- 事故の後に運転が怖くなり、医師の診断があるなら、契約期間の途中でも辞められる可能性が高い
- 診断を知りながら運転を命じる会社は、安全配慮義務や道路交通法に反するおそれがある
- 会社と話せない状態なら、交渉ができる労働組合の退職代行ローキに任せられる

事故を起こしてから、ハンドルを握るだけで手が震える…



診断書を出したのに「契約期間中だから辞められない」「人がいないから乗れ」と言われる
業務中に交通事故を起こしてから、運転するのが怖くなった。心療内科で不安障害と診断され、診断書のコピーも会社に出した。それでも「契約期間が残っている」「代わりがいない」と言われ、辞めさせてもらえない。退職代行ローキには、ドライバーの方からこうした相談が届いています。
結論から言うと、医師から運転が難しいと判断されている状態で、会社が運転を続けさせることは、法律上大きな問題があります。また、有期雇用(契約期間の決まった雇用)であっても、体調を理由とする「やむを得ない事由」があれば、期間の途中で辞めることが民法で認められています。
この記事では、運転を強要された結果また事故が起きた場合に会社がどんな責任を負うのかを、法律の条文と裁判例をもとに整理します。そのうえで、会社と直接話せない状態でも辞める方法をお伝えします。
※この記事は2026年10月時点の法令と公的資料をもとに作成しています。
事故の後に「運転が怖い」は甘えではない
事故の後に運転が怖くなるのは、気持ちの弱さの問題ではありません。厚生労働省が定める「心理的負荷による精神障害の認定基準」では、「業務に関連し、重大な人身事故、重大事故を起こした」ことが、精神障害の原因になりうる出来事として挙げられています。しかも本人に過失がない事故も含むと明記されています。
つまり、仕事中の事故をきっかけに不安障害などを発症することは、国の基準でも想定されていることです。事故の内容やその後の会社の対応によっては、労災(仕事が原因の病気やケガに対する国の補償)として認められる可能性もあります。
不安で運転できない状態は、医師の診断で裏付けられた「健康上の理由」です。自分を責める必要はありません。
労災の申請を考えている方は、パワハラで適応障害は労災になる?「一生恨む」メッセージが労災認定や、労災を認めてもらえなかったら終わり?審査請求・取消訴訟で争う方法も参考にしてください。
診断書があるのに運転させる会社の責任
では、運転が困難だと分かっているのに会社が運転を命じた場合、会社にはどんな責任があるのでしょうか。主に4つの法律が関係します。
| 関係する法律 | 会社に求められていること |
|---|---|
| 労働契約法 第5条 | 労働者が生命や身体の安全を確保しながら働けるよう、必要な配慮をすること(安全配慮義務) |
| 道路交通法 第66条・第75条 | 病気などで正常な運転ができないおそれがある状態で運転させてはならない。使用者がその運転を命じたり、黙認したりすることも禁止 |
| 貨物自動車運送事業輸送安全規則 第3条/旅客自動車運送事業運輸規則 第21条 | 運送会社・バス・タクシー会社は、病気や疲労などで安全に運行できないおそれがある乗務員を乗務させてはならない |
| 民法 第715条・自動車損害賠償保障法 第3条 | 仕事中の事故で第三者に損害が出た場合、会社も賠償責任を負う |
出典:e-Gov法令検索(各法令の条文)
安全配慮義務に反するおそれがある
労働契約法第5条は、会社に対して「労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする」ことを求めています。診断書で運転への強い不安が示されているのに、配置換えや休職の検討もせず運転を続けさせることは、この安全配慮義務に反するおそれがあります。
安全配慮義務に反した結果、症状が悪化したり、再び事故が起きてケガをしたりした場合、会社は民法第415条にもとづく損害賠償の責任を問われる可能性があります。
道路交通法は「運転させること」自体を禁じている
道路交通法の第66条は、誰であっても「過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態」で運転してはならないと定めています。さらに第75条第1項は、会社などの使用者が、業務に関してこの状態での運転を命じること、または容認することを禁止しています。
違反があり、交通の危険が著しいと認められると、公安委員会がその会社に対して、最長6か月の範囲で車両の使用を制限する命令を出せることも同じ条文に定められています。運転を強要するのは、会社にとっても大きなリスクがある行為なのです。
トラック・バス・タクシー会社にはさらに重い義務
緑ナンバーのトラック、バス、タクシーなどの運送会社には、さらに具体的な義務があります。貨物自動車運送事業輸送安全規則の第3条第6項と、旅客自動車運送事業運輸規則の第21条第5項は、どちらも「疾病、疲労、睡眠不足その他の理由により安全に運行の業務を遂行し…することができないおそれがある乗務員等」を乗務させてはならないと定めています。
運送会社は、点呼で乗務員の健康状態を確認する仕組みも義務付けられています。不安障害の診断を把握しながら乗務させているなら、運送事業者としての義務を果たしていない状態だといえます。



「人が足りないから」は、運転を強要してよい理由にはなりません。法律は会社の都合より、あなたと道路を使う人の安全を優先しています。
運転を強要されて事故が起きたら、誰が責任を負う?
