退職する際に引継ぎについて会社と直接連絡を取らないといけませんか?
- 2023.05.08
- 2023.05.07
退職豆知識
会社が従業員に対して、引継ぎ業務を強制することは難しい
引き継ぎ無しで退職することが可能ではあるが引継ぎはできるだけ行うことが望ましい
退職代行を利用して引継ぎをすることにより引継ぎをしないことによる法的リスクを回避しよう
1. 一般的な退職の場合の引継ぎ
2. 退職代行を利用して引継ぎせずに退職することは可能
3. 引継ぎを行わず退職する場合のリスク・トラブルとそれに対する対処法
4. 退職代行サービスを利用して円満な退職を
5. まとめ
退職代行とは、労働者が何らかの理由で自分で退職手続きができない、または退職を伝えられない状況にある場合、代わりに退職の意思を伝えるサービスです。
退職代行を利用すると引き継ぎをせずに退職できるという声もよく聞かれますが、実際のところ、本当に引き継ぎをせずに退職できるのでしょうか。
退職を考えられている方の中で、会社から引継ぎが終わるまで退職は認めないなどの引き留めにあっている方もいらっしゃるかと思います。
結論から申し上げますと、引き継ぎをせずに退職することは可能ですが引継ぎは出来るだけ行うべきです。
しかし退職代行を利用する場合でも一部の例外を除いて通常は出社して引継ぎを行う義務はありません。法律上、労働者が退職する際に引き継ぎに関する義務や責任があるという根拠はございません。
ただし、引き継ぎを行わないことで会社に具体的な損害が発生する場合はトラブルにつながるおそれがあります。
例えば、引き継ぎを行わずに会社に損害が生じない場合や義務違反にならないような場合は引き継ぎは必要ありません。
逆に、労働者が退職前から長期間無断欠勤を続け会社の出頭要請にも応じていない場合や、そのまま退職することにより会社の業務に支障が生じて取引先を失うなどの損害が発生するおそれがある場合などには、会社は引継ぎを求めて来るでしょうし、引継ぎを行わなければ損害賠償を求められるリスクもゼロではないでしょう。
また就業規則に「引継ぎ業務を行う」ことが退職金支払いの条件として記載されている場合は、引継ぎを行わなければ退職金が支給されない場合や減額される場合もあるかもしれません。
本記事では、退職代行サービスを利用して退職する場合の引き継ぎの方法や、会社とトラブルにならない退職の進め方について、アドバイスを提供します。
それではまず、引継ぎについて簡単な説明をさせていただきたいと思います。
そもそも退職の際の引継ぎは一般的な退職の場合はどのタイミングで行い、どれくらいの期間を要するものなのでしょうか。それではみていきましょう。
一般的な退職の場合の引継ぎ
まず退職する際の引継ぎ業務が始まるタイミングですが、引継ぎを行い始めるのは後任者が決まってから行われることが多いです。
役職、職種、仕事内容などにもよりますが、後任者は会社に退職の意思を伝えた後に決められることが多いです。
特に営業職などの場合はお客様や取引先に担当者が存在することが多いため、後任者の営業を決定してからの引継ぎになることがほとんどです。
また、あなたが退職することによって新しく人を雇い入れる場合などは、その人の教育係を任されることもあるでしょう。
退職が決まると退職日まで引継ぎ業務を行います。
多くの会社では就業規則で、退職する場合には1~3か月前までにその旨を申し出るように定められていることが多いことから、引継ぎ期間も同様に1~3か月ほど必要とされている場合が多いようです。
また、担当業務が多く後任者が決まらない場合やプロジェクトリーダーなどを任されている場合は、引継ぎ期間が長引いてしまうことやプロジェクト終了まで会社にいるよう求められたりする可能性もあります。
引継ぎ業務は通常業務と同時に並行して行う必要があるため、退職日までに引継ぎが完了していないということにならないように退職日の3日前あたりには終了できるよう、スケジュールを組むようにするとよいでしょう。
3日間の余裕があれば何か問題が起こった場合や、予定外の業務が入ってきたとしてもある程度の対応ができるでしょう。
引継ぎ業務のスケジュールが決まれば、引継ぎ資料の作成に取り掛かります。
口頭での引き継ぎは伝え漏れがあったり、相手の受け取り方によっては異なる伝わり方をしてしまうおそれもありますので、引継書やマニュアルがあった方が後任者も安心です。
引継ぎはメモやデータで行うことが一般的です。パソコン上にデータを残す、共有スペースに資料をアップロードするなど、後任者がアクセスできる形で情報を提供しましょう。
引継ぎ資料が完成しましたら、それを使って業務内容を後任者に説明していきます。必要があれば元々自分の担当していたお客様や取引先に後任者となる担当者と出向いて挨拶をします。
営業職などでは大切な引き継ぎ業務の1つになります。
以上のような流れが一般的に退職した場合の引継ぎの流れとなります。
