退職代行ローキ(労働基準調査組合)

退職通知後の手続中に上司が自宅を訪問したため、会社へ接触中止を申し入れ退職手続を完了した事例

  • 2025.04.14
  • 2025.04.14
実行日 2025年4月
組合員 Bさん
年齢 30代
地域 東京都
職種 運送業
雇用形態 正社員
トラブル種別 組合員自宅への無断訪問

1.相談に至るまでの経緯


Bさんは、勤務していた会社を退職するため、労働組合を通じて退職の意思を通知していました。

退職通知の際、会社に対しては、Bさん本人への直接の接触を控えるよう伝えていました。しかし、退職通知後の手続が進められている最中に、会社の上司が事前の連絡なくBさんの自宅を訪問しました。

突然、自宅を訪問されたBさんにとって、会社との直接の接触を避けたいと申し入れていたにもかかわらず、生活の拠点である自宅まで上司が来ることは、不安を感じる状況でした。

そこで当組合は、Bさんから自宅訪問の報告を受け、会社に対して今後の訪問や直接接触を止めるよう対応することになりました。
 

2.本件の法的な問題点

(1)自宅への訪問が直ちに不法行為となるとは限らない


会社関係者が労働者の自宅を訪問したという事実だけで、直ちに違法行為や不法行為が成立するわけではありません。

もっとも、本人が直接の接触を明確に拒んでいるにもかかわらず訪問を続けた場合や、訪問の方法、時間帯、回数、滞在時間、発言内容などによっては、私生活の平穏や人格的利益を侵害する行為として、民法第709条との関係で問題となる可能性があります。

本件では、会社に対して事前に直接の接触を控えるよう通知していたにもかかわらず、退職手続中に上司による自宅訪問が行われました。そのため、今後の訪問や直接接触を止めるよう、会社へ明確に申し入れる必要がありました。
 

(2)無期雇用契約における退職の申入れ


Bさんは、期間の定めのない無期雇用契約で勤務していました。

民法第627条第1項では、期間の定めのない雇用契約について、労働者は使用者に対して解約の申入れができ、原則として申入れから2週間を経過することで雇用契約が終了すると定められています。

ただし、実際の退職日は、退職通知の内容、会社との合意、就業規則その他の個別事情を踏まえて確認する必要があります。
 

(3)退職手続中の連絡方法も団体交渉の対象となり得る


労働組合は、労働組合法第6条に基づき、組合員の労働関係に関する事項について使用者と交渉できます。

退職意思の通知や退職手続だけでなく、退職手続中に会社が組合員本人へどのように連絡するか、今後の連絡窓口をどこにするかといった事項も、雇用関係上の問題として団体交渉の対象となり得ます。

本件では、当組合が会社に対し、Bさんへの直接接触を控え、必要な連絡を組合窓口へ行うよう申し入れました。
 

3.労働組合による会社への対応


当組合は、労働組合法第6条に基づき、組合員のために会社へ通知および団体交渉の申入れを行いました。

実際に行った対応は、次のとおりです。
 

●Bさん本人への直接の接触を控えるよう、改めて会社へ申し入れました。

●事前に直接接触を控えるよう通知していたにもかかわらず、退職手続中に上司がBさんの自宅を訪問したことについて抗議しました。

●自宅への訪問について、訪問の方法や状況によっては、民法上の不法行為との関係で問題となる可能性があることを会社へ伝えました。

●今後の労働関係上の連絡について、Bさん本人ではなく当組合を窓口とするよう求めました。
 

また、Bさんには、再び自宅への訪問があり、身の危険や緊急性を感じる場合に備えて、警察へ通報するよう事前に案内していました。

警察への通報および被害状況の説明はBさん本人が行うものとしました。当組合は、会社に対して行った退職通知および直接接触の中止申入れについて、警察から事実確認を求められた場合に限り、その経過を説明する方針としました。当組合が刑事手続または警察対応を代理したものではありません。
 

4.結果および成果


上司がBさんの自宅を訪問した際には、実際に警察が対応しました。

当組合から会社へ抗議し、直接の接触を止めるよう申し入れた後、会社からBさんへの連絡は止まりました。自宅訪問に関する問題も、その後は沈静化しました。

退職手続についても正式に完了しています。

本件では、退職に関する手続と、自宅への訪問による安全上の問題を区別しながら対応しました。会社に対しては、雇用関係上の連絡方法について団体交渉を行い、緊急時の安全確保については、Bさん本人が警察へ通報できるよう案内しました。
 

5.組合としての総括


退職の意思を伝えた後、手続が完了する前に会社関係者が突然自宅を訪問すると、「また来るのではないか」「直接話をしなければならないのか」と不安を感じることがあります。特に、会社と自宅が近い場合には、今後も接触が続くのではないかという心配が生じやすくなります。

会社関係者による自宅訪問が、すべて直ちに法令上の問題となるわけではありません。しかし、本人が接触を拒否していること、訪問の目的や方法、回数、時間帯、言動などによっては、私生活の平穏を害する行為として問題となる可能性があります。

本件で重要だったのは、退職手続に関する会社との連絡と、Bさん本人の安全確保を分けて対応した点です。当組合は、会社との労働関係上の連絡を組合窓口へ集約するよう申し入れました。一方、緊急性のある自宅訪問については、警察へ通報できるようBさんに案内しました。

当組合は今後も、退職手続中の直接接触、自宅訪問、連絡方法その他の雇用関係上の問題について、使用者に処分可能な事項の範囲内で、労働組合法に基づく団体交渉を通じて組合員の権利を守ってまいります。
 

6.本件で問題となり得た主な法令・参考資料

民法


民法第627条(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)

期間の定めのない雇用契約では、労働者は使用者に対して解約の申入れができます。原則として、申入れの日から2週間を経過することで雇用契約が終了します。

民法|e-Gov法令検索

民法第709条(不法行為による損害賠償)

故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害し、損害を生じさせた場合には、不法行為責任が問題となります。自宅訪問についても、訪問の方法、回数、言動などの個別事情を踏まえて判断されます。

民法|e-Gov法令検索
 

労働組合法


労働組合法第6条(交渉権限)

労働組合の代表者または委任を受けた者は、組合員の労働関係に関する事項について、使用者と交渉する権限を有します。本件では、退職手続および本人への連絡方法について、会社への申入れを行う根拠となります。

労働組合法|e-Gov法令検索
 

公的機関の参考資料


警察への通報は、状況の緊急性に応じて判断する必要があります。事件や事故が現に発生しているなど緊急の場合は110番、緊急ではない相談は警察署または警察相談専用電話「#9110」が案内されています。

110番・警察相談|警視庁

※本事例は、個人および会社を特定できないよう、一部を匿名化・一般化しています。
※記載した法令は、会社の具体的な対応によって問題となり得る法令であり、本件において法令違反が確定したことを意味するものではありません。
※法的評価は、雇用契約の内容、会社の対応、証拠その他の個別事情によって異なります。
 

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