最も心配なのは、無理に運転させられた結果、また事故を起こしてしまった場合ではないでしょうか。その場合の責任の考え方を整理します。
被害者への賠償は会社も負う
仕事中の事故で相手にケガをさせたり物を壊したりした場合、民法第715条により、会社も使用者として賠償責任を負います。人身事故については自動車損害賠償保障法第3条により、車を業務に使っている会社が「運行供用者」として責任を負うのが原則です。
会社が全額をドライバーに請求することは認められにくい
会社が被害者に支払った賠償金を、あとからドライバーに請求することはあります。ただし最高裁は、業務中の事故について会社が従業員に請求できるのは「損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度」に限られるとしています(茨城石炭商事事件、最高裁昭和51年7月8日判決)。この事件では、請求できるのは損害額の4分の1までと判断されました。
さらに、トラック運転手が業務中の事故で被害者に賠償した事案で、最高裁はドライバーの側から会社に負担を求めること(逆求償)も認めています(福山通運事件、最高裁令和2年2月28日判決)。業務中の事故の損害は、会社も分担すべきだという考え方です。
診断書を出したにもかかわらず運転を命じられていたという事情は、会社の責任を重くする方向に働くと考えられます。ただし、実際の負担割合は事故の態様や会社の体制などで個別に判断されます。
- 会社から運転を命じられたLINE・メール・指示書は消さずに保存する
- 診断書のコピーを会社に渡した日付と相手を記録しておく
- 医師から運転を控えるよう言われている場合は、その指示に従う
契約期間の途中でも辞められる?有期雇用の場合
「契約期間が残っているから辞められない」と言われて悩んでいる方も多いと思います。有期雇用の場合、期間の定めのない正社員のように「2週間前に申し出れば辞められる」という民法第627条のルールは、そのままでは使えません。
ただし民法第628条は、「やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる」と定めています。病気や体調不良で働き続けることが難しい場合は、この「やむを得ない事由」の代表的な例です。医師の診断書があり、本来の業務である運転が困難な状態であれば、契約期間の途中でも退職できる可能性が高いといえます。
有期雇用でも、診断書のある体調不良は「やむを得ない事由」になりうるため、契約期間の途中で辞めることを諦める必要はありません。
なお、民法第628条には、やむを得ない事由が当事者の一方の過失によって生じたときは損害賠償の責任を負う、という定めもあります。しかし、仕事中の事故をきっかけに発症した病気を理由とする退職について、ドライバーに賠償を求めるのは筋が通りにくいでしょう。
ただ、損害賠償請求は仮にあなたが100%正しくとも、会社側は損害賠償請求すること自体は可能なのです。その場合の会社側の狙いとしては下記のようにいくつかあります。・単なる嫌がらせ。・経営者が法的な知識に乏しい。・訴訟が認められないと分かっていても、次の退職者を出さないために、『損害賠償請求した』と他の社員に威嚇するため。特に他の社員への脅しのためが多いようにおもいます。その事から、『この内容でも損害賠償請求されますか?』という質問に対しての回答は、お勤め先の経営者次第となるため、その経営者の性格などで判断し、私たちのような急な退職する事による損害賠償請求や懲戒解雇処分に無料で弁護士が対応する労働組合か弁護士運営の退職代行をおすすめします。
契約社員の退職については、契約社員は退職代行を使える?契約途中の注意点と安全に辞める方法でも詳しく解説しています。
