- 育休終了から1年以内の降格は、原則として違法な不利益取扱い
- 減った分を手当で埋めても、打ち切れば違法と判断されうる
- 男性の育休も同じ。労働局の調停は無料で使える

育休から戻ったら役職を外された。これって違法?



減った分は手当で埋めるから、と言われたけど…
結論からお伝えします。育児休業から復帰した直後の降格は、育児・介護休業法10条が禁じる不利益な取扱いにあたる可能性が高い行為です。育休の終了から1年以内に行われた降格は、原則として「育休を契機とした」ものと判断されます。
辞令の紙を開いたまま、しばらく席を立てなかった。復職初日にそうなったというご相談は、実際に届きます。
本記事では、2026年8月に報じられた慰謝料100万円の判決を入口に、育休復帰後の降格が違法と判断される基準、会社がよく使う「手当で補填したから不利益はない」という説明がなぜ通らなかったのか、そして降格された本人が今日から使える相談先まで、労働組合の立場から解説します。
※この記事は2026年8月時点の情報をもとに作成しています。
育休復帰後に「店長→副店長」へ降格、慰謝料100万円|2026年8月の報道
2026年8月17日の弁護士JPニュースの報道によると、通信機器の販売を手がける会社で、第2子の育児休業から復帰した男性社員が店長から副店長へ降格され、裁判所が違法と判断したうえで慰謝料100万円などの支払いを命じたとされています。
報道によれば、この会社はグループ従業員2000名以上、店舗数70店舗以上の規模です。男性は入社から約3年で店長に昇進し、第1子のときも育休を取得していました。そして第2子の育休から復帰したときに、副店長への降格を言い渡されています。
ここで注目したいのが、会社の対応です。降格にともなって基本給は2万2500円下がりましたが、会社は同額の調整手当を支給しました。つまり、受け取る金額は変わらない状態からのスタートだったのです。ところが約3か月後、会社はこの調整手当を打ち切りました。
争点になったのは、降格そのものと、補填を途中でやめたことの両方です。金額が一時的に同じでも、役職が下がった事実は残ります。
男性はその後に退職し、育児・介護休業法10条に反する違法な不利益取扱いであるとして提訴しました。裁判所は降格を違法と認め、調整手当の支払いに加えて慰謝料100万円を命じたと報じられています。



「お金は減っていないでしょう」で片づく話ではないんです。
育休復帰後の降格はなぜ違法になるのか|育児・介護休業法10条
根拠は育児・介護休業法10条です。この条文は、育児休業を申し出たこと、または育児休業をしたことを理由として、解雇その他の不利益な取扱いをしてはならないと定めています。降格は、この「不利益な取扱い」の典型例です。
ここで多くの方がつまずくのが、「理由として」の証明です。会社が「育休が理由ではない。人事制度の見直しだ」と言えば、本人が反証しなければならないのでしょうか。答えは、そうではありません。
厚生労働省は、2014年(平成26年)の最高裁判決を受けた解釈通達で、育休等を「契機として」不利益取扱いが行われた場合は、原則として育休等を「理由として」行われたものと解する、という考え方を示しています。そして、その「契機として」いるかどうかの判断には、具体的な時間の目安があります。
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| タイミング | 「契機として」いるかの判断 |
|---|---|
| 育休の終了から1年以内 | 原則として「契機として」いると判断する |
| 1年を超えている場合 | 人事異動・人事考課・雇止めのように実施時期が決まっている措置は、育休終了後の最初のタイミングまでは「契機として」いると判断する |
復職と同時に降格されたケースは、この表の1行目にまっすぐ当てはまります。会社が「育休は関係ない」と主張しても、そのままでは通りません。関係がないことを説明する責任は、会社の側に移ると考えてよいのです。
- 復職先を用意せず自宅待機を命じる
- 通勤が著しく困難になる部署へ配置転換する
- 育休期間を不就労として人事考課をマイナスにする
なお、復職先については「原職または原職相当職に復帰させることが多く行われているものであることについて配慮すること」と指針に書かれています。この「配慮」という言葉は、読んだ人に強い義務を約束されたように響きます。ところが実際には、元の役職へ戻すこと自体を会社に義務づけた条文ではありません。強いのは10条の禁止のほうであり、争うときの土台もそちらに置くのが正確です。



