働くためを考える労働基準調査組合

労働者の声を元に労働基準法が守られた職場か調査。

公務員でも退職代行を利用して退職できますか?

  • 2023.08.26
  • 2023.08.26
公務員でも退職代行を利用して退職できますか?

退職豆知識

公務員は退職を規定している法律が異なるため、民間や労働組合による退職代行の利用は難しい

弁護士は公務員の法律事務を代行することが可能な為、公務員でも弁護士による退職代行を利用可能

公務員が無断欠勤をすると懲戒処分や懲戒免職のリスクがあるため注意が必要

まずは無料相談
  • まずは無料相談
  • 詳細はこちらから
現在、退職を考えられている公務員の方の中で、様々な事情からご自身で退職手続きを進めることが出来ない、退職代行サービスを利用したいという方もいらっしゃることでしょう。

退職代行サービスは運営元により「民間業者による退職代行」「労働組合による退職代行」「弁護士による退職代行」と3つに分類されております。一般的に多くの民間業者、労働組合による退職代行業者については公務員の方の退職代行をサービス対象外にしております。

また、国や自治体等も民間業者や労働組合のような第三者による退職申請を原則受け付けないというのが通常です。

では、公務員の方は退職代行を利用することは出来ないのでしょうか。

結論から申し上げますと、弁護士による退職代行サービスを利用していただくことは可能です。弁護士であれば民間企業でも公務員でも代理人として退職手続きを行うことが可能です。

この記事では、公務員の方が当組合を含む労働組合による退職代行や民間業者による退職代行を利用していただくことが難しい理由と、公務員の方が退職代行サービスを利用される際の依頼先について、公務員と民間企業の退職手続きに関する違いや法律の違いについて詳しく解説させていただきたいと思います。

それではみていきましょう。
 

公務員の方の退職代行について


一般的に公務員のメリットとして安定性があると言われております。しかし、逆に言えば安定しているということは職場の風通しが悪くなる傾向がございます。

つまり、「人事の入れ替えがほとんどない」「部署移動が少ない」「転勤が少ない」ということになります。

そのような状況下ですと、何十年も同じ人たちと同じ職場で働き続けるということが起こりうることになります。職場の方々との人間関係が円滑に保たれていれば問題はないかと思いますが、職場で働く仲間として全く問題が起こらないということは現実問題として厳しいかと思われます。

そうなりますと、人間関係に歪が出てきます。これを上手く解消することが出来れば問題はないでしょう。
しかし、それを解消できずに悩んでいる方も多くいらっしゃることでしょう。

ここで公務員の退職代行についての特徴としまして、公務員と一般的な民間企業との退職の違いは規定されている法律が異なるということがございます。民間企業ですと民法で規定されています。ところが公務員の場合は国家公務員の方は国家公務員法、地方公務員の方は地方公務員法、自衛官の方は特殊な公務員ということになり自衛隊法という、それぞれ特別な法律が存在します。

その法律によって退職のルールが定められております。そのルールとしまして公務員が退職する際には辞令の交付が必要となります。つまり退職するにあたって許可を貰う必要がございます。その交渉を雇い主の国や地方公共団体に対して行う必要がございます。

上記では公務員の退職代行について詳しく説明させていただきました。

退職の許可を貰う必要があるということが分かりましたが、その許可を貰う交渉は前述でも述べましたが、「民間業者による退職代行」「労働組合による退職代行」「弁護士による退職代行」のいずれの退職代行業者でも行うことは可能なのでしょうか。

以下で詳しく解説させていただきたいと思います。

それではみていきましょう。
 

公務員は基本的に民間、労働組合による退職代行の利用が出来ない


公務員として働く多くの方々、例えば教員や消防士、市役所の職員、さらに一部の警察官や自衛隊員などが考える退職は、民間企業とは異なります。なぜなら、公務員の退職は労働基準法という民間の労働者のための法律ではなく、「地方公務員法」や「国家公務員法」という特別な法律のもとで行われるためです。このため、原則として第三者が関与する退職手続きは許可されていません。

また、労働組合による退職代行業者も公務員の退職代行を扱うことは出来ません。なぜならば、公務員は労働組合を結成することが出来ないためです。

もちろん、公務員の方でも退職に際して悩みや困難を感じることはあるでしょう。しかし、公務員の場合、基本的に退職手続きは国や自治体を通じて、本人からの申請を基に行われる流れとなっています。これは、公務員という特性上、他者が代わりに退職の手続きをすることが難しく、実際に国や自治体側からそのような第三者の対応を受け入れてもらうのは難しい場合が多いのです。

