給与の支払いがなかった場合に請求してもらうことは可能ですか?
- 2023.05.16
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退職豆知識
労働基準法により会社は退職の方法などに関係なく労働者に給与を支払わなければならない
働いた対価である給与の受け取りは労働者の正当な権利であり法律でも守られている
退職代行、労働基準監督署申告、弁護士相談、労働組合サポートの活用で給与未払い問題を解決可能
1. 退職代行を使って退職しても給料は受け取れる
2. 退職代行を利用した際の残りの給料の受け取り方
3. 会社が給与を支払ってくれなかったときの対応
4. 退職後の未払い給与を請求する際のポイント
5. 給料を直接会社まで取りに来るように言われた場合
6. まとめ
退職代行を利用して辞めても給与を支給されるのか不安に思われている方も多いのではないでしょうか?
結論から申し上げますと、退職代行を利用しても問題なく給与を受け取ることができます。
しかし中小企業や個人事業主などの場合は給料を支払わないといった嫌がらせをしてくる会社もあります。
その場合、一般的な民間の退職代行サポートでは対応が難しい場合もございます。
退職代行サービスには、弁護士事務所、労働組合、民間の3種類の代行サービスがあります。
弁護士事務所の代行は価格は高額ではあるが、法的なトラブルになっても対応可能であり安全です。
また、弁護士の代行は通常有給消化、残業代請求、退職金請求した場合には成功報酬を取られること、その事が分かりにくく表記されている為、弁護士事務所に直接お問合せのうえ確認は必須となります。
労働組合の代行は価格は3万円以下であり、団結権、団体交渉権が保障されているため会社との様々な交渉が可能ですが、法的なトラブルには対応できない事がデメリットと言えるでしょう。
民間の代行(弁護士監修と記載)は価格は安いが会社との交渉は一切できません。また法的なトラブルにも対応できません。
したがって民間の退職代行業者は会社との交渉を行うことが出来ません。
非弁行為となるためです。
退職代行業者に給与の督促についての交渉をしてもらうには弁護士か労働組合による退職代行業者を選ぶ必要があります。
もちろん弁護士の代行や当組合であればそういったご心配はございません。
この記事では退職代行を利用して給与が受け取れる理由と具体的な流れ、退職時に起こる可能性のある給与問題や給料が支払われない場合にどのようにしたら良いかについて解説します。
それでは下記でみていきましょう。
退職代行を使って退職しても給料は受け取れる
退職代行を利用して退職した場合でも、働いた期間の給料はきちんと支払われるのでご安心くださいませ。
会社が従業員に対して給料の支払い義務があることは労働基準法第24条にて、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と定められています。
つまり退職の方法などに関係なく会社は給与を支払わなければなりません。
会社は退職代行を利用した従業員や即日退職した従業員にも給料を支払う必要があります。
しかし稀にですが、「退職するなら給料は払えない」のように言ってくる会社も少なからず存在するようです。
給料を支払うか否かは会社が判断することではないため、弁護士や労働組合などに相談することをおすすめいたします。
もし会社側が退職代行を利用したことを理由に正当な給与を支払わないという姿勢であるなら、法的根拠に基づいて労働した分の報酬は当組合から会社に請求致します。
働いた対価として給与を受け取るのは正当な権利です。会社の対応に屈することはございません。
ご安心くださいませ。
労働基準法第24条に違反した場合に会社に対して「30万円以下の罰金」が科される可能性がございます。
第百二十条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
一
第十四条、
第十五条第一項若しくは第三項、
第十八条第七項、
第二十二条第一項から第三項まで、
第二十三条から第二十七条まで、
第三十二条の二第二項(第三十二条の三第四項、
第三十二条の四第四項及び第三十二条の五第三項において準用する場合を含む。)、
第三十二条の五第二項、
第三十三条第一項ただし書、
第三十八条の二第三項(第三十八条の三第二項において準用する場合を含む。)、
第三十九条第七項、
第五十七条から第五十九条まで、
第六十四条、
第六十八条、
第八十九条、
第九十条第一項、
第九十一条、
第九十五条第一項若しくは第二項、
第九十六条の二第一項、
第百五条(第百条第三項において準用する場合を含む。)
又は第百六条から第百九条までの規定に違反した者
引用:労働基準法第120条(e-GOV 法令検索)
上記では退職代行を利用しても給与を受け取れることについて説明いたしました。
ではその退職後の給与はどのようにして受け取るのでしょうか?
