- 上司の「育休を取るな」は、1回でもハラスメントになりうる
- 育休中の仕事の連絡に、応じる義務はない
- 育休を理由に辞めさせることは禁止。辞めるなら条件を整えてから

「1年も育休とるの?」と言われて、短くするしかなかった…



育休中なのに、仕事の連絡が止まらない…
育休を取りたいと伝えたら、上司に嫌な顔をされた。休み始めてからも、仕事の連絡がひっきりなしに来る。男性の育休が広がる一方で、こうした悩みはまだ多く寄せられています。
老舗のブライダル企業で働く男性社員が、役員らから「育休届を出したらビリビリに破いてやる」などと言われ、育休の取得を妨げられたとして、会社に220万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴しました。この記事では、報じられている経緯を整理したうえで、どんな言動がハラスメントにあたるのか、育休中の仕事の連絡にどう向き合うか、退職を求められたときに何を確かめるかを解説します。
※この記事は2026年10月時点の情報をもとに作成しています。
何が起きた?「育休届は破る」と言われ、育休の短縮と復職後の退職要求
結論から言うと、育休の申出の後に役員らから取得をためらわせる発言を繰り返され、休業中も仕事の対応を求められたうえ、復職後には解決金と引き換えの退職を求められたとして、男性社員が会社を訴えた事案です。原告側の説明として報じられている経緯は次のとおりです。
| 時期 | 報道されている内容 |
|---|---|
| 2023年4〜5月 | 妻の妊娠を報告し、約1年の育休を計画。社長と上司から「え、1年も育休とるの?」などと言われる |
| 2023年6〜9月 | 役員から「育休届を出したらビリビリに破いてやる」「俺の時代は育休なんてなかった」などと言われ、8月頃に育休を6か月に短縮すると申し出る |
| 2023年10月 | 第1子が誕生し、育休を取得。休業中もチャットやメール、電話での業務対応を求められ、送受信は1,000回以上、着信への応答は55回に及んだとされる |
| 2024年10月 | 復職から10日後の面談で、社長から「顔が怖い」などと言われ、のちに中等度の抑うつ状態と診断される |
| 2025年1月 | 社内の相談窓口に通報。社内の委員会は約1年かけて12の発言を認めたが、「冗談の趣旨」などとしてハラスメントとは認めず |
| 2026年2月 | 労働局に調停を申請。会社側は解決金250万円での退職を求め、調停は終了 |
| 2026年10月7日 | 労働組合(ユニオン)での団体交渉を経て、220万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴 |
出典:弁護士JPニュース「『育休届?ビリビリに破いてやる』『俺の時代は育休なんてなかった』老舗ブライダル企業で役員らがハラスメント、男性社員が提訴」(2026年10月7日)をもとに作成。
報道によると、会社側は発言があったことは認める一方で、「ハラスメントには当たらない」と主張しています。ユニオンの団体交渉でも、会社側は「結果的に育休は取れているので、ハラスメントには当たらない」という趣旨の回答だったとされています。ハラスメントにあたるかどうかは、これから裁判で判断されます。今後の続報があり次第、本記事を更新します。



