- 有効な証拠は「いつ・どこで・誰が・何を」が特定できるもの
- 自分が参加している会話の録音は、一般に違法とはされていません。相手の名前を呼んでおくと特定しやすくなります
- 会社のデータの持ち出しやSNSでの実名公表は逆に自分がリスクを負うため避けてください

録音って、勝手にしたら違法にならない?



証拠が集まらないまま、もう限界…
職場でのパワハラ(パワーハラスメント)で身体的・精神的に深刻な苦痛を受けているにもかかわらず、解決の糸口すらつかめないまま泣き寝入りをしている・・・。
近年、このようなケースが増えており、社会問題になっています。
とくに、パワハラを黙認するような会社に勤務している場合は、会社内での解決が難しいのが現状です。
自分が受けているパワハラを国の機関に相談したり、法的手段で訴える場合に、まず必要なのがパワハラの証拠集めです。
この記事では、パワハラの証拠の集め方のポイントを詳しく解説します。
パワハラに当たる事例
まず最初に、どのような事例がパワハラに該当するのかを説明します。
厚生労働省は、パワハラを「職場におけるパワーハラスメントは、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの要素を全て満たすものをいう」と定義しています。
要するに、パワハラは「職場で心身に苦痛が生じるような、上の立場からの理不尽な言動」となります。
ここでいう職場とは、普段の勤務先のオフィスなどだけでなく、業務を行なっている場所全般が職場となります。
出張先、移動中の車内、取引先との打ち合わせや接待の場も職場とみなされます。
また、勤務時間外でも参加が強制の懇親会の場なども職場になります。
上司だけでなく、同僚や部下であっても知識や経験で優位な立場にいれば、優越的な立場にあれば、優越的な関係を持つ相手になり得ます。
そのような相手からの理不尽な言動により、労働者が身体的または精神的にダメージを受け、職場環境で本来の労働能力を発揮できなくなる。
これが、パワハラになります。
パワハラには、次の6つの典型例が知られています。
- 大声で叱責する、人格を否定する
- 必要な情報を与えず仕事から外す
- 明らかに達成できない業務を押しつける
1.身体的な攻撃
叩く、殴る、蹴るなどの暴行や障害。
物を投げつけたり、丸めたポスターなどで頭を叩いたりするのも、身体的な攻撃になる。
2.精神的な攻撃
同僚の目の前での叱責、他人も読める社内メールでの罵倒、執拗な叱責。
「馬鹿野郎」「給料泥棒」などの暴言。
3.人間関係からの切り離し
1人だけの別室の席への移動、集団での無視、懇親会への参加を認めない行為など。
4.過大な要求
業務上、明らかに不要だったり、遂行が不可能な作業の強制行為。
仕事経験の浅い新人に対し、遂行困難な量の仕事を任せる行為など。
5.過小な要求
実際の能力や経験に比べ、明らかにレベルの低い業務を命じたり、仕事をさせない行為。
運転手に清掃作業のみをさせる行為などが、過小な要求の例。
6.個の侵害
プライバシーに関することへの過度な干渉。
労働者の交際相手や妻について執拗に質問したり、悪口を言うことなど。
自分が受けている言動が以上の典型例に当てはまる場合、該当する行為について証拠を集めましょう。
証拠は、在職中のほうが圧倒的に集めやすくなります。



どこからがパワハラに当たるのか、線引きを知っておくと動きやすくなります。
証拠の種類と、集めるときの注意点
- 録音や録画
- メールやチャットの記録
- 日時と内容を書いたメモ
- 受診の記録や診断書
証拠には「何を証明できるか」の違いがあります。すべてをそろえる必要はなく、手に入るものから順に残していけば十分です。
→ 横にスクロールできます
| 証拠の種類 | 証明できること | 集めるときの注意 |
|---|---|---|
| 録音データ | 発言の内容と口調をそのまま | 自分が当事者の会話なら原則問題なし。相手の名前を呼ぶと特定しやすい |
| メール・チャットの画面 | 発信者と日時が明確 | 送信者名と日時が写る形で保存。会社の機密情報は持ち出さない |
| 業務命令・通達の書面 | 過大または過小な要求の裏づけ | 原本ではなく写しを保管する |
| 日記・メモ | 行為の継続性と経過 | その日のうちに書く。あとからまとめて書かない |
| 同僚の証言 | 第三者から見た状況 | 相手に迷惑がかからない形で。書面か録音で残す |
| 医師の診断書 | 心身への影響 | 職場の状況を医師に具体的に伝える |
パワハラの証拠になるものと注意点