給与を手渡しの方や今までは振込だったが最後の給料は手渡しと言われている方もいらっしゃるでしょう。
退職代行を利用している状況でその後に自分で会社に直接取りに行くのは厳しいと思われるかもしれません。
それでは下記で、退職代行を利用した場合の残りの給与の受け取り方について説明させていただきます。
退職代行を利用した際の残りの給料の受け取り方
退職代行を利用した場合に残りの給与をどのようにして受け取るのか心配されている方もいらっしゃるでしょう。
そこで、ここでは退職代行を利用した退職における給料の受け取り方について説明します。
給与が振込の場合
給与が振り込みで支払われていたのならば、退職代行を利用後の給与も給料日に通常通り振り込まれるはずです。会社側から給与の支払いについて前もって特に何も説明されず、退職の月の給与だけ遅れるということは基本的にございません。
雇用契約書などに明記されている通りに、支払日に給与の振り込みが行われるのが一般的です。
給与が手渡しの場合
給与が手渡しで支払われていたのならば、退職代行利用後に支払われる給与も手渡しとなることが多いかと思われます。しかし、振り込みにしてほしいと会社に要望を出すことは可能です。
退職代行業者に相談して、会社にその旨を伝えてもらいましょう。
また、給与が振り込みで支払われていた場合でも、会社から退職後の給与は取りに来るようにと言われることが稀にですがあるようです。
このような場合にも、退職代行業者に相談して会社に振り込んでもらうよう伝えてもらうことは可能です。
退職代行サービスは会社に対して振り込みで残りの給与を支払ってくれるよう求めます。
多くの場合は当組合からの申し出に準じて銀行振込で給与が支給されます。
ただし、雇用契約書に「最後の給与は手渡しとする」などと記載されている場合は、手渡しで受け取ることに応じる必要がある場合もございます。
上記では退職代行を利用して退職した際の退職後の給与の受け取り方について説明させていただきました。
会社によっては、退職後の給与を手渡しで行うと指示されることがございます。
この行為自体には何も問題はございません。
実際に労働基準法第24条にて、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と定められています。このように給与の手渡しを認めています。
ただし、これまでの給与は振込で行われていたにもかかわらず、退職後の給与だけ手渡しにするというのは会社からの嫌がらせ行為であり、給与未払いになる可能性もございます。
参照:労働基準法第24条(e-GOV 法令検索)
もし会社が給与を支払ってくれなかったらと不安に思われている方もいらっしゃることでしょう。
以下では、会社が退職後の給与を支払ってくれなかった場合の対応について詳しく説明させていただきます。
それではみていきましょう。
会社が給与を支払ってくれなかったときの対応
労働者には退職の自由が民法627条により法律で認められています。
したがって個人的な感情などで退職を妨害したり、退職者に嫌がらせをするなどの行為は許されません。
給与支払いについても労働者は正当な権利として受けることが可能です。
参照:民法第627条(e-GOV 法令検索)
しかし、中小企業や個人事業主などの場合、故意に給与を支払わない対応をとるケースがあります。
そのような場合でも上記で申し上げた通り、労働者は給与を受け取ることができると法律で守られています。
相手がどのような会社であろうと適切な対応をすることにより権利を守ることができます。
もし給与を支払ってもらえなかった場合の、対処方法について下記のように説明いたします。
退職後に会社から給与が振り込まれない場合の対応には、会社に問い合わせをする、内容証明郵便を送る、労働組合のサポート、労働基準監督署への申告、労働審判や少額訴訟、通常訴訟を起こすなどが考えられます。
ここでは、それぞれの対応方法の特徴や手続き方法について説明いたします。
会社にご自身で問い合わせをする(手間や費用をかけたくない場合)
あなたのご負担が最も少ない方法は会社や担当部署に対して直接ご自身で電話やメールで問い合わせを行うことです。例えば、振込日の関係で支払いが遅れていたり、担当部署の手配が漏れていただけの場合もあり、問い合わせをすることで解決する場合もあるでしょう。
注意点としましては、メールのほうが証拠を残せるので問い合わせはメールで行うことをおすすめさせていただきます。
会社に内容証明を送る(証拠を残しながら未払い請求したい場合)
未払い給与があり、会社に電話やメールで問い合わせを行った場合に、そのような連絡は来ていないと言われてしまうことがあるかもしれません。このように言った言わないのトラブル防止の観点から、日本郵政提供の内容証明郵便を利用していただくのがよいでしょう。
給与の請求を行ったという事実を証明することが可能です。ただし、内容証明郵便自体には法的強制力はございません。
内容証明郵便は条件や形式が細かく決められているため、日本郵政の公式サイトなどで十分に確認してから作成しましょう。
