退職代行ローキ(労働基準調査組合)

最終出勤日と退職日の一致を求められた会社と交渉し、通知から2週間後の退職日で合意した事例

  • 2026.06.30
  • 2026.07.02
実行日 2026年6月
組合員 Aさん
年齢 30代
地域 東京都
職種 営業職
雇用形態 正社員
トラブル種別 退職日の引き延ばし、欠勤不承認

1.相談に至るまでの経緯

組合員のAさんから、「精神的な負担が大きく、これ以上出勤を続けることが難しいため、退職代行を利用して退職したい」との相談が寄せられました。

Aさんは、すでに心身ともに疲弊しており、退職する意思を固めていました。

一方、会社は「最終出勤日を退職日とすること」を強く求め、欠勤や退職日の調整を認めない姿勢を示していました。

Aさんが希望していたのは、次の3点です。
 

1.これ以上、出勤を続けないこと
2.会社と直接話をしないこと
3.可能であれば、欠勤扱いのまま退職日まで進めること
 

しかし、会社が最終出勤日と退職日を一致させるよう求めていたため、Aさん自身で退職日の調整を進めることは、精神的にも困難な状況でした。

そこでAさんは、会社とのやり取りと退職日の調整を求め、当組合へ相談しました。

2.本件の法的な問題点

(1)期間の定めのない雇用契約では、退職の意思表示から原則2週間で契約が終了する

Aさんは正社員であり、雇用期間の定めのない労働契約を締結していました。

民法第627条第1項では、雇用期間を定めていない場合、当事者はいつでも解約を申し入れることができ、その申入れから2週間が経過することで雇用契約が終了すると定められています。

そのため、労働者が辞職の意思を明確に通知した場合、会社の承諾を得なければ退職できないわけではありません。厚生労働省も、期間の定めのない労働契約については、労働者からの退職申入れ後、原則として2週間で契約が終了すると案内しています。

(2)最終出勤日と退職日は、必ずしも同じ日である必要はない

最終出勤日は、労働者が実際に最後に出勤した日です。一方、退職日は、雇用契約が終了する日を意味します。

両者を必ず同じ日にしなければならないとする法律上の規定はありません。そのため、有給休暇、会社が認めた出勤免除、欠勤等により、最終出勤日より後の日を退職日とすることはあり得ます。

ただし、退職日までの就労義務が当然になくなるわけではありません。また、欠勤が当然に承認されるわけでもなく、欠勤期間の賃金や服務上の取扱いについては、就業規則や個別の事情を踏まえて判断する必要があります。

したがって、「欠勤を認めない」という会社の主張と、「退職の意思表示から2週間後に雇用契約が終了する」という問題は、分けて整理する必要がありました。

(3)精神的な負担が強い労働者への対応には、心身の状態を踏まえた配慮が求められる

Aさんは、精神的な負担から出勤を続けることが難しく、会社と直接話すことにも強い負担を感じていました。

労働契約法第5条は、使用者に対し、労働者が生命や身体等の安全を確保しながら働けるよう、必要な配慮を求めています。心身の状態を会社が把握している場合には、出勤を求める方法や本人への連絡方法についても、個別の事情に応じた慎重な対応が必要となる可能性があります。

もっとも、精神的な負担があることだけで、直ちに就労義務がなくなるわけではありません。本件では、Aさんの状態を会社へ伝えた上で、退職日まで出勤を継続しない取扱いについて交渉する必要がありました。

3.労働組合による会社への対応

当組合は、労働組合法第6条に基づき、組合員のために会社へ通知および団体交渉の申入れを行いました。

会社に対して、実際に次の事項を通知し、交渉しました。
 

1.Aさんが退職する意思を明確に固めていること
2.Aさんの雇用契約には期間の定めがなく、民法第627条第1項が関係すること
3.退職意思の通知日から2週間が経過する日を退職日とすること
4.最終出勤日と退職日を必ず一致させる必要はないこと
5.Aさんの精神状態から、これ以上の出勤継続が困難であること
6.Aさん本人に対する直接的な圧力や過度な接触を控えること
 

