- 仕事を任せない過剰な配慮はパワハラの「過小な要求」になり得る
- 転職検討者の15%が経験し、20代の66%が退職理由として認める
- 言い出しにくい退職理由でも会社に説明する義務はない

優しい職場なのに辞めたい…私がおかしい?



仕事を任せてもらえないのもハラスメント?
定時になると声をかけられ、席を立たされる。任されるはずだった案件は、いつのまにか誰かの手に渡っている。怒鳴られたわけでも無視されたわけでもないのに、会社にいる時間が薄くなっていく感覚があります。
2026年8月21日、エン・ジャパンが「ホワイトハラスメント」に関する調査結果を公表しました。この記事では調査の数字を踏まえ、過剰な配慮がどこからハラスメントにあたるのか、辞めたいと感じたときに何ができるのかを、労働組合の立場から解説します。
※この記事は2026年8月時点の情報をもとに作成しています。
転職検討者の15%が「ホワハラ」を経験|2026年8月21日公表の調査
調査によると、職場でホワイトハラスメント(ホワハラ)を受けた経験がある人は15%でした。内容の最多は「仕事を任せない」で61%にのぼります。
2026年8月21日にエン・ジャパンが公表した調査は、『エン転職』利用者1,385名を対象に2026年7月1日から8月2日にかけて実施されたものです。同社はホワハラを「上司や先輩がハラスメント認定を恐れ、部下・後輩に対して過度な配慮や業務量の制限を行ない、成長機会等を奪ってしまう行為」と説明しています。
| 受けたホワハラの内容 | 割合 |
|---|---|
| 仕事を任せない | 61% |
| 強制的な定時退社 | 34% |
| フィードバックの回避 | 22% |
注目したいのは、辞める判断についての受け止め方です。ホワハラを理由に転職することに同意できると答えた人は全体で57%、20代では66%にのぼりました。実際に転職を検討するきっかけになると答えた人も41%です。
「優しくされて辞めるなんて甘えだ」と感じる必要はありません。同世代の3人に2人が、それは辞める理由になると答えています。成長の機会を奪われる状態は、働く条件として不利益だからです。



おかしいのはあなたの感覚ではありません。数字がそれを示しています。
ホワハラはパワハラになる?「過小な要求」との関係
結論として、仕事を与えない行為はパワハラの類型のひとつである「過小な要求」に該当し得ます。優しい態度で行われていても、判断されるのは態度ではなく、就業環境が害されたかどうかです。
厚生労働省が示すパワハラの6類型
厚生労働省は職場のパワーハラスメントを6つの類型で整理しています。身体的な攻撃、精神的な攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害の6つです。
このうち「過小な要求」は、業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや、仕事を与えないことと説明されています。ホワハラの最多である「仕事を任せない」は、この説明にそのまま重なります。
配慮とハラスメントの分かれ目はどこ?
すべての配慮が問題になるわけではありません。体調不良からの復帰直後に業務を軽くする、繁忙期を避けて新しい仕事を任せるといった判断には、業務上の合理性があります。
問題になるのは、本人の意向を確認せず、合理的な理由の説明もないまま、業務の範囲を一方的に狭め続けるやり方です。とくに期間の見通しが示されないと、本人は自分の立場が下がり続けているように感じます。
相談の現場でよく聞くのは、次のような場面です。会議に呼ばれなくなった、頼んでいないのに担当を替えられた、失敗しそうな仕事だけ先回りで外された、質問しても「気にしなくていい」で終わる。どれも荒立てるほどではないぶん、積み重なってから気づくのが特徴です。
| 観点 | 配慮といえる場合 | ハラスメントを疑う場合 |
|---|---|---|
| 本人の意向 | 事前に希望を確認している | 相談も説明もなく決められる |
| 理由の説明 | 業務上の事情が示されている | 理由が示されないまま続く |
| 期間 | 一時的で見通しがある | 期限がなく常態化している |
| 評価への影響 | 評価や処遇は下がらない | 実績が作れず評価が下がる |
※判断の目安を整理したものです。個別の事情により結論は変わります。
パワハラの定義や当てはまる例は、パワハラの定義は?パワハラに当てはまる例を紹介で詳しく解説しています。