しかし退職を考えられている方の中には、様々な理由から1か月も退職を待てない、
出来ることなら明日から出社したくないと思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
では、退職代行を利用して引継ぎをぜずに退職することは本当にできるのでしょうか。下記で詳しく説明させていただきます。
退職代行を利用して引継ぎせずに退職することは可能
会社側からすると、十分に引き継ぎが行われないまま退職されたり、それにより人員補充が間に合わなければ困るため、会社は引き留めとめや退職時期の引き延ばしを行う可能性が高いです。
しかし退職を引き留める権利は会社になく、退職代行を利用しているからといって退職を拒否することは法律で禁止されています。
引継ぎが終わるまで退職は認めないと会社から強く言われ、退職することが出来ないのではないかと不安に感じられている方もいらっしゃるでしょうが、上記のように従業員に対して引継ぎ業務の強制が難しいため、引き継ぎ無しで退職することが可能ではあります。
これは労働者が民法627条に基づいて退職の自由を認められているためです。
民法では、雇用期間の定めのない労働者は2週間前に退職を伝えることで、いつでも退職ができると定められています。
また、退職時に残っている有給休暇は法的に消化できない根拠がない限り必ず消化できます。
したがって、退職を申し出た日に2週間以上の有給休暇が残っていれば会社に行かずに退職が可能ということになります。
また有給が足りない方や全くない方でも、どうしても出勤が難しい場合は体調不良などの理由で欠勤で対応することが可能です。
ただし就業規則等で引き継ぎ業務が定められている場合、労働者は信義誠実の原則に従ってできる範囲で引継ぎ業務に対応することが求められます。
簡単に言うと引継ぎ業務の強制は難しいですが会社と従業員が誠実に協力し合うことで円滑な引継ぎが可能になります。
引き継ぎが無い場合でも会社に損害がないと判断されれば問題はありません。
第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
引用:民法第627条(e-GOV 法令検索)
以上のように退職する際に、引継ぎを行わなくても業務違反とみなされない場合や会社に損害が無いと判断された場合は、引継ぎの必要なく退職することが可能です。
とはいえ、前述でも述べましたが引継ぎは出来る限り行うべきです。それでは、引継ぎを全く行わず退職した場合は全くリスクやトラブルが起こる可能性は無いのでしょうか。
当組合にも数多くのご相談をいただくのですが、損害賠償請求をされるのではないかと不安に思われている方もいらっしゃると思います。
ここからは、引継ぎを行わずに退職することによるリスクや起こり得るトラブル、またそれに対しての対処法について解説させていただきます。
引継ぎを行わず退職する場合のリスク・トラブルとそれに対する対処法
引継ぎ業務を行わずに退職することで会社に損害が発生する可能性があります。
通常、退職を申し出ると会社から退職日や引き継ぎ業務についての打診があります。本来であれば退職者はできる範囲でそれに応じるか交渉する必要があります。
引継ぎを行わずに退職した場合、会社側が行ってくる可能性がある対処により以下のようなリスクやトラブルが考えられます。
協議を持ちかけられる可能性がある
退職代行を利用して退職することで、退職代行業者に対して「○月頃まで退職を待ってくれないか」
「せめて最低限の引継ぎは行ってから退職してくれないか」
のように会社から協議を持ち掛けてくる可能性がございます。
民間企業による退職代行業者が会社との間で協議・交渉を行うことは非弁行為とみなされ法律上許されません。
民間企業による退職代行業者の場合は、会社からのこのような申し入れに対して、代わりに対応するということは難しい場合が多いです。
ただし、当組合も含めて団結権、団体交渉権が保障されている労働組合による退職代行や法律知識や交渉スキルが充実している弁護士による退職代行では上記のような会社との協議・交渉も対応可能となっております。
労働組合や弁護士による退職代行業者を選ぶことで上記のリスクについては回避できるといえるでしょう。
損害賠償請求される場合
引継ぎ業務を行わずに一方的に退職した結果、会社に損害が発生した場合に損害賠償を求められる可能性はございます。具体的には引継ぎ業務を行わずに取引が停止されたり業務に遅れが生じたりするケースが考えられます。
また、無断で欠勤や連絡を絶ってしまうと会社は退職時に必要な交渉ができず引継ぎが受けられないため、義務違反として損害賠償請求があるかもしれません。
損害賠償請求をされる可能性は高くはないかもしれませんが、上記のことから必要最低限の引継ぎは、やはり行っていただいた方がよいでしょう。
ただし、会社へ出社したり直接会社の方と連絡を取る必要はありません。当組合を通じて会社へ引継ぎ内容を伝えさせていただいております。
