退職代行ローキ(労働基準調査組合)

退職を認めず出社と引継ぎを求め続けた会社と協議し、書面での回答を経て退職が確定した事例

  • 2026.09.01
  • 2026.09.01
実行日 2026年8月
組合員 Yさん
年齢 40代
地域 千葉県
職種 営業職
雇用形態 正社員
トラブル種別 退職拒否、出社・引継ぎの要求

1.相談に至るまでの経緯


組合員のYさんは、勤務先を退職すると決めましたが、会社と直接やり取りすることに不安を抱えていたため、退職手続を当組合に任せることにしました。

当組合は、Yさんの退職意思を会社へ伝えるとともに、退職日や必要な手続について団体交渉を申し入れました。

しかし、会社は退職の申し出に容易に応じず、Yさんに出社や業務の引継ぎを求める姿勢を示しました。

Yさんは会社と直接やり取りせずに退職したいと考えていましたが、会社が出社と引継ぎを求め続けたため、退職日がなかなか確定しない状態が続きました。

会社が求めた内容は、次のとおりです。

 

1.退職の申し出には容易に応じないこと
2.Yさんが出社して対応すること
3.業務の引継ぎを終わらせること

 

退職の意思を伝えているにもかかわらず、会社との認識が食い違っていたため、慎重な対応が必要となりました。
 

2.本件の法的な問題点

(1)期間の定めのない雇用契約では、会社の承諾がなくても退職を申し入れることができる


Yさんは正社員であり、雇用期間の定めのない労働契約を締結していました。

民法第627条第1項では、雇用期間を定めていない場合、当事者はいつでも解約を申し入れることができ、原則として申入れから2週間が経過すると雇用が終了すると定められています。

そのため、会社が「退職を認めない」と述べたことだけで、退職が妨げられるわけではありません。当組合は、Yさんの雇用契約の内容と、退職の意思をいつ・どの方法で伝えたかを、Yさんに確認して整理しました。
 

(2)引継ぎや出社の要求と、退職できるかどうかは区別して考える必要がある


労働契約法第3条第4項は、労働者と使用者が、労働契約を遵守し、信義に従い誠実に権利を行使し、義務を履行しなければならないと定めています。退職日までに必要な引継ぎに協力することは望ましいといえます。

しかし、引継ぎが必要だという事情だけで、退職をいつまでも認めないことが当然に許されるわけではありません。引継ぎの内容や方法は、書面による引継ぎなど、退職日までにできる範囲で協議して決めることができます。

ただし、退職日までは雇用契約が続いているため、出社しない日の扱いは、有給休暇の取得や欠勤の扱いなどを踏まえて整理する必要があります。当組合は、退職の話と、出社・引継ぎの方法を分けて話し合うことにしました。
 

(3)会社との見解の相違が大きかった


会社と当組合の見解がぶつかっていました。

そこで、法律の解釈にかかわる点は当組合で判断せず、顧問弁護士の助言を受けたうえで、当組合として会社へ回答することにしました。
 

3.労働組合による会社への対応


当組合は、労働組合法第6条に基づき、組合員のために会社へ通知および団体交渉の申入れを行いました。

実際に行った対応は、次のとおりです。

 

1.Yさんの経緯と希望を確認し、会社へ退職意思を伝えて団体交渉を申し入れること
2.会社の要求と主張を整理し、退職の話と引継ぎの話を分けて検討すること
3.法律の解釈にかかわる点について、顧問弁護士に助言を求めること
4.当組合から会社へ書面で回答し、退職手続を進めるよう求めること
5.当組合が窓口となって会社からの連絡や回答を受け、Yさんが会社と直接やり取りする負担を抑えること

 

会社との協議は複数回にわたりましたが、当組合は、退職の話と出社・引継ぎの話を分けて協議を続けました。
 

4.結果および成果


当組合が会社と複数回にわたって協議し、顧問弁護士の助言を受けて書面で回答した結果、会社は最終的にYさんの退職を認めました。

その後、次の対応がありました。

 

1.会社がYさんの退職を認めた
2.出社・引継ぎの要求は、退職とは切り分けて協議された
3.会社から退職関係の書類が届き、退職手続が進んだ

 

これにより、退職日が決まらないまま出社と引継ぎを求められ続けるという状態は解消されました。

Yさんは、当組合を通じて協議を進めたことで、会社と直接やり取りすることなく退職手続を進めることができました。
 

5.組合としての総括


退職したい労働者に対して、会社が「出社して説明してほしい」「引継ぎを終わらせてほしい」「このままでは退職を認められない」と求めることがあります。

会社が引継ぎを必要とする事情は理解できますが、退職できるかどうかと引継ぎの問題は、分けて考える必要があります。期間の定めのない雇用契約では、労働者による退職の申入れは、原則として会社の承諾を成立要件とするものではありません。

本件で重要だったのは、会社の要求をそのまま受け入れるのでも、感情的に反論するのでもなく、会社の主張を整理し、顧問弁護士の助言を受けたうえで、書面で回答したことです。

その結果、会社が退職を認め、退職関係の書類の送付と退職手続の進行につながりました。

当組合は今後も、雇用関係に関する退職日、退職手続、退職に伴う金銭の問題等について、使用者に処分可能な事項の範囲内で、労働組合法に基づく団体交渉を通じて組合員の権利を守ってまいります。
 

6.本件で問題となり得た主な法令・参考判例

民法第627条第1項


期間の定めのない雇用契約では、当事者はいつでも解約を申し入れることができ、原則として申入れから2週間が経過することで契約が終了します。

本件では、Yさんが正社員として期間の定めのない雇用契約で勤務していたため、会社が退職を認めない姿勢を示した場面での基本的な法的根拠として関係しました。

参考リンク:e-Gov法令検索「民法」
 

労働契約法第3条第4項


労働者および使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、義務を履行しなければならないと定めています。

本件では、会社が引継ぎを求めたため、退職日までの引継ぎへの協力と、退職そのものの効力を区別する上で関係しました。

参考リンク:e-Gov法令検索「労働契約法」
 

労働組合法第6条


労働組合の代表者または労働組合から委任を受けた者は、労働組合または組合員のために、使用者と交渉する権限を有します。

当組合は同条に基づき、Yさんの退職日、出社・引継ぎの扱いおよび本人への連絡方法について、会社へ通知し、団体交渉を行いました。

参考リンク:e-Gov法令検索「労働組合法」
 

参考判例


高野メリヤス事件
東京地方裁判所・昭和51年10月29日判決

民法第627条が定める期間を超えて、労働者の辞職予告期間を就業規則等で延長することの効力が問題となった事例です。期間の定めのない労働契約における退職の効力を検討する上で参考となります。

参考リンク:厚生労働省「退職、解雇、雇止めなど」

※本事例は、個人および会社を特定できないよう、一部を匿名化・一般化しています。
※記載した法令は、会社の具体的な対応によって問題となり得る法令であり、本件において法令違反が確定したことを意味するものではありません。
※法的評価は、雇用契約の内容、会社の対応、証拠その他の個別事情によって異なります。
 

退職代行はローキにお任せください