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退職金にかかる税金が増税?退職金への課税の変化や、その影響について

  • 2023.10.02
  • 2023.10.02
退職金にかかる税金が増税?退職金への課税の変化や、その影響について

退職豆知識

短期退職手当等の新設により5年以下の勤務期間で退職する方々の一部の方にとっては増税となる

退職所得控除の21年以上の長期勤続年数に対しての税額負担軽減が撤廃され、一律控除となる

退職所得控除の一律化により労働者は転職を検討しやすくなり、企業の労働条件の改善にもつながる

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2023年度の骨太の方針に退職所得課税制度の見直しが記載され、これがセカンドライフへの準備に影響を与えることは間違いありません。退職金は、個々の方々の第二の人生へ向けた重要な財源であり、その課税枠組みの変更はセカンドライフのプランニングにどう影響するかという観点で非常に重要です。

退職金への課税強化の話は以前からもございましたが、課税が強化されると聞くと、ご自身の受け取ることが出来る退職金がどれくらい変わってくるのか気にされている方も多いのではないでしょうか。

この点について、2022年1月から何が変わり、退職金への課税がどのように変わったのか、また退職金に課税がかかるようになった背景も含めて詳しく解説いたします。

この記事では、2022年1月から実施された退職金課税の調整が具体的にどのようなもので、これにより何が変わるのかを簡潔にお伝えいたします。そして、退職金課税の強化が行われる背景や、それが実施される理由についても言及し、皆様のセカンドライフ計画に少しでもお役に立てればと考えております。

それではみていきましょう。

 

2021年の税制改革について


2021年の税制改正では、ポストコロナ時代に向けて企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)やカーボンニュートラルへの投資が推進されました。特に、DXや環境への投資を積極的に行う企業に対しては、繰越欠損金の控除上限特例が設けられました。これは企業の事業再構築を後押しし、中小企業の成長を促進するための施策でもあります。

税制改正では、新しく雇用された労働者の給与の一部が税額控除対象となる「人材確保等促進税制」も導入されました。これは2年間適用され、企業が変革に向けて人材への投資を増やした場合、控除率がさらに拡大します。中小企業の利益を拡大するための税制見直しや、資源を効果的に使う経営に対する税制も新たに設けられました。

個人に対しても支援策が強化されました。例えば、家庭の経済を安定させるため、住宅ローン控除の特例が延長されました。さらに、子育て支援の助成金などが税金の対象外とされる非課税措置も導入されました。退職金の課税に関しても、「適正化」をキーワードに改正がなされ、より公平な制度となりました。

上記では2021年の税制改革について説明させていただきました。前述でも述べましたが、退職金に対しての課税強化が行われることにより、退職金はどのように変わったのでしょうか。

下記で詳しく解説いたします。

それではみていきましょう。

 

2021年の税制改革における退職金に対する課税


前述でも述べさせていただきましたが、2021年の税制改正により退職金に関する課税が一部強化されました。この改正では、退職金受取人によっては課税強化の対象となり、その結果、手取りの退職金が減少する場合がございます。下記では、課税強化の対象となる方の条件と、それに伴う具体的な影響についてわかりやすくお伝えいたします。
 

2021年の税制改革における改正前の退職金に対する所得税の計算方法

退職金にかかる税金は、その全額ではなく所定の計算式によって決まった「退職所得」と呼ばれる金額に対して課税されます。2021年までの税制では、退職所得は「収入金額から退職所得控除額を引いたものの半分」と定義されています。計算式で言うと以下のようになります。

退職所得の金額=(収入金額-退職所得控除額)×1/2

ここで、「退職所得控除額」は勤務年数によって異なります。20年までの勤務では、この控除額は「40万円を勤務年数で掛けた金額」となっておりました。

しかし、20年を超えると計算方法が変わり、「800万円プラス70万円を(勤務年数から20を引いた数)で掛けた金額」となります。例を挙げると、21年間の勤務であれば、40万円×21年=840万円の控除が期待できますが、実際には800万円+70万円×(21-20)で870万円の控除が受けられることになります。

これにより、長く勤務している方が退職金の課税が軽減される仕組みとなっておりました。つまり、こちらの例では30万円お得になっていた計算になります。

しかしこの税制は2021年の改正以前のもので、どのような変更が加えられたのかについては、後続の記事で解説していきます。
 

新設された短期退職手当等について

2021年の税制改正により、「短期退職手当等」が新設されることとなりました。この新制度は、5年以下の勤務期間で退職する方々に影響を与えることになります。退職所得控除の差引後金額(総収入金額から退職所得控除額を引いたもの)が300万円を超える場合、これまで適用されていた1/2課税が受けられないことになりました。