参考:内容証明 ご利用の条件等
労働組合のサポート
労働組合法第7条に基づき労働組合は個人の労働者に代わって会社と交渉する権利がありますので、給与についてのトラブルも任せることができます。労働組合を活用した退職代行サービスも存在しており、退職の相談から具体的なトラブルの対応まで可能です。
当組合では退職に伴う給与問題についてもサポートさせていただいております。
参照:労働組合法第7条
労働基準監督署への申告
給与が未払いであることを客観的に示す証拠が揃っていれば労働基準監督署が会社に対して指導してくれる可能性があります。証拠としては、「会社に給与支払い請求をした内容証明」や「給与支払いが滞っていることを示す通帳」などが挙げられます。
会社からの対応がわかる会話の録音やメールも揃えておきましょう。
ただし労働基準監督署に行かれた際に根拠となる証拠がない場合や目的がはっきりとしない状況ですと、すぐに対応してもらえなかったり最悪な場合は何も対応してもらえないこともあるので注意が必要です。
労働基準監督署は各エリアにございますので直接出向いて申告されるのがよいかと思われます。
労働審判(簡易的な法的手続きで解決したい場合)
労働審判という法的手続きは、労働者が給料未払いなどのトラブルに直面した際の迅速な解決策となります。これは裁判所の審判官や審判員が中立的な立場から問題を仲介し、トラブルを速やかに解消します。
そのため、労働審判は、退職後の給料支払いトラブルを素早く解決する方法として有用です。
審理は基本的に3回で完了し、それにより問題が即時に解決します。
また、労働審判の結果は裁判での和解と同様の法的効力を持ちます。
これは、労働審判を通じて給料が支払われるようになったとしても、もし雇用者がその後給料を支払わない場合、強制執行に踏み切ることが可能であることを意味します。
従って、もし早期にトラブルを解決したいと考えている方がいれば、労働審判は理想的な解決策と言えるでしょう。
少額訴訟(簡易的な法的手続きで解決したい場合)
少額訴訟は、金額が限定された簡易な民事訴訟手続きです。簡易裁判所で起こす裁判で、原則として「1回」で終了する裁判です。
裁判といっても、裁判官を通じて行う話し合いに近いものです。
裁判官が事情を聞いて、法律の説明をして、会社に支払うように話してくれます。
話し合いと言っても裁判官が主導して行うものですから、あくまで「法律に従った解決」をするものです。
裁判官が相手となるため、会社もやむを得ずかもしれないですが、支払いに応じる可能性は高まります。
日本では、少額訴訟手続きの対象は60万円以下の金銭の支払を求める場合に限るとされています。
労働問題においても、この金額以下の請求が対象となる場合、少額訴訟を利用することができます。
ただし、少額訴訟は金額的な制限があるため、請求額が60万円を超える場合では、通常の民事訴訟や労働審判を利用することが適切です。
労働問題における少額訴訟は、手続きが簡易で迅速な解決が期待できるため、適切なケースであれば有効な手段となります。
民事訴訟(時間がかかっても確実に受け取りたい場合)
未払いの給与が大きな額になってしまったり、遅延損害金を要求したい場合、一つの解決策として民事訴訟を起こすことが考えられます。この方法は、自分が原告となり、相手方を被告として法廷で争います。
民事訴訟のプロセスは、原告と被告が各自の立場から証拠を提示し、主張を展開していくものです。
最終的には裁判官が判断を下し、勝訴すれば未払い給与や遅延損害金を得ることが可能になります。
ただし、一つ注意しなければならないのは、訴訟の開始から最終的な結審までには1年から2年程度の時間がかかることが一般的であるという点です。
これは長い戦いとなる可能性があるため、その覚悟が必要となります。
民事訴訟については他にも重要なポイントがあります。
例えば、民事訴訟は、一般的に法律的な知識や手続きを必要とします。
これは専門家でなければ難しい場合があるため、専門的な助言を求めることが多いです。
それには弁護士の協力が必要となる場合があり、その費用も考慮に入れる必要があります。
また、訴訟を進めることで、雇用者との関係がさらに悪化する可能性もあります。
そのため、訴訟を起こす前には、そのリスクを十分に評価し、他の解決策を検討することも重要です。
そして、裁判所からの判決は絶対ではありません。即ち、裁判に勝訴したとしても、相手方が判決に従って支払いを行うとは限らないということです。
その場合には更なる手続きが必要となります。
以上のように、民事訴訟は一つの解決策でありますが、長期間に及ぶ可能性やコスト、リスクなどを考慮する必要があります。
だからこそ、適切な助言を得て、慎重な判断をすることが大切です。
上記の労働基準監督署への申告、労働審判、少額訴訟と通常の民事訴訟の違いについて詳しく知りたいという方は下記の記事をご参照ください。
