- 役職名が管理職でも、実態が伴わなければ残業代は出る
- 判断は権限・時間の裁量・待遇の3点の実態で決まる
- 未払い分は3年前までさかのぼって請求できる

課長になったら残業代が消えた。これって普通なの?



権限もないのに「管理職」。残業代は取り戻せないの?
昇進はうれしいはずなのに、明細を見て青ざめる。役職手当より消えた残業代のほうが多くて、手取りがむしろ減っていた。そんな「名ばかり管理職」の相談は後を絶ちません。
この記事では、有名大学が是正勧告を受けた最近の事例をきっかけに、どんな管理職なら残業代が出ないのか、あなたが「名ばかり管理職」に当たるかの見分け方、そして未払い分を取り戻す方法までを、労働組合の立場から解説します。
※この記事は2026年9月時点の情報をもとに作成しています。記載は報道時点の内容です。
東洋大が「課長補佐は管理監督者」として残業代未払い、労基署が是正勧告
2026年9月1日の報道によると、東洋大学が法人職員の一部について、課長補佐を「経営者と一体的な立場にあり残業代を支払う必要がない管理監督者」として扱い、割増賃金を支払っていなかったとして、2026年8月に中央労働基準監督署から是正勧告を受けたと報じられています。労基署は課長補佐の労働実態を踏まえ、管理監督者には当たらないと判断し、支払いを求めたとされます。
大学側は対象の人数や総額を精査中で、「以前に労基署へ課長補佐の取り扱いを確認した際は問題ないとされていた」と説明しているとのことです。ここで押さえておきたいのは、会社が「管理職だから残業代は不要」と考えていても、労基署や裁判所は肩書きではなく働き方の実態で判断するという点です。
課長・店長・課長補佐といった役職名が付いているだけでは、残業代が出ない管理監督者にはなりません。大企業や有名大学でも、実態が伴わなければ是正勧告の対象になります。



「大きな組織がやっていることだから正しい」とは限らない、という一例です。
「役職が付いたら残業代なし」は誤解|管理監督者の3つの条件
残業代を支払わなくてよい「管理監督者」に当たるかどうかは、次の3つの条件を実態で満たすかで判断されます。役職名や会社の言い分ではなく、実際の働き方が基準です。逆に言えば、1つでも欠けていれば管理監督者とは認められにくく、残業代を請求できる可能性があります。
条件1|経営に関わる重要な権限を持っている
採用や人事評価、予算や店舗運営など、経営者と一体といえる重要な権限を任されているかどうかです。部下の人事評価の一次評価だけを行い、最終決定権や採用権限がない場合は、この条件を満たさないと判断されやすくなります。上からの指示に従って動く立場であれば、肩書きが管理職でも実態は一般の従業員に近いといえます。
条件2|自分の労働時間を自由に決められる
出退勤の時間を自分の裁量で決められるかどうかです。タイムカードで管理され、遅刻や早退で賃金を引かれたり、シフトに縛られて自由に抜けられなかったりする場合は、時間の裁量があるとはいえません。人手が足りず現場に張り付いている店長などは、この点で管理監督者性が否定されることが多くあります。
条件3|地位にふさわしい待遇を受けている
管理監督者としての責任に見合う給与や手当が支払われているかどうかです。役職手当が付いても、残業代がなくなった結果、一般社員のときより手取りが減ってしまうようなケースは、待遇の面で管理監督者にふさわしいとはいえません。実際、この「昇進したのに手取りが下がった」という逆転こそ、名ばかり管理職を見抜く分かりやすいサインです。
なお、同じ2026年8月には、労災給付の算定をめぐる裁判でも管理監督者性が否定された例があります。東京地裁は8月20日、自動車販売店の工場長について「部下1人の一次評価しか行わず、最終決定権も採用権限もなかった」として管理監督者に当たらないと判断したと報じられています(労災給付の算定に関する判決で、残業代請求そのものの事案ではありません)。権限の乏しさが決め手になる点は、残業代の場面でも共通します。



