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労働問題解決の選択肢としての労働審判と少額訴訟や保全手続

  • 2023.05.10
  • 2023.05.10
労働問題解決の選択肢としての労働審判と少額訴訟や保全手続

退職豆知識

費用対効果を考慮した労働問題の解決策として労働審判、少額訴訟、保全手続がある

労働審判、少額訴訟、保全手続を行う際には証拠集めが重要である

労働問題の内容によって労働審判、少額訴訟、保全手続を使い分ける

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会社を辞めるときの労働問題として給与の未払い、有給休暇の賃金未払い、残業代の未払いなどの未払い問題や懲戒解雇などの不当解雇の問題が大きなものとして考えられます。

「退職代行を利用して会社を辞めてもきちんと給与は支払ってもらえるのだろうか」

「退職代行を利用して急に会社を辞めることによって会社から懲戒解雇にされるのではないか」

など不安に思われている方は少なくないと思います。

では実際に退職代行を利用して会社を辞める際にそのようなトラブルは起こらないのでしょうか。

結論から申し上げますと、未払いや懲戒解雇などのトラブルはあなたにも起こり得る問題です。

もちろん、未払いに関しましては当組合から会社に督促を行わせていただきます。

また、懲戒解雇に関しては可能性が低いとはいえ全く無いかといえば、そうではありません。

会社が懲戒解雇を行うには手続きが大変なことと条件があるため、かなりハードルが高くなっており、そのことを代表者に当組合からお話させていただくことで会社にとってメリットよりデメリットの方が多いということを理解していただきます。

それによりほとんどの場合は未然に防ぐことが出来ていると考えております。

ただし就業規則に違反した理由だけで懲戒解雇が可能だと認識されている経営者の方が非常に多いため、懲戒解雇が法的に認められるか否かは別として、懲戒解雇処分を言い渡される可能性はゼロではありません。

当記事では、実際に当組合から会社へ督促を行っても未払いの支払いがない場合や、実際に懲戒解雇を言い渡された場合の会社に対しての対処方法や懲戒解雇されることによる影響、また懲戒解雇処分の覆し方についても詳しく解説いたします。

それではまず上記のような問題を解決するにはどのような方法があるのでしょうか。以下で詳しくみていきましょう。

 

退職代行を利用して会社を辞める際の労働問題の解決方法


退職代行サービスを利用して退職する際に、未払い賃金や懲戒解雇などのトラブルが起こり、退職代行業者からの交渉や話し合いでは解決に至らずに未払い賃金の督促を行っても支払いがない場合や、懲戒解雇を実際に行われてしまった場合にはどのように対処すればよいのでしょうか。

方法としては以下のように労働基準監督署への相談、労働審判、少額訴訟、通常訴訟などの弁護士に依頼する法的な手続きがございます。
 

労働基準監督署への相談

労働基準監督署への相談では、明確な根拠や証拠を示すことが出来ないと労働基準監督署が動いてくれないこともよくあります。

また、仮に労働基準監督署が動いてくれたとしても、会社との話し合いの仲介はしてもらえないですし、労働基準監督署から会社への是正勧告には強制力がないため、必ずしも解決できるとは限りません。

労働基準監督署に相談したとしても上記のような問題解決に対して有効ではない場合がほとんどになります。

その理由としては、労働基準監督署は「雇用者が法令を遵守しているか監督する機関」という位置づけになるからです。

未払い賃金や不当な懲戒解雇は法令違反になるため、その事実が明らかになれば労働基準監督署からの会社への指導や是正勧告などによって、「今後」は適切に給料が支払われることが期待できるかもしれません。

ただし、注意点として個別の紛争を解決できないということがあります。

労働基準監督署は、これまでの未払い賃金や不当な懲戒解雇に対しての交渉を代理で会社に対して行うようなことはないため、相談によって労働者が救済してもらえることはありません。

また労働基準監督署に相談して対応してもらえるとしても、それは会社による違反の事実が相当明らかな場合に限られます。

つまり、賃金が未払いや不当な懲戒解雇の状況でも、次のような場合には何も対応してくれない可能性が高いです。

賃金が未払いや不当な懲戒解雇であるという証拠が十分にそろっていない場合は、何も動いてもらえないことがほとんどです。

労働基準監督署には企業の労働基準法違反の責任を追及するという役割があります。労働基準法の違反により刑事罰になることもあり得ます。

労働基準監督署は担当地域内の企業が法律に違反していないかどうかを監督し、万が一企業による違法行為があった場合には行政指導で是正を促し、それでも是正されない場合は刑事事件として立件することもあります。

しかし、労働基準監督署は公的機関のため、未払い賃金や不当な懲戒解雇の証拠や根拠がない場合は即座に動いてくれないという問題があります。

明らかに証拠や根拠がそろっている状況での賃金未払いや不当な懲戒解雇の違反行為があれば対応してくれるでしょうが、証拠や根拠がない場合には中々動いてくれない可能性が高いでしょう。

つまり、あなたが実際に賃金未払いや不当な懲戒解雇で悩んでいるから相談をしに行ったという場合でも、証拠や根拠を明示出来なければ何もしてくれない可能性が高くなってしまいます。

賃金が未払いであるという証拠としては、給与明細書、タイムカード、勤怠管理表、源泉徴収票、雇用契約書、給与が振り込まれる預金通帳などが挙げられます。

次に、会社に対して未払い賃金の請求を一度も行っていない場合もすぐに動いてもらえない可能性は高いです。

というのも、未払い賃金の請求を一度も会社に対して行っていない状態で相談に行くと、まず労働者本人から未払い賃金の請求を会社にしてみることを提案されてそれにより会社が支払ってくれる可能性がありますと言われるだけで終わる可能性があります。

