- 試用期間中の本採用拒否も解雇。合理的な理由がなければ無効
- 理由が示されないなら、解雇理由証明書を書面で請求できる
- 争うか、条件を整えて辞めるか。退職の交渉は労組運営のローキも選べる

試用期間なら、会社は自由にクビにできるの?



「不適格」とだけ言われて、理由が分からない…
突然設定された面談の席で、「本採用はしない」と告げられる。遅刻も欠勤もなく、注意を受けたこともないのに、理由は「不適格」の一言だけ。試用期間中だから仕方がないと、その場で受け入れてしまう方は少なくありません。
日本銀行に中途入行した50代の女性職員が、入行から5か月足らずで本採用を拒否され、「内部通報を理由とする不利益な扱いで無効だ」として東京地裁に提訴しました。この記事では、報じられている経緯を整理したうえで、試用期間中の本採用拒否がどんなときに無効になるのか、理由を示されないときにまず何をすべきか、争う場合と辞める場合それぞれで確かめておきたいことを解説します。
※この記事は2026年10月時点の情報をもとに作成しています。
何が起きた?内部通報の後、入行5か月で本採用を拒否されたとして提訴
結論から言うと、通報の後に本採用を拒否され、職場への立ち入りも禁じられた職員が、拒否は通報への報復で無効だとして、職員としての地位の確認などを求めた事案です。原告側の説明として報じられている経緯は次のとおりです。
| 時期 | 報道されている内容 |
|---|---|
| 2026年4月1日 | 民間金融機関で管理職を務めていたAさんが、日本銀行に中途入行(試用期間は9月30日まで) |
| 5月21日 | 日銀のシステムに国際基準への対応の遅れがあるとする報告資料を、検査部門と内部通報の責任者に送る |
| 8月27日 | 面談で本採用の拒否を通知される。理由は「勤務実績が不十分」「従業員として不適格」の2点。9月30日までの勤務も免除すると告げられる |
| 8月28日・31日 | Aさんは出勤を続け、総裁・副総裁に改めて内部通報する |
| 9月4日 | 書面で、退行と庁舎への立ち入り禁止を命じられる |
| 9月5日 | 代理人の弁護士が、内容証明郵便で撤回と理由の開示を求める。回答は抽象的な内容だったとされる |
| 9月30日 | 地位保全と賃金の仮払いを求める仮処分を申し立てる |
| 10月1日 | 地位確認と慰謝料などを求めて東京地裁に提訴 |
出典:弁護士JPニュース「日銀で『送金システム不備』内部通報したら『庁舎立ち入り禁止』…50代女性職員が無遅刻無欠勤も『入行5か月』で本採用拒否され提訴」(2026年10月5日)をもとに作成。
Aさんは、それまで無遅刻無欠勤で、注意や警告を受けたこともなかったと話しています。「どのような命令に、どのように従わなかったのか教えてほしい」と何度尋ねても、具体的な理由は示されなかったと報じられています。
一方で、原告側によると、日銀側は本採用拒否の理由として「本行の管理職として、組織の置かれた事情や様々な制約を正しく理解し、それを前提に柔軟な視点で企画判断を行うことが十分にできていない」と書面に記載したとされています。拒否が通報を理由とするものだったかどうかは、これから裁判で判断されます。今後の続報があり次第、本記事を更新します。