判断されるのは上司の態度ではなく、あなたの就業環境が害されたかどうかです。
ホワハラがつらいのに相談しづらい3つの理由
ホワハラの厄介さは、被害の内容ではなく訴えにくさにあります。相談の現場でも、本人が「これを問題として話してよいのか」という段階で止まってしまう場面をよく見ます。
- 加害の意識がないため、指摘すると相手が善意を否定されたと受け取る
- 暴言のような分かりやすい証拠が残らず、状況を説明しづらい
- 周囲からは恵まれた職場に見えるため、共感を得にくい
3つ目は特に消耗します。労働時間が短く、人間関係も穏やかな職場では、辞めたいと打ち明けた相手から「もったいない」と返ってきます。事情を説明するほど、自分が贅沢を言っているような気持ちになっていきます。
しかし、仕事を任されない状態が続けば、実績が作れず、次の職場での評価にも影響します。これは気持ちの問題ではなく、キャリア上の実害です。



「恵まれているのに」と言われても、実害を受けているのはあなたです。
「ホワハラなんておかしい」と言われたら
ホワハラという言葉には反発もあります。「配慮されて文句を言うのは筋違いだ」「何をしてもハラスメント扱いか」という声です。この反発と、あなたが受けている不利益は、切り離して考えてください。
言葉への賛否と、あなたの不利益は別の話
ホワハラという呼び名が適切かどうかは、意見が分かれるところです。ただ、呼び名の議論が決着しなくても、仕事を任されず実績が積めない状態が続けば、評価も昇給も止まります。この不利益は言葉の定義とは関係なく発生します。
そもそもハラスメントかどうかを判断するのは、加害者の意図ではありません。業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動によって、就業環境が害されたかどうかで判断されます。善意で行われていても結果として環境が害されていれば、検討の対象になります。
名前をつける必要はない
会社や周囲に相談するとき、「これはホワハラです」と切り出す必要はありません。言葉が新しいぶん、そこで議論が止まってしまうからです。
伝えるべきは、担当していた業務が減ったという事実、その結果として身につけられていない経験、評価にどう影響しているかという3点です。事実の話にすると、相手も反論ではなく対応を考えやすくなります。
- いつから、どの業務を外されたのか
- その結果、積めていない経験は何か
- 評価や処遇にどう影響しているか



呼び名で争わず、起きた事実だけを並べるほうが早く伝わります。
辞める前にできること|記録と社内での申し出
今日からできるのは、状況を記録に残すことと、意向を一度は言葉にして伝えることの2つです。この2つを済ませておくと、社内で改善するにせよ、辞めるにせよ、判断が進めやすくなります。
証拠が残りにくいホワハラを記録するには?
暴言と違い、ホワハラは「起きなかったこと」が中心です。そのため、日々の担当業務と、外された経緯を時系列で書き留めておくのが有効です。
担当を外された日、代わりに任された業務の内容、その際に言われた言葉、業務の割り振りが分かるメールやチャットの記録を残してください。日報や勤怠記録も、業務量の推移を示す材料になります。
証拠の集め方の基本は、パワハラの証拠の集め方のポイントを詳しく解説で整理しています。
「もっと任せてほしい」をどう伝える?
配慮する側は、本人が困っていることに気づいていない場合があります。一度は意向を伝えてみる価値があります。相手を責める形にせず、希望として伝えるのが通りやすい形です。
上司へ伝えるときの言い方の例
お気遣いいただきありがとうございます。
体調も落ち着いており、業務量はもう少し増えても問題ありません。
◯◯の案件について、次回は担当として関わらせていただけないでしょうか。
今の担当範囲だと経験を積む機会が少なく、今後の評価につながる実績を作りにくいと感じています。
伝えても状況が変わらない場合、あるいは伝えたことで扱いが悪くなった場合は、社内の相談窓口や、総合労働相談コーナーに相談する道があります。無料で利用でき、労働局につながる公的な窓口です。
- 感情的に問い詰めて、相手との関係だけ悪化させる
- 改善を待ち続けて、実績が作れない期間を延ばしてしまう
- 退職を決めてから、記録や資料を何も残さずに去る



