- 地域別最低賃金を下回れば50万円以下の罰金
- 労基署の司法処分は罰則で、差額は自動で戻らない
- 差額請求の時効は3年。言い出せないなら労組も選択肢

うちの給料、最低賃金を下回っている気がする…



労基署に言ったら、会社に仕返しされない?
結論からお伝えします。最低賃金法違反は「支払いが遅れている」という民事の問題ではなく、罰金が定められた法律違反です。地域別最低賃金を下回る賃金しか支払わなかった場合、会社と経営者は50万円以下の罰金に処せられることがあります。
給与明細を開いて、振込額だけ見てそのまま閉じる。その繰り返しのなかで、時給に割り戻すと最低賃金を割っていた、というご相談は実際に届きます。
本記事では、2026年8月に報じられた書類送検の事例を入口に、最低賃金法違反の罰則、労働基準監督署が動いたときに何が起きて何が起きないのか、自分の給料が最低賃金を下回っていないかの確かめ方、そして差額を取り戻す手順まで、労働組合の立場から解説します。
※この記事は2026年8月時点の情報をもとに作成しています。
11か月中10か月分の給料が未払い|2026年8月の書類送検事例
2026年8月12日のあいテレビの報道によると、松山労働基準監督署は、愛媛県松山市で障がい福祉サービス事業所を運営する合同会社と、その実質的な代表者である女性を、最低賃金法違反の疑いで松山地検に書類送検したと報じられています。
報道によれば、職員1人に対し、2024年4月1日から2025年2月28日までの11か月のうち10か月分、合計約170万円の給料を支払わなかった疑いが持たれています。労基署は捜査に支障があるとして、認否を明らかにしていないと報じられており、現時点では容疑の段階です。
- 賃金の不払いは刑事事件として立件されることがある
- 従業員1人分の未払いでも捜査と送検の対象になる
- 法人だけでなく代表者個人も同時に送検されている
「1人分だから相手にされない」と考えて我慢してしまう方は少なくありません。しかしこの事例のように、対象が1人であっても労基署は捜査を行い、検察へ送致することがあります。



「自分ひとりのことだから」と黙る理由には、実はならないんです。
最低賃金法違反の罰則は?地域別なら50万円以下の罰金
最低賃金法違反の罰則は、下回った最低賃金の種類によって変わります。都道府県ごとに決まる地域別最低賃金を下回った場合は50万円以下の罰金、特定の産業ごとに決まる特定最低賃金(産業別最低賃金とも呼ばれます)を下回った場合は30万円以下の罰金です。
この2種類は、根拠となる法律も違います。地域別最低賃金は最低賃金法そのものの罰則が適用され、特定最低賃金は賃金を全額支払うことを定めた労働基準法の違反として扱われます。
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| 下回った最低賃金の種類 | 罰則 | 根拠 |
|---|---|---|
| 地域別最低賃金(47都道府県ごと) | 50万円以下の罰金 | 最低賃金法40条 |
| 特定最低賃金(産業ごと) | 30万円以下の罰金 | 労働基準法120条 |
| 申告した労働者への報復(解雇など) | 6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金 | 最低賃金法39条 |
ここで押さえておきたいのは、罰金の対象になるのは会社だけではないという点です。冒頭の事例でも、法人と実質的な代表者の両方が書類送検されたと報じられています。
そして、「本人が納得していた」という反論は通りません。最低賃金を下回る賃金を定めた労働契約は、その部分が法律上無効になり、最低賃金額で契約したものとして扱われます。同意書にサインしていても、下回った分は会社の債務として残ります。
最低賃金を下回る合意は、サインしていても無効になります。差額はあとから請求できる賃金として残り続けます。



「納得して入社したから」とあきらめる必要はありませんよ。
労基署が動いても、未払いの差額が自動で戻るわけではない
ここが、多くの解説記事で語られない部分です。書類送検は、会社を処罰するための刑事手続きです。あなたの口座に差額が振り込まれる手続きではありません。
労働基準監督署は、法律違反を是正させる行政機関であり、あなたの代理人ではありません。是正勧告を受けて会社が支払うケースは実際に多いのですが、会社が応じないときに労基署が取り立てまで行ってくれるわけではないのです。未払い分を受け取るには、最終的にはあなた自身の請求という民事の行動が必要になります。
とはいえ、労基署の指導には確かな力があります。厚生労働省が2025年8月7日に公表した、賃金不払いが疑われる事業場への監督指導の結果を見てみます。
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| 項目(2024年) | 実績 |
|---|---|
| 監督指導を実施した件数 | 22,354件 |
| 対象になった労働者数 | 185,197人 |
| 実際に支払われた賃金額 | 162億732万円 |
| 不払い賃金の総額 | 172億1,113万円 |
不払い総額172億円に対し、実際に支払われたのが162億円です。指導によって9割以上が解決している一方で、年をまたいでも解決しない分が残っていることも読み取れます。労基署は強い味方ですが、丸投げして待つ場所ではない、というのが正確な理解です。
もうひとつ、この統計には約18万5千人という数字があります。賃金不払いは、あなただけに起きている特殊な出来事ではありません。