勤務態度に問題がなかったと本人が感じていても、拒否は突然来ます。だからこそ、仕組みを先に知っておいてほしい事例です。
本採用拒否は違法?試用期間中でも「解雇」と同じルールがかかる
試用期間中の本採用拒否は、法的には解雇にあたります。そのため、会社が自由にできるものではなく、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる場合に限って有効になります。理由がはっきりしない本採用拒否は、無効を主張して争うことができます。
試用期間は「いつでも辞めさせられる期間」ではない
試用期間付きの雇用は、入社の時点で雇用契約はすでに成立していて、会社が「適性がないと分かったら契約を解約する権利」を残している状態だと考えられています(解約権留保付労働契約)。最高裁は、この解約の権利を使えるのは、その目的に照らして客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる場合に限られると判断しました(三菱樹脂事件・最高裁昭和48年12月12日大法廷判決)。
同じ判決は、試用期間中の解約は、本採用後の通常の解雇より広い範囲で認められるとも述べています。会社が採用時には分からなかった適性を見極めるための期間だからです。つまり、「試用期間だから何でもあり」ではないものの、「本採用後と同じくらい厳しい」わけでもない、というのが法的な位置づけです。
| 試用期間中の本採用拒否 | 本採用後の解雇 | |
|---|---|---|
| 法的な性質 | 解雇(解約権の行使) | 解雇 |
| 有効になる条件 | 客観的に合理的な理由と、社会通念上の相当性が必要 | 同じく必要(労働契約法16条) |
| 認められる範囲 | 通常の解雇より広い | 試用期間中より狭い |
| 解雇予告 | 働き始めて14日を超えたら必要 | 必要 |
試用期間中でも、本採用拒否には理由が必要です。「不適格」の一言だけで、何がどう不足していたのか説明できない拒否は、争う余地があります。
「能力不足」を理由にされたら?
能力不足を理由にした本採用拒否が認められるかどうかは、どんな能力を前提に採用されたか、会社が具体的に指導したか、改善の機会があったかによって変わります。経験者として即戦力を求められた中途採用と、新卒採用とでは、求められる水準も違います。注意や指導を一度も受けていないのに、期間の途中で突然「不十分」とされた場合は、判断の根拠を確かめる意味が大きくなります。
- 拒否の理由が具体的に示されているか(いつ、どの業務の、どの点か)
- 会社が注意や指導をし、改善の機会を与えたか
- 残りの試用期間を待たずに結論を出す必要があったか
試用期間を延長されたら?
本採用を拒否する代わりに、試用期間の延長を告げられることもあります。延長は、就業規則や雇用契約書に延長の定めがあり、延長が必要な合理的な事情がある場合に限って認められると考えられています。定めがないまま延長されたり、理由の説明がないまま何度も延ばされたりした場合は、延長の根拠を書面で確かめてください。延長された期間の後の本採用拒否にも、同じように合理的な理由が必要です。
通報の後に本採用を拒否されたら
会社の不正や法令違反を通報したことを理由とする解雇は、公益通報者保護法で無効とされ、降格や減給などの不利益な扱いも禁じられています。ただし、保護を受けるには、通報の内容や通報先などの要件を満たす必要があり、「通報が理由だった」ことをめぐって争いになりやすいのが実情です。通報した人の保護と、2026年12月に施行される改正法の内容は、『自宅待機命令は違法?看護師3人の解雇・配転を無効とした2,000万円支払判決』で詳しく解説しています。



「試用期間だから仕方ない」と思う前に、その理由で本当に足りるのかを確かめてください。
本採用を拒否されたら、まず何をする?理由を書面で確かめる
まず、拒否の理由を書面で確かめることです。口頭で告げられただけの理由は、後から言い換えられることがあります。そのうえで、その場で退職届にサインしないこと、言われた内容を記録しておくことが、争う場合にも辞める場合にも土台になります。
解雇理由証明書を請求する
解雇された人は、会社に解雇の理由を書いた証明書を請求できます。会社は、請求されたら遅滞なく交付しなければなりません。解雇を予告された日から退職の日までの間でも請求できます。今回の事案でも、代理人の弁護士が内容証明郵便で理由の開示を求めています。抽象的な理由しか書かれていなかったときは、どの業務のどの点が問題だったのかを重ねて尋ねましょう。
14日を超えていれば、解雇予告か予告手当が必要
会社が人を解雇するときは、30日前までに予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければなりません。試用期間中の人でも、働き始めてから14日を超えていれば、このルールが適用されます。「試用期間だから予告はいらない」と言われても、14日を超えていれば当てはまりません。
「自分から辞めたことにして」と言われたら
本採用を拒否する代わりに、「経歴に傷がつかないように」と自己都合での退職届を求められることがあります。退職届を出すと、解雇ではなく自分から辞めたことになり、本採用拒否の理由を争うことが難しくなります。失業保険でも、解雇であれば重大な理由による解雇を除いて「特定受給資格者」と判断されるのが原則ですが、自己都合の退職届を出すと不利に扱われるおそれがあります。離職理由の扱いは『「退職時は自己都合」にサインさせられたら無効?離職理由は実態で決まる|雇止め・退職勧奨の対処法』でも解説しています。
- 面談の場で渡された退職届や合意書に、その場でサインする
- 理由を確かめないまま、私物の引き取りや貸与品の返却だけを先に済ませる
- 会社の資料や顧客情報を、証拠のつもりで持ち出す
- 告げられた日時、相手、理由として言われた言葉をメモする
- 解雇理由証明書を、メールなど記録が残る形で請求する
- 働き始めた日を確かめ、14日を超えていれば予告手当の扱いを尋ねる



