- 労基署が動いた未払い事案の96.1%は年内に支払いに至った
- 「意味ない」と感じる原因は証拠不足と相談止まり
- 時効3年。退職後は年14.6%の遅延利息も請求できる

給料が振り込まれない。労基署って意味あるの?



泣き寝入りするしかないのかな…
結論からお伝えします。給料未払いで労働基準監督署が監督指導に入った事案のうち、96.1%はその年のうちに支払いに至っています。2026年8月21日に厚生労働省が公表した令和7年の実測データです。「労基署に言っても意味ない」という声はネットにあふれていますが、数字はその逆を示しています。
給料日にATMの残高照会を押して、そのまま画面の前で動けなくなる。未払いは、生活そのものを直撃する問題です。
本記事では、公表されたばかりの監督指導結果を読み解き、「意味ない」と感じてしまう本当の原因、申告を空振りにしないための準備、労基署で解決しない残り数%のケースの対処法、そして退職とセットで未払い分を請求する方法まで、労働組合の立場から解説します。
※この記事は2026年8月時点の情報をもとに作成しています。
給料未払い2万2,605件・128億円|厚労省が令和7年の監督指導結果を公表
2026年8月21日、厚生労働省は令和7年に取り扱った賃金不払事案の監督指導結果を公表しました。労働基準監督署が監督指導を行った賃金不払事案は22,605件で、前年よりさらに251件増えています。
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| 項目 | 令和6年 | 令和7年 |
|---|---|---|
| 監督指導した件数 | 22,354件 | 22,605件(+251件) |
| 対象になった労働者 | 185,197人 | 173,016人 |
| 不払いの金額 | 172億1,113万円 | 128億5,782万円 |
注目すべきは解決の状況です。22,605件のうち21,731件(96.1%)は、令和7年のうちに指導を受けた会社が支払いを行い解決しています。労働者ベースでは97.0%、金額ベースでも85.5%にあたる109億9,703万円が支払われました。同日には賃金不払残業(いわゆるサービス残業)の是正結果も公表されています。
1件あたりの平均は約57万円。未払いは特殊な事件ではなく、労基署が毎年2万件以上処理している「よくある違反」です。あなただけの恥ずかしい問題ではありません。



年間17万人が同じ目に遭っています。声を上げた人の96%が回収側です。
「労基署は意味ない」は本当か?数字と、そう感じる3つの理由
答えを先に言います。監督指導まで進めば96.1%が支払いに至るのが実測値であり、「意味ない」は数字の上では正しくありません。ただし、「労基署 意味ない」と検索する人がこれほど多いのには、実際の理由があります。3つに整理します。
理由1|「相談」で終わっていて「申告」になっていない
窓口で話を聞いてもらうだけの「相談」と、法律違反の事実を正式に伝えて調査を求める「申告」は別物です。相談だけでは労基署は原則動きません。「労働基準法違反の事実を申告します」と明確に伝え、申告として受理してもらうこと。ここが第一の分かれ目です。
理由2|証拠が足りず「違反の事実」を確認できない
労基署が動くには、賃金がいくら発生し、いくら支払われていないかを裏づける材料が必要です。雇用契約や労働時間を示すものが何もないと、調査の入口に立てません。「証拠がない」と感じる場合の集め方は、次の章で具体的に説明します。
理由3|労基署は「取り立て機関」ではない
労基署の仕事は、会社の違反を是正させることです。是正勧告を受けた会社の大半は支払いますが、それでも払わない会社のお金を、労基署が差し押さえて取り立ててくれるわけではありません。最後の回収はあなた自身の請求(内容証明・労働審判など)になります。この構造は、最低賃金割れのケースを扱った最低賃金法違反の罰則は?書類送検の事例と給料を取り戻す方法を解説でも詳しく解説しています。
- 「相談」ではなく「申告」と明言する
- 証拠をそろえてから行く(次章の一覧)
- 回収の最後は自分の請求だと知っておく



