就業規則には退職は数か月前に申告することと記載があるが、即日退職できますか?
- 2023.05.03
- 2023.05.02
退職豆知識
就業規則は会社内でのルールであり退職に関しては法律が優先される
退職申告期間は法律より最短14日で可能であるが有期雇用契約の場合「やむを得ない事由」が必要
弁護士や弁護士対応の労働組合による退職代行を利用して法律に則った手続きをスムーズに行う
1. 就業規則について
2. 退職についての法律上の権利について
3. 退職代行を利用して即日退職する際の雇用形態における注意点
4. 退職代行を利用した退職の流れと実質的な退職日
5. 退職代行を利用して退職する際のリスク
6. 退職代行サービスを利用して、退職時のリスクを回避する
7. まとめ
退職を考えられている方のなかには、就業規則には退職する場合は〇〇か月前に申告する必要があると書かれているがもっと早く辞めたい、出来ることなら明日から会社に行きたくないという心境で退職代行サービスを検討されている方も多いのではないでしょうか。
では、退職代行を利用することにより就業規則で定められた期間よりも早く、即日退職することは可能なのでしょうか。
結論から申し上げますと退職代行を使って即日退職することは可能です。
法律では退職希望者は退職日の2週間前までに意思を伝えることが求められますが、実際には即日退職が可能なケースも多くあります。
これは有給休暇の消化を利用し、退職代行業者から会社に連絡するその日から有給休暇を取得して2週間後に退職することで、会社に連絡した日から出社する必要がなくなるからです。
そのため、仕事や職場に耐えられない程の苦痛を感じられている方は、退職代行サービスを利用して退職することを検討されるのもよいかもしれません。
本記事では、退職代行を使って即日退職が実際に可能かどうか、リスクは存在するのかといった情報を提供し、弁護士や労働組合による信頼できる退職代行サービスについてもご紹介いたします。
退職代行や即日退職に関心がある方は、是非本記事を参考にしてください。
まずは就業規則について説明させていただきます。
就業規則について
就業規則とは労働者の賃金や労働時間といった労働条件に関する事項や、退職に関する事項、職場内の規律などについて定めた規則集のことです。
いわば職場のルールブックとも呼ぶべき存在で、使用者と労働者は共に就業規則を遵守する必要があります。企業が作成した就業規則は所轄労働基準監督署に届出を行い、さらに従業員に対してその内容を周知させることで初めて有効となります。
特に周知に関しては必須とされており、たとえ届出を行っていても、従業員に周知されていなければ無効とみなされます。
常時10人以上の従業員を雇用する使用者は、労働基準法第89条の規定により、就業規則を作成し、所轄労働基準監督署に届け出ることが義務づけられています。
参照:労働基準法89条(e-GOV 法令検索)
会社の就業規則の退職に関する事項には「退職する場合、数ヶ月前に申告する必要がある」と記載されていることがあります。
退職代行を使って辞めることによって、上記のようにしっかりと定められた会社のルールである就業規則に違反してしまっても本当に大丈夫なのでしょうか。
そのルールである就業規則を違反することによって、
「懲戒解雇にならないか?」
「損害賠償請求されないか?」
ということを心配されている方も多くいらっしゃると思われます。
当組合におけるご相談内容のなかでも、懲戒解雇と損害賠償請求についてのご相談は常にトップ3に入るほど多くの方が不安に思われています。
結論から申し上げますと、退職代行を使って退職することにより懲戒解雇や損害賠償請求のおそれはほとんどなく、就業規則に定められた期間よりも早く即日退職が可能です。
就業規則に「退職する場合、数ヶ月前に申告する必要がある」と記載があったとしても退職に関しては法律が優先されるのです。就業規則はあくまでも会社内でのルールであり法律ではございません。
ここでは、懲戒解雇と損害賠償請求の詳しい説明は割愛させていただきます。下記のリンクの記事で詳しく説明させていただいておりますので、懲戒解雇と損害賠償請求について不安に思われている方は是非こちらをご参考にしてください。
参考:退職代行を利用しても懲戒解雇にならないの?|労働基準調査組合 (rouki.help)
参考:退職代行を利用して損害賠償請求⁈|労働基準調査組合 (rouki.help)
ここまでで就業規則について詳しく説明させていただきました。では就業規則より優先される法律においては退職についてどのように定められているのでしょうか。以下で詳しく見ていきましょう。
退職についての法律上の権利について
まず退職を会社に伝える時期ですが、民法では無期雇用労働者(正社員)については2週間前に伝えれば良いという決まりがあります。
実際に日本の民法第627条には「労働者は、予告期間を守ることにより、いつでも労働契約を解除することができる」と規定されています。
通常の予告期間は2週間とされており、この期間を守れば会社が就業規則で定めた期間よりも短い場合でも法律的には問題ありません。
当組合が依頼を受けた場合、当組合が民法に沿って会社とお話ししますので就業規則を気になさらなくても結構です。
