- 記録のある期間の平均から、記録のない期間を推定してもらえるとは限らない
- 東京地裁は2年半分の請求に対し、記録のある半年分の7万円だけを認めた
- 残業代は3年で時効。請求したい期間の記録を今日から毎日残す

残業の記録、一部の期間しか残っていない…



辞めてからまとめて請求すればいい?
給与明細の残業時間の欄を見るたびに、実際に働いた時間との差が気になる。それでも、毎日の記録をつけていたのは途中からで、それより前の分は手元に何も残っていない。「残っている分の平均で、前の期間も計算してもらえるだろう」と考えて、辞めてからまとめて請求しようとしている方は少なくありません。
2026年10月1日、労働新聞は、2年半分の未払い残業代を請求した裁判で、東京地裁が「半年あまりの平均労働時間で、2年もの期間の労働時間は推定できない」として、記録のある半年分の7万円だけを認めた判決を報じました。この記事では、判決の内容を整理したうえで、なぜ記録のない期間の残業代が認められなかったのか、記録が一部しかないときに今日からできること、残業代を請求する手順までを解説します。
※この記事は2026年10月時点の情報をもとに作成しています。
何が起きた?2年半分の残業代請求で、認められたのは半年分の7万円
結論から言うと、記録がある半年分の残業代は認められた一方で、記録のない残りの期間については、半年分の平均から労働時間を推し量ることが認められなかった判決です。報道されている内容を整理します。
| 項目 | 報道されている内容 |
|---|---|
| 裁判所・判決日 | 東京地裁(戸室壮太郎裁判官)、2026年8月25日 |
| 訴えた人 | 東京都内の理化学機器メーカーで働く労働者 |
| 請求の内容 | 2年半分の未払い残業代。半年間の記録をもとに、記録のない期間の労働時間も推定できると主張 |
| 裁判所の判断 | 労働の実態に共通性がなく、わずか半年あまりの平均労働時間をもって2年もの期間の労働時間の推定はできない。会社の勤怠管理が適切でなかった点を踏まえても、残業があったと認めるのは困難 |
| 結果 | 事業場外みなし労働時間制の適用は否定。記録のある半年分の残業代請求を認め、7万円の支払いを命じた |
出典:労働新聞「労働時間 半年の記録基に推定できず 2年半残業代請求で 東京地裁」(2026年10月1日)の公開部分をもとに作成。
この判決は、業界紙である労働新聞が報じたもので、記事の全文は購読者向けです。この記事では、公開されている部分で確認できた事実だけをもとに解説しています。控訴されたかどうかは報じられておらず、確定した判断かどうかは分かっていません。今後の続報があり次第、本記事を更新します。



記録がある期間の分はきちんと認められています。逆に言えば、記録がない期間の分を取り戻す難しさを示した判決です。
なぜ記録のない期間の残業代は認められなかった?
残業代を請求するときは、いつ、何時間働いたかを、請求する側が具体的に示す必要があるためです。今回の判決は、記録のある半年と記録のない期間とで「労働の実態に共通性がない」と判断し、半年の平均をそのまま残りの2年に当てはめることを認めませんでした。判決が何を「共通性がない」と見たのかは公開部分からは分かりませんが、一般に、繁忙期と閑散期の違いや担当業務の変化があれば、ある期間の平均が別の期間にも当てはまるとは言いにくくなります。
会社の勤怠管理がずさんでも、認められないことがある?
あります。会社には、働く人の労働時間を客観的な方法で把握する義務があり、国のガイドラインはタイムカードやパソコンの使用時間の記録などで確認することを原則としています。今回の判決も、会社の勤怠管理が適切でなかったことを考慮に入れています。それでもなお、残業があったと認めるのは難しいと判断しました。会社の管理がずさんであることは、記録のない期間の残業代が自動的に認められる理由にはならない、という点に注意が必要です。
「事業場外みなし労働時間制」は否定されたのに、なぜ7万円?
事業場外みなし労働時間制は、外回りなどで会社の外で働き、労働時間を算定しにくい場合に、決められた時間働いたものとみなす制度です。会社がこの制度を使っていると主張しても、労働時間を算定できる状況であれば適用は認められません。今回の判決はこの制度の適用を否定し、実際に働いた時間で残業代を計算すべきだとしました。ただ、実際の労働時間を示せたのが記録のある半年分だけだったため、認められた金額は7万円にとどまりました。
会社の管理がずさんでも、制度の適用が否定されても、最後に金額を決めるのは記録です。請求したい期間のすべての日について、労働時間を示せるかどうかが分かれ目になります。