具体的には、退職所得は「150万円+(収入金額-(300万円+退職所得控除額))」と計算されます。ここで、「退職所得控除額」は「40万円×勤続年数」となります。そして、この計算式における「150万円」は、300万円以下の部分の退職所得とされています。

これまでの制度では、勤続5年以下の役員への退職金は1/2課税の対象外でした。しかし、新制度では「300万円超」の部分という制約がありますが、役員以外の人も1/2課税が適用されなくなったと言えます。つまり、これは一部の方にとっては増税となる制度改正となります。

これらのポイントを押さえて、短期間での退職を考えている方、またはこれから退職金を受け取られる方はご自身の退職所得がどのように課税されるかを理解していただき、適切な計画を立てていただくことが宜しいかと思います。
 

改正後の影響について

今回の税制改正はどのように具体的な影響を及ぼすのでしょうか。例として、4年間働いて500万円の退職金を受け取るケースを考えてみましょう。退職金500万円から「退職所得控除額」を引いた金額、つまり500万円マイナス160万円(40万円×4年)は340万円と計算されます。

ここで注意が必要なのは勤務年数が4年で、かつ退職金が300万円を超えているため、「短期退職手当等」の範囲に入るという点です。このケースでは、退職所得は「150万円+{500万円 - (300万円+160万円)}=190万円」となります。過去の半分課税が適用された場合は、「340万円×1/2=170万円」でしたので、退職所得金額が20万円増加、結果として増税となります。

さらに重要なのは、この改正は2022年(令和4年)以降の所得税に適用され、退職金に関しては、退職金が支給される基礎となった退職の日(通常は退職の日)が2022年1月1日以降であれば、新しい法律が適用されるという点です。

ここでは、新たに設けられた短期退職手当等について詳しく説明させていただきました。

 

退職金に対する課税の見直しの目的とは


2023年度「骨太の方針」において、労働市場改革の推進が強く打ち出されています。こちらの方針は、賃金上昇を後押しする構造を構築するためのもので、具体的にはリ・スキリングを通じた能力の向上支援企業の実情に合わせた職務給の導入、そして成長産業へのスムーズな労働力移動を三つの柱として位置づけています。

現行の退職金税制に目を向けると、特に20年以上の勤続があるケースでは、退職金への税負担が軽減される仕組みがあります。この制度はかつて昭和時代に設計されたもので、その頃と比べて今日では転職が一般的な風潮となっています。こうした現代の労働市場では、現行の退職金税制が労働者の転職活動を妨げる要因となり、特に成長産業への労働力移動のスムーズな進行を阻んでいるとの指摘も存在します。

退職金税制の問題点が注目され、転職をためらう労働者がどれだけいるのか正確な数は判断いたしかねますが、退職金の税制問題は以前から議論のテーマとして取り上げられてきました。それを考慮すると、近い将来、退職金課税の制度は見直しが行われる可能性が高いと予測されます。

続いて、下記では退職金に対する課税の見直し対象について詳しく説明させていただきたいと思います。

それではみていきましょう。

 

退職金に対する課税の見直しの対象とは


政府は退職金の課税制度の見直しについて明確な方針を公表していませんが、報道によると退職所得控除額の改定が予定されているようです。具体的には、現行制度では20年以上の勤務歴がある方が退職する際、毎年30万円の控除額が加算されます。

しかし、この改定案では、勤務年数が20年を超えても加算される30万円はなくなり、勤務年数に関わらず全ての方が40万円の控除額を一律に受けることになるとのことです。

税制は毎年12月に改正大綱として公表されますので、それを確認して具体的な内容を把握することが重要です。退職金の控除額の変更は、退職を考えている方にとっては大きな影響をもたらすでしょう。特に、退職所得控除額が変わることにより、受け取る退職金の額も変動します。

それでは、退職所得控除額見直しにより、どのような影響が出てくるのでしょうか。

下記では、退職所得控除額の見直しによる影響について詳しく解説いたします。

それではみていきましょう。

 

退職所得控除額の見直しによる影響


退職金に対する税金は、勤務年数が20年以内の方には大きな変動がありませんが、勤務年数が長い方はその影響を大きく感じることでしょう。以下、具体的な計算例を用いて、この事をわかりやすくご説明いたします。なお、退職所得の計算式は下記の通りとなります。

退職所得の金額=(収入金額(源泉徴収される前の金額)-退職所得控除額)×1/2

退職金が2,000万円で勤務年数が35年のケースを考えてみましょう。現行の退職所得控除額の計算式を用いると、所得税、復興特別所得税、及び住民税合わせて約11.3万円が税金として徴収されます。しかし、退職所得控除額が一律40万円に変更されると、税金は約51.4万円に増加します。