一度は希望として伝える。それでも変わらなければ、判断材料が揃います。
退職を選ぶとき、理由をどこまで説明する?
結論として、退職理由を詳しく説明する義務はありません。「一身上の都合」で足ります。ホワハラを理由に辞める場合、これは特に大きな意味を持ちます。
理由を正直に伝えると、相手は善意を否定されたと受け取り、話が長引きやすくなります。「もっと任せるから」と待遇の見直しを持ち出されて引き止められ、退職の話が先送りになることもあります。
会社にとって居心地の悪い理由を説明する責任は、辞める側にはありません。伝えたいなら伝えてよいですし、伝えたくないなら伏せて構いません。この選択権は本人にあります。
- 退職理由は「一身上の都合」で足り、詳細な説明は不要
- 期間の定めのない雇用なら意思表示から2週間で退職が成立
- 転職先に前職の退職理由を申告する義務もない
一度伝えた退職の意思は、後から取り消すのが難しい場合があります。撤回の可否については退職は撤回できる?退職届の取り消しが認められる条件と裁判例・対処法を解説で解説しています。



理由を説明するかどうかは、あなたが決めてよいことです。
引き止めを避けて辞めたいときの選択肢
先にお伝えすると、ホワハラを理由に会社へ慰謝料を請求したい、裁判で争いたいという場合は、労働組合ではなく弁護士事務所への依頼が適切です。当組合は訴訟の代理人にはなれません。
一方で、理由を詮索されずに退職手続きを進めたい、引き止めのやり取りを避けたいという場面では、労働組合が代わって会社に連絡できます。退職代行ローキは労働基準調査組合が運営しており、組合として退職日や有給休暇の消化について会社と交渉できるためです。
ここで言葉について一つ補足します。求人でよく見る「風通しのよい職場」という表現は、意見が通ることを保証するものではありません。実際に何が任され、誰が決めているのかを面接で確かめたほうが、次の職場選びは確かなものになります。
次の職場で同じ状況を避けるには?
同じ調査では、転職理由の最多が「仕事で成長したいから」で64%でした。任される量と質は、給与や休日と同じくらい転職の判断材料になっているということです。
面接では、待遇の条件だけでなく、入社後の担当範囲を具体的に聞いてみてください。入社1年目にどこまで任せてもらえるのか、判断はどの役職までで完結するのか、失敗したときにどう扱われるのか。この3点は、働き始めてからのやりがいに直結します。
労働時間や休日の条件が良い会社ほど、その内側の任され方は求人票からは読み取れません。条件面は数字で比べられますが、任され方は質問しないと分からない部分です。
- 退職理由を詮索されないよう、組合が会社へ通知する
- 退職日と有給休暇の消化について会社と交渉する
- 離職票などの退職書類が届かない場合に督促する
料金は組合費19,800円(税込)のみで、追加料金は原則かかりません。※後払いを選ぶ場合の手数料と振込手数料は除きます。また、退職したことを理由に会社から損害賠償請求や懲戒解雇処分を受けた場合は、追加料金なしで弁護士が撤回交渉を行います。※故意による損害など、退職と無関係な請求は対象外です。
ハラスメントを理由とする退職代行の使い方は、パワハラを理由に退職代行は利用できる?注意点や業者を使うメリットを解説でも解説しています。次の職場を探す段階では、提携しているキャリアバディに相談することもできます。
「この状況で辞めるのは変ですか?」も、LINEでお聞かせいただければ無料でお答えします。