書面で理由を求めることは、けんかを売ることではありません。自分の次の一歩を決めるための材料集めです。
労働組合の現場から。争うか、条件を整えて辞めるか
当組合に寄せられる相談でも、試用期間中に「合わない」「向いていない」とだけ告げられ、理由が分からないまま職場を離れる方は少なくありません。本採用を拒否されたときの選択肢は、大きく分けて2つです。職場に戻ることを求めて争うか、争わずに条件を整えて辞めるかです。
| 選択肢 | 向いている方 | 主な窓口 |
|---|---|---|
| 拒否の無効を争う | 職場に戻りたい、理由に納得できない | 弁護士(労働審判・裁判)、労働局のあっせん |
| 条件を整えて辞める | もう戻るつもりはないが、損はしたくない | 会社との交渉(労働組合など) |
今回のAさんのように「働き続けたい」と考える場合は、弁護士に相談し、労働審判や裁判で地位の確認を求めることになります。一方で、もう戻るつもりはないという方も、何も決めないまま去る必要はありません。試用期間中に自分から辞めたいときの考え方は『試用期間中の退職はできる?退職代行ローキが不安を解消します』を、会社から退職を迫られたときの考え方は『退職代行と休職:上司に「退職しろ」と言われたときの正しい対処法は?』をあわせてご覧ください。
- 最後の給与と、解雇予告手当が支払われるか
- 離職理由を、解雇や会社都合として扱ってもらえるか
- 残っている有給休暇の消化と、退職日の決め方
整理解雇など、会社の都合による解雇の判断の仕方は『「夜勤専従をなくすから解雇」は無効?看護師の整理解雇が無効に。勤務形態廃止で解雇されたときの対処法』で解説しています。



辞めること自体は悪い選択ではありません。ただ、条件を決めずに辞めると、会社にとって一番楽な形になってしまいます。
辞めるときの交渉を、労働基準調査組合が運営する退職代行ローキに任せる
退職代行ローキが向かないケース
- 裁判をすることを前提に考えている方
- 公務員・自衛官・業務委託・個人事業主・役員の方
- 会社に借金があり、代行時に一括で完済できない方
公務員・自衛官・業務委託・個人事業主・役員の方は、労働組合に加入できないためお引き受けできません。退職代行ローキは、労働基準調査組合が運営する労働組合です。当組合は団体交渉権にもとづいて会社と交渉できますが、裁判で代理人になることはできません。本採用拒否の無効を主張して職場に戻ることを求める場合(労働審判や裁判)は、弁護士に依頼する必要があります。
辞めるときの交渉を、労働組合に任せる
そのうえで、会社と直接やり取りせずに辞めたい、退職日や有給休暇の消化について話し合ってほしいという方には、退職代行ローキが使えます。退職代行ローキは労働委員会の資格審査を経た合同労働組合なので、退職の意思を伝えるだけでなく、退職日や有給休暇の消化、未払いの給与について会社と交渉できます。当組合が会社に退職をお伝えした日から、ご本人が出社することも、上司と直接話すこともありません。
退職書類が届かないといった退職後のトラブルにも、加入日から1年間対応します。退職の支援が終わった後も、加入日から1年間は、ハラスメントや未払い賃金など退職代行以外の労働問題について、追加の費用なしで相談できます。退職することに対して会社から損害賠償請求や懲戒解雇処分を受けた場合に限り、顧問弁護士が追加料金なしで会社に対応します。
| 確認したいこと | 退職代行ローキの場合 |
|---|---|
| 運営 | 労働基準調査組合(合同労働組合・労働委員会の資格審査済み) |
| 料金 | 19,800円(税込)。組合加入費2,800円と組合費17,000円。相談は無料 |
| 支払い方法 | カード・振込のほか、退職日から2週間以内に支払うあと払い(手数料4,000円・審査あり)、申込時9,900円と30日以内9,900円の分割払い(手数料なし・審査あり) |
| 交渉 | 退職日・有給消化・未払い給与について、労働組合として交渉できる |
| 対応の早さ | 最短即日対応。LINEの相談は24時間受付(※会社への連絡は8時から18時。会社の状況により異なります) |
| 返金 | 当組合の対応で退職に至らなかった場合は組合費を全額返金(※適用条件あり) |
| 退職後 | 退職書類が届くまで加入日から1年間サポート |
※料金・条件は2026年10月時点。最新の内容は退職代行ローキ公式サイトをご確認ください。
返金の条件は利用規約に書いています。当組合の受任案件で、退職に至らなかった事例はこれまでありません(2026年9月末時点・当組合受任案件の集計)。比較検証サイトのmybestでは、退職代行のおすすめ人気ランキングで2024年12月から2026年9月まで1年10か月連続の1位に選ばれています(mybest社調べ)。次の働き先を探すときは、国家資格キャリアコンサルタントによる相談サービスのキャリアバディと連携しています。