「決定的な1つ」を探すより、小さな記録を積み重ねるほうが実際には有効です。繰り返されていること自体が、パワハラの重要な要素だからです。
パワハラの有用な証拠の例
国の窓口に相談したり、訴訟をする上で、客観的なパワハラ行為の証拠を集めることが非常に重要になります。
- 受けた言動を記録せず、記憶だけに頼る
- 証拠を集める前に退職し、社内資料を取れなくする
- 社内の窓口だけに相談し、対応されないまま我慢する
ここでは、パワハラを立証するために有用となる証拠の例について説明します。
メールやメッセンジャーアプリなどの文章
メール、あるいはLINEなどのメッセンジャーアプリなどで送られてきたパワハラ発言があれば、その画面を印刷したりスクリーンショットを撮って保存しましょう。
その時に大事なのは、その発言の発信者が誰だか分かるように記録を残しておくことです。
また、TwitterやFacebookなどのSNSでパワハラ発言があった場合も、同様に記録を残しておきます。
録音されたデータ
パワハラ行為とみなされるような暴言やプライバシー侵害発言があれば、その音声を録音しておきましょう。
録音には、スマートフォンの録音アプリや、小型のボイスレコーダーを使用するのがおすすめです。
録音する際には、できればパワハラ発言をしている相手の名前を呼んでおくと、その発言の主が誰かがはっきりと分かるため、有力な証拠となります。
写真または動画のデータ
写真や動画は情報量が多いため、パワハラ行為をしている現場を収めることができれば、非常に大きな証拠になります。
動画を撮影できる場合は、録音の際と同様に、相手の名前を呼んでおくとよいでしょう。
もし暴行を受けた場合は、自分の傷跡を撮影しておきましょう。
暴行に使った道具があれば、それについても撮影をしておきます。
ただ、写真や動画の撮影は難度が高いため、もし相手にバレた場合にパワハラがエスカレートしたり、証拠を隠滅させられる可能性もあります。
写真や動画の撮影は、無理に行わないようにしましょう。
業務命令などの通達
会社からの理不尽な配置転換や業務命令の通達があれば、その記録を保存しておきましょう。
過少な要求および過大な要求によるパワハラの証拠になります。
日記などの記録
パワハラ行為があった際に、その内容とともに、日時と場所について日記に記しておくと証拠になり得ます。
実際に、非公開のSNSにつけていたハラスメントの記録が有効な証拠になった例もあります。
パワハラを受けたら、その日のうちに、できるだけ詳細に記録をしておきましょう。
他者の証言
会社内の同僚による証言も、証拠になり得ます。
証言は、録音するか、文章の形で保存しておきましょう。
医師による診断書
パワハラ行為が原因となって心身の健康が損なわれて通院している場合、医師による診断書が証拠となります。
カルテにパワハラ行為の内容を詳しく記載してもらうとともに、それにより心身の健康がどのように損なわれているかについても詳しく書いてもらいましょう。



証拠は、思い出せるうちに形にしておくのが大切です。
録音は違法にならないのか
- 自分が当事者である会話の録音は原則として適法です
- 相手の許可は必ずしも必要ありません
- 無関係な会話まで録り続けないようにします
自分が参加している会話を録音することは、一般に違法とはされていません。裁判でも、著しく反社会的な手段で得たものでない限り、証拠として扱われるのが一般的です。
一方で、自分がいない場所に録音機を仕掛けて他人の会話を録るのは話が別です。プライバシーの侵害にあたる可能性があり、証拠としても認められにくくなります。録音するのは、自分が同席している場面にとどめてください。



自分が会話に加わっている録音なら、原則として問題ありません。
やってはいけない証拠の集め方
- 他人のパソコンや携帯を無断で見る
- 会社の機密情報を持ち出す
- 第三者の会話を盗聴する
証拠を集めるつもりが、逆に自分の立場を悪くしてしまうことがあります。次の行為は避けてください。
- 会社のサーバーやパソコンから業務データを持ち出す(就業規則違反や情報漏えいの問題になります)
- 加害者の自宅を撮影するなど、私生活の領域に踏み込む
- 無理に撮影を試みる(見つかった場合に行為がエスカレートしたり、証拠を処分される恐れがあります)
- SNSで実名を挙げて公表する(名誉毀損として、こちらが訴えられるリスクがあります)



必要なのは、あなたが受けたパワハラの記録だけです。会社の情報や相手の私生活にまで手を伸ばす必要はありません。
会社と直接やり取りせずに辞めたいときは
- 退職の意思を伝える
- 有給消化や退職日の交渉
- 離職票など必要書類の請求
相談窓口を回っても状況が変わらず、心身が限界に近いのであれば、退職は逃げではなく身を守る手段です。ただ、ハラスメントを受けている相手に「辞めます」と伝えるのは、想像以上に負担が大きいものです。
退職代行ローキは労働組合が運営しているため、団体交渉権にもとづいて会社と直接やり取りができます。あなたが会社へ行ったり、上司と話したりする必要はありません。
料金は19,800円(税込)で、内訳は組合加入費2,800円+組合費17,000円です。追加料金は原則不要です(※振込手数料やコンビニ後払いの手数料4,000円などを除きます)。相談はLINEか電話でできます。※LINEの相談は24時間受け付けていますが、会社への連絡は年中無休8時から18時までです。終業時間間際は担当者が不在のことが多く、翌日に折り返しとなる場合があるためです。
これ以上我慢して働き続ける必要はありません。
退職代行ローキは労働組合として会社と直接やり取りします。
料金は19,800円(税込)で、相談は無料です。