一般的に、賃金が未払いであれば労働者は会社に請求します。請求されても支払われないという場合は、会社は悪質な労働基準法違反を行っているということになります。

つまり、まだ一度も請求をしていないのであれば悪質な労働基準法違反であるとは判断されないということです。

そこで、労働基準監督署に未払い賃金について相談をするのであれば、まずは内容証明により会社に請求書を送り、会社が未払い賃金の請求に対して対応しなかったという事実を作ることが重要です。

また優先順位が高くないと判断されてしまった場合も即座には動いてもらえないでしょう。

労働基準監督署には、労働者から様々な相談や申告があるかと思われますが、全てを一斉に対応することは難しいため優先順位はあるでしょう。

つまり、効率よく対応を行うために重大な案件から順次処理していきます。

例えば労災の死亡事故や大規模の残業代未払いなどがそれにあたります。

一方、1人の労働者の少額の未払いの場合は残念ながら重大とは判断されず、会社に違反の事実があったとしても真先に対応してもらえない可能性が考えられます。

このように、労働基準監督署に相談をしに行ったにもかかわらず対応してもらえないのでは意味がありません。

ここで、労働基準監督署に動いてもらうコツを紹介させていただきたいと思います。

コツとしては、「相談」ではなく「申告(通報)」を行うことです。

理由としましては、前述でも述べましたが労働基準監督署は雇用者が法令に違反していないかを監督し、是正する機関であるからです。

賃金の未払いや不当な懲戒解雇があった時にどうすればよいかを相談しに行くのではなく、賃金の未払いや不当な懲戒解雇があったので会社の処罰を求めて申告を行うのが適切な行動になります。

それにより、すぐに対応してもらえる可能性は高まります。

次に、電話やメールではなく対面で申告を行うことがポイントです。

労働基準監督署では、面談だけではなく多数のメールや電話での通報も寄せられています。

電話やメールだけでは未払いに関する資料も十分に提出が出来ませんし、たくさん寄せられている報告のうちの1つとしか判断されない可能性があります。

面談の場合は平日の昼に労働基準監督署に行く必要があるため不便ではありますが、会社への対応を促すには実際に労働基準監督署に行って会社の違法行為を訴えるのがよいでしょう。

また、前述でも述べましたが労働基準監督署に動いてもらうには未払い賃金や不当な懲戒解雇の証拠が必要になって来ます。具体的な証拠集めの方法は弁護士や当組合でもアドバイスをもらえます。

ただし賃金の未払いや不当な懲戒解雇に関して労働基準監督署に相談・申告する際には、いくつかの注意点があります。

まず、労働基準監督署は企業に対して指導勧告を行いますが、強制力はありません。

つまり、労働基準監督署が動いてくれたとしても、賃金が必ず支払われるわけではなく、不当な懲戒解雇の撤回が必ずされるわけでは無いのでその点は理解しておきましょう。

また、労働基準監督署は民事的な問題解決能力がないため、労働者と企業間の話し合いの仲介は都道府県の労働局が行います。

労働基準監督署と労働局は関係が深く、労働基準監督署で対応が難しい場合は労働局の和解あっせんを紹介されることがあります。

和解あっせんは無料で利用できるため、会社と話し合いを望む場合には有益です。労働基準監督署に通報せず、最初から労働局の和解あっせんを申し込むこともできます。

このように、賃金の未払いに関する相談・申告には注意点がいくつかありますが、適切な方法で対処することが重要です。

弁護士や労働組合による退職代行サービスも利用できるため、慎重な判断を行いましょう。
 

労働審判

労働審判とは、労働問題に関する紛争を迅速かつ効率的に解決するための手続きです。

労働審判は日本の労働審判法に基づいて設けられており、労働者や使用者が労働関係のトラブルを円滑に解決するための手段として利用されています。

労働審判の特徴としましては以下の通りです。


迅速性: 労働審判は、原則として3回の期日内に審判が終了することが求められており、労働問題の解決が比較的迅速に行われることが特徴です。

簡易性: 裁判に比べ、手続きが簡易であり、弁護士を立てずに当事者が自分で申立てや主張を行うことができます。

審判官による調停: 労働審判官は、双方の主張を聞き、適切な解決策を見つけるために調停を行います。これにより、当事者間の対立が緩和され、円滑な解決が図られることが期待されます。

強制力: 労働審判の結果として出される労働審判請求認定決定は、民事判決と同様の強制力があります。これにより、労働審判の結果に従わない場合には、強制執行が可能となります。


労働審判の手続きは、まず地方労働審判委員会への申立てから始まります。

申立てられた事案は審判官が担当し、当事者双方の主張を聞いた上で、調停や意見の交換を行います。

これにより、双方が納得できる解決策が見つかれば、労働審判請求認定決定が出されます。

認定決定に納得できない場合は、一定期間内に異議を申し立てることができ、その後、通常の裁判手続きに移行することがあります。

ただし、80%近くがこの裁判のみで解決しております。

期間としては裁判所に行くのは3回だけですが、準備期間も含めると半年くらいかかる可能性があります。またその機会に会社側も損害賠償請求の裁判を行ってくる可能性もありますので、その分増える可能性はあります。
 

少額訴訟

少額訴訟は、金額が限定された簡易な民事訴訟手続きです。

簡易裁判所で起こす裁判で、原則として「1回」で終了する裁判です。裁判といっても、裁判官を通じて行う話し合いに近いものです。

裁判官が事情を聞いて、法律の説明をして、会社に支払うように話してくれます。

話し合いと言っても裁判官が主導して行うものですから、あくまで「法律に従った解決」をするものです。

裁判官が相手となるため、会社もやむを得ずかもしれないですが、支払いに応じる可能性は高まります。

日本では、少額訴訟手続きの対象は60万円以下の金銭の支払を求める場合に限るとされています。

労働問題においても、この金額以下の請求が対象となる場合、少額訴訟を利用することができます。

少額訴訟の特徴としましては以下の通りです。


簡易性: 手続きが簡単であり、弁護士を立てずに当事者が自分で申立てや主張を行うことができます。また、訴状の提出や書類の準備が比較的容易であるため手続きがスムーズに進むことが特徴です。