ただ貴方自身が法律のことを会社にお話しすると逆上される恐れがあります。当組合からお伝えする事でほとんどの会社は納得されます。
ご安心くださいませ。
第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
引用:民法第627条(e-GOV 法令検索)
上記で説明させていただいたのは無期雇用労働者(正社員)についての場合ですが、契約社員や一部の派遣社員の方のような有期雇用契約の場合もあてはまるのでしょうか。
それでは、実際に退職代行を利用して退職する際の雇用形態における注意点についてみていきましょう。
退職代行を利用して即日退職する際の雇用形態における注意点
上記のように労働者には退職の自由があり、法律的に会社側はそれを阻止できません。
従って、退職代行サービスを利用する場合、会社は基本的に退職の意思を尊重しなければなりません。法律では退職までに必要な期間は2週間と定められており、これは上記でも述べた通り民法第627条によるものです。
そのため、就業規則で1か月前に退職の意志を伝えるといったルールがあっても、法律が優先されますので心配は無用です。
ただし、雇用期間が定められていない場合のみ2週間の期間が適用されます。
契約社員や一部の派遣社員は例外となりますので注意が必要です。有期雇用契約の場合、契約期間終了まで勤務が求められますが、病気やケガ、親の介護など「やむを得ない事情」があれば、期間前でも退職が可能です。
ここでは、雇用形態に関しての退職時の注意点について説明いたしました。
それではここからは、退職代行を使った退職の流れと実質的な退職日について詳しく説明させていただきたいと思います。
退職代行を利用した退職の流れと実質的な退職日
実質的な即日退職を実現するには、有給休暇の利用が鍵となります。
退職を申し入れる際、10日以上の有給休暇が残っていれば退職が成立するまで出社しなくても問題ありません。
退職時に有給休暇を利用するのは会社が拒否できない権利であり、通常業務に支障がある場合でも退職時には会社は有給休暇時季変更権の行使はできません。
労働基準法第39条5項|有給休暇時季変更権(e-GOV 法令検索)
しかし、入社後間もなくで有給休暇がない場合や十分な有給休暇が残っていない場合は、この方法が使えません。
そのような時でも、当組合が退職を会社に伝える日から、本人は会社に出社する必要はありません。
退職日については、当組合が職場に伝えて有給がない場合はその日の即日退職、有給が残っている場合は有給を全て消化した日の即日退職を求めます。
もし会社が承諾しない場合でも、当組合が退職を伝えた日から有給を全て消化する日まで、本人は欠勤することになります。
法律上は14日間の拘束力がありますが退職希望者にお金を払ってまで出社させる会社はほとんどないため、即日退職や全有給消化後の即日退職が一般的です。
退職日は会社との交渉によりますが、当組合が退職を伝えた日から本人は会社に行かなくても問題ありません。これにより、退職手続きがスムーズに進むでしょう。
参照:年次有給休暇とは
参照:年次有給休暇付与日数
上記のように退職代行を利用して、出社することなく会社と直接連絡を取ることもなく即日退職することが可能となります。
それでは、退職代行を使って退職することによってリスクは全くないのでしょうか。
前述で懲戒解雇や損害賠償請求のおそれはほとんどないと述べましたが、法的に認められるかどうかは別にしてワンマンな経営者によるものや、単なる嫌がらせが目的で懲戒解雇や損害賠償請求をされることは実際にございます。
下記では退職代行を利用して退職する際のリスクについて説明させていただきます。
退職代行を利用して退職する際のリスク
退職代行を利用して退職する際には下記のようなリスクが考えられます。
会社からの反論や交渉の申し入れに対応できない業者がある
民間企業が提供するサービス(弁護士監修と記載)は、費用が抑えられる傾向はありますが非弁行為にあたるため会社との交渉は一切できませんし、法的なトラブルにも対応できません。会社が、対応している業者が民間企業による退職代行業者だと知っている場合はあえて反論してきたり、交渉を申し入れることで業者を排除しようとする可能性は否定できません。
違法な悪徳業者もいる
退職代行業者のなかには、弁護士や労働組合による退職代行業者で無いにもかかわらず平然と非弁行為にあたる会社との交渉や法律相談を行ったり、家族に成りすまして会社に連絡をするなどの不正な手段を取る業者も存在します。またそういった業者では個人情報を適切に保護しない場合があります。
これにより、個人情報が漏洩したり、悪用されるリスクもあります。
また適正な料金設定がなく、不透明な手数料や追加料金が発生する場合や高額な料金を請求されるおそれもあります。
会社から懲戒解雇といわれる
懲戒解雇が無効となる場合は、客観的に合理的な理由が欠け、社会通念上相当でないと労働契約法第15条で定められています。つまり、懲戒解雇が成立するのは、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当だと認められる場合です。例えば、窃盗や横領のような犯罪行為や、正当な理由がなく2週間以上無断欠勤をする場合、経歴や資格の詐称などが懲戒解雇の理由となります。