「会社が管理していなかったのだから」という理屈だけでは届かないことがあります。自分の手元の記録が頼りです。
残業の記録が一部しかない…今日からできることは?
今日から毎日の記録を始めることと、手元に残っている資料を集めることの2つです。残業代を請求する権利は3年で時効にかかるため、何もしないでいると、3年より前の月の分から順に請求できなくなっていきます。記録を始めるのが1日遅れるごとに、取り戻せる見込みのある期間も短くなると考えてください。
| 資料の種類 | 残しておきたい内容 |
|---|---|
| 会社の記録 | タイムカード、勤怠システムの画面、シフト表、業務日報の写し |
| 時刻が自動で残るもの | 業務メールやチャットの送信時刻、パソコンのログイン・ログオフの時刻、入退館の記録、交通系ICカードの乗車履歴 |
| 自分の記録 | 毎日の始業・終業・休憩の時刻と業務内容のメモ、家族に送った「今から帰る」の連絡 |
| 払われた額が分かるもの | 給与明細、雇用契約書・労働条件通知書、就業規則(賃金・労働時間の定め) |
大切なのは、資料を「とびとび」ではなく「毎日」そろえることです。今回の判決のように、ある期間の記録だけがあっても、別の期間の労働時間を推し量る材料にはなりにくいことがあります。自分のメモは、その日のうちに、始業と終業の時刻、休憩をとった時間、その日に何をしたかを書いておくと、ほかの資料と突き合わせたときに信用されやすくなります。会社には賃金台帳や出勤簿などを保存する義務があるため、退職や請求の前に、勤怠の記録の写しを出してもらうよう求めることもできます。
- 「辞めてからまとめて計算すればいい」と、記録をつけずに働き続ける
- 数か月分のメモを、後から記憶だけでまとめて書く
- 証拠のつもりで、会社の機密資料や顧客情報を持ち出す
タイムカードがない職場で何が証拠になるかは『介護職のサービス残業は違法?保険外業務でも賃金が出る理由と、未払い3年分を請求する方法』でも紹介しています。管理職だからと残業代を払われていない場合は『「管理職だから残業代なし」は本当?名ばかり管理職の3要件と未払い残業代の取り戻し方』もあわせてご覧ください。



記録は、後からまとめて作るものではありません。今日の終業時刻を、今日のうちに書いてください。
未払いの残業代を請求するには?手順と相談先
在職中でも退職後でも、未払いの残業代は請求できます。記録がそろっている期間から、月ごとに金額を固めていくのが基本です。
未払いの残業代はどう計算する?
基本は「1時間あたりの賃金 × 1.25 × 残業した時間」です。月給制の場合、1時間あたりの賃金は、月給から家族手当や通勤手当などを除いた額を、月の平均の所定労働時間で割って出します。たとえば、手当を除いた月給が25万円、月の平均の所定労働時間が160時間なら、1時間あたりは1,562.5円です。その月に20時間の残業をしていれば、約3万9千円の残業代になります。月60時間を超えた分の割増率は50%以上、法定の休日に働いた分は35%以上です。会社から残業代として払われた額があれば、その分を差し引いた差額を請求します。
この計算を記録のある月ごとに行い、一覧にしておくと、会社への請求や労働基準監督署への相談がスムーズになります。請求の流れは次のとおりです。
- 記録をもとに、月ごとの残業時間と、払われた残業代の差額を一覧にする
- 未払いの金額と支払いの期限を書いて、会社に書面で請求する
- 払われなければ、労働基準監督署に相談・申告する
- それでも解決しなければ、労働審判や裁判を検討する(弁護士への相談が必要)
- 対象の月と、月ごとの残業時間・未払いの金額
- 計算のもとにした資料(タイムカードの写し、メモなど)
- 支払いの期限と振込先、払われない場合は労働基準監督署に相談する旨
会社が勤怠の記録を出してくれないときは?
会社が任意に記録の写しを出さない場合でも、裁判所に申し立てて、会社にある記録をあらかじめ調べてもらう「証拠保全」という手続きがあります。記録が書き換えられたり捨てられたりするおそれがあるときに使われるもので、申し立てには弁護士の関与が一般的です。会社には賃金台帳などを保存する義務がありますが、保存期間は当分の間3年とされているため、古い記録ほど早めに動く必要があります。
労働基準監督署への申告は無料で、申告したことを理由に会社が不利益な扱いをすることは法律で禁じられています。申告の効果と最新のデータは『給料未払いは労基署に申告して意味ある?未払い事案の96%が支払われた解決手順と最新データ』で解説しています。