「時期」がそのまま証拠になる。ここは覚えておいてください。
「手当で補填したから不利益ではない」が通らなかった理由
今回の報道でもっとも実務的な意味を持つのが、この点です。会社は降格と同時に、下がった基本給と同額の調整手当を支給していました。それでも違法と判断されています。
報道によると、裁判所は副店長への降格が育休取得を契機としてなされたものであり、労働者に不利な影響をもたらす処分である以上、原則として不利益な取扱いにあたると判断したとされています。金額の補填があったかどうかとは別に、役職が下がったこと自体が不利益として評価されているのです。
そのうえで、会社が主張した業務上の必要性について、報道は裁判所が次のように見たと伝えています。復帰後3か月を経てもなお店長相当職へ戻せないほどの事情があったのかは疑問である。仮にそうした事情が続いていたのなら、3か月で調整手当を打ち切ったことの合理性のほうが説明できない、という指摘です。
補填の打ち切りは、会社にとって「必要性は続いていなかった」と自ら示す行為にもなり得ます。手当は、降格を正当化する材料にはなりません。
さらに、会社が挙げた本人の不適格事情についても、直近の評価がB評価であったことや評価シートの記載から認められない、と判断されたと報じられています。降格の理由づけが後から作られたものであれば、書類のほうが会社の主張を否定してしまう。ここは押さえておく価値があります。
慰謝料100万円という金額についても、報道は理由に触れています。裁判に至っても会社が違法な措置をやめず、本人が不公正な評価と不当な処遇を受け続け、その結果として職業生活に絶望して退職に至った、という経過が評価されたとされています。



「今は同じ金額だから」で受け入れると、3か月後が読めなくなります。
違法にならない例外は2つだけ|同意書にサインしても終わりではない
育休を契機とした降格でも、例外的に違法にならない場合があります。ただし、その例外は2つしかなく、どちらもハードルが高く設定されています。
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| 例外 | 認められるための条件 |
|---|---|
| 業務上の必要性 | 業務上の必要性から降格せざるを得ない状況であり、かつその必要性が、降格により本人が受ける影響を上回ること |
| 本人の同意 | 有利な影響が不利な影響を上回り、会社から適切な説明を受けたなど、他の労働者であっても誰しもが同意するような合理的な理由が客観的に存在すること |
大事なのは2つめです。厚生労働省のQ&Aは、単に本人が同意しただけでは足りない、とはっきり書いています。必要なのは、その人以外の労働者であっても合理的な判断ができる人なら誰しも同意するような理由が、客観的に存在している状況です。
判断材料として同Q&Aが挙げているのは、会社が適切な説明を行い本人が十分に理解したうえで決められたか、降格そのものだけでなく減給のような間接的な影響まで説明されたか、書面など理解しやすい形で説明されたか、といった点です。自由な意思決定を妨げるような説明がなかったかどうかも見られます。
- 復職面談の場で紙を出され、その場でサインを求められた
- 基本給が下がることは聞いたが、賞与や退職金への影響は聞いていない
- 「断るなら復帰先はない」という前提で話をされた
心当たりがあるなら、サインの事実だけであきらめる必要はありません。同意の有効性そのものが検討の対象になります。



サインは「終わり」ではなく、内容を問われる出発点です。
男性の育休でも同じルール|パタハラも法律で禁止されている
今回の当事者は男性です。ここは強調しておきたい点です。育児・介護休業法10条は「労働者」を対象としており、性別で区別していません。男性が育休を取ったことを理由とする降格も、女性の場合とまったく同じく禁止されています。
育休をめぐる不利益取扱いは、マタニティハラスメントという言葉で語られることが多く、解説記事も女性を前提にしたものが大半です。そのため、男性が同じ目に遭ったときに「自分のケースは違うのかもしれない」と考えてしまいやすい。実際には、根拠となる条文は同じです。
また、育児休業から復帰した本人が退職を選ぶケースも珍しくありません。育休中や産休中の退職については、育休中、産休中でも退職できる?伝えにくい場合は退職代行の利用をで、退職日の決め方も含めて解説しています。



