適応障害で休職中に復職時期の連絡が続いた契約社員について、休職満了後に有給休暇を全日取得して退職した事例
- 2025.03.03
- 2025.03.03
| 実行日 | 2025年3月 |
|---|---|
| 組合員 | Yさん |
| 年齢 | 30代 |
| 地域 | 鹿児島県 |
| 職種 | 介護職 |
| 雇用形態 | 契約社員 |
| トラブル種別 | 休職中の退職 |
1.相談に至るまでの経緯
介護職として有期雇用の契約社員で勤務していたYさんは、適応障害により休職していました。
しかし、休職中にもかかわらず、会社から復職時期について繰り返し連絡があり、Yさんは強いストレスを感じていました。
休職期間の満了が近づくなか、Yさんは復職せずに退職することを希望していました。一方で、休職中に退職を申し出ることができるのか、会社とのやり取りをどのように進めればよいのかについて不安を抱えていました。
また、Yさんには未消化の有給休暇が残っていました。そのため、休職期間の満了後に有給休暇を取得し、そのまま退職できないかという点も含め、当組合へ相談されました。
2.本件の法的な問題点
(1)有期雇用であっても、会社との合意により退職することは可能です
Yさんは有期雇用の契約社員であったため、契約期間の途中で一方的に退職できるかどうかは、契約期間や退職理由などの個別事情によって判断する必要があります。
民法第628条では、期間の定めがある雇用契約について、やむを得ない事由がある場合には、各当事者が直ちに契約を解除できると定めています。
もっとも、有期雇用であっても、労働者と会社が退職日について合意すれば、その合意に基づいて雇用契約を終了させることができます。本件では、当組合がYさんの退職意思を通知し、会社との間で退職手続を調整しました。
(2)有給休暇は、労働義務のある日に取得する制度です
年次有給休暇は、本来働く義務がある日の就労を免除し、賃金の支払いを受けられる制度です。
休職期間中は、すでに就労義務が免除されている場合があるため、休職中の日をそのまま有給休暇へ変更できるとは限りません。本件では、休職期間の満了後に残っていた有給休暇を取得する方法について会社と交渉しました。
労働基準法第39条に基づく有給休暇が残っている場合、労働者は原則として取得日を指定できます。退職日までに取得する場合、会社が時季変更権を行使できるかどうかについても、退職日を越えて取得日を変更することはできないとされています。
(3)休職中の連絡は、療養状況に配慮して行う必要があります
会社が休職期間や復職の見通しを確認すること自体が、直ちに法令上問題となるわけではありません。
一方で、労働者が心身の不調により休職している場合、連絡の頻度、方法および内容については、その健康状態に配慮することが重要です。
厚生労働省が公表している職場復帰支援に関する資料では、休業中は療養に専念できるよう配慮し、業務上の連絡をできる限り控えることや、連絡頻度の目安を1~2か月に1回程度とすることなどが示されています。これは法律上の一律の基準ではありませんが、休職者へ連絡する際の実務上の参考となります。
本件では、会社から復職時期について繰り返し連絡があり、Yさんが強いストレスを感じていたため、本人が会社と直接やり取りを続けることなく、退職手続を進められる体制を整える必要がありました。
3.労働組合による会社への対応
当組合は、労働組合法第6条に基づき、組合員であるYさんのために会社へ通知および団体交渉の申入れを行いました。同条は、労働組合の代表者等が、組合員の労働条件その他の事項について使用者と交渉する権限を認めています。
実際に行った対応は、次のとおりです。
●Yさんが退職を希望していることを会社へ正式に通知すること
●休職中であっても退職の申出を行うことは可能であると説明すること
●休職期間の満了後に、残っている有給休暇を取得する日程を提案すること
●有給休暇を全日取得したうえで退職することについて、会社と交渉すること
本件では、復職時期に関する連絡への対応と、退職日および有給休暇の取得に関する問題を整理し、雇用関係上の事項として会社と調整しました。
4.結果および成果
会社は、休職期間の満了後にYさんが残っている有給休暇を取得することを了承しました。
これにより、Yさんは休職期間の満了後に有給休暇を全日取得し、そのうえで退職することとなりました。