「意味ない」の多くは、入口の使い方でつまずいているだけなんです。
申告を空振りにしない準備|証拠のそろえ方と「証拠がない」ときの手
結論です。申告の成否は窓口に行く前に決まります。そろえるべきは「働いた事実」と「支払われていない事実」の2系統の証拠です。
そろえる証拠の一覧
働いた事実を示すものは、雇用契約書や労働条件通知書、タイムカードの写真、勤怠アプリの画面、シフト表、業務チャットやメールの送信時刻です。支払われていない事実を示すものは、給与明細と銀行の入出金明細。この2つを並べると、未払いの金額が自分で計算できます。会社が明細を出さない場合は、その事実自体もメモに残してください。
「証拠がない」と思ったときにできること
タイムカードも契約書も手元にない場合でも、諦めるのは早いです。通勤の交通系ICの乗車履歴、社用システムへのログイン記録、同僚とのLINE、家族に送った「今から帰る」のメッセージまで、働いていた時間帯を推認させるものは証拠になり得ます。手書きでも、毎日の始業・終業時刻を記録したメモには証拠価値が認められています。今日から記録を残し始めることに意味があります。
- 「そのうち払う」を信じて時効の3年を消費してしまう
- 退職時に証拠を社内に置いたまま出てしまう
- 口頭のやり取りだけで請求した記録が残っていない
「いつまで待つべきか」と迷っている方は、給料日の翌日から未払いはすでに違法状態だと考えてください。待つことに法律上のメリットはひとつもありません。まず会社に「◯月分の給与◯円が未払いです。◯日までに支払ってください」と記録が残る形で催促し、応じなければ申告へ進む。この2段構えなら、労基署にも「本人が請求したが支払われなかった」という明確な事実を示せます。
申告当日は何を聞かれる?窓口での流れ
窓口では、会社の正式名称・所在地・事業内容のほか、資本金や従業員数のようなあなたが即答しにくいことも聞かれます。求人票や会社ホームページの会社概要を控えていくとスムーズです。あわせて、雇用契約の内容、未払いの期間と金額、会社に催促した経緯を時系列で話せるよう、1枚のメモにまとめておくと申告として受理されやすくなります。所要は1〜2時間ほど見ておいてください。
なお、業務委託やフリーランスとして働いている方の報酬未払いは、労働基準法の賃金にあたらないため労基署の申告対象外です。この場合は契約にもとづく報酬請求の問題となり、相談先は弁護士やフリーランス・トラブル110番になります。ご自身の契約が雇用か業務委託か分からないときは、指揮命令の有無や勤務時間の拘束など働き方の実態で判断されます。



証拠集めは在職中が圧倒的に有利。辞める前に、まずコピーです。
労基署で解決しない数%だったら|倒産・無視への対処法
96.1%が解決する一方、残る事案もあります。パターンは主に2つで、それぞれに別の手段が用意されています。
会社が倒産したら|未払賃金立替払制度で8割が戻る
会社が倒産して払えなくなった場合は、国の未払賃金立替払制度が使えます。未払いの賃金と退職金のうち8割(年齢による上限あり)を、国が会社に代わって立替払いする制度です。窓口は労働基準監督署と労働者健康安全機構で、倒産で「もう取れない」と泣き寝入りする必要はありません。
会社が無視を続けたら|請求の手続きと年14.6%の遅延利息
倒産していないのに払わない会社には、記録が残る形の請求(内容証明郵便)から、裁判所の労働審判や少額訴訟へ進む道があります。このとき知っておいてほしいのが遅延利息です。退職した後の未払い賃金には、退職日の翌日から年14.6%の遅延利息を上乗せして請求できます。放置するほど会社の負担は増える設計になっており、これ自体が交渉の材料になります。
請求書面の文例(内容証明・メール共通)
私は貴社に◯年◯月◯日から◯年◯月◯日まで勤務し、下記の賃金が未払いとなっています。
未払賃金 ◯年◯月分 金◯◯円(支払期日 ◯月◯日)
本書面到達後◯日以内に、下記口座へお支払いください。
お支払いいただけない場合は、労働基準監督署への申告および法的手続きを検討します。
なお退職日の翌日以降は、年14.6%の遅延利息を併せて請求いたします。
「労働基準監督署への申告および法的手続きを検討します」という一文には、脅しではなく予告としての意味があります。会社側に「無視のコストのほうが高い」と判断させることが、この書面の目的です。
なお「警察に行くべきか」という質問も多く受けます。賃金の全額払い違反には罰則があり犯罪ではあるのですが、労働基準法違反の捜査権限を持つのは労働基準監督官です。警察に行っても労基署を案内されるのが通常で、最初から労基署に申告するのが近道です。
支払いを待つ間、生活が持たないときの窓口
請求の決着を待つ間の家賃や食費は、別の制度でつなげます。お住まいの市区町村の社会福祉協議会では、生活費に困った世帯への貸付(生活福祉資金貸付制度)の相談を受け付けています。給料未払いという事情は、まさにこの制度が想定する緊急事態です。「未払いが解決するまで我慢する」のではなく、生活のつなぎと回収の手続きを並行させてください。