次に、退職金が1,500万円で勤務年数が30年のケースでは、現行の制度では課税される税金は0円ですが、一律40万円の制度では約23.4万円の税金がかかることとなります。

これらの例からも分かるように、退職金や勤務年数によって、税金の増加幅は異なります。そのため、課税額の大幅な増加に対する緩和策が考慮される可能性も考えられます。

上記では、退職所得控除額の見直しによる影響について説明いたしました。

それでは最後に、その他の影響として、退職所得として課税される退職金制度への影響について説明させていただきたいと思います。

それではみていきましょう。

 

iDeCo、小規模企業共済への影響


退職に際して、受け取る所得として課税されるものがいくつかあります。具体的には、一時金型の退職金やiDeCo(個人型確定拠出年金)、厚生年金基金、確定給付企業年金、小規模企業共済などがこれに該当します。

ここで重要なのは、退職金は勤務先から直接受け取る一時金だけを指しているわけではないということです。iDeCoや小規模企業共済のような、将来の生活のために自らが努力して築いてきた資産も、その範囲に含まれるのです。

多くの方々は、iDeCoや小規模企業共済の掛金が所得控除の対象となるというメリットに着目されておりますが、iDeCoには特に注意が必要です。というのも死亡や障害が生じる場合を除き、60歳までこの制度から掛金を取り出すことができないのです。そして、この点は未来の税制変更のリスクをはらんでいます。

現時点での税制の変更の具体的な見直し案は公表されておりませんが、マスコミの報道によれば、制度改正の議論が行われている模様です。このような変更が実際に進められると、iDeCoなどの制度を利用している人々に影響が出る可能性がございます。

今後の税制変更の動向やその影響については、常に注視しておくことが求められます。退職を考えている方や既に退職を果たした方も、このような変更がご自身の資産や所得にどのような影響を及ぼすのかを理解し、適切に対応するための情報収集が必要です。

 

まとめ


現行の退職金課税システムには、「退職所得控除」、「1/2課税」、「分離課税」及び「短期退職手当等」の4つの要素が混在しており、これらを駆使して課税計算が行われています。特に注目されるのは、「退職所得控除」であり、2024年に予定されている税制改正で変化が見込まれている点となります。

「退職所得控除」は、現行システムでは勤続年数20年までは年40万円、21年以上の場合は年70万円が控除対象となっていますが、これが改正により勤続年数に関係なく一律で控除されるように変更されるという見通しです。この変更の背景には、労働者の転職活動をスムーズに進めることが意図として挙げられます。

退職金は通常、給与や賞与と比較して額が大きいため、多くの労働者が長期間在籍することで退職金を増やし、かつ、税金を少なくしたいと望んでいます。しかしこの退職所得控除の一律化により、退職金が増加しても課税の利点が減少し、労働者は退職金制度にとらわれずに転職を検討しやすくなると見込まれております。

これが現実化すれば労働者の転職が活発化し、人材が特定の業種や企業に偏らず分散することが期待され、労働力不足の問題も緩和されることでしょう。企業側も優秀な人材を確保し、人材流出を防ぐために労働者にとって魅力的な条件を整える動きが活発化する可能性がございます。

もちろん、2024年の税制改正が実施されたとしても、退職所得控除の変更が即座に施行されるわけではありません。労働者や企業の計画に悪影響を及ぼさないよう、段階的な改正が考慮されているかと思われます。

今回の2023年の税制改正では退職所得控除の一律化について中心に議論されていると予想されているようです。これは労働者がスムーズに転職を行うための支援策として位置づけられています。労働者だけでなく、企業も退職金制度を再評価し、どのように対応していくかを考える時期に来ていると言えるかもしれません。
 
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退職代行コラム編集者

コラム編集者

労働基準調査組合執行委員長
徳野 雄一

私自身、離職率が非常に高い同族経営の会社に11年勤務し役職者でした。
私の目の届かないところで普段から自身の部下に経営陣からハラスメントが横行しており、育ては部下が退職する繰り返しの会社でした。

入社して11年目に私宛の部下の辞表に経営陣からの酷いパワハラとも取れる内容が赤裸々に綴られており、今までその事に気づかなかった自分に腹が立ちそして、会社の将来を見据え、その事を経営陣に指摘した途端に私は懲戒解雇を言い渡されました。
その後、懲戒解雇の事を調べ上げ簡単には認められない事を知り、会社側に撤回させ自主退職し今に至ります。

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