会社は当初、「退職日は最終出勤日に限る」と強く主張していました。

これに対し、当組合は、退職の効力と退職日までの出勤の取扱いを分けて整理し、会社との交渉を継続しました。

4.結果および成果

交渉の結果、会社は、当組合がAさんの退職意思を通知した日から2週間が経過する日を退職日とすることに合意しました。

これにより、Aさんは出勤を継続することなく、退職日までの手続を進めることができました。

当初、会社は最終出勤日と退職日を一致させるよう求めていましたが、民法第627条第1項に基づく退職の効力と、退職日までの出勤の取扱いを区別して交渉したことで、不要な対立を拡大させずに退職日を確定できました。

また、Aさんは「もう出勤を続けなくてよい」という安心感を得たことで、精神的な負担が大幅に軽減されました。

本件で最終的に確認できた成果は、通知から2週間後の退職日について労使間で合意し、Aさんが出勤を継続することなく退職手続を進められたことです。

5.組合としての総括

会社から「最終出勤日を退職日にしなければならない」「欠勤を認めない」と言われると、「出勤できなければ退職もできないのではないか」と不安を感じる労働者は少なくありません。

しかし、期間の定めのない雇用契約では、労働者が辞職の意思を明確に通知した場合、原則として通知から2週間が経過することで雇用契約が終了します。会社の承諾がなければ退職できないというものではありません。

一方で、退職の効力と、退職日までの出勤、欠勤、賃金等の取扱いは別の問題です。退職意思を通知しただけで、退職日までの就労義務や欠勤に伴う問題がすべてなくなるわけではありません。

本件で重要だったのは、退職そのものの効力と退職日までの出勤の取扱いを混同せず、Aさんの心身の状態を会社へ伝えた上で、出勤を継続しないことと退職日の双方を交渉した点です。

労働組合は、組合員の労働条件や待遇など、会社が判断し処理できる事項について、組合員のために会社と団体交渉を行うことができます。Aさんに代わって労働関係上の交渉窓口となったことで、Aさんが会社と直接話す負担を抑えながら、退職日の調整を進めることができました。

当組合は今後も、雇用関係に関する退職日、最終出勤日、欠勤、出勤免除等の問題について、使用者に処分可能な事項の範囲内で、労働組合法に基づく団体交渉を通じて組合員の権利を守ってまいります。

6.本件で問題となり得た主な法令・参考判例

民法第627条第1項

期間の定めのない雇用契約では、当事者はいつでも解約を申し入れることができ、原則として申入れから2週間が経過することで契約が終了します。

本件では、Aさんが正社員として期間の定めのない雇用契約で勤務していたため、退職日の決定に直接関係しました。

参考リンク:e-Gov法令検索「民法」

労働契約法第5条

使用者は、労働者が生命や身体等の安全を確保しながら働けるよう、必要な配慮をするものとされています。

本件では、Aさんが精神的な負担から出勤継続が困難であると申し出ていたため、会社の具体的な対応によっては、心身の状態を踏まえた配慮が問題となる可能性がありました。

参考リンク:e-Gov法令検索「労働契約法」

労働組合法第6条

労働組合の代表者または労働組合から委任を受けた者は、労働組合または組合員のために、使用者と交渉する権限を有します。

当組合は同条に基づき、Aさんの退職日、退職日までの出勤の取扱いおよび本人への連絡方法について、会社へ通知し、団体交渉を行いました。

参考リンク:e-Gov法令検索「労働組合法」

参考判例

高野メリヤス事件
東京地方裁判所・昭和51年10月29日判決

民法第627条が定める期間を超えて、労働者の辞職予告期間を就業規則等で延長することの効力が問題となった事例です。期間の定めのない労働契約における退職の効力を検討する上で参考となります。

参考リンク:厚生労働省「退職、解雇、雇止めなど」

※本事例は、個人および会社を特定できないよう、一部を匿名化・一般化しています。
※記載した法令は、会社の具体的な対応によって問題となり得る法令であり、本件において法令違反が確定したことを意味するものではありません。
※法的評価は、雇用契約の内容、会社の対応、証拠その他の個別事情によって異なります。

退職代行はローキにお任せください