3つのうち1つでも欠けていれば、残業代を取り戻せる可能性があります。
あなたは名ばかり管理職?セルフチェック
自分が名ばかり管理職に当てはまるかは、次の項目で確かめられます。当てはまる数が多いほど、管理監督者ではなく残業代を請求できる可能性が高まります。ひとつの目安として使ってください。
- 採用や部下の評価の最終決定権がなく、上司の指示で動いている
- 出退勤がタイムカードで管理され、遅刻・早退で賃金が引かれる
- シフトや現場に縛られ、自分の判断で仕事を抜けられない
- 役職手当より、なくなった残業代のほうが大きく手取りが減った
- 部下がいない、または名目だけで実際の指揮命令をしていない
店長や課長補佐、係長といった肩書きでも、これらに当てはまるなら名ばかり管理職の可能性があります。とくに「昇進したのに手取りが減った」という逆転が起きている場合は、待遇の条件を満たしていないことが多く、請求を検討する価値があります。



心当たりがいくつもあるなら、それは我慢するお金ではないかもしれません。
未払い残業代を取り戻す方法と、さかのぼれる期間
名ばかり管理職として支払われなかった残業代は、あとから請求できます。取り戻すために最も大切なのは、働いた時間を示す証拠です。まずは自分の労働時間を裏づける記録を集めることから始めます。
証拠として集めておくもの
タイムカードや勤怠システムの記録、パソコンのログオン・ログオフの時刻、業務メールの送信時刻、シフト表などが、労働時間の証拠になります。あわせて、給与明細と雇用契約書、役職や手当が分かる辞令も残しておきましょう。会社が労働時間を管理していない場合でも、手帳のメモや通勤の交通系ICカードの記録が手がかりになります。在職中のほうが集めやすいため、早めの確保が有効です。
さかのぼれるのは3年分|時効に注意
未払い残業代は、当分の間、3年前の分までさかのぼって請求できます。3年より前の分は時効で消えてしまうため、気づいた時点で早く動くほど、取り戻せる金額は大きくなります。退職後でも請求できますが、証拠が集めにくくなるため、辞める前に記録を確保しておくのが安心です。
- 3要件に照らして、自分が管理監督者に当たらないか確認する
- 労働時間の記録・給与明細・辞令を証拠として集める
- 会社・労基署・労働組合のいずれかに請求・相談する



証拠さえそろえば、名ばかり管理職の残業代は取り戻せる場面が多いです。
会社と争わずに、辞めながら未払い分を回収したいなら
先にお伝えすると、高額の未払い残業代を裁判で全額回収したい場合や、会社と本格的に争う場合は、弁護士への依頼が適切です。労働組合には訴訟の代理はできません。そのうえで、「もうこの会社にはいたくない。辞めるついでに、取り戻せる分は交渉で回収したい」という方には、労働組合が運営する退職代行が選択肢になります。
退職代行ローキは、労働委員会の資格審査を経た労働組合「労働基準調査組合」が運営しており、会社と交渉する権限を持っています(※)。退職の意思を伝えるだけでなく、退職日の調整、有給休暇の消化、そして名ばかり管理職として支払われなかった未払い残業代の請求まで、あなたが会社と直接やり取りしないまま進められます。管理職として引き止めが強くなりがちな立場でも、交渉は組合が引き受けます。
料金は19,800円(税込)で、組合加入費2,800円と組合費17,000円の内訳です。追加料金は原則かかりません(※振込手数料などを除きます)。相談はLINEで24時間受け付けており、状況によっては翌日から出社しない形も目指せます。退職と未払い残業代の交渉を同時に進められるのが、労働組合運営の強みです。
未払い残業代の請求そのものについては未払い残業代を請求してもらうことは可能ですか?で、労働時間や残業の基本的な考え方については【完全解説】労働時間・残業の法律知識〜残業から身を守るために知っておくべきこと〜でくわしく解説しています。
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「管理職なのに辞めるなんて」と言われても大丈夫。交渉ごと任せてください。
よくある質問(FAQ)
課長や店長になったら、残業代は出ないのが普通ですか?
いいえ。役職名が付いていても、残業代が出ない「管理監督者」に当たるのは、経営に関わる権限・労働時間の裁量・相応の待遇の3つを実態で満たす場合に限られます。多くの課長・店長はこれらを満たさず、残業代を請求できる「名ばかり管理職」に該当する可能性があります。
「管理職には残業代を払わない」と就業規則に書いてあります。それでも請求できますか?
できる可能性があります。就業規則や契約に書かれていても、実態が管理監督者の3要件を満たさなければ、その定めは効力を持ちません。会社が支払わないと決めていることと、法律上支払う義務があるかどうかは別の問題です。
未払いの残業代は、何年前までさかのぼれますか?
当分の間、3年前の分まで請求できます。3年より前の分は時効で消えるため、早く動くほど取り戻せる金額が大きくなります。退職後でも請求できますが、時効は進み続けるので、気づいたら早めに証拠を集めて相談するのが安心です。
証拠になる労働時間の記録がありません。あきらめるしかないですか?
あきらめる必要はありません。タイムカードがなくても、パソコンのログ、業務メールの送信時刻、シフト表、手帳のメモ、交通系ICカードの記録などが労働時間の手がかりになります。会社には労働時間を把握する義務があるため、記録の開示を求めることもできます。まずは手元にあるものから集めてください。
管理職だと引き止めが強くて辞められません。どうすればいいですか?
管理職でも退職の自由は保障されており、会社の承認がなくても辞められます。引き止めが強い場合は、労働組合が運営する退職代行を使えば、あなたが会社と直接やり取りせずに退職と未払い残業代の交渉を進められます。後任がいない、責任者だから抜けられない、といった理由で退職を拒むことは認められません。
まとめ|肩書きではなく「働き方の実態」で決まる
- 残業代が出ない管理監督者かは権限・時間の裁量・待遇の実態で決まる
- 役職名や就業規則の定めだけでは残業代を消せない
- 未払い分は3年前までさかのぼって請求できる
- 辞めるなら退職と同時に未払い分を交渉で回収できる
有名大学でも是正勧告を受けたように、「管理職だから残業代なし」という運用は、実態が伴わなければ通用しません。大事なのは肩書きではなく、あなたが本当に経営者と一体の権限や時間の自由を持っているかどうかです。当てはまらないなら、それは請求できるお金です。
とはいえ、在職中に会社へ残業代を請求するのは勇気がいります。もう辞めようと考えているなら、退職と未払い分の回収を一度に任せてしまうのが現実的です。労働組合が運営する退職代行ローキなら、引き止めの交渉から未払い残業代の請求まで、あなたに代わって会社と向き合います。相談は無料で、LINEなら24時間受け付けています。