迅速性: 裁判所は、少額訴訟を迅速に処理することが求められており通常の民事訴訟に比べて手続きが早く終了することが期待されます。

費用の軽減: 少額訴訟では、訴訟費用が通常の民事訴訟に比べて安く抑えられるため経済的な負担が軽減されます。


ただし、少額訴訟は金額的な制限があるため、請求額が60万円を超える場合や、非金銭的な解決が求められる労働問題(例:不当解雇の無効確認請求)では、通常の民事訴訟や労働審判を利用することが適切です。

労働問題における少額訴訟は、手続きが簡易で迅速な解決が期待できるため、適切なケースであれば有効な手段となります。
 

通常訴訟

労働問題における通常裁判は、労働者と使用者間の紛争を解決するために裁判所を通じて行われる手続きです。

通常裁判は、労働審判や少額訴訟とは異なり金額や問題の性質に制限がなく、より広範な労働問題に対応できます。

通常裁判における労働問題は主に民事訴訟に分類されますが、刑事訴訟も含まれることがあります。

民事訴訟: 労働者と使用者間の紛争が民事的な問題である場合に適用されます。

民事訴訟は、裁判所が当事者間の法律関係を調整することを目的としており、一般的な労働問題の解決手段として広く利用されています。


民事訴訟における労働問題の例としては、以下のようなものがあります。

・違法な解雇や解雇無効の確認請求

・雇用契約に関する紛争(労働条件の変更、労働時間、賃金など)

・労働災害補償請求

・パワハラやセクハラによる損害賠償請求


刑事訴訟: 労働問題が刑事的な問題に関連する場合、刑事訴訟が適用されます。

刑事訴訟では、国が加害者を起訴し、被害者は被害届や告訴状を提出して刑事手続きを開始することができます。


刑事訴訟における労働問題の例としては、以下のようなものがあります。

・労働基準法違反(賃金未払い、過労死など)
・労働者の暴行や傷害事件
・業務上横領や詐欺などの犯罪行為


労働問題における通常裁判は、労働審判や少額訴訟に比べて手続きが複雑で時間もかかりますが、専門家の支援を受けることで適切な解決が期待できます。

労働問題における通常裁判では、弁護士を雇うことが一般的です。

弁護士は、訴訟手続きや法律に関する専門知識を持っており、労働者に代わって交渉や訴訟を行います。

弁護士の利用には費用がかかりますが、適切な法的助言やサポートを受けることで、紛争解決が円滑に進むことが期待できます。


通常裁判は、以下のような段階を経て行われます。

訴状の提出: 訴えたい当事者が裁判所に訴状を提出し、訴訟を開始します。

口頭弁論: 当事者が裁判所で主張や証拠を提示し、互いの主張に反論する機会が与えられます。

証拠調べ: 証拠が提示され、裁判所がその信憑性や妥当性を調査します。

判決: 裁判所が判断を下し、勝訴・敗訴が決まります。判決に不服がある場合、上級裁判所への控訴が可能です。

和解: 労働問題における通常裁判では、訴訟が進行中であっても、当事者間で和解が成立することがあります。和解は、双方が合意に達した内容で紛争を解決する方法であり、裁判所の判断を待たずに紛争が終結することができます。


労働問題における通常裁判は、労働者の権利を守るための重要な手段ですが、時間と費用がかかることが欠点として挙げられます。

しかし、適切な法的サポートを受けることで、労働者の権利を確保し、紛争解決に繋げることが期待できます。


上記のように労働問題解決の解決策としては、ご自身での労働基準監督署への申告、弁護士に依頼することが可能な方法として労働審判、少額訴訟、通常訴訟といった方法がございます。

弁護士に依頼を行うと適切な法的助言やサポートを受けることが可能で安心ですが、通常まず着手金として少なくとも10数万円以上かかり、成功報酬も費用としてかかってきます。

また通常裁判では、解決するまでの期間は1年~2年はかかり、さらにそこから控訴となるとそれ以上となってきます。

簡易性と費用対効果を考慮すると、労働審判と少額訴訟の2つの方法は当事者が自分で行うこともできるため、労働問題の内容によって労働審判か少額訴訟を行われることをお勧めさせていただきます。

それでは、労働審判と少額訴訟を利用する場合にはどのような事例があてはまるのでしょうか。以下で具体的にみていきましょう。

 

労働審判と少額訴訟を利用する場合の事例


労働審判を行う事例としては、給与の未払い、有給休暇の賃金未払い、残業代の未払いなどの未払い問題や懲戒解雇などの不当解雇の問題などがあります。

また少額訴訟を行う事例としては請求額が60万円以下の給与の未払い、有給休暇の賃金未払い、残業代の未払いなどの未払い問題などがあてはまるでしょう。


ここで、実際に当組合にいただいた相談をご紹介させていただきます。

「退職届を提出したが受理されず、その後に会社から懲戒解雇通知を渡されました。退職届は返却されましたが、働く意思がないとみなされて給与はもらえないのでしょうか?」


このようなご相談をいただいたことがあります。

戒解雇処分を覆す方法については後述で述べますが、実際にこのような行為を平然と行ってくる会社があるということに注意しましょう。

それでは実際に労働審判や少額訴訟を行う際に、この両者にはどのような違いがあるのでしょうか。

下記では労働審判と少額訴訟の違いについて、手続きや目的の違いを詳しく説明させていただきます。

 