退職に関する交渉は円滑に進み、会社との間で必要な退職手続が進められました。原文上、その後に未解決の問題が残ったとの記載はありません。
最終的に、Yさんは復職することなく、残っていた有給休暇をすべて取得したうえで退職しました。
5.組合としての総括
心身の不調によって休職している方のなかには、会社から復職時期や今後の勤務について連絡を受けるたびに、強い不安やストレスを感じる方がいます。
会社には、休職期間や復職の見通しを確認する必要が生じる場合がありますが、連絡の頻度や方法については、労働者の療養状況に配慮することが重要です。連絡が労働者の負担となっている場合は、窓口や連絡方法を整理することも必要になります。
また、有期雇用の労働者が退職を希望する場合、契約期間や退職理由によって法的な整理が異なります。ただし、会社との話し合いによって退職日や有給休暇の取得方法について合意することは可能です。
本件では、休職中のYさんに代わって当組合が退職意思を通知し、休職期間の満了後に有給休暇を取得する方法を会社へ提案したことが重要でした。その結果、会社の了承を得て、有給休暇を全日取得したうえで退職手続を進めることができました。
当組合は今後も、休職中の連絡、退職日、有給休暇の取得その他の雇用関係上の問題について、使用者に処分可能な事項の範囲内で、労働組合法に基づく団体交渉を通じて組合員の権利を守ってまいります。
6.本件で問題となり得た主な法令・参考判例
労働基準法
第39条(年次有給休暇)
一定の要件を満たした労働者には、年次有給休暇を取得する権利があります。
労働者が取得日を指定した場合、使用者は原則としてその日に有給休暇を与える必要があります。ただし、事業の正常な運営を妨げる場合には、別の日への変更が問題となることがあります。
本件では、休職期間の満了後に残っていた有給休暇を取得することについて、会社の了承を得ました。
参考リンク:
e-Gov法令検索「労働基準法」
民法
第628条(やむを得ない事由による雇用契約の解除)
期間の定めがある雇用契約であっても、やむを得ない事由がある場合には、各当事者が直ちに契約を解除できると定めています。
ただし、どのような事情が「やむを得ない事由」に当たるかは、健康状態、契約期間、勤務状況その他の個別事情を踏まえて判断されます。
参考リンク:
e-Gov法令検索「民法」
その他の労働関係法令
労働契約法第5条(労働者の安全への配慮)
使用者は、労働契約に伴い、労働者が生命や身体等の安全を確保しながら働けるよう、必要な配慮をするものとされています。
休職中の連絡が同条との関係で問題となるかどうかは、連絡の目的、頻度、内容、本人の健康状態および会社が把握していた事情などを踏まえ、個別に判断する必要があります。
参考リンク:
e-Gov法令検索「労働契約法」
労働組合法
第6条(団体交渉の権限)
労働組合の代表者等は、組合員の労働条件その他の事項について、使用者と交渉する権限を有します。
本件では、この規定に基づき、Yさんの退職意思の通知、退職手続および有給休暇の取得に関する交渉を行いました。
参考リンク:
e-Gov法令検索「労働組合法」
参考判例・公表事例
厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」
心の健康問題により休職している労働者に対し、休職開始から復職後までの段階に応じて、会社が行うことが望ましい支援の流れを示した公表資料です。
本件における休職中の連絡方法や、療養への配慮を検討する際の参考となります。
参考リンク:
厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」
厚生労働省「年次有給休暇」
年次有給休暇の取得要件、時季指定、取得した場合の効果および退職時の未消化年休の取扱いについて解説した公表資料です。
本件において、休職期間の満了後から退職日までに有給休暇を取得する取扱いを検討する際の参考となります。
参考リンク:
厚生労働省「年次有給休暇」
※本事例は、個人および会社を特定できないよう、一部を匿名化・一般化しています。
※記載した法令は、会社の具体的な対応によって問題となり得る法令であり、本件において法令違反が確定したことを意味するものではありません。
※法的評価は、雇用契約の内容、会社の対応、証拠その他の個別事情によって異なります。