このような背景から、一般的な民間業者や労働組合による退職代行サービスの多くは公務員の方々をサービス対象としていません。しかし、それでも公務員の方が退職に関するアドバイスやサポートを求める場合はその特性を理解し、適切に対応できる専門家を探すことが大切です。

上記のような理由から公務員の退職代行は弁護士しか扱うことが出来ないということになります。

下記ではその理由や公務員と民間企業との違いについてさらに詳しく解説させていただきたいと思います。

それではみていきましょう。
 

民間、労働組合の退職代行業者が公務員の対応をできない理由


民間企業による雇用につきましては、民法や労働法などで定められております。退職に関しては期間の定めのない雇用契約の場合は退職の意思を通知することでいつでも退職が認められております(下記民法第627条参照)。

したがって、退職代行業者としては依頼者の退職の意思を事務的に会社へ伝えるだけでよいため、特に難しい問題はございません。


(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

2 期間によって報酬を定めた場合には、使用者からの解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。

3 六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、三箇月前にしなければならない。

引用元:民法627条(e-Gov法令検索)


しかし公務員の雇用に関するルールや慣行は、民法や国家公務員法、地方公務員法、および関連する人事規則によって厳格に定められています。公務員としての退職については、独自の手続きを経る必要があります。
具体的には、任命権者の許可を取得するなどの手続きが必要です。しかし、これらの手続きをきちんと遵守すれば、公務員であっても自分の意志で退職することは十分に可能です。

言い換えれば、公務員だからといって、退職の意志を持ちながら許可が下りないという事態は存在しません。


(休職、復職、退職及び免職)
第六十一条 職員の休職、復職、退職及び免職は任命権者が、この法律及び人事院規則に従い、これを行う。

引用元:国家公務員法第61条


上記の通り、公務員による退職は民間企業の退職とは異なる法律や制度に基づいた手続きが必要になるため、民間の退職代行業者や労働組合による退職代行業者では対応が難しいということになります。また、国や自治体等も弁護士以外の退職代行業者から退職の連絡を受けた場合に得体のしれない第三者からの連絡に関しては対応できないと拒否をされる可能性もございます。

弁護士の場合は公務員でも民間企業でも、依頼者の方の法律事務を代行することが可能です。国や自治体も弁護士を通して退職の手続きの申請があった場合は基本的に拒否することはないかと思われます。

また、公務員と民間企業の退職時期の違いについてですが、当組合も含めて多くの退職代行サービスが退職の意思を通知後2週間経過で退職可能とお伝えさせていただいております。前述でも述べましたがこれは、民法に基づく退職の手続きを前提としたケースになるため、公務員の方には該当いたしません。

公務員の方の退職時期に関しましては、所属する国や自治体の手続きによって、それぞれのケースにより異なります。ルールとしては、担当部署と協議、調整を行いながら進めることになるでしょう。

例えば、公務員の中でも自衛隊員の場合ですと、さらに追加で規律が定められている職種もございます。自衛隊員の場合は以下のような決まりがございます。


(退職の承認)
第四十条 第三十一条第一項の規定により隊員の退職について権限を有する者は、隊員が退職することを申し出た場合において、これを承認することが自衛隊の任務の遂行に著しい支障を及ぼすと認めるときは、その退職について政令で定める特別の事由がある場合を除いては、任用期間を定めて任用されている陸士長等、海士長等又は空士長等にあつてはその任用期間内において必要な期間、その他の隊員にあつては自衛隊の任務を遂行するため最少限度必要とされる期間その退職を承認しないことができる。

引用元:自衛隊法第40条


上記はつまり、自衛隊員の退職について任務に支障をきたすような場合に必要最低限の範囲内で退職の時期を後ろ倒しにすることが可能だということです。どういった場合に上記の決まりが適用されるかは一概には判断が難しいですが、担当任務の内容によっては希望されている退職時期に退職を認められない場合もあるということは念頭に置かれていた方が良いでしょう。

ここでは民間、労働組合の退職代行業者が公務員の対応をできない理由について詳しく説明させていただき、弁護士による退職代行サービスであれば弁護士による交渉を行い、公務員の方でも利用することが出来ることが分かりました。