【関連記事】労働問題解決の選択肢としての労働審判と少額訴訟や保全手続|労働基準調査組合 (rouki.help)
ここまでで、会社が給与を支払ってくれなかったときの対応について詳しく説明させていただきました。
以下では退職代行を利用して退職後の未払い給料を請求する際のポイントについて詳しく説明させていただきます。
それではみていきましょう。
退職後の未払い給与を請求する際のポイント
退職後に給与を支払わない会社に対する請求方法は、上記で説明させていただいた通りいくつかございます。
いずれの場合も未払い給与の正確な金額を正確に計算して把握しておく、給与未払いの証拠を集めておく、給与未払いの時効が成立する前に請求を行うことが大切です。
以下では、退職後に給与が振り込まれていない場合に、給与を請求する時のポイントについて説明いたします。
給与の未払い額を正確に計算する
会社に対して未払い給与を請求するにあたって、必ず前もって支払いが行われていない給与を確定させることが重要です。通常であれば、雇用契約書や労働条件通知書などと実際に振込された金額や給与明細書などとを比較することによって未払い給与の正確な金額を計算して把握することができます。
ただし、残業代などが発生している場合には、別途計算する必要が出てくる場合があります。
給与支払い状況と実際の勤務状況などの証拠の準備
給与の未払いを会社に請求するためには、給与が未払いになっていることを証明可能な証拠の提示が必要になってきます。給与の未払い請求をする際に必要になってくる証拠には、実際の支払い状況に関するもの、給与に関する契約などの支払われるべき状況に関するもの、実際の勤務状況に関するものなどがございます。
これらについて詳細を下記でまとめさせていただきますので、事前に証拠を準備しておくことが大切です。
・実際の支払い状況に関する証拠
給与明細書、源泉徴収票、銀行口座通帳 等
・給与に関して契約内容の証拠
雇用契約書、労働条件通知書、給与規定・賃金規定 等
・実際の勤務状況に関する証拠
勤怠表・シフト表、タイムカード、業務日報、業務上のメール 等
時効成立前に請求対応を進める
会社に対して未払い給与を請求することが出来る、賃金請求権には消滅時効が存在します。賃金請求権の消滅時効につきましては現時点では3年となっておりますので、この期間内に権利の行使を行わなければ給与の受け取りが出来なくなってしまいますので注意が必要です。
参照:労働基準法第115条・143条
上記では、退職後の未払い給与を請求する際のポイントについて詳しく説明させていただきました。
それでは最後に給与を直接会社に取りに来るように言われた場合に、当組合を利用していただいた際のサポートについて説明させていただきます。
給料を直接会社まで取りに来るように言われた場合
給与請求を行ったにもかかわらず会社側から「直接受け取りに来ないと支払えない」と言われる場合もあります。
これは振込など手渡し以外での支払いを認めないケースで違法性はありませんが退職代行を利用した立場上、一人で給料を取りに行くのは精神的に辛いでしょう。
そこで、当組合では会社が給与を手渡し以外に認めない場合に「給料受取同行サポート」を実施しております。
給料の受け取りを第三者が代行することは法律上できませんが当組合員が依頼者に同行し、受け取りに同行させて頂きます。(ただし、対応可能エリアのみの対応となります)
退職代行は利用していないが同行サポートだけという方でも可能です。
費用、対応可能エリアについてはLINEからお問い合わせください。
まとめ
退職代行を利用しても給与の支給は可能であり、給与を受け取る権利はありますのでご安心ください。
また、退職代行を利用して退職する方の中には退職日まで有給休暇を取得して消化される方も多いと思います。
そのような場合には有給休暇を取得している期間中に発生する給与につきましても支払いを求めることが可能です。
しかし、会社によっては
「退職するなら給与の支払いは出来ない」
「即日退職をするなら給与の支払いを認めない」
などと言って、給与の支払いを拒むケースもあるようです。
給与未払いの問題に遭遇した場合、前述のような会社が給与を支払ってくれなかったときの対応を活用して、給与未払い問題を解決できるでしょう。
また当組合の給料受取同行サポートを利用すれば当組合員が給与の受け取りに同行させていただきます。退職代行を利用しても給与が支給されることを知っておきましょう。
退職代行コラム編集者
労働基準調査組合執行委員長
後藤 星未
「医療関係の職場に長年勤務していました。その職場では、様々なハラスメントが横行しており、経営者をはじめ役職者も従業員に心ない言葉を浴びせ、非常に離職率が高く、入社直後に退職してしまう、まさに典型的なブラック企業でした。
私は新人研修や教育を任されていましたが、せっかく育てた新人は経営者や上司からのハラスメントを受けて心を病み、退職を繰り返す状況が続きました。
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