「結局は育休を取れたのだから問題ない」という理屈が通るのかどうかが、この事案の大きな争点です。
育休を取らせない発言は違法?会社には防止する義務がある
育休の申出や取得をめぐる上司や同僚の言動で働く環境が害されることは、「育児休業等に関するハラスメント」として、会社に防止の義務が課されています。また、育休を理由に会社が解雇や降格などの不利益な扱いをすることは、法律で禁止されています。男性の育休も、女性の育休とまったく同じルールで守られています。
上司の言葉は1回でも、同僚は繰り返しで該当
厚生労働省の指針では、育休などの制度の利用を妨げる言動について、誰が言ったかで基準を分けています。上司が育休の申出をしないよう言ったり、取り下げるよう言ったりすることは、1回の言動でもハラスメントにあたるとされています。同僚の場合は、繰り返し、または継続して言うことが対象です。
表の「1回でも」「繰り返し」は、ハラスメントにあたる基準を、「ー」は上司の言動だけが対象となる類型であることを示しています。
| 言動の例 | 上司 | 同僚 |
|---|---|---|
| 育休を取ったら解雇や降格をほのめかす | 1回でも | ー |
| 育休の申出をしないよう言う、取り下げを求める | 1回でも | 繰り返し |
| 育休を取ったことに対する嫌がらせ | 繰り返し | 繰り返し |
一方で、業務の都合から取得時期の変更を相談することは、本人に強要しない限り、業務上必要な言動としてハラスメントにはあたらないとされています。ポイントは、本人が断れる形の「相談」だったか、取得をあきらめさせる「圧力」だったかです。
「冗談だった」は言い訳になりません。ハラスメントにあたるかどうかは、言った側の意図ではなく、客観的にみて育休を取りにくくさせたかで判断されるのが基本です。
育休を理由にした降格や退職の強要は禁止
会社が、育休の申出や取得を理由に、解雇、降格、減給、契約の打ち切りなどの不利益な扱いをすることは禁じられています。復職後に「席がない」と言われたり、退職を求められたりした場合は、その扱いが育休と関係していないかを確かめてください。育休から戻った後の降格が違法とされた判決は、『育休復帰後の降格は違法?慰謝料100万円の判決から見る判断基準と対処法』で詳しく解説しています。
会社には、育休制度を伝えて意向を確かめる義務もある
本人や配偶者の妊娠・出産を会社に伝えたとき、会社は育休の制度を知らせ、取得するかどうかの意向を確かめなければなりません。今回の事案でも、原告側はこの手続きが行われなかったことを違法の根拠の一つに挙げています。「制度の説明もなく、取りにくい雰囲気だけがあった」という場合も、確かめておく価値があります。



育休を取る権利は、職場の空気で削られてよいものではありません。
育休中に仕事の連絡が来たら?応じる義務はない
育休は、子どもを育てるために働く義務がなくなる制度です。育休中に働くことは、もともと想定されていません。会社からの仕事の連絡に応じる義務はなく、会社が一方的に指示して働かせることもできません。
働けるのは、本人が同意した一時的な場合だけ
厚生労働省は、育休中に働けるのは、労使で話し合い、子どもの世話をする必要がない時間に限って、一時的・臨時的に働く場合に限られるとしています。その場合も、本人が自分の意思で同意していることが前提です。あらかじめ決められた日や時間に毎週働くような形は、そもそも育休をしていることになりません。
- 会社の一方的な指示で働かせることはできない
- 働かなかったことを理由に、評価を下げることは禁止
- 月10日(10日を超える場合は80時間)以下なら、育児休業給付金は支給される
- 「少しだけなら」と応じ続け、連絡が当たり前になってしまう
- 断ったことを気にして、育休を早めに切り上げてしまう
- やり取りを消してしまい、どれだけ対応したか分からなくなる
連絡が続いてつらいときは、「育休中のため対応できません。復職後に確認します」と、記録が残る形で一度はっきり伝えるのが一つの方法です。それでも連絡が止まらない場合は、そのやり取り自体が、後で会社の対応を問うときの材料になります。



「育休中なのに断れない」は、あなたの気の弱さではなく、職場の仕組みの問題です。
パタハラを受けたら、まず何をする?記録と相談先
まずは、言われたことを記録に残すことです。発言は後から「言っていない」「冗談だった」と言われやすいため、日時、場所、相手、言葉をその日のうちに書き留めておくことが、どの相談先に行くときにも土台になります。
- 言われた日時、場所、相手、言葉そのもの(メモでよい)
- 育休中に届いた連絡の件数と内容(チャットやメールの画面)
- 体調を崩した場合は、受診した日と診断の内容
相談先は、社内窓口だけではない
会社の相談窓口が機能しない場合でも、行き先はあります。都道府県の労働局(雇用環境・均等部)では、育休をめぐるハラスメントについて相談を受け付けていて、会社への助言や指導、調停の仕組みもあります。調停を申し立てたことを理由に、会社が不利益な扱いをすることも禁じられています。
| 相談先 | できること |
|---|---|
| 社内の窓口 | 事実確認と対応を求める |
| 労働局 | 相談、助言・指導、調停 |
| 労働組合 | 会社と団体交渉をする |
| 弁護士 | 労働審判・裁判で請求 |
今回の事案では、男性は社内窓口、労働局の調停、ユニオンでの団体交渉を経て、提訴に至っています。上司の言動がパワハラにあたるかどうかの基準は、『パワハラの定義は?パワハラに当てはまる例を紹介』もあわせてご覧ください。