労基署は「罰する機関」。「取り返してくれる機関」ではないんです。
自分の給料は最低賃金を下回っている?計算方法と含めない手当
確かめ方はシンプルです。最低賃金制度が守られているかは、毎月決まって支払われる基本的な賃金だけを取り出し、時間あたりの金額に直して、お住まいの都道府県の地域別最低賃金と比べれば判断できます。時間額が最低賃金額未満なら、その月は違反の状態です。
時給制ならその時給をそのまま比べます。日給制は日給を1日の所定労働時間で割ります。月給制は月給を1か月あたりの平均所定労働時間で割って、時間額を出します。
間違えやすいのが、何を「基本的な賃金」に含めるかです。総支給額をそのまま割ってしまうと、実際は最低賃金を割っているのに気づけません。厚生労働省は、次の6つを最低賃金の計算に含めないと示しています。
- 結婚手当など、臨時に支払われる賃金
- 賞与など、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
- 残業代・休日手当・深夜割増などの割増賃金
- 精皆勤手当、通勤手当、家族手当
特に注意したいのが、固定残業代(みなし残業代)が含まれた月給です。たとえば月給20万円のうち4万円が固定残業代なら、最低賃金と比べる対象は16万円のほうです。求人票の「月給20万円」で判断すると、実態を見誤ります。
なお、都道府県労働局長の許可があれば最低賃金を減額できる特例もあります。試用期間中の方や、軽易な業務に従事する方などが対象です。ただし許可が必要な制度であり、会社が勝手に「試用期間だから」と下げてよいものではありません。



比べるのは総支給額ではありません。手当を外した「素の賃金」です。
2026年度は全国平均1,176円へ|改定期は「気づかない最賃割れ」が起きやすい
いま最低賃金は毎年大きく上がっています。2026年7月28日、中央最低賃金審議会は2026年度の引き上げ目安を、Aランク54円、Bランク56円、Cランク56円と答申しました。すべての都道府県が目安どおりに改定すれば、全国加重平均は55円上がって1,176円になります。
ここで多くの方が見落とすのが、発効日が都道府県ごとに違うという点です。2025年度の改定を見ると、東京は10月3日に発効した一方、愛媛は12月1日、秋田にいたっては翌年3月31日でした。「10月から上がるはず」という思い込みは、地域によって当てはまりません。
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| 都道府県 | 2025年度の時間額 | 発効日 |
|---|---|---|
| 東京 | 1,226円 | 2025年10月3日 |
| 大阪 | 1,177円 | 2025年10月16日 |
| 愛媛 | 1,033円 | 2025年12月1日 |
| 秋田 | 1,031円 | 2026年3月31日 |
| 全国加重平均 | 1,121円 | — |
時給制の方は改定に合わせて時給が上がるため、比較的気づきやすい立場にあります。危ないのは月給制です。月給の額面が据え置かれたまま最低賃金だけが上がると、去年は適法だった給料が、発効日を境に最低賃金法違反の状態になります。会社に悪意がなくても起こる現象です。
- 月給が数年間まったく変わっていない
- 基本給は低く、固定残業代の割合が大きい
- 所定労働時間が長い(月の労働時間が175時間を超える)
3つのうち2つ以上が当てはまるなら、いちど時間額に割り戻して確認してみてください。