倒産なら立替払、無視なら14.6%の利息つき請求。次の手は必ずあります。
どうせ辞めるなら|退職の連絡と未払い請求をまとめて行う方法
給料を払わない会社に、この先も勤め続けたいでしょうか。実際の相談では、未払いが続いた時点で退職を決めている方がほとんどです。そして未払い請求と退職は、同時に進めるのが最も消耗が少ない方法です。
先にお伝えしておくと、未払い額が大きく会社が徹底的に争う姿勢の場合、金額の争いを裁判で決着させるのは訴訟代理ができる弁護士の領域です。労働基準調査組合は労働組合であり、訴訟の代理はできません。また、未払い額の計算をこちらで代行することもできません。
そのうえで、退職代行ローキができることです。タイムカードの写しなどの証拠がそろっていて、ご本人が金額を計算されている場合、退職の連絡と同時に未払い給与の請求を追加料金なしで行います。労働組合には会社と交渉する権限があり、当組合からの請求でほとんどの会社は支払いに応じています。働いた分の賃金を支払うことは法律上の義務であり、会社側に断る理屈がないからです。
- 退職の連絡と同時に未払い給与の支払いを請求(証拠と本人計算がある場合)
- 残っている有給休暇の消化と退職日の調整
- 離職票など退職書類の督促
料金は19,800円(税込)で、内訳は組合加入費2,800円と組合費17,000円です。相談は無料で、LINEなら24時間受け付けています。未払い給与の請求の詳しい流れは給与の支払いがなかった場合に請求してもらうことは可能ですか?を、残業代の場合は未払い残業代を請求してもらうことは可能ですか?をご覧ください。生活費が心配な方は、退職後の失業保険の金額を失業保険はいくら?2026年8月から基本手当日額が引き上げ|年齢別の上限額と計算方法で確認できます。