記録がある期間の分だけでも、請求する意味は十分にあります。まずは固められる分から金額にしましょう。
労働組合の現場から。辞めるときに、未払いの残業代の支払いを求める
未払いの残業代について相談を受けていると、「辞めた後に請求しようと思っていたけれど、記録がほとんど残っていない」という声をよく聞きます。残業代の請求は、辞める前の準備で取り戻せる金額が大きく変わります。辞める日を決める前に、まず記録を確かめることをおすすめします。
退職代行ローキが向かないケース
- 裁判をすることを前提に考えている方
- 公務員・自衛官・業務委託・個人事業主・役員の方
- 会社に借金があり、代行時に一括で完済できない方
公務員・自衛官・業務委託・個人事業主・役員の方は、労働組合に加入できないためお引き受けできません。退職代行ローキは、労働基準調査組合が運営する労働組合です。当組合は未払いの残業代について会社に支払いを求めますが、残業代を法的に確定させる計算や、払われない場合の労働審判・裁判での回収は行いません。その段階では、ご本人での手続きか、弁護士への相談が必要になります。
退職の連絡とあわせて、未払いの残業代を会社に求める
そのうえで、会社と直接やり取りせずに辞めたい、未払いの残業代の支払いもあわせて求めたいという方には、退職代行ローキが使えます。退職代行ローキは労働組合なので、退職の意思を伝えるだけでなく、退職日や有給休暇の消化、未払いの給与や残業代について会社と交渉できます。当組合が会社に退職をお伝えした日から、ご本人が出社することも、上司と直接話すこともありません。
退職書類が届かないといった退職後のトラブルにも、加入日から1年間対応します。退職することに対して会社から損害賠償請求や懲戒解雇処分を受けた場合に限り、顧問弁護士が追加料金なしで会社に対応します。
| 確認したいこと | 退職代行ローキの場合 |
|---|---|
| 運営 | 労働基準調査組合(合同労働組合・労働委員会の資格審査済み) |
| 料金 | 19,800円(税込)。組合加入費2,800円と組合費17,000円。相談は無料 |
| 支払い方法 | カード・振込のほか、コンビニ後払い(手数料4,000円・審査あり)、申込時9,900円と30日以内9,900円の分割払い(手数料なし・審査あり) |
| 交渉 | 退職日・有給消化・未払い給与について、労働組合として交渉できる |
| 対応の早さ | 最短即日対応。LINEの相談は24時間受付(※会社への連絡は8時から18時。会社の状況により異なります) |
| 返金 | 当組合の対応で退職に至らなかった場合は組合費を全額返金(※適用条件あり) |
| 退職後 | 退職書類が届くまで加入日から1年間サポート |
※料金・条件は2026年10月時点。最新の内容は退職代行ローキ公式サイトをご確認ください。
返金の条件は利用規約に書いています。当組合の受任案件で、退職に至らなかった事例はこれまでありません(2026年8月末時点・当組合受任案件の集計)。比較検証サイトのmybestでは、退職代行のおすすめ人気ランキングで2024年12月から2026年9月まで1年10か月連続の1位に選ばれています(mybest社調べ)。次の働き先を探すときは、国家資格キャリアコンサルタントによる相談サービスのキャリアバディと連携しています。