労働審判と少額訴訟の違い


労働審判と少額訴訟は、労働問題を解決するための異なる手続きと目的を持っています。

以下に、それぞれの手続きと目的の違いについて説明します。
 

労働審判

目的:
労働審判は、労働者と事業主の間で発生した労働問題を迅速かつ簡便に解決することを目的としています。

労働審判は労働関係者による合議制で行われ、専門的知識を持つ労働審判官が主宰し労働者と事業主の代理人を含む労働審判委員が参加します。

手続き:
労働審判は裁判所に申立てを行い、労働審判委員会が開催されることで手続きが始まります。

労働審判の手続きは原則として3回の期日内に終了することが求められており、迅速な解決が期待されます。

労働審判の結果は労働審判調書として記録され、これが確定判決と同じ効力を持ちます。

労働審判に不服のある当事者は、異議申立てをすることができます。

適法な異議申立てがなされた場合は労働審判は効力を失い、訴訟手続に移行します。
 

少額訴訟

目的:
少額訴訟は請求金額が60万円以下の金銭的な労働問題において裁判所を通じて手続きを行い、労働者の権利を守るための手段です。

少額訴訟は一般的な民事訴訟に比べて手続きが簡素化されており、原告・被告が直接裁判所に申し立てを行い証拠を提出して争点を解決します。

簡易裁判所で起こす裁判で、原則として「1回」で終了する裁判です。裁判といっても、裁判官を通じて行う話し合いに近いものです。

裁判官が事情を聞いて、法律の説明をして、会社に支払うように話してくれます。

話し合いと言っても裁判官が主導して行うものですから、あくまで「法律に従った解決」をするものです。

裁判官が相手となるため、会社もやむを得ずかもしれないですが、支払いに応じる可能性は高まります。

手続き:
少額訴訟は裁判所に訴状を提出して手続きが始まります。

その後、裁判所は期日を指定し原告と被告が出廷して口頭弁論が行われます。証拠の提出や証人の尋問も行われる場合があります。

少額訴訟の判断は裁判官が行い、判決が下されます。


労働審判と少額訴訟の違いは、労働審判が労働問題に特化した迅速かつ簡便な手続きであるのに対して少額訴訟は請求金額が60万円以下の一般的な民事訴訟に対応する手続きである点です。

もちろん少額訴訟も金銭的な労働問題に対応可能です。

また、労働審判は労働問題に精通した労働審判官と労働審判委員が参加する合議制で行われるのに対し、少額訴訟は裁判官が単独で判断を下す点でも異なります。

また、労働審判は労働問題に特化しており、労働法に関する専門知識が必要とされる場合が多いです。

一方、少額訴訟は、労働問題に限らず幅広い民事訴訟に対応しており、労働法に関する専門知識が必ずしも必要とされない場合もあります。

労働問題において、労働審判や少額訴訟を利用するかどうかは、問題の性質や金額、解決の速さなどを考慮して選択することが重要です。

また、どちらの手続きを選択するにせよ、専門家(弁護士や労働組合など)のアドバイスを受けることが、適切な手続きを進める上で役立ちます。

少額訴訟は請求額が60万円を超える場合や、非金銭的な解決が求められる労働問題(例:不当解雇の無効確認請求)には対応していないため注意が必要です。

また、いずれの場合にも証拠集めが重要になってきます。証

拠としては次のようなものがよいでしょう。

給与明細書、タイムカード、勤怠管理表、源泉徴収票、、給与が振り込まれる預金通帳、就業規則・賃金規程の写し、雇用契約書、業務命令書、メールやチャットの写し、会社とのやり取りの録音


上記では、労働審判と少額訴訟についての説明をさせていただきました。

では、両者を行う場合と通常の裁判を行う場合では判決が出るまでにどれくらいの期間の違いがあるのでしょうか。以下で比較してみていきましょう。

 