一人で抱えていると、記録を残す気力もなくなっていきます。早めに外に出してください。
労働組合の現場から。戻るか、条件を整えて辞めるか
当組合にも、育休を取ったことで職場に居づらくなり、「もう戻れない」と感じている方からの相談が寄せられます。今回の事案のように、会社から解決金と引き換えに退職を求められることもあります。退職を求められても応じる義務はなく、退職届や合意書にその場でサインする必要もありません。
一方で、心身をすり減らしてまで戻る必要はない、と考えるのも一つの判断です。大切なのは、辞めるかどうかと、どんな条件で辞めるかを分けて考えることです。
- 退職日を、育休の終わりや有給休暇の消化と合わせて決める
- 会社から退職を求められたことを、離職理由に反映してもらう
- 最後の給与と賞与の扱いを確かめる
育休中の退職の手続きは『育休中、産休中でも退職できる?伝えにくい場合は退職代行の利用を』で、育休明けに有給休暇を消化して辞める方法は『育休・休職明けに有給消化して退職できる?復帰せず辞める日の決め方と退職代行の使い方』で解説しています。会社から退職を求められたときの離職理由の扱いは、『「退職時は自己都合」にサインさせられたら無効?離職理由は実態で決まる|雇止め・退職勧奨の対処法』もあわせてご覧ください。



育休を取ったことを後悔する必要はありません。悪いのは、取ったことで追い詰める職場の側です。
会社と話さずに辞めたいなら、労働基準調査組合が運営する退職代行ローキへ
退職代行ローキが向かないケース
- 裁判をすることを前提に考えている方
- 公務員・自衛官・業務委託・個人事業主・役員の方
- 会社に借金があり、代行時に一括で完済できない方
公務員・自衛官・業務委託・個人事業主・役員の方は、労働組合に加入できないためお引き受けできません。退職代行ローキは、労働基準調査組合が運営する労働組合です。当組合は団体交渉権にもとづいて会社と交渉できますが、裁判で代理人になることはできません。ハラスメントの慰謝料を裁判で請求する場合や、育休を理由とした降格・解雇の無効を裁判で主張する場合は、弁護士に依頼する必要があります。
辞めるときの交渉を、労働組合に任せる
そのうえで、会社と直接やり取りせずに辞めたい、退職日や有給休暇の消化について話し合ってほしいという方には、退職代行ローキが使えます。退職代行ローキは労働委員会の資格審査を経た合同労働組合なので、退職の意思を伝えるだけでなく、退職日や有給休暇の消化、未払いの給与について会社と交渉できます。当組合が会社に退職をお伝えした日から、ご本人が出社することも、上司と直接話すこともありません。
退職書類が届かないといった退職後のトラブルにも、加入日から1年間対応します。退職の支援が終わった後も、加入日から1年間は、ハラスメントや未払い賃金など退職代行以外の労働問題について、追加の費用なしで相談できます。退職することに対して会社から損害賠償請求や懲戒解雇処分を受けた場合に限り、顧問弁護士が追加料金なしで会社に対応します。
| 確認したいこと | 退職代行ローキの場合 |
|---|---|
| 運営 | 労働基準調査組合(合同労働組合・労働委員会の資格審査済み) |
| 料金 | 19,800円(税込)。組合加入費2,800円と組合費17,000円。相談は無料 |
| 支払い方法 | カード・振込のほか、退職日から2週間以内に支払うあと払い(手数料4,000円・審査あり)、申込時9,900円と30日以内9,900円の分割払い(手数料なし・審査あり) |
| 交渉 | 退職日・有給消化・未払い給与について、労働組合として交渉できる |
| 対応の早さ | 最短即日対応。LINEの相談は24時間受付(※会社への連絡は8時から18時。会社の状況により異なります) |
| 返金 | 当組合の対応で退職に至らなかった場合は組合費を全額返金(※適用条件あり) |
| 退職後 | 退職書類が届くまで加入日から1年間サポート |
※料金・条件は2026年10月時点。最新の内容は退職代行ローキ公式サイトをご確認ください。
返金の条件は利用規約に書いています。当組合の受任案件で、退職に至らなかった事例はこれまでありません(2026年9月末時点・当組合受任案件の集計)。比較検証サイトのmybestでは、退職代行のおすすめ人気ランキングで2024年12月から2026年9月まで1年10か月連続の1位に選ばれています(mybest社調べ)。次の働き先を探すときは、国家資格キャリアコンサルタントによる相談サービスのキャリアバディと連携しています。