辞める前の数週間でできる準備があります。記録を確かめるところから、一緒に整理しましょう。
よくある質問(FAQ)
記録が一部の期間しかなくても、残業代は請求できますか?
記録がある期間の分は請求できます。ただし、記録のある期間の平均から、記録のない期間の労働時間を推定してもらえるとは限りません。2026年8月25日の東京地裁判決は、半年あまりの記録から2年分の労働時間は推定できないとして、記録のある半年分の7万円だけを認めました。
会社がタイムカードを付けていなかった場合でも、請求はできますか?
できます。業務メールの送信時刻、パソコンのログイン記録、交通系ICカードの履歴、毎日の自分のメモなども労働時間の資料になります。ただし、会社の勤怠管理がずさんだったことだけで、記録のない期間の残業代が認められるわけではありません。
残業代は何年前までさかのぼって請求できますか?
3年前までです。残業代を請求する権利は3年で時効にかかるため、何もしないでいると、古い月の分から順に請求できなくなっていきます。
自分で書いたメモでも証拠になりますか?
なりえます。その日のうちに、始業・終業・休憩の時刻と業務内容を書いておくと、ほかの資料と突き合わせたときに信用されやすくなります。後から記憶だけでまとめて書いたメモは、信用されにくくなります。
退職した後でも、未払いの残業代は請求できますか?
請求できます。退職しても、働いた分の残業代を受け取る権利は消えません。ただし時効は退職後も進むため、記録をそろえて早めに請求してください。
まとめ|残業代を取り戻す力は、毎日の記録にある
- 記録のある期間の平均で、記録のない期間を推定してもらえるとは限らない
- 会社の勤怠管理がずさんでも、記録のない期間が認められるとは限らない
- 資料は「とびとび」ではなく「毎日」そろえ、メモはその日のうちに書く
- 残業代は3年で時効。辞める前に記録を確かめておく
今回の判決が示したのは、残業代の請求で最後にものを言うのは、請求したい期間の毎日の記録だということです。2年半働いた分を請求しても、認められたのは記録のある半年分でした。会社の管理がずさんであっても、その事実だけで記録のない期間の残業代が認められるわけではありません。
判断の軸は、「請求したい期間のすべての日について、何時から何時まで働いたかを示せるか」の一点で足ります。示せない期間があるなら、今日から記録を始め、残っている資料を集めてから辞める時期を決めても遅くはありません。辞めてから思い出そうとするより、在職中の数週間の準備のほうが、取り戻せる金額を確実に増やします。
未払いの残業代がある会社を辞めたい、退職の連絡とあわせて支払いも求めてほしいという方は、労働組合が運営する退職代行ローキにご相談ください。退職日の組み立てから会社への連絡まで、労働組合として会社に伝えます。相談は無料です。



働いた時間は、あなたが会社に提供した大切なものです。その対価を受け取る準備を、今日から始めましょう。
「この記録で残業代を請求できるか」「辞めるときに未払い分をどう伝えるか」の確認だけでも、まずはLINEでお聞かせください。
退職代行ローキは労働組合として会社と直接交渉します。
料金は19,800円(税込)で、相談は無料です。
参考情報・出典
・労働新聞「労働時間 半年の記録基に推定できず 2年半残業代請求で 東京地裁」(2026年10月1日)
・e-Gov法令検索「労働基準法」(37条・38条の2・104条・109条・115条・附則143条)
・e-Gov法令検索「労働安全衛生法」(66条の8の3)
・e-Gov法令検索「労働基準法施行規則」(19条)
・e-Gov法令検索「民事訴訟法」(234条)
・厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」
・厚生労働省「都道府県労働局(労働基準監督署)所在地一覧」
執筆者


労働基準調査組合 執行委員長
谷本 祥子
私は飲食店勤務やメーカー代理店勤務など、さまざまな仕事を経験してきました。メーカー代理店では、商品販売の営業職として働いていました。現場では長時間労働や無理なノルマ強要が当たり前で、私も同僚たちも皆疲弊しきっていました。従業員たちが「辞めたい」と申し出ても、会社は「後任が見つかるまで待て」とか「引き継ぎが終わるまでダメだ」と拒み続け、退職を認めませんでした。中には精神的に追い詰められて鬱病になり、ある日突然来なくなってしまう同僚もいました。
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私自身も会社の方針に疑問を感じ、労働環境の改善を上層部に提案しましたが、全く聞き入れてもらえませんでした。それどころか「部下をもっと厳しく指導しろ」と圧力をかけられる始末でした。私も心身ともに不調をきたしたため、退職を申し出ましたが、やはり引き止められ、なかなか辞めることができませんでした。
最終的に、労働問題に明るい仲間達の力を借りて退職することができました。この経験から「働く人たちがもっと気軽に、安心して退職できる仕組みが必要だ」と痛感しました。このような辛い経験をした自分だからこそ、労働者の立場に立って支援したいと考え、現在は労働基準調査組合の執行委員長として活動しています。
同じように悩み苦しむ方々が孤立せず、労働現場で生じるあらゆる労働問題に真摯に向き合い、実効性ある労働法に則った支援を行ってまいります。