消えた残業代は、あきらめる前に一度確かめてみてください。相談だけでも大丈夫です。
「私の役職、名ばかり管理職かも?」の確認だけでも、まずはLINEでお聞かせください。
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料金は19,800円(税込)で、相談は無料です。
参考情報・出典
・共同通信「東洋大に是正勧告 課長補佐の残業代未払い、管理監督者扱い」(2026年9月1日・Yahoo!ニュース配信)
・労働新聞社「工場長の管理監督者性を否定 労災給付の算定めぐり 東京地裁」(2026年9月3日)
・e-Gov法令検索「労働基準法」(41条・115条)
・厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」
・e-Gov法令検索「労働組合法」(6条)
執筆者


労働基準調査組合 執行委員長
谷本 祥子
私は飲食店勤務やメーカー代理店勤務など、さまざまな仕事を経験してきました。メーカー代理店では、商品販売の営業職として働いていました。現場では長時間労働や無理なノルマ強要が当たり前で、私も同僚たちも皆疲弊しきっていました。従業員たちが「辞めたい」と申し出ても、会社は「後任が見つかるまで待て」とか「引き継ぎが終わるまでダメだ」と拒み続け、退職を認めませんでした。中には精神的に追い詰められて鬱病になり、ある日突然来なくなってしまう同僚もいました。
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私自身も会社の方針に疑問を感じ、労働環境の改善を上層部に提案しましたが、全く聞き入れてもらえませんでした。それどころか「部下をもっと厳しく指導しろ」と圧力をかけられる始末でした。私も心身ともに不調をきたしたため、退職を申し出ましたが、やはり引き止められ、なかなか辞めることができませんでした。
最終的に、労働問題に明るい仲間達の力を借りて退職することができました。この経験から「働く人たちがもっと気軽に、安心して退職できる仕組みが必要だ」と痛感しました。このような辛い経験をした自分だからこそ、労働者の立場に立って支援したいと考え、現在は労働基準調査組合の執行委員長として活動しています。
同じように悩み苦しむ方々が孤立せず、労働現場で生じるあらゆる労働問題に真摯に向き合い、実効性ある労働法に則った支援を行ってまいります。