労働審判・少額訴訟にかかる日数と通常の裁判にかかる日数との比較


労働審判、少額訴訟、通常裁判の手続きやかかる日数は、それぞれ異なります。
 

労働審判

労働審判は、労働問題の迅速な解決を目指した手続きです。

労働審判の申立てから判決までの期間は、原則として3回の期日内に終了することが目指されており、約3か月以内で結果が出ることが多いです。

ただし、内容や事情によっては、この期間が延びることもあります。
 

少額訴訟

少額訴訟は、請求金額が60万円以下の民事訴訟を迅速かつ簡素に処理することを目的としています。

少額訴訟の手続きは、通常裁判に比べて簡易的であり、判決までの期間は通常裁判よりも短いことが一般的です。

原則として1回の期日で審理が終了し、即日判決が言い渡されます。

ただし、ハードルの低い債権回収の手段ではあるが、会社側の意向次第では手続きがスムーズにいかない場合もありますので注意が必要です。
 

通常裁判

通常裁判は、一般的な民事訴訟を行う手続きで、労働問題に限らず様々な訴訟が対象となります。

通常裁判では、訴状の提出から口頭弁論や証拠の提出など、より詳細な手続きが求められます。

通常裁判の判決までの期間は、ケースや裁判所の状況によりますが、約1年~2年程度とされています。

ただし、これは一審の期間であり、控訴や上告がある場合はさらに長期化する可能性があります。

いずれの手続きにおいても、具体的な期間はケースによって異なりますので、あくまで目安として捉えてください。

また、専門家のアドバイスを受けることで、適切な手続きを選択し円滑に進めることができます。


ここでは、それぞれの期間についてみていきました。

では、実際に労働審判と少額訴訟を行う際に必要な書類について記入方法と流れについても含めて以下で説明させていただきたいと思います。
 

実際の労働審判と少額訴訟の書類の記入方法と流れ

労働審判

労働審判手続の申立てにあたっては,次の書類を用意する必要があります。

1. 申立書

2. 申立手数料(収入印紙)及び郵便切手

3. 相手方が法人の場合には,商業登記簿謄本又は登記事項証明書等

4. 雇用関係の詳細が明らかになる基本的な書類及び予想される争点についての証拠書類

例えば

・雇用契約,賃金又は退職金の額が分かる書類
→雇用契約書,就業規則(賃金規程又は退職金規程),給与支払明細書,源泉徴収票,求人広告など

・勤務した時間又は退職した事実が分かる書類
→出勤簿,タイムカード又は退職証明書など

・解雇の時期,理由が分かる書類
→解雇通知書,解雇理由書など

※申立手数料や郵便切手の額等は,申立ての内容によって異なりますので,申立てをする地方裁判所にお問い合わせください。
 
なお,各地方裁判所本庁のほか,東京地方裁判所立川支部,静岡地方裁判所浜松支部,長野地方裁判所松本支部,広島地方裁判所福山支部及び福岡地方裁判所小倉支部においても,労働審判事件を取り扱っています。

※申立書を提出する際には,相手方の数+3通の申立書の写しを,証拠書類の写しを提出する際には,相手方の数の証拠書類の写しを,それぞれ添付する必要があります。


1. 申立書については下記の内容を記載します。


申立書の雛形につきましては下記URLをご参照ください。
(引用:https://www.courts.go.jp/hiroshima/vc-files/hiroshima/file/1411111.pdf)


労働審判手続の申立書には,当事者(申立人,相手方)の氏名又は名称(会社である場合は代表者の氏名も記載します。),住所,電話番号等を記載するほか,次の事項を記載し,申立人又は代理人が記名押印する必要があります。

1. 申立ての趣旨

2. 申立ての理由

3. 予想される争点及びその争点に関連する重要な事実

4. 予想される争点ごとの証拠

5. 当事者間においてされた交渉(あっせんその他の手続においてされたものを含む。)その他の申立てに至る経緯の概要


(引用:https://www.courts.go.jp/saiban/qa/qa_minzi/index.html#qa_minzi_45)


上記の書類の準備が出来ましたら、下記の流れで労働審判が行われます。


①労働審判申立書の作成と提出
労働審判申立書を作成し、当事者や申立ての趣旨、申立ての理由などを記載します。
証拠書類がある場合は、写しを添付して裁判所に提出します。

②裁判所からの呼出状
裁判所から労働者と事業主の両方に、労働審判手続期日への呼出状が送られます。

③労働審判手続期日に参加
第一回労働審判手続期日では、労働審判委員会が両当事者の主張を聞き、争点を確認します。
必要であれば、証拠調べが行われます。一方、複雑な事件の場合や当事者間で話し合いがまとまらない場合ですと、第二回以降の期日が指定されることもあります。

④調停・審判
当事者間で合意ができた場合は、調停が成立し、労働審判が終了します。
合意ができない場合は、労働審判委員会が審判を出します。

⑤審判の確定
当事者が審判の告知を受け、異議申立てをしない場合、審判が確定し、訴訟上の和解が成立したとみなされます。

⑥強制執行
調停が成立した場合の調停調書や、審判が確定した場合の審判書は、「債務名義」となります。
これにより、相手方が支払いを拒否した場合、強制執行が可能となります。

⑦異議申立てと通常訴訟への移行
当事者が審判に異議申立てをした場合、審判は取り消され、事件は通常の訴訟に移行します。


これらのステップに従って、労働審判は労働問題の迅速な解決を目指します。具体的な期間や結果は、事件の内容や状況によって異なります。

 

少額訴訟

訴状,申立手数料,相手方に書類を送るための郵便切手,添付書類等をご用意していただき,訴えを起こす簡易裁判所に郵送で,又は直接,提出してください。

1.訴状
各簡易判所に定型用紙が備え付けてあります。
なお,一部は,裁判所ウェブサイト(各地の裁判所のサイト内に各庁独自の書式がある場合もあります。)からダウンロードすることもできます。

訴状の雛形につきましては下記URLをご参照ください。

申立て等で使う書式例
(引用:https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/2020/kanmin/sosyou/01-kyuyo-sojou724kb.pdf)

2.申立手数料
収入印紙で納めてください。

申立手数料の額(参考)
(引用:https://www.courts.go.jp/saiban/tetuzuki/tesuuryou/index.html)

3.添付書類等
・当事者が法人の場合:登記事項証明書 1通
・当事者が未成年の場合:親権者を証明する戸籍謄本 1通
・訴状副本:(相手の人数)通
・証拠書類写し:(相手の人数+1)通


(引用:https://www.courts.go.jp/tokyo-s/saiban/l3/l4/Vcms4_00000353.html)


上記の書類の準備が出来ましたら、下記の流れで少額訴訟が行われます。


①まず、「訴状」を作って下さい。裁判所のホームページに書式がありますのでプリントアウトしてご利用下さい。
簡易裁判所に行ってもらえれば、そこにも書式があると思います。
なお、印鑑は押さずに、訴状を簡易裁判所に提出するときに最後に押すと良いと思います。

②次に証拠を作りましょう。過去の給与明細や給与振込口座の通帳、(あれば)タイムカードのコピーなどをA4用紙にコピーします。
コピーの右上に、証拠ごとに赤のサインペンなどで「甲第1号証」「甲第2号証」と番号(証拠番号)を振って下さい(ちなみに、宛から提出される証拠は「乙第1号証」などになります)。
裁判所や会社の分もコピーして提出しますので、裁判所に提出する際に証拠番号を書き込んでもいいと思います。

③訴状と証拠が完成しましたら、それをもって簡易裁判所を訪ねて下さい。持って行くもの(印鑑、コピーの部数、費用など)は事前に簡易裁判所に電話で聞いておくとスムーズです。