一人で会社と話すのがつらいときは、交渉する権利を持つ労働組合を使ってください。
よくある質問(FAQ)
試用期間中なら、会社は自由に本採用を拒否できますか?
できません。本採用拒否は法的には解雇にあたり、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる場合に限って有効です(最高裁昭和48年12月12日判決)。通常の解雇より広く認められるとされていますが、理由が具体的に示されない本採用拒否は争う余地があります。
本採用拒否の理由を教えてもらえないときは、どうすればいいですか?
解雇理由証明書を書面で請求してください。会社は、請求されたら遅滞なく交付しなければなりません(労働基準法22条)。「勤務実績が不十分」のような抽象的な理由しか書かれていない場合は、どの業務のどの点が不十分だったのかを重ねて確かめましょう。
試用期間中の解雇でも、解雇予告手当はもらえますか?
働き始めてから14日を超えていれば、試用期間中でも30日前の予告か、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)の支払いが必要です(労働基準法20条・21条)。14日以内の解雇だけが、この予告の対象外になります。
本採用を拒否されて辞めた場合、失業保険は会社都合になりますか?
本採用拒否は解雇にあたるため、重大な理由による解雇(いわゆる重責解雇)でなければ、ハローワークで「特定受給資格者」と判断されるのが原則です。会社に「自分から辞めたことにしてほしい」と言われて退職届を出すと、自己都合として扱われるおそれがあります。
まとめ|試用期間でも、本採用拒否には理由が要る
- 試用期間中の本採用拒否も解雇。合理的な理由と相当性が必要
- 理由が分からなければ、解雇理由証明書を書面で請求できる
- 働き始めて14日を超えたら、解雇予告か予告手当が必要
- その場で退職届にサインせず、争うか辞めるかを決める
日銀の職員の事案は、無遅刻無欠勤で注意も受けていなかったと話す職員が、通報の後に「不適格」として本採用を拒否されたとして争っているものです。どちらの言い分が認められるかは裁判を待つ必要がありますが、試用期間中であっても、本採用拒否には客観的に合理的な理由が必要だという原則は変わりません。
判断の軸は、「その理由で本当に足りるのか」を確かめてから次の一歩を決めることです。理由を書面で受け取っておけば、争う場合にも、条件を整えて辞める場合にも、自分を守る材料になります。
もう戻るつもりはなく、会社と直接やり取りせずに辞めたいという方は、労働組合が運営する退職代行ローキにご相談ください。退職日の組み立てから有給休暇の消化、離職理由の扱いまで、労働組合として会社と交渉します。相談は無料です。



「不適格」と言われても、あなたの価値が決まったわけではありません。次の職場に進むための条件を、まず整えましょう。
「本採用拒否と言われたけれど、どう辞めればいいか」「会社都合にしてもらえるか」の確認だけでも、まずはLINEでお聞かせください。
退職代行ローキは労働組合として会社と直接交渉します。
料金は19,800円(税込)で、相談は無料です。
参考情報・出典
・弁護士JPニュース「日銀で『送金システム不備』内部通報したら『庁舎立ち入り禁止』…50代女性職員が無遅刻無欠勤も『入行5か月』で本採用拒否され提訴」(2026年10月5日)
・e-Gov法令検索「労働契約法」(16条)
・e-Gov法令検索「労働基準法」(20条・21条・22条)
・e-Gov法令検索「公益通報者保護法」(3条・5条)
・厚生労働省「確かめよう労働条件」裁判例 採用の自由(三菱樹脂事件)
・ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準」
・最高裁判所大法廷 昭和48年12月12日判決(民集27巻11号1536頁)
執筆者


労働基準調査組合 執行委員長
谷本 祥子
私はこれまでアパレル業界やエステサロン業界で勤務してきました。華やかに見える業界ですが、現場では長時間労働や人手不足、過度な売上目標によるプレッシャーが当たり前で、同僚や後輩、先輩までもが心身ともに疲弊し、ある日突然職場に来られなくなる姿を何度も目の当たりにしてきました。
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退職を申し出ても「人が足りない」「後任が見つかるまで待ってほしい」と引き止められ、なかなか辞められずに苦しむ人も少なくありませんでした。私自身も退職を願い出た際に会社から強い引き止めに遭い、労働者として当然の権利を訴えても一切取り合ってもらえず、深い無力感と悔しさを味わいました。
この経験から「働く人たちがもっと気軽に、安心して退職できる仕組みが必要だ」と痛感しました。「一人で苦しむ労働者をなくしたい」という思いから、現在は労働基準調査組合の執行委員長として活動しています。
同じように悩み苦しむ方々が孤立しないよう、労働現場で生じるあらゆる労働問題に真摯に向き合い、労働法に則った実効性のある支援を行ってまいります。