男性だから守られない、ということはありません。
降格されたときに今日からできること|証拠と無料の相談先
やることは3つです。時期がわかる書類を確保する、会社の説明を記録に残す、そして無料の公的窓口へ相談する。この順番で動きます。
まず書類です。育休の開始日と終了日がわかるもの、復職後の辞令や人事通知、降格の前後がわかる給与明細、そして人事考課の評価シート。この4点があると、降格が育休の終了からどれくらいの時期に行われたのかを、そのまま示せます。今回の報道でも、評価シートの記載が会社の主張を否定する材料になったと伝えられています。
次に説明の記録です。復職面談で言われたことは、その日のうちにメモに残してください。日付、相手の役職と氏名、言われた内容。メールやチャットでのやり取りがあるなら、在職中に手元へ保存しておきます。退職後は取り寄せに時間がかかります。
- 育休の開始日・終了日がわかる書類
- 復職後の辞令・人事通知・就業規則の該当部分
- 降格の前後3か月分の給与明細
- 直近の人事考課の評価シート
そのうえで、相談先です。育休をめぐる不利益取扱いには、無料で使える公的な解決手続きが用意されています。
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| 手続き | 費用 | できること |
|---|---|---|
| 労働局長による紛争解決の援助 | 無料 | 労働局長が会社へ助言・指導・勧告を行う(育児・介護休業法52条の4) |
| 調停(両立支援調停会議) | 無料 | 紛争調整委員会が双方から事情を聞き、解決案を示す(同法52条の5) |
| 労働審判 | 申立手数料あり | 裁判所で原則3回以内の期日により判断を得る |
| 労働組合による団体交渉 | 組合により異なる | 組合員に代わって会社と直接交渉する |
窓口は都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)です。降格や配置転換が育休を理由とするものではないかという相談は、ここが担当しています。労働問題全般であれば、各労働基準監督署などに置かれた総合労働相談コーナーでも受け付けています。労働審判は裁判所の手続きです。



無料で使える窓口があることを、知らないまま辞める方が多いんです。
戻る場所がないと感じたときの辞め方|労働組合の退職代行という選択肢
先にお伝えしておきます。降格そのものを取り消させて元の役職に戻りたい、慰謝料を請求したい、という場合は、労働審判や訴訟を扱える弁護士が適しています。労働基準調査組合は労働組合であり、団体交渉はできますが訴訟の代理人にはなれません。今回の報道のように裁判で争う道を選ぶなら、そちらが本筋です。
一方で、現場で実際に多いのは、戻ることより離れることを選ぶ方です。復職しても評価は変わらない。上司との関係はもう戻らない。子どもの発熱で休むたびに空気が変わる。そう感じたときに必要なのは、争う準備ではなく、辞めるまでの段取りです。
退職代行ローキは、労働基準調査組合という労働組合が運営しています。労働組合には、組合員のために会社と交渉する権限があるため、退職日の調整、有給休暇の消化、未払い給与や退職金の支払い申し入れまでを、本人に代わって会社へ伝えられます。民間の代行業者にはこの交渉ができません。
料金は19,800円(税込)で、内訳は組合加入費2,800円と組合費17,000円です。相談は無料で、LINEなら24時間受け付けています。全国に対応しており、土日祝日も相談を受けています。
- 残っている有給休暇を使い切ってから退職日を設定する
- 打ち切られた手当や未払いの給与の支払いを申し入れる
- 離職票などの必要書類を期日どおりに出すよう求める
有給休暇の残日数がわからない場合も、組合から会社へ確認できます。詳しい進め方は有給休暇の消化について会社に交渉してもらえますか?をご覧ください。退職理由の区分について会社と認識が食い違うときの考え方は、会社都合で退職したいのですが会社に交渉は可能ですか?で解説しています。
なお、退職したことに対して会社から損害賠償請求や懲戒解雇処分がなされた場合には、顧問弁護士が追加料金なしで撤回交渉にあたります。※故意による損害や横領など、退職と無関係な請求は対象外です。