④簡易裁判所の窓口では丁寧に手続を説明してくれます。あとはそれに従えば問題ございません。

⑤裁判期日になりましたら、裁判所に行って下さい。裁判官が進行してくれます。

相手方が通常訴訟への移行を求めることがあるかもしれません。また、請求額が60万円を超える場合には少額訴訟は利用できず、通常訴訟となります。しかし、「1回で終わる」以外は手順は通常訴訟も少額訴訟と同じですので、特に心配されることはないかと思います。

ここでは、実際に労働審判と少額訴訟を行う際の必要書類とその流れについて詳しく解説いたしました。

それでは、最も気になるポイントとして費用はどれくらいかかるのか心配されている方も多いのではないでしょうか。

下記では、労働審判や少額訴訟を行う場合と通常裁判を弁護士に依頼して行う場合の費用の比較について説明させていただきます。ではみていきましょう。

 

費用の比較: 労働審判・少額訴訟 vs 通常裁判


以下では、騒動審判、少額訴訟、通常裁判を行う際の費用の相場について説明いたします。
 

労働審判

印紙代:申し立てをする際に裁判所に納める手数料・・・5000円~20000円

予納郵券代:裁判所から事件当事者等に郵便物を送付するための郵便料・・・250円~3500円

印刷代:申立書や証拠の写しなどの書面を印刷するのにかかる費用・・・1750円~5500円

郵送費:あなたが裁判所や会社に書面を郵送するのに必要な費用・・・0円~1000円

交通費:期日に裁判所に出頭するために必要な交通費・・・500円~3000円

合計7500円~33000円前後


弁護士に依頼して労働審判を行う場合は追加で以下の費用が発生します。

相談料:労働審判を弁護士に依頼する前に、弁護士に法律相談を行うのが一般的です。一般的には30分5500円、1時間1万1000円・・・5500円~11000円

着手金:弁護士に事件を依頼して、弁護士が実際に事件にとりかかるために必要な費用・・・10万円~30万円

成功報酬金:経済的利益の10%~30%

日当:労働審判の期日に出頭することについてかかる費用・・・1期日0円~3万円

合計35万円~80万円前後追加でかかる

 

少額訴訟

印紙代:少額訴訟を行う際に裁判所に納める手数料・・・1000円~6000円(訴額10万ごとに1000円ずつ加算)

予納郵券代:裁判所から事件当事者等に郵便物を送付するための郵便料・・・5200円(参考:東東京簡易裁判所の場合、裁判所により異なる)

代表者事項証明書代:相手側が法人である場合には資格証明書が必要で法務局で取得する際の手数料・・・480円~600円

印刷代:申立書や証拠の写しなどの書面を印刷するのにかかる費用・・・1750円~5500円

郵送費:あなたが裁判所や会社に書面を郵送するのに必要な費用・・・0円~1000円

交通費:期日に裁判所に出頭するために必要な交通費・・・500円~3000円

合計9000円~21000円前後前後


弁護士に依頼して少額訴訟を行う場合は追加で以下の費用が発生します。

相談料:労働審判を弁護士に依頼する前に、弁護士に法律相談を行うのが一般的です。一般的には30分5500円、1時間1万1000円・・・5500円~11000円

着手金:着手金:弁護士に事件を依頼して、弁護士が実際に事件にとりかかるために必要な費用・・・10万円~

成功報酬金:経済的利益の10%~30%

日当:労働審判の期日に出頭することについてかかる費用・・・1期日0円~3万円

合計15万円~25万円前後追加でかかる

 

通常裁判

相談料:労働審判を弁護士に依頼する前に、弁護士に法律相談を行うのが一般的です。一般的には30分5500円、1時間1万1000円・・・5500円~11000円

着手金:着手金:弁護士に事件を依頼して、弁護士が実際に事件にとりかかるために必要な費用・・・10万円~30万円

成功報酬金:経済的利益の10%~30%

日当:労働審判の期日に出頭することについてかかる費用・・・1期日0円~3万円

不当解雇の撤回などで50万円~60万円前後、例えば残業代請求を依頼して300万円獲得したという場合で80万円~90万円程度になることが多いでしょう。


上記から分かるように当事者本人様で労働審判や少額訴訟を行うことで費用がかなり安くなり、費用対効果を考える労働審判や少額訴訟とよいかもしれません。

ここまでで労働審判と少額訴訟の手続き方法や流れ、費用などについて説明させていただきました。

ここからは、万が一懲戒解雇処分をされた場合に懲戒解雇処分を覆す方法について説明させていただきますが、その前にまず懲戒解雇処分をされた場合に離職票にはどのように記載されるかや、懲戒解雇処分によりどのような影響が労働者にあるのかについてまず先に説明させていただきたいと思います。

それではみていきましょう。

 

懲戒解雇の場合の離職票への記載


離職票の元になる離職証明書というものがあり、離職証明書には様々な離職理由が記載されています。

離職理由が懲戒解雇だった場合は離職票の元になる離職証明書にもその旨が反映されます。

具体的には、重責解雇(労働者の責めに帰すべき重大な理由による解雇)の事業主記入欄に○がつけられ、具体的事情記載欄(事業主用)にその旨が記載されます。

これは、離職票にも反映され、転職先に知られることになります。

上記のように離職票に懲戒解雇ということが記載されるため、転職先に知られるというリスクが生じます。

他にはどのような影響があるのか不安に思われている方もいらっしゃるかと思います。

以下では、懲戒解雇されることによる影響やリスクについて説明させていただきます。

 