最低賃金が上がる季節は、月給制の方こそ計算のしどきですよ。
最低賃金を下回っていたときに、今日からできること
やることは3つです。証拠を残す、会社に請求する、動かないなら労基署へ申告する。この順番で進めます。
証拠として強いのは、給与明細、雇用契約書や労働条件通知書、そして実際の労働時間がわかるものです。タイムカードの写真、勤怠システムの画面、シフト表、業務用チャットの送信時刻でも構いません。在職中に手元へコピーしておくことが何より大事です。退職後は取り寄せに時間がかかります。
- 給与明細と勤怠記録をそろえ、差額を月ごとに計算する
- 会社へ支払いを求める。記録が残る書面やメールで行う
- 応じないときは労働基準監督署へ申告し、是正を求める
「申告したら報復されるのでは」という不安については、法律にはっきりした答えがあります。労働者は違反の事実を労基署に申告できると定められており、申告したことを理由に解雇その他の不利益な取り扱いをすることは、使用者に禁止されています。違反すれば6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です。
また、相談や申告の際に、自分の氏名を会社へ伝えないでほしいと申し出ることもできます。会社に知られる形でしか動けない、という制度ではありません。どこへ相談してよいか迷う場合は、各都道府県の労働局にある総合労働相談コーナーが無料の入口になります。
期限にも注意が必要です。賃金を請求できる権利は、支払日から3年で時効によって消滅します。3年前の給料は取り戻せても、4年前の分は請求できません。毎月1か月分ずつ、請求できる範囲が消えていきます。
賃金の請求権は支払日から3年で消えます。迷っている間にも、いちばん古い月の分から権利が失われていきます。
会社への請求そのものについては、給与の支払いがなかった場合に請求してもらうことは可能ですか?と未払い残業代を請求してもらうことは可能ですか?でも、実際のご相談をもとに説明しています。



証拠は在職中にそろえておく。これが後で効いてきます。
言い出せないまま辞めたいなら、労働組合の退職代行という方法も
先にお伝えしておきます。会社が支払いを完全に拒み、裁判で決着をつける前提なら、弁護士へ依頼するのが適しています。労働組合は会社と交渉する権限を持っていますが、訴訟の代理はできないためです。公務員やみなし公務員の方も、労働組合の退職代行では対応できません。
そのうえで、「最低賃金を割った給料のまま働き続けたくない。でも上司に切り出せない」という方には、労働組合が運営する退職代行という選択肢があります。退職代行ローキは、労働委員会の資格審査を経た労働組合「労働基準調査組合」が運営しており、19,800円(税込)で退職の意思伝達から、有給休暇の消化・退職日の交渉、未払い給与の支払い申し入れまで対応します。
未払い分の請求について、できることとできないことを正直にお伝えします。タイムカードのコピーなどの証拠がそろっていて、金額をご本人が計算されているのであれば、退職の連絡と合わせて追加料金なしで請求します。当組合から請求することで支払いに応じる会社は多いです。ただし、それでも支払われない場合は、ご自身で労働審判を申し立てられたほうが費用対効果は高くなります。その判断も含めてご相談ください。
退職したことを理由に会社から損害賠償請求や懲戒解雇処分を受けた場合は、顧問弁護士が追加料金なしで撤回交渉に対応します。ただし、退職とは無関係な請求や故意による損害は対象外です。この「追加料金なし」という言葉は、どこまでを指すのかを確かめないと、読んだ側の判断だけが先に進んでしまいます。範囲を確認してから比べてください。
- 退職の意思伝達と引き止めへの対応
- 有給休暇の消化・退職日の交渉
- 未払い給与や退職金の支払い申し入れ
- 退職書類が届くまでのサポート(期限なし・無料)
ご相談はLINEか電話で受け付けています。労働組合は法律にもとづいて会社と交渉する権限を持つため、退職日や有給の扱いを「お願い」ではなく交渉として進められます。当組合がご依頼を受けて退職できなかった方は、これまでいらっしゃいません。※退職代行として対応できる範囲での実績です。
退職代行ローキのサービス内容は、キャリアバディのローキ紹介記事やマイベストの退職代行比較など、外部メディアでも紹介されています。退職後の転職についても、退職代行ローキは転職支援サービスのキャリアバディと連携しているため、退職のご依頼とあわせてご相談いただけます。