労働契約法や労働基準法では懲戒解雇の具体的な基準は定められていませんが、労働者に非があり、一般常識と照らし合わせて倫理的でない場合、懲戒解雇は成立します。
就業規則に違反するだけで懲戒解雇が可能だと誤解している経営者が多いため、法的に認められるかどうかは別として、懲戒解雇処分を受ける可能性はゼロではありません。
放置しておくと、後でデメリットになることがあります。
参照:労働契約法第15条(e-GOV 法令検索)
会社から損害賠償請求をするといわれる
通常、故意に会社への損害や機密情報漏洩、業務上の横領などがない限り、退職代行を利用して退職することだけによる損害賠償請求はほとんど起こりません。しかし、当組合の事例から経営者の気質によって損害賠償請求が起こることが多いです。
法的根拠があるかどうかは別問題ですが、突然の退職や就業規則違反を理由に損害賠償を主張する会社も存在します。
また、労働法に詳しくない顧問弁護士がいる場合、損害賠償請求を嫌がらせ目的で内容証明で送られてくることもあります。
ここでは退職代行を利用して退職する際に考えられるリスクについて詳しくみていきました。
ではこのようなトラブルは退職代行を利用することにより実際に回避することは可能なのでしょうか。
ほとんど無いとは分かっていても、万が一懲戒解雇や損害賠償請求をされてしまったらどうすればよいのか不安に思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか。以下で詳しく説明させていただきます。
退職代行サービスを利用して、退職時のリスクを回避する
退職代行業者を選ぶ際には、適切な業者を選ぶ必要がございます。透明性のある料金設定やサービス内容を提供している業者を選ぶことが重要です。
退職代行業者とやり取りを行い、ご自身の現状を伝えて対応可能な内容か確認しておくとよいでしょう。そして、不明瞭な料金設定やサービス内容の業者は避けましょう。
弁護士や弁護士対応の労働組合による退職代行業者を選ぶことで、会社との交渉や法律的なサポートが受けられるため、安心して利用できます。
また、万が一懲戒解雇や損害賠償請求の法的なトラブルが発生した場合、弁護士事務所の退職代行は会社との交渉や法的トラブルに対応できるため安全ですが、費用は10万円以上と高額です。
また、弁護士の代行は通常有給消化、残業代請求、退職金請求した場合には成功報酬を取られること、その事が分かりにくく表記されている為、弁護士事務所に直接お問合せのうえ確認は必須となります。
一方、労働組合の退職代行は3万円以下で、団結権や団体交渉権を利用して会社と交渉できますが、法的トラブルへの対応が難しいデメリットがあります。
民間の退職代行は安価ですが、会社との交渉や法的トラブルへの対応ができません。
しかし、弁護士と労働組合のダブル対応を行う「退職代行 ローキ」では、【弁護士保障プラン】を利用することで懲戒解雇撤回の交渉や資料開示請求を代行できます。
懲戒解雇処分になった場合でも、弁護士が会社に撤回を求めることでほとんどのケースで解決が可能です。
また、退職による損害賠償請求をされても当組合が弁護士費用を保障し、弁護士が会社に対応します。もちろんどちらのケースでも追加料金はかかりませんのでご安心くださいませ。
まとめ
本記事では、退職代行を利用して迅速に退職する方法と、その際のリスクについて説明させていただきました。
退職代行を利用すれば、出社せずに会社と直接連絡を取らずに即日退職することが可能です。ただし、リスクも存在します。
リスクとしては、会社との交渉ができない業者、悪徳業者、懲戒解雇や損害賠償請求などの可能性が挙げられます。
これらのリスクを回避するためには、適切な業者を選ぶことが重要です。透明性のある料金設定やサービス内容を提供している業者を選びましょう。
また、当組合による弁護士と労働組合のダブル対応を行うサービスを利用することで懲戒解雇撤回の交渉や資料開示請求が可能です。これにより、ほとんどのケースで解決が可能となります。
さらに損害賠償請求があった場合につきましても、当組合が弁護士費用を保障し弁護士が会社に対応します。
このように万が一退職することによる法的なトラブルが起こった場合も一切追加費用無しで対応させていただきます。
最後に、当組合のサポートを受け就業規則よりも優先される法律に基づいた手続きを遵守することで、就業規則に記載されている退職の申告期間よりも早く、最長でも14日以内に円満な退職を目指すことが可能になります。
退職代行コラム編集者
労働基準調査組合執行委員長
後藤 星未
「医療関係の職場に長年勤務していました。その職場では、様々なハラスメントが横行しており、経営者をはじめ役職者も従業員に心ない言葉を浴びせ、非常に離職率が高く、入社直後に退職してしまう、まさに典型的なブラック企業でした。
私は新人研修や教育を任されていましたが、せっかく育てた新人は経営者や上司からのハラスメントを受けて心を病み、退職を繰り返す状況が続きました。
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