懲戒解雇された場合の具体的な扱い


実際に懲戒解雇となると以下のような影響が考えられます。
 

懲戒解雇後の給料が支給されない

懲戒解雇が発生すると、労働契約が取り消されます。

それゆえ、懲戒解雇が実行された日から、給与の支払いがなくなるという不利益が生じます。

懲戒解雇は、自己都合退職やその他の解雇とは異なり、即日で実施されることが多い現象です。

このため、予期せぬ状況で収入が突然途絶えることになり、そのリスクは非常に大きなものとなります。
 

再就職で不利な扱いになる

まず、懲戒解雇が再就職において不利な点であることを認識しておく必要があります。

懲戒解雇は、企業内で行われる処分の中で最も厳しいものであり、「労働者に重大な責任がある」という意味が含まれます。

例えば、業務上の横領や深刻なセクシャルハラスメントなどの問題行為が、懲戒解雇に該当する事例として挙げられます。

このような背景から、懲戒解雇の事実が明らかになると、積極的にその労働者を採用したい企業はほとんど存在しないでしょう。

面接時に「退職理由が懲戒解雇である」と判明すれば、採用されない可能性が高いです。履歴書には正直に離職理由を記載できず、質問されても嘘をつくことになってしまうでしょう。

近年では、個人情報やプライバシー保護の観点から、前職の照会やリファレンスチェックが制限されており、転職先に懲戒解雇がばれないケースも存在します。

しかしながら、懲戒解雇が原因で再就職が難しくなる可能性は依然として高いため、注意が必要です。
 

今後の就職先で解雇されやすくなる

懲戒解雇になると、現在の仕事だけでなく、今後の就業機会にも影響が及びます。

そのため、将来的にも解雇されるリスクが高まるというデメリットが存在します。

懲戒解雇の経験があることを隠して転職に成功したとしても、「事実が明るみに出たら解雇される」という大きな不安要素がついて回ることになります。

採用過程で履歴書や面接で偽った情報を提供して入社した場合でも、その重大な虚偽が後に発覚すると、新たな解雇理由となる可能性があります。

「懲戒解雇されたことを明かせば採用されず、隠せば将来的に解雇される恐れがある」という状況に陥り、労働者には難しい選択が求められることになります。
 

失業保険の扱いが不利になる

懲戒解雇を受けると、失業保険の受給にも不利な影響が出るデメリットが生じます。

失業保険は再就職までの生活費を補助するものであり、その点での影響は大変重大です。


問題行動が原因で懲戒解雇された労働者に対して、失業保険の受給が制約されることになります。

具体的に言うと、懲戒解雇の場合、失業保険は「自己都合」として扱われます。

そのため、失業保険の支給は、給付制限期間(2ヶ月)と待機期間(7日)が経過した後になります。

急に給与が支払われなくなり、失業保険も受け取れなくなることから、生活に悪影響が及びます。

さらに、離職票にも懲戒解雇であることが記載され、再就職先への情報が漏れやすくなるデメリットも存在します。
 

退職金をもらえない

さらに、懲戒解雇には退職金に関しても大きな経済的な不利益が伴います。

懲戒解雇の場合、退職金を支払わないか減額することを規定している企業が多いのです。

退職金には「功労報償的性格」が法的に認められています。

つまり、在職中の業績に対して報酬を提供するために退職時に一定額の金銭が支払われるということです。

この観点から考えると、懲戒解雇されるような問題を抱えた従業員はその責任の重さから、退職金が支払われないか減額されるというデメリットが生じるのです。

懲戒解雇時の退職金については、退職金規定を事前に確認しましょう。

また、支払われない場合の責任の程度やどの程度減額されるかについては、過去に退職した従業員の事例を参考にすることができます。

ただし、懲戒解雇であっても必ずしも退職金がもらえないわけではありません。

裁判例によれば、懲戒解雇に至る問題行為が、従業員のこれまでの業績を無価値にするほどの重大性を持たない場合、退職金の一部を支払うよう命じられるケースが多く見られます。

このため、懲戒解雇が決定されても、必ずしもすべての退職金が受け取れないわけではないことを理解しておくことも必要です。
 

解雇予告手当がもらえない

解雇には労働者に対するデメリットが大きいため、通常は事前に予告することが求められます。

労働基準法第20条により、解雇時には30日前の予告が必要であり、予告期間が足りない場合は、不足分に相当する解雇予告手当を支払う必要があります。

ただし、懲戒解雇の場合は、解雇予告手当を受け取れないというデメリットが生じます。

労働基準監督署に申請し、「解雇予告除外認定」を受けられた場合、解雇予告が不要となります。

懲戒解雇は、この除外認定が認められる典型的な事例です。

従って、懲戒解雇により、(労働基準監督署の認定が受けられた場合)即座に解雇され、解雇予告手当も受け取れないという大きな金銭的デメリットが発生します。

なお、「解雇予告除外認定」の基準は厳格であり、最終的な判断は労働基準監督署に委ねられます。

認定が得られていない場合には、解雇予告手当を要求することが可能です。


参照:労働基準法第20条(e-GOV 法令検索)


ここでは、懲戒解雇された場合の影響やリスクについて詳しく説明させていただきました。

懲戒解雇についてさらに詳しく知りたい方は下記のURLの記事をご参考ください。


【関連記事】退職代行を利用しても懲戒解雇にならないの?|労働基準調査組合 (rouki.help)


それでは、会社から懲戒解雇処分されるとその処分を受け入れるしかないのでしょうか。

不安に思われている方もいらっしゃるでしょう。

下記では懲戒解雇処分を覆す方法について詳しく説明させていただきたいと思います。

方法としては2つの手続きがあります。

労働審判と保全手続ですが、労働審判については前述でも述べた通りとなりますのでここでは割愛させていただきます。

 