退職の連絡だけでなく、有給休暇の消化や離職票などの書類のやり取りも、私たちが会社との間に入ってお伝えします。あなたが上司と話す必要はありません。
まとめ
以上、パワハラ行為となる具体例と、パワハラの証拠の集め方について解説しました。
パワハラ行為の証拠を集めたら、まずは厚生労働省・労働局が設置している「総合労働相談コーナー」に相談しましょう。
無料で相談できる上、パワハラの実態調査に動いたあと、会社に働きかけたり、必要な専門機関を紹介したりしてくれます。
総合労働相談コーナー労働局による介入でも会社が動かない場合は、労働審判を活用します。
労働審判は、労働審判官と労働審判員2名からなる労働審判委員会が、当事者の労働者とパワハラ加害者の間の紛争を解決を目指す手続きです。
労働審判でも解決しない場合は、弁護士に相談して訴訟を起こすことになります。
これまでに集めた証拠を持って、労働問題を専門とした弁護士に相談するのがよいでしょう。
ただし、弁護士への相談は、費用が発生するため、そのコストとリターンをよく考える必要があります。



集め方を誤ると、こちらが不利になることがあります。
よくある質問(FAQ)
相手に無断で録音しても証拠になりますか?
自分が参加している会話であれば、一般に証拠として扱われます。著しく反社会的な手段で得たものでない限り、無断であることだけを理由に排除されるわけではありません。
どれくらいの期間、記録を続ければいいですか?
決まりはありません。ただしパワハラは繰り返し行われることが多く、1か月から数か月にわたる記録があると、継続性を示しやすくなります。
就業規則で録音が禁止されています。それでも録っていいですか?
ハラスメントから身を守るための記録まで一律に禁じられるわけではありません。ただし判断に迷う場合は、録音の事実を伏せたまま、まず相談窓口で状況を伝えて確認してください。
同僚に証言を頼んでも大丈夫でしょうか?
頼むこと自体に問題はありません。ただし同僚も社内で立場があるため、無理のない範囲で協力してもらってください。口約束ではなく、書面かメッセージの形で残しておくと確実です。
証拠を集めたあと、どこに持っていけばいいですか?
まずは都道府県労働局の総合労働相談コーナーが無料で利用できます。会社が対応しない場合はあっせんの案内を受けられます。慰謝料を請求したい場合は弁護士、会社と直接やり取りしたくない場合は労働組合という選択肢もあります。
会社を辞めてからでも証拠は使えますか?
使えます。退職後でも慰謝料の請求や労働審判の申立ては可能です。ただし社内にある資料は退職後に入手しにくくなるため、在職中に手元へ残しておいてください。
参考情報・出典
- e-Gov法令検索|労働施策総合推進法(パワハラ防止法)
- e-Gov法令検索|男女雇用機会均等法
- e-Gov法令検索|民法(第627条ほか)
- 厚生労働省|あかるい職場応援団(ハラスメント対策の総合情報サイト)
- 厚生労働省|総合労働相談コーナーのご案内
執筆者


労働基準調査組合 執行委員長
谷本 祥子
私は飲食店勤務やメーカー代理店勤務など、さまざまな仕事を経験してきました。メーカー代理店では、商品販売の営業職として働いていました。現場では長時間労働や無理なノルマ強要が当たり前で、私も同僚たちも皆疲弊しきっていました。従業員たちが「辞めたい」と申し出ても、会社は「後任が見つかるまで待て」とか「引き継ぎが終わるまでダメだ」と拒み続け、退職を認めませんでした。中には精神的に追い詰められて鬱病になり、ある日突然来なくなってしまう同僚もいました。
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私自身も会社の方針に疑問を感じ、労働環境の改善を上層部に提案しましたが、全く聞き入れてもらえませんでした。それどころか「部下をもっと厳しく指導しろ」と圧力をかけられる始末でした。私も心身ともに不調をきたしたため、退職を申し出ましたが、やはり引き止められ、なかなか辞めることができませんでした。
最終的に、労働問題に明るい仲間達の力を借りて退職することができました。この経験から「働く人たちがもっと気軽に、安心して退職できる仕組みが必要だ」と痛感しました。このような辛い経験をした自分だからこそ、労働者の立場に立って支援したいと考え、現在は労働基準調査組合の執行委員長として活動しています。
同じように悩み苦しむ方々が孤立せず、労働現場で生じるあらゆる労働問題に真摯に向き合い、実効性ある労働法に則った支援を行ってまいります。