出社も電話も不要です。言いにくいことは、こちらが代わりに伝えます。
最低賃金法違反に関するよくある質問(FAQ)
最低賃金法違反の罰則はいくらですか?
都道府県ごとの地域別最低賃金を下回った場合は50万円以下の罰金です(最低賃金法40条)。産業ごとの特定最低賃金を下回った場合は、労働基準法違反として30万円以下の罰金になります。法人と代表者の両方が対象になることがあります。
会社と合意していれば、最低賃金を下回っても問題ないですか?
問題があります。最低賃金額に達しない賃金を定めた労働契約は、その部分が無効となり、最低賃金額で契約したものとみなされます(最低賃金法4条2項)。同意書にサインしていても、下回った分は請求できる賃金として残ります。
労基署に申告したら、会社から仕返しをされませんか?
申告したことを理由に解雇その他の不利益な取り扱いをすることは、使用者に禁止されています(最低賃金法34条2項)。違反した場合は6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です。相談や申告の際に、氏名を会社へ伝えないでほしいと申し出ることもできます。
最低賃金との差額は、いつまでさかのぼって請求できますか?
賃金の請求権の時効は、支払日から3年です(労働基準法115条および附則143条3項。退職手当は5年)。3年より前の分は請求できなくなるため、気づいた時点で計算と証拠の確保を始めることが大切です。
最低賃金を下回る給料のまま辞めたい場合、退職代行で請求できますか?
労働組合が運営する退職代行なら、退職の連絡と合わせて未払い分の支払いを申し入れられます。退職代行ローキでは、証拠がそろい金額をご本人が計算されている場合、追加料金なしで請求します。会社が応じないときは、ご自身での労働審判のほうが費用対効果は高くなります。
まとめ|罰則は会社に科されるもの。差額を取り戻すのは自分の行動から
最低賃金法違反には、地域別最低賃金で50万円以下の罰金という罰則があります。2026年8月に報じられた書類送検の事例のように、対象が従業員1人であっても刑事事件になることがあります。会社との合意があっても、下回った分は無効です。
ただし、罰則は会社に科されるものであって、あなたの差額が自動で戻る仕組みではありません。取り戻すために必要なのは、給与明細と勤怠記録をそろえること、時間額に割り戻して差額を出すこと、そして請求することです。時効は3年です。
判断の軸をひとつだけ挙げるなら、「その会社にいる限り差額を言い出せるか」です。言い出せないまま3年が過ぎるくらいなら、退職と請求をまとめて他人に任せてしまったほうが、消耗せずに済みます。退職代行ローキは労働組合として、退職の連絡から有給消化・退職日の交渉、未払い給与の申し入れまで一括で対応します。LINEなら24時間受け付けています。



我慢の時間まで、会社に差し出す必要はありませんよ。
最低賃金を割った給料のことも、まずはLINEで状況をお聞かせください。
退職代行ローキは労働組合として会社と直接交渉します。
料金は19,800円(税込)で、相談は無料です。
参考情報・出典
・あいテレビ「「11か月中10か月」給料払わず…障害福祉事業所の63歳実質代表者を書類送検 約170万円未払いの疑い」(2026年8月12日)
・e-Gov法令検索「最低賃金法」(4条・7条・34条・39条・40条)
・e-Gov法令検索「労働基準法」(115条・120条・附則143条)
・大阪労働局「最低賃金法の違反の罰則について」
・厚生労働省「賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和6年)を公表します」(2025年8月7日)
・厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」(令和7年度)
・厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について」(2026年7月28日答申)
・厚生労働省 最低賃金特設サイト「対象となる賃金は?」
執筆者


労働基準調査組合 執行委員長
谷本 祥子
私は飲食店勤務やメーカー代理店勤務など、さまざまな仕事を経験してきました。メーカー代理店では、商品販売の営業職として働いていました。現場では長時間労働や無理なノルマ強要が当たり前で、私も同僚たちも皆疲弊しきっていました。従業員たちが「辞めたい」と申し出ても、会社は「後任が見つかるまで待て」とか「引き継ぎが終わるまでダメだ」と拒み続け、退職を認めませんでした。中には精神的に追い詰められて鬱病になり、ある日突然来なくなってしまう同僚もいました。
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私自身も会社の方針に疑問を感じ、労働環境の改善を上層部に提案しましたが、全く聞き入れてもらえませんでした。それどころか「部下をもっと厳しく指導しろ」と圧力をかけられる始末でした。私も心身ともに不調をきたしたため、退職を申し出ましたが、やはり引き止められ、なかなか辞めることができませんでした。
最終的に、労働問題に明るい仲間達の力を借りて退職することができました。この経験から「働く人たちがもっと気軽に、安心して退職できる仕組みが必要だ」と痛感しました。このような辛い経験をした自分だからこそ、労働者の立場に立って支援したいと考え、現在は労働基準調査組合の執行委員長として活動しています。
同じように悩み苦しむ方々が孤立せず、労働現場で生じるあらゆる労働問題に真摯に向き合い、実効性ある労働法に則った支援を行ってまいります。