会社とのやり取りがつらいときの辞め方
事故の後、上司や運行管理者と話すたびに責められたり、運転の話を持ち出されたりして、それ自体が大きな負担になっている方もいるはずです。会社と直接やり取りせずに辞める方法として、退職代行があります。
ただし、退職代行は運営元によってできることが違います。今回のように「契約期間の途中だから辞められない」と言われている場合は、退職日や契約の扱いについて会社と話し合う必要が出てきます。こうした交渉は、民間業者の退職代行には認められていません。交渉ができるのは、団体交渉権を持つ労働組合か弁護士です。
| 運営元 | 退職の連絡 | 退職日などの交渉 | 損害賠償をほのめかされた場合 |
|---|---|---|---|
| 民間業者 | 〇 | ✕ | ✕ |
| 労働組合 | 〇 | 〇 | 弁護士と連携しているかで異なる |
| 弁護士 | 〇 | 〇 | 〇 |
退職代行ローキでできること
退職代行ローキは、労働基準調査組合が運営する労働組合の退職代行です。料金は一律19,800円(税込)で、追加料金はかかりません。
- あなたに代わって会社へ退職の意思を伝える
- 契約期間中の退職について、診断書の存在を前提に会社と交渉する
- 急な退職を理由に損害賠償請求や懲戒解雇をほのめかされた場合は、弁護士が追加料金なしで会社に対応する
- 退職後の仕事探しは、キャリアバディと連携して相談できる
退職代行ローキの場合、相談はLINEか電話でできます。※LINEの相談は24時間受け付けていますが、会社への連絡は年中無休8時から18時までです。会社への退職連絡を18時に定めている理由としては、終業時間間際や社内の総務、人事の方が帰社されている場合がほとんどです。その場合、他の方が電話に出られ翌日掛けなおしてほしいと言われることがほとんどです。また電話に出られた方が退職代行から連絡があったことを社内の人に言ってしまい、あなたの電話やLINEなどに上司や代表者から翌日までに連絡してくる可能性が非常に高いことから、終業時間が近い時間はおすすめしておりません。
退職できなかった場合は全額返金となります。参照:利用規約 第18条(キャンセルと返金について)
- 裁判をすることを前提に考えている方
- 公務員・自衛官・業務委託・個人事業主・役員の方
- 会社に借金があり、代行時に一括で完済できない方
公務員・自衛官・業務委託・個人事業主・役員の方は、労働組合に加入できないためお引き受けできません。退職代行ローキは、労働基準調査組合が運営する労働組合です。
事故の責任をめぐって会社と裁判で争いたい、安全配慮義務違反として会社に損害賠償を求めたいという場合は、弁護士への相談が必要です。費用面が心配な方は、法テラスの無料法律相談も利用できます。



運転のことを考えるだけでつらいなら、まずは会社と距離を置くことを優先してください。辞める手続きは、私たちが代わりに進められます。
辞める前に準備しておきたいこと
退職をスムーズに進め、あとで会社の責任を問う可能性も残しておくために、次のものを手元にそろえておきましょう。
- 診断書(原本は自分で保管し、会社にはコピーを渡す)
- 雇用契約書・労働条件通知書(契約期間と業務内容を確認するため)
- 運転を命じられた記録(LINE、メール、勤務表、配車表など)
- 事故の報告書や、会社とのやり取りのメモ
仕事が原因の病気として労災を申請する場合は、会社の所在地を管轄する労働基準監督署が窓口です。眠れない、気持ちが落ち着かないといったつらさが続くときは、厚生労働省の働く人の「こころの耳電話相談」でも話を聞いてもらえます。
