退職代行ローキ(労働基準調査組合)

「二度と連絡してくるな」と告げた会社に対応し、退職後の必要書類の郵送を確認した事例

  • 2025.05.29
  • 2025.05.29
実行日 2025年5月
組合員 Rさん
年齢 20代
地域 大阪府
職種 庶務サポート
雇用形態 正社員
トラブル種別 書類送付拒否

1.相談に至るまでの経緯

外国籍のRさんは、庶務サポートとして正社員で勤務していました。

Rさんによると、職場では日常的に社長からパワーハラスメントを受けており、当組合への電話相談の時点で号泣するほど精神的に追い詰められていました。

また、Rさんにとって、退職後に離職票などの必要書類を確実に受け取ることは、在留資格に関する手続との関係でも極めて重要な問題でした。

当組合が会社の社長へ連絡した当初、社長は組合からの連絡に理解を示していました。ところが、やり取りを続けるうちに態度が変わり、口調も荒くなっていきました。

その後、会社から送られたメールには、次のような文言が記載されていました。
 

「二度と連絡してくるな」

「もう送った。確認しろ」
 

これらのメールはRさん本人にもCCで共有されていました。そのため、退職後も会社からの強い表現を目にすることになり、Rさんにとって大きな精神的負担となっていました。

2.本件の法的な問題点

(1)退職後の必要書類は、それぞれ根拠となる制度が異なる

退職後に必要となる書類は、すべて同じ法律に基づいて交付されるものではありません。

例えば、労働者が使用期間、業務の種類、賃金、退職理由などについて証明書を請求した場合、使用者は労働基準法第22条に基づき、遅滞なく退職証明書を交付する必要があります。

一方、離職票は会社が直接作成して完結する書類ではありません。雇用保険の被保険者であった場合、会社がハローワークへ資格喪失届や離職証明書を提出し、その手続を経て交付されます。

したがって、会社から単に「送った」と回答があった場合でも、どの書類について、どの段階まで手続が進んでいるのかを確認することが重要です。

(2)無期雇用契約では、労働者から退職を申し入れることができる

Rさんは、雇用期間の定めのない正社員でした。

民法第627条第1項では、期間の定めのない雇用について、各当事者がいつでも解約を申し入れることができると定めています。

本件では退職日をめぐる具体的な争いは記載されていませんが、会社の感情的な対応があったとしても、それだけで労働者からの退職の申入れができなくなるものではありません。

(3)パワーハラスメントの申告は、具体的な言動や経緯を踏まえて判断される

Rさんは、日常的に社長からパワーハラスメントを受けていたと申告していました。

労働施策総合推進法第30条の2は、事業主に対し、職場における優越的な関係を背景とした言動によって労働者の就業環境が害されないよう、相談体制の整備など必要な雇用管理上の措置を講じることを求めています。

もっとも、個々の言動が法令上のパワーハラスメントに該当するかどうかは、言動の内容、頻度、業務上の必要性、労働者が受けた影響などの事情を踏まえて判断する必要があります。

本件についても、公的機関によって法令違反が認定されたものではありません。

(4)退職後に残る雇用関係上の手続も団体交渉の対象となり得る

退職後であっても、離職票、退職証明書その他の退職書類に関する問題が残っている場合は、雇用関係上の清算に関する事項として労働組合が会社と交渉できることがあります。

労働組合法第6条は、労働組合の代表者または労働組合から委任を受けた者に、組合員のために使用者と交渉する権限を認めています。

本件でも、当組合は退職後の必要書類に関する会社の対応状況を確認し、書類の送付について交渉および調整を行いました。

3.労働組合による会社への対応

当組合は、労働組合法第6条に基づき、組合員のために会社へ通知および団体交渉の申入れを行いました。

実際に行った対応は、次のとおりです。
 

  1. Rさんの退職に関する連絡窓口として、会社の社長へ連絡すること
  2. 離職票など、退職後に必要となる書類の送付状況を確認すること
  3. 必要書類をRさんの自宅へ郵送するよう求めること
  4. 会社から強い表現のメールが送られた後も、書類の交付に必要な連絡を継続すること
  5. 最終的に会社側の社会保険労務士を窓口として、必要書類の送付方法を調整すること
     