戻るか離れるか。決めるのはあなたで、段取りは任せて構いません。
育休復帰後の降格に関するよくある質問(FAQ)
育休から復帰したら降格されました。違法ですか?
違法な不利益取扱いにあたる可能性が高いです。育児・介護休業法10条は、育児休業をしたことを理由とする解雇その他の不利益な取扱いを禁じています。厚生労働省のQ&Aでは、育休の終了から1年以内に行われた不利益取扱いは、原則として育休を契機としたものと判断するとされています。
減った分を手当で埋めてもらっています。それでも違法になりますか?
なり得ます。2026年8月に報じられた事例では、基本給の引き下げと同額の調整手当が支給されていましたが、裁判所は降格自体が不利益な取扱いにあたると判断し、約3か月で手当を打ち切ったことの合理性にも疑問を示したと伝えられています。金額の補填は、降格を正当化する理由にはなりません。
降格に同意する書類にサインしてしまいました。もう取り消せませんか?
サインしたことだけで確定するわけではありません。厚生労働省のQ&Aは、本人が同意しただけでは足りず、有利な影響が不利な影響を上回り、会社から適切な説明を受けたなど、他の労働者であっても誰しもが同意するような合理的な理由が客観的に存在することが必要だとしています。減給や賞与への影響を説明されていない場合は、同意の有効性そのものが検討の対象になります。
男性が育休を取って降格された場合も同じですか?
同じです。育児・介護休業法10条は「労働者」を対象としており、性別による区別はありません。2026年8月に報じられた事例も、第2子の育児休業から復帰した男性社員のケースでした。
会社と争わずに辞めたいのですが、有給は消化できますか?
有給休暇は法律上の権利ですので、残日数があれば消化を求められます。退職代行ローキでは、労働組合として残日数を会社へ確認したうえで、すべて消化してから退職日を迎える形での交渉が可能です。残日数がわからない場合も、組合から会社へ問い合わせます。
まとめ|違法かどうかは「時期」で決まる。戻るか離れるかは別に決めていい
育休復帰後の降格は、育児・介護休業法10条が禁じる不利益な取扱いにあたる可能性が高い行為です。育休の終了から1年以内であれば、原則として育休を契機としたものと判断されます。会社が「育休は関係ない」と説明するだけでは、その原則は覆りません。
2026年8月に報じられた事例では、下がった基本給と同額の手当が支給されていました。それでも違法と判断され、慰謝料100万円などの支払いが命じられたと伝えられています。補填の打ち切りは、むしろ会社の側の説明を崩す材料になり得ます。同意書にサインしていても、説明の内容が不十分であれば同意の有効性が問われます。
判断の軸をひとつ挙げるなら、「戻るために争うのか、戻らない前提で条件を取るのか」を分けて考えることです。この2つを一度に決めようとすると、どちらも動けなくなります。争うなら弁護士、離れるなら段取りを任せる。退職代行ローキは労働組合として、退職の連絡から有給消化と退職日の調整、未払い分の申し入れまでを一括で引き受けます。相談は無料で、LINEなら24時間受け付けています。



復帰した職場で消耗し続ける時間まで、差し出す必要はありませんよ。
育休明けの降格や減給のことも、まずはLINEで状況をお聞かせください。
退職代行ローキは労働組合として会社と直接交渉します。
料金は19,800円(税込)で、相談は無料です。
参考情報・出典
・弁護士JPニュース「男性が育休復帰後『店長→副店長』に降格…“手当で賃金補填”も3か月後に打ち切り 『不利益な取扱い』訴えた結果、裁判所の判断は?」(2026年8月17日)
・e-Gov法令検索「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(10条・25条・52条の4・52条の5)
・e-Gov法令検索「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(9条3項)
・厚生労働省「妊娠・出産・育児休業等を契機とする不利益取扱いに係るQ&A」
・厚生労働省「子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針」
・厚生労働省「都道府県労働局(労働基準監督署)所在地一覧」
・厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」
・裁判所「労働審判手続」
執筆者


労働基準調査組合 執行委員長
谷本 祥子
私は飲食店勤務やメーカー代理店勤務など、さまざまな仕事を経験してきました。メーカー代理店では、商品販売の営業職として働いていました。現場では長時間労働や無理なノルマ強要が当たり前で、私も同僚たちも皆疲弊しきっていました。従業員たちが「辞めたい」と申し出ても、会社は「後任が見つかるまで待て」とか「引き継ぎが終わるまでダメだ」と拒み続け、退職を認めませんでした。中には精神的に追い詰められて鬱病になり、ある日突然来なくなってしまう同僚もいました。
続きを読む
私自身も会社の方針に疑問を感じ、労働環境の改善を上層部に提案しましたが、全く聞き入れてもらえませんでした。それどころか「部下をもっと厳しく指導しろ」と圧力をかけられる始末でした。私も心身ともに不調をきたしたため、退職を申し出ましたが、やはり引き止められ、なかなか辞めることができませんでした。
最終的に、労働問題に明るい仲間達の力を借りて退職することができました。この経験から「働く人たちがもっと気軽に、安心して退職できる仕組みが必要だ」と痛感しました。このような辛い経験をした自分だからこそ、労働者の立場に立って支援したいと考え、現在は労働基準調査組合の執行委員長として活動しています。
同じように悩み苦しむ方々が孤立せず、労働現場で生じるあらゆる労働問題に真摯に向き合い、実効性ある労働法に則った支援を行ってまいります。