では交渉を行うということは、退職が決まらない可能性もあるのでしょうか。不安に思われている方もいらっしゃるかと思います。

結論から申し上げますと、弁護士が交渉することにより公務員の方でも退職は必ず決まります。

以下では、その理由について説明させていただきたいと思います。

それではみていきましょう。
 

弁護士による退職代行を利用することで公務員でも退職が決まる


公務員の場合、退職の申し入れが有ったら基本的には受け入れるようという通達がございます。基本的にはそれぞれの通達の内容は異なりますが、引き留めを行わないようにとまでは言わないまでも退職希望者の意向に従いなさいという通達がございますので、原則としてはその通達に従っていただけます。

従って公務員の方の場合、弁護士による退職代行を利用することで、弁護士から適切に退職の申し入れをしていただき、伝えるべきことを適切に伝えていただくことで、粛々と手続きがスムーズに進んでいくケースがほとんどかと思われます。

ただし、特殊なケースは除きます。例えば懲戒免職や懲戒処分待ちの状況で退職したいという場合はスムーズに許可が下りないケースはございます。このような特殊なケースを除いて、弁護士による退職代行を利用して弁護士を代理人として立て、正式に申し入れを行い適切な手続きを代理してもらうことで、公務員の方でも退職代行を利用して退職することは可能です。

では最後に、公務員の方が退職代行を利用される際の注意点について下記で説明させていただきます。

それではみていきましょう。
 

公務員の方が退職代行を利用する際の注意点


公務員の方が無断欠勤をすると懲戒処分の対象になり、懲戒免職になるということも十分に起こり得るため、必ず弁護士を代理人に立てていただくことをおすすめさせていただきます。公務員の方が出社拒否やバックレることは非常に危険です。

欠勤については、例えば国家公務員の方は人事院の懲戒処分の指針で下記のように定められております。


 (1) 欠勤
ア 正当な理由なく10日以内の間勤務を欠いた職員は、減給又は戒告とする。
イ 正当な理由なく11日以上20日以内の間勤務を欠いた職員は、停職又は減給とする。
ウ 正当な理由なく21日以上の間勤務を欠いた職員は、免職又は停職とする。

引用元:人事院「懲戒処分の指針」より


21日以上の間欠勤をすると、免職や停職の処分を受けることを理解されている方は多いかと思われますが、1日でも正当な理由なく欠勤すれば処分の対象になることを理解されていない方も少なくありません。公務員にとって無断欠勤を行うことは非常にリスクが高い行為となりますのでご注意ください。

また前述でも述べましたが、公務員の方は退職の辞令を受け取る必要がございます。通常辞令の交付は辞令交付式で行われますが、出席を必ずしなければならないというものではございません。欠席される場合は後日郵送で送付していただくよう対応してもらうか、職場に取りに行かれることで辞令の受け取りは可能です。ご依頼される弁護士による退職代行サービスにその旨も伝えておかれるとよいでしょう。
 

まとめ


公務員の方の退職について定められている法律は一般的な民間企業と異なっており、民法や労働法での規定ではなく「地方公務員法」「国家公務員法」「自衛隊法」などの特別な法律で規定されています。また公務員は労働組合を結成できません。

そのため、当組合を含めて労働組合による退職代行、民間企業による退職代行サービスは公務員の方の退職代行を対応範囲外としていることがほとんどです。

ただし、弁護士による退職代行を利用することは公務員の方でも可能です。労働組合や民間企業による退職代行サービスに比べると費用はかさみますが、より確実に退職手続きを進めてもらいたいという場合は弁護士による退職代行を利用されることをおすすめさせていただいております。
退職代行はローキにお任せください
まずは無料相談
  • まずは無料相談
  • 詳細はこちらから

退職代行コラム編集者

コラム編集者

労働基準調査組合執行委員長
徳野 雄一

私自身、離職率が非常に高い同族経営の会社に11年勤務し役職者でした。
私の目の届かないところで普段から自身の部下に経営陣からハラスメントが横行しており、育ては部下が退職する繰り返しの会社でした。

入社して11年目に私宛の部下の辞表に経営陣からの酷いパワハラとも取れる内容が赤裸々に綴られており、今までその事に気づかなかった自分に腹が立ちそして、会社の将来を見据え、その事を経営陣に指摘した途端に私は懲戒解雇を言い渡されました。
その後、懲戒解雇の事を調べ上げ簡単には認められない事を知り、会社側に撤回させ自主退職し今に至ります。

全文を読む

Column List 労働コラム一覧

  • 退職豆知識
  • 労働基準法
  • ブラック企業
  • パワハラ
  • モラハラ
  • セクハラ