会社からは「二度と連絡してくるな」「もう送った。確認しろ」との連絡がありましたが、当組合は感情的な応酬を避け、必要書類の送付という雇用関係上の問題に絞って対応を続けました。

4.結果および成果

会社の社長は、当初は当組合からの連絡に理解を示していましたが、その後は口調が荒くなり、連絡を拒むような内容のメールを送るようになりました。

それでも当組合が必要書類の送付について連絡と交渉を継続した結果、最終的には会社側の社会保険労務士が窓口となりました。

その後、離職票などの退職後に必要な書類は、Rさんの自宅へ郵送されました。

本件では、会社がパワーハラスメントを認めた事実や謝罪した事実は確認されていません。また、会社の一連の言動について、公的機関が法令違反を認定したものでもありません。

一方で、Rさんにとって重要であった退職後の必要書類については、会社側の社会保険労務士を通じて自宅への郵送を確認することができました。

5.組合としての総括

退職後の必要書類を会社から受け取れない場合、「このまま手続が進まないのではないか」「会社へ再び連絡しなければならないのか」と不安を感じる方は少なくありません。

特に、離職票、退職証明書、源泉徴収票などは、それぞれ発行主体や手続方法、根拠となる制度が異なります。そのため、会社に対しては、必要な書類の名称と手続状況を一つずつ確認することが重要です。

本件では、会社から連絡を拒むような強い表現が示されましたが、感情的なやり取りに踏み込まず、退職後の必要書類の郵送という具体的な問題に絞って対応を継続したことが重要でした。

また、会社の社長との直接のやり取りが難しくなった後、会社側の社会保険労務士を窓口として手続を進めたことで、最終的に必要書類の郵送を確認することができました。

当組合は今後も、退職書類の交付、退職手続、会社との連絡方法その他の雇用関係上の問題について、使用者に処分可能な事項の範囲内で、労働組合法に基づく団体交渉を通じて組合員の権利を守ってまいります。

6.本件で問題となり得た主な法令・参考判例

労働基準法

労働基準法第22条(退職時等の証明)

労働者が退職に際して、使用期間、業務の種類、賃金、退職理由などについて証明書を請求した場合、使用者は遅滞なく交付しなければならないと定めています。

労働者が請求していない事項を、使用者が証明書へ記載することはできません。

民法

民法第627条(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)

期間の定めのない雇用契約では、各当事者がいつでも解約を申し入れることができると定めています。

具体的な退職日は、申入れの時期、就業規則、給与の定めその他の個別事情を踏まえて確認する必要があります。

その他の労働関係法令

雇用保険法第7条(被保険者に関する届出)

事業主は、労働者が雇用保険の被保険者でなくなった場合、厚生労働省令に従って必要な届出を行うこととされています。

雇用保険の被保険者が離職した場合、会社は資格喪失届や離職証明書をハローワークへ提出する手続を行います。

労働施策総合推進法第28条・第30条の2

外国人労働者が離職した場合、事業主には、在留資格などを確認してハローワークへ届け出る制度があります。

また、同法第30条の2は、職場におけるパワーハラスメントを防止するため、事業主に相談体制の整備などの措置を求めています。

労働組合法

労働組合法第6条(交渉権限)

労働組合の代表者または労働組合から委任を受けた者が、労働組合または組合員のために使用者と交渉する権限を有することを定めています。

本件では、この規定に基づき、退職後に必要となる書類の送付について会社と交渉および調整を行いました。

参考判例・公表資料

厚生労働省「従業員が離職する際に必要な措置」

外国人労働者が離職する際の届出や、雇用保険被保険者の資格喪失届・離職証明書に関する事業主の手続が案内されています。

厚生労働省「外国人雇用状況の届出について」

外国人労働者を雇用する事業主が、雇入れ時および離職時に行う届出について説明されています。

※本事例は、個人および会社を特定できないよう、一部を匿名化・一般化しています。
※記載した法令は、会社の具体的な対応によって問題となり得る法令であり、本件において法令違反が確定したことを意味するものではありません。
※法的評価は、雇用契約の内容、会社の対応、証拠その他の個別事情によって異なります。

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