払わない会社への義理は、もう果たし終えています。回収と退職は同時でいい。
給料未払いと労基署に関するよくある質問(FAQ)
労基署に申告すれば、未払いの給料は必ず支払われますか?
必ずではありませんが、確率は高いです。令和7年の厚労省公表データでは、労基署が監督指導した賃金不払事案22,605件のうち96.1%が年内に支払いに至っています。ただし労基署は取り立て機関ではないため、会社がそれでも払わない場合は、労働審判などご自身の請求手続きが必要になります。
「労基署は意味ない」と言われるのはなぜですか?
主な原因は3つです。窓口での「相談」止まりで正式な「申告」になっていないこと、違反を裏づける証拠が不足していること、そして労基署の役割が是正指導であって取り立てではないことへの誤解です。申告として受理され監督指導まで進めば、大半の事案は支払いに至っています。
タイムカードがなく証拠がありません。諦めるしかないですか?
諦める必要はありません。交通系ICの乗車履歴、業務システムのログイン記録、業務連絡のLINEやメールの時刻、毎日の始業・終業を記録した手書きメモも証拠になり得ます。今日から記録を残し始めることに意味があります。給与明細と銀行の入出金明細で「支払われていない事実」を固めることも重要です。
給料未払いは警察に相談するべきですか?
賃金の未払いは罰則のある法律違反ですが、労働基準法違反の調査・送検の権限を持つのは労働基準監督官です。警察に相談しても労基署を案内されるのが通常のため、最初から労働基準監督署へ申告するのが近道です。
会社が倒産してしまいました。未払いの給料はもう戻りませんか?
国の未払賃金立替払制度が使えます。倒産した会社に代わり、未払いの賃金・退職金の8割(年齢による上限あり)を国が立替払いする制度で、窓口は労働基準監督署と労働者健康安全機構です。倒産を理由に泣き寝入りする必要はありません。
まとめ|「意味ない」の噂より、96.1%という実測値を信じていい
令和7年、労働基準監督署が監督指導した給料未払い2万2,605件のうち96.1%は年内に支払いに至りました。「労基署は意味ない」という声の多くは、相談止まり・証拠不足・役割の誤解という入口のつまずきが原因です。申告の形を整え、証拠をそろえて臨めば、数字はあなたの味方です。
解決しない場合にも道はあります。倒産なら未払賃金立替払制度で8割、無視を続ける会社には退職後年14.6%の遅延利息を乗せた請求。時効は3年なので、動き出すのは早いほど有利です。
判断の軸をひとつ挙げるなら、「未払いの会社に、これ以上あなたの時間を貸すか」です。給料を待つ間も家賃と食費は減っていきます。退職代行ローキは労働組合として、退職の連絡と未払い給与の請求をまとめて行えます(証拠とご本人の計算がある場合・追加料金なし)。相談は無料で、LINEなら24時間受け付けています。



働いた分は、あなたのお金です。取り戻す手順は、もう全部あります。
「うちの場合はどう動けばいい?」も、まずはLINEでお聞かせください。
退職代行ローキは労働組合として会社と直接交渉します。
料金は19,800円(税込)で、相談は無料です。
参考情報・出典
・厚生労働省「賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和7年)を公表します」(2026年8月21日)
・厚生労働省「賃金不払残業の是正結果(令和7年)」
・e-Gov法令検索「労働基準法」(24条・104条・115条・附則143条)
・e-Gov法令検索「賃金の支払の確保等に関する法律」(6条・7条)
・厚生労働省「未払賃金立替払制度の概要と実績」
・厚生労働省「都道府県労働局(労働基準監督署)所在地一覧」
・裁判所「労働審判手続」
執筆者


労働基準調査組合 執行委員長
谷本 祥子
私は飲食店勤務やメーカー代理店勤務など、さまざまな仕事を経験してきました。メーカー代理店では、商品販売の営業職として働いていました。現場では長時間労働や無理なノルマ強要が当たり前で、私も同僚たちも皆疲弊しきっていました。従業員たちが「辞めたい」と申し出ても、会社は「後任が見つかるまで待て」とか「引き継ぎが終わるまでダメだ」と拒み続け、退職を認めませんでした。中には精神的に追い詰められて鬱病になり、ある日突然来なくなってしまう同僚もいました。
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私自身も会社の方針に疑問を感じ、労働環境の改善を上層部に提案しましたが、全く聞き入れてもらえませんでした。それどころか「部下をもっと厳しく指導しろ」と圧力をかけられる始末でした。私も心身ともに不調をきたしたため、退職を申し出ましたが、やはり引き止められ、なかなか辞めることができませんでした。
最終的に、労働問題に明るい仲間達の力を借りて退職することができました。この経験から「働く人たちがもっと気軽に、安心して退職できる仕組みが必要だ」と痛感しました。このような辛い経験をした自分だからこそ、労働者の立場に立って支援したいと考え、現在は労働基準調査組合の執行委員長として活動しています。
同じように悩み苦しむ方々が孤立せず、労働現場で生じるあらゆる労働問題に真摯に向き合い、実効性ある労働法に則った支援を行ってまいります。