育児で手一杯のときに、会社とのやり取りまで抱える必要はありません。
よくある質問(FAQ)
上司に「育休なんて取るな」と言われました。1回だけでもハラスメントになりますか?
なりえます。上司が育休の申出や取得をしないよう言うことは、1回の言動でも育休等に関するハラスメントにあたるとされています。同僚の場合は、繰り返しや継続的な言動が対象になります。言われた日時と言葉を記録しておきましょう。
「冗談のつもりだった」と言われたら、ハラスメントにはならないのですか?
ハラスメントにあたるかどうかは、言った側の意図ではなく、客観的にみて育休の申出や取得がしにくくなったか、働く環境が害されたかで判断されるのが基本です。業務の都合で取得時期の相談をすること自体は、強要しない限りハラスメントにあたりません。
育休中に会社から仕事の連絡が来たら、対応しなければいけませんか?
対応する義務はありません。育休は働く義務がなくなる制度で、育休中に働くのは、本人が同意した一時的・臨時的な場合に限られます。会社が一方的に指示して働かせることはできず、働かなかったことを理由に評価を下げることも禁じられています。
育休を取ったことを理由に、退職を求められたらどうすればいいですか?
応じる義務はありません。育休の申出や取得を理由とする解雇その他の不利益な扱いは、育児・介護休業法10条で禁じられています。退職届や合意書には、その場でサインしないでください。辞めることを選ぶ場合も、退職日や有給休暇の消化などの条件を整えてから決めましょう。
まとめ|育休を取らせない言動は、職場の空気ではなく法律の問題
- 上司が育休の申出や取得を妨げる言動は、1回でもハラスメントになりうる
- 「冗談」かどうかではなく、客観的に取りにくくさせたかで判断される
- 育休中の仕事の連絡に応じる義務はない
- 育休を理由とする退職の強要や降格は禁止。辞めるなら条件を整えてから
ブライダル企業の事案は、発言があったこと自体は会社も認めていて、それが法律上のハラスメントにあたるかが争われているものです。裁判の結論はこれからですが、育休を取りたいという申出に対して、取得をためらわせる言動をしてはならないこと、会社にはそれを防ぐ義務があることは、すでに法律で定められています。
判断の軸は、言われたことを記録に残し、戻るか辞めるかを自分で選べる状態にしておくことです。社内で解決しないときは、労働局や労働組合など、外の窓口を使ってください。
もう戻るつもりはなく、会社と直接やり取りせずに辞めたいという方は、労働組合が運営する退職代行ローキにご相談ください。退職日の組み立てから有給休暇の消化まで、労働組合として会社と交渉します。相談は無料です。



子どもを迎えたことを、働く場所を失う理由にしないでください。
「育休中だけど、もう戻りたくない」「退職を求められて困っている」という段階でも、まずはLINEでお聞かせください。
退職代行ローキは労働組合として会社と直接交渉します。
料金は19,800円(税込)で、相談は無料です。
参考情報・出典
・弁護士JPニュース「『育休届?ビリビリに破いてやる』『俺の時代は育休なんてなかった』老舗ブライダル企業で役員らがハラスメント、男性社員が提訴」(2026年10月7日)
・e-Gov法令検索「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(10条・21条・25条・52条の4・52条の5)
・厚生労働省「育児・介護休業法について」
・厚生労働省「育児休業中の就労について」
執筆者


労働基準調査組合 執行委員長
谷本 祥子
私はこれまでアパレル業界やエステサロン業界で勤務してきました。華やかに見える業界ですが、現場では長時間労働や人手不足、過度な売上目標によるプレッシャーが当たり前で、同僚や後輩、先輩までもが心身ともに疲弊し、ある日突然職場に来られなくなる姿を何度も目の当たりにしてきました。
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退職を申し出ても「人が足りない」「後任が見つかるまで待ってほしい」と引き止められ、なかなか辞められずに苦しむ人も少なくありませんでした。私自身も退職を願い出た際に会社から強い引き止めに遭い、労働者として当然の権利を訴えても一切取り合ってもらえず、深い無力感と悔しさを味わいました。
この経験から「働く人たちがもっと気軽に、安心して退職できる仕組みが必要だ」と痛感しました。「一人で苦しむ労働者をなくしたい」という思いから、現在は労働基準調査組合の執行委員長として活動しています。
同じように悩み苦しむ方々が孤立しないよう、労働現場で生じるあらゆる労働問題に真摯に向き合い、労働法に則った実効性のある支援を行ってまいります。