会社から引継ぎ内容に関して質問があった場合には、会社に対してその内容をテキストで求めます。
そちらを当組合が仲介し貴方はそのテキストに対して返信していただければ問題ございません。あなたが直接会社に行くこと、直接お話しして引き継ぐことは一切ございません。
ご安心くださいませ。
では、万が一損害賠償請求を起こされた場合は、どう対処すればよいのでしょうか。
当組合の事例から、損害賠償請求は経営者の気質によって起こることが多いです。
法的に認められるかどうかは別として、突然辞めたことによる損害や就業規則違反による損害を主張する会社もあります。
また、労働法に詳しくない顧問弁護士がいる会社では、嫌がらせ目的で損害賠償請求を弁護士から内容証明で送られてくることもあるのは事実です。
万が一、損害賠償請求された場合は、1人で悩まず弁護士に相談しましょう。
民間企業や労働組合による退職代行では、法的なトラブルについては対応が出来ません。
また弁護士に依頼すると費用が高いと考える方は多いかと思いますが
「退職代行 ローキ」の場合、【弁護士保障プラン】をお申し込みいただければ、仮に会社から上記のような損害賠償請求の通知が来たとしても、弁護士費用は当組合が保障し、会社に弁護士から対応いたします。
もちろん追加料金は一切かかりません。
「退職代行 ローキ」では、日本初となる弁護士と労働組合のダブル対応を行う退職代行サービスです。
万一のトラブル時には、弁護士が依頼者の代理人となり企業と交渉し、損害賠償の法的トラブルにも追加料金なしで対応します。
ここでは簡単に損害賠償請求されるについて説明させていただきましたが、損害賠償についてさらに詳しく知りたいという方は下記URLの記事をご参考ください。
参考:退職代行を利用して損害賠償請求⁈|労働基準調査組合 (rouki.help)
退職金の減額や不支給の可能性がある場合
通常、退職金規定の定めがあり、あなたがその支給要件を満たす場合には、退職金が支払われないと言うケースはほとんどございません。しかし、就業規則に
「引き継ぎをしなかった場合、退職金が減額される」
「退職金の受給要件として引き継ぎを行うこと」
などの記載がある場合は、退職金が減額されるか支給されないおそれがあります。
就業規則に「引継ぎ業務を行う」ことが退職金支払い条件として定められている場合、引継ぎ業務を行わなかったことで退職金が支払われない可能性があります。
退職金は法律で定められているものではないため、会社の就業規則によって退職金が支給されるかどうか、減額されるかどうかを決めることができます。
就業規則の退職金についての規定を確認しておきましょう。
ただし、通常は民法とのバランスを考慮すると「引き継ぎ業務を遂行しなかった」という理由だけで退職金の減額または不支給とすることは難しいといえるかもしれません。
上記では、退職代行を利用して引継ぎをせずに退職することによる、リスクやトラブルとその対処法について説明させていただきました。
ここまでで、引継ぎをせずに退職することは可能ではあるが、それによるリスクやトラブルを考慮するとやはり必要最低限の引継ぎは引継ぎメモを残すなどして行った方が退職自体も円満に進む可能性が高まるといえるでしょう。
退職代行サービスを利用して円満な退職を
退職時に円満な解決が望ましいですが自分で交渉するのに自信がない場合は、退職代行サービスを利用してプロに相談することがおすすめです。
退職代行サービスでは精神的に追い詰められた状態で引継ぎ業務ができない方でも相談に乗ってくれます。あなたの心身の健康を最優先に考慮し円滑な退職ができるようサポートしてくれます。
退職代行サービスを利用して、円満な退職を目指しましょう。
まとめ
退職時に引継ぎをせずに退職代行サービスを利用することは可能ですが、それに伴うリスクやトラブルも存在します。
引継ぎを全く行わないことで、退職後に損害賠償請求される可能性があるため注意が必要です。
また、退職金の減額や不支給の可能性もあるため、就業規則を確認することが重要です。
引継ぎを行わない退職はリスクが伴うため、退職代行を利用して最低限の引継ぎを行うことが、引継ぎをせずに退職することによるリスクを回避した円満な退職に繋がります。
退職代行サービスを利用して、プロに相談し円満な退職を目指しましょう。
退職代行コラム編集者
労働基準調査組合執行委員長
後藤 星未
「医療関係の職場に長年勤務していました。その職場では、様々なハラスメントが横行しており、経営者をはじめ役職者も従業員に心ない言葉を浴びせ、非常に離職率が高く、入社直後に退職してしまう、まさに典型的なブラック企業でした。
私は新人研修や教育を任されていましたが、せっかく育てた新人は経営者や上司からのハラスメントを受けて心を病み、退職を繰り返す状況が続きました。
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