懲戒解雇処分を覆す方法としての保全手続き


労働事件を通常の裁判で解決する場合、判決が出るまでの期間は1年~2年かかります。

さらにそこから控訴となると、たとえ解雇無効の判決が出たとしても3年以上の月日が必要ということであれば、労働者側は諦めて根を上げてしまいます。

そのようなことであれば実質的に100%会社側が勝ってしまいます。それは許されるべきではないという考えから、労働審判と保全手続が存在します。

ここでは保全手続について詳しく説明させていただきます。

解雇によって保全手続を行う場合は、地位保全の仮処分という手続きを行います。

こちらの手続きは、解雇が無効だから労働者の地位はそのまま変わらないということを裁判所があなたに代わって認めるという意味合いがあります。

手続き自体は基本的には2か月~3か月で決定が出るように裁判所が進めていってくれるでしょう。

手続き自体も簡単にできるものとなっており、申立書と証拠書類を裁判所に提出します。

申立書には会社の入社日、解雇された日、解雇されてどのような状況で困っており解雇無効を裁判所に認めてほしいという旨を記載します。

解雇無効を裁判で争うときには、労働者側は解雇無効という事情を説明する必要はありません。

つまり、労働者側は解雇が無効だという理屈や法的な事情の説明を行わなくてもよいのです。

解雇されたという事実だけを言えばよいのです。

労働者側が申立書と証拠書類を提出すると裁判所から、1~2週間後を目途に審尋期日を指定後に呼出状が会社に送付されます。会社側はこれに対して答弁書を提出します。

この答弁書は会社側がこういった事情で労働者を解雇して、それには正当な理由があって、こういった経緯で解雇せざるを得ないということを裁判所に説明して、裁判所に立証して、裁判所が納得するものでなければならないのです。

これが非常にハードルが高くなっております。

というのも、懲戒解雇は下記の3つの条件を全て立証する必要があるのです。


・就業規則の解雇事由にあてはまる

・非常に問題があり、罪の重い行動である

・解雇前に再三の注意などの手続きを行っている


このように、会社のお金を横領していたなどの明らかな犯罪行為でない限り会社側には非常に不利にできており、ほとんどの場合は労働者が勝ちます。

労働者側が勝つと解雇無効、労働者の地位は保全されたと裁判所が決定してくれます。

そうすると会社は労働者に対して、解雇となってから決定が出るまでの給与を全部まとめて支払わなければならないのです。

そのうえ、決定が出てから後の給与もずっと毎月支払い続けなければならないのです。

会社側がこの決定に不服であれば、次は本裁判を起こします。

その裁判により、やはり懲戒解雇が有効だったということを裁判所に認めてもらわなければならないのです。

この裁判はしっかりと時間もかけて証人尋問なども行い、何年もかかります。

その間ずっと会社は労働者に給与を支払い続けなければなりません。

判決が出るまで2年ほどの月日がかかり、最終会社が勝ったとなると会社側は給与の返還を求められますが、その時点で労働者側がもらった給与を使っていたなら事実上返すことは不可能です。

そうなると会社側が諦めざるを得ないのです。

では労働者の財産を差し押さえるといっても差し押さえられるものも範囲が限定されており、差し押さえるものも無ければただ勝ったという事実しか残りません。

何年もの期間をかけ、かなりの苦労をして勝ったとしてもお金は労働者に行ったきりで、しかも勝てるかどうかの確率も非常に低いということがこの裁判全体の流れとなるのです。

初めに仮処分を起こした時点で労働者側が勝つ可能性が非常に高く、会社側からすれば仮処分申立てを起こされた時点で勝てるかどうかは怪しく、困ったとなるのが本音になるのです。

つまり会社側からすると非常にハードルが高く、逆に労働者側からすると非常にハードルが低いというのがこの保全手続です。

この保全手続は労働者本人でも行うことが可能です。もちろん弁護士に依頼しても対応可能です。

 

まとめ


退職代行業者を利用して退職する場合に、未払い賃金の請求や懲戒解雇などの不当解雇の問題も退職と同時に退職代行サービスに解決を依頼しても稀に、退職代行業者からの未払い賃金督促にも応じない会社や法的に認められるか否かは別にして実際に懲戒解雇処分を行ってくる会社はあります。

そのような会社に対しての対処策として、弁護士に依頼して裁判を行うことが安心ではありますが、費用は高額になります。

費用対効果を考慮すると労働審判や少額訴訟を当事者本人で行うのが効果的です。

通常裁判に比べて決着がつくまでの期間の短縮や費用を安く抑えることが可能となります。

また注意点としては、少額訴訟は請求金額が60万円以下の未払い賃金請求などの金銭的な労働問題に対応しており、不当解雇などの労働問題には対応しておりません。

労働審判に関してはどちらの問題でも対応可能です。

また労働審判や少額訴訟を行う際は、証拠集めが重要になって来ます。

また懲戒解雇処分になる可能性はほとんどないとはいえ、実際に懲戒解雇処分にされる可能性はゼロではありません。

懲戒解雇されることにより、その後の就業機会にも影響が及ぶ可能性もあります。

不当な懲戒解雇の場合処分を覆す方法として労働審判や保全手続があります。

特に保全手続は懲戒解雇の理由が横領などの明らかな犯罪行為でない限り、ほとんどの場合は労働者が勝つ可能性が高いです。

弁護士に依頼して対応してもらうことも可能ですが、当事者自身で行うことも可能です。

費用対効果を考えると保全手続を当事者本人で行うことは効果的でしょう。
 
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退職代行コラム編集者

労働基準調査組合執行委員長
後藤 星未

「医療関係の職場に長年勤務していました。その職場では、様々なハラスメントが横行しており、経営者をはじめ役職者も従業員に心ない言葉を浴びせ、非常に離職率が高く、入社直後に退職してしまう、まさに典型的なブラック企業でした。

私は新人研修や教育を任されていましたが、せっかく育てた新人は経営者や上司からのハラスメントを受けて心を病み、退職を繰り返す状況が続きました。

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