傷病手当金など、退職後のお金の制度について不安がある方は、ローキに別途ご相談ください。
よくある質問
Q. 事故を起こした自分にも責任があるので、辞めるのは無責任ではありませんか?
A. 事故の責任と、退職の自由は別の問題です。業務中の事故の損害は会社も分担すべきだというのが最高裁の考え方であり、事故を起こしたことを理由に退職を禁じることはできません。
Q. 会社から「次に事故を起こしたら全額弁償させる」と言われました。
A. 業務中の事故について、会社が従業員に全額を請求することは認められにくいとされています(茨城石炭商事事件)。ただし会社が請求すること自体は可能なため、そのような発言がある場合は記録を残し、弁護士が対応できる窓口に相談してください。
Q. 診断書を出しても運転を続けるよう言われたら、断ってもいいですか?
A. 医師から運転を控えるよう言われている場合は、その指示に従うことを優先してください。道路交通法は、病気などで正常な運転ができないおそれがある状態での運転を禁じ、会社がそれを命じることも禁止しています。
Q. 有期雇用で契約期間が半年以上残っています。それでも辞められますか?
A. 契約期間の残りの長さにかかわらず、民法第628条の「やむを得ない事由」があれば途中で退職できます。診断書がある体調不良は、その代表的な例です。
Q. 有給休暇が残っていなくても退職代行は使えますか?
A. 使えます。有給休暇が残っていない場合は、退職日までの扱いを会社と調整することになります。労働組合のローキなら、その調整も交渉として行えます。
まとめ|運転が怖いなら、無理に乗り続けなくていい
事故の後に運転が怖くなり、医師の診断まで受けているなら、それは働き方を見直すべき正当な理由です。診断を知りながら運転を命じる会社は、安全配慮義務や道路交通法、運送事業の規則に反するおそれがあり、万一事故が起きれば会社自身も重い責任を負います。
有期雇用でも、体調を理由とする「やむを得ない事由」があれば契約期間の途中で辞められます。会社と話すこと自体がつらいなら、交渉ができる労働組合の退職代行に任せるという選択肢があります。



ひとりで抱え込まず、今の状況をそのままLINEで送ってください。辞め方も、ローキが合うかどうかも、正直にお答えします。
参考情報・出典
- e-Gov法令検索|労働契約法(第5条)
- e-Gov法令検索|道路交通法(第66条・第75条)
- e-Gov法令検索|貨物自動車運送事業輸送安全規則(第3条)
- e-Gov法令検索|旅客自動車運送事業運輸規則(第21条)
- e-Gov法令検索|民法(第415条・第627条・第628条・第715条)
- e-Gov法令検索|自動車損害賠償保障法(第3条)
- 厚生労働省「心理的負荷による精神障害の労災認定基準を改正しました」(2023年9月1日)
- 全国労働基準関係団体連合会 労働基準判例検索|茨城石炭商事事件(最高裁昭和51年7月8日判決)
- 裁判所|最高裁令和2年2月28日第二小法廷判決(平成30年(受)第1429号、福山通運事件)判決全文PDF
執筆者


労働基準調査組合 執行委員長
谷本 祥子
私は飲食店勤務やメーカー代理店勤務など、さまざまな仕事を経験してきました。メーカー代理店では、商品販売の営業職として働いていました。現場では長時間労働や無理なノルマ強要が当たり前で、私も同僚たちも皆疲弊しきっていました。従業員たちが「辞めたい」と申し出ても、会社は「後任が見つかるまで待て」とか「引き継ぎが終わるまでダメだ」と拒み続け、退職を認めませんでした。中には精神的に追い詰められて鬱病になり、ある日突然来なくなってしまう同僚もいました。
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私自身も会社の方針に疑問を感じ、労働環境の改善を上層部に提案しましたが、全く聞き入れてもらえませんでした。それどころか「部下をもっと厳しく指導しろ」と圧力をかけられる始末でした。私も心身ともに不調をきたしたため、退職を申し出ましたが、やはり引き止められ、なかなか辞めることができませんでした。
最終的に、労働問題に明るい仲間達の力を借りて退職することができました。この経験から「働く人たちがもっと気軽に、安心して退職できる仕組みが必要だ」と痛感しました。このような辛い経験をした自分だからこそ、労働者の立場に立って支援したいと考え、現在は労働基準調査組合の執行委員長として活動しています。
同じように悩み苦しむ方々が孤立せず、労働現場で生じるあらゆる労働問題に真摯に向き合い、実効性ある労働法に則った支援を行ってまいります。












