すことを検討してください。都道府県労働局の総合労働相談コーナーは無料で、助言・指導やあっせんにつなげられる場合があります。会社と直接やり取りすること自体がつらい場合は、労働組合に間に入ってもらう方法もあります。
モラハラが理由で辞めた場合、失業保険はどうなりますか?
上司や同僚からの著しい冷遇や嫌がらせを受けて離職した場合、「特定受給資格者」に該当し、自己都合退職より早く給付を受けられる可能性があります。判断はハローワークが行うため、記録を残したうえで離職理由について相談してください。
参考情報・出典
- e-Gov法令検索|労働施策総合推進法(パワハラ防止法)
- e-Gov法令検索|男女雇用機会均等法
- e-Gov法令検索|民法(第627条ほか)
- 厚生労働省|あかるい職場応援団(ハラスメント対策の総合情報サイト)
- 厚生労働省|総合労働相談コーナーのご案内
執筆者


労働基準調査組合 執行委員長
谷本 祥子
私は飲食店勤務やメーカー代理店勤務など、さまざまな仕事を経験してきました。メーカー代理店では、商品販売の営業職として働いていました。現場では長時間労働や無理なノルマ強要が当たり前で、私も同僚たちも皆疲弊しきっていました。従業員たちが「辞めたい」と申し出ても、会社は「後任が見つかるまで待て」とか「引き継ぎが終わるまでダメだ」と拒み続け、退職を認めませんでした。中には精神的に追い詰められて鬱病になり、ある日突然来なくなってしまう同僚もいました。
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私自身も会社の方針に疑問を感じ、労働環境の改善を上層部に提案しましたが、全く聞き入れてもらえませんでした。それどころか「部下をもっと厳しく指導しろ」と圧力をかけられる始末でした。私も心身ともに不調をきたしたため、退職を申し出ましたが、やはり引き止められ、なかなか辞めることができませんでした。
最終的に、労働問題に明るい仲間達の力を借りて退職することができました。この経験から「働く人たちがもっと気軽に、安心して退職できる仕組みが必要だ」と痛感しました。このような辛い経験をした自分だからこそ、労働者の立場に立って支援したいと考え、現在は労働基準調査組合の執行委員長として活動しています。
同じように悩み苦しむ方々が孤立せず、労働現場で生じるあらゆる労働問題に真摯に向き合い、実効性ある労働法に則った支援を行ってまいります。