理由を話さずに辞める。それも普通に選べる方法です。
よくある質問(FAQ)
ホワハラとは何ですか?パワハラとどう違いますか?
ホワハラは、上司や先輩がハラスメント認定を恐れ、過度な配慮や業務量の制限によって部下の成長機会を奪ってしまう行為を指す言葉です。攻撃的な言動を伴わない点でパワハラの印象とは異なりますが、仕事を与えない行為はパワハラの類型のひとつである「過小な要求」に該当し得ます。
仕事を任せてもらえないことを理由に辞めるのは甘えですか?
甘えではありません。2026年8月公表のエン・ジャパンの調査では、ホワハラを理由に転職することに同意できると答えた人が全体で57%、20代では66%でした。実績が作れない状態が続けば次の職場での評価にも影響するため、キャリア上の不利益として扱われています。
強制的に定時退社させられるのも問題になりますか?
状況によります。労働時間を短くすること自体は本来望ましいものですが、業務量が変わらないまま退社だけを求められると、持ち帰り残業やサービス残業につながります。その場合は労働時間の管理の問題として、記録を残したうえで会社に是正を求めることができます。
退職するとき、ホワハラが理由だと会社に伝える必要はありますか?
必要ありません。退職理由は「一身上の都合」で足ります。理由を伝えると相手が善意を否定されたと受け取り、引き止めが長引く場合があるため、伝えるかどうかはご自身で判断して構いません。転職先に前職の退職理由を申告する義務もありません。
まとめ|「優しい職場で辞めたい」は変な悩みではない
怒鳴られていなくても、仕事を任されない状態が続けば消耗します。ホワハラという言葉が広がったのは、その苦しさに名前がなかったからです。要点をまとめます。
- 転職検討者の15%が経験し、最多の内容は「仕事を任せない」61%
- 仕事を与えない行為はパワハラの「過小な要求」に該当し得る
- まず記録を残し、希望として一度伝えてみる
- 辞める際に理由を詳しく説明する義務はない
判断の軸は、この職場が良いか悪いかではありません。任されない時間が続くほど、次の選択肢も狭まっていくという点です。消耗しきる前に動いたほうが、選べる道は多く残ります。
理由を詮索されずに辞めたいのであれば、退職代行ローキが労働組合として会社への連絡と交渉を引き受けます。相談は無料で、LINEなら24時間受け付けています。



説明しにくい悩みほど、第三者に話すと整理がつきます。
「うまく説明できないけれど限界です」も、まずはLINEでお聞かせください。
退職代行ローキは労働組合として会社と直接交渉します。
料金は19,800円(税込)で、相談は無料です。
参考情報・出典
・エン・ジャパン「『ホワイトハラスメント』調査」(2026年8月21日公表・『エン転職』利用者1,385名)
・厚生労働省「あかるい職場応援団」(職場のハラスメントの定義と類型)
・厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」
・e-Gov法令検索「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」
・e-Gov法令検索「民法」(627条)
・e-Gov法令検索「労働組合法」(6条)
・厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」
執筆者


労働基準調査組合 執行委員長
谷本 祥子
私は飲食店勤務やメーカー代理店勤務など、さまざまな仕事を経験してきました。メーカー代理店では、商品販売の営業職として働いていました。現場では長時間労働や無理なノルマ強要が当たり前で、私も同僚たちも皆疲弊しきっていました。従業員たちが「辞めたい」と申し出ても、会社は「後任が見つかるまで待て」とか「引き継ぎが終わるまでダメだ」と拒み続け、退職を認めませんでした。中には精神的に追い詰められて鬱病になり、ある日突然来なくなってしまう同僚もいました。
続きを読む
私自身も会社の方針に疑問を感じ、労働環境の改善を上層部に提案しましたが、全く聞き入れてもらえませんでした。それどころか「部下をもっと厳しく指導しろ」と圧力をかけられる始末でした。私も心身ともに不調をきたしたため、退職を申し出ましたが、やはり引き止められ、なかなか辞めることができませんでした。
最終的に、労働問題に明るい仲間達の力を借りて退職することができました。この経験から「働く人たちがもっと気軽に、安心して退職できる仕組みが必要だ」と痛感しました。このような辛い経験をした自分だからこそ、労働者の立場に立って支援したいと考え、現在は労働基準調査組合の執行委員長として活動しています。
同じように悩み苦しむ方々が孤立せず、労働現場で生じるあらゆる労働問題に真摯に向き合い、実効性ある労働法に則った支援を行ってまいります。









