退職代行ローキ(労働基準調査組合)

有給休暇の残日数を巡る認識の相違について資料を確認し、納得のうえ退職手続を進めた事例

  • 2026.03.03
  • 2026.03.05
実行日 2026年3月
組合員 Hさん
年齢 30代
地域 大阪府
職種 税理士事務所職員
雇用形態 正社員
トラブル種別 有給休暇残日数・労働条件確認

1.相談に至るまでの経緯

税理士事務所に正社員として勤務していたHさんは、退職手続を進める中で、会社から有給休暇の残日数について説明を受けました。

会社から送付された書面には、Hさんの有給休暇の残日数は「0日」であると記載されていました。しかし、Hさんの認識では有給休暇が残っている可能性があり、その計算根拠も明確ではありませんでした。

会社の説明によると、有給休暇の付与日数は26日であり、欠勤日から有給休暇への振替や計画年休などを含めると、取得日数は合計27日になるとのことでした。そのため、会社は残日数を0日としていました。

一方、会社は欠勤日数を19日として計算していましたが、Hさんが確認できた欠勤日数は16日でした。会社の記録とHさんの認識との間に、3日分の差が生じていたことになります。

会社の書面には、業務の未対応事項や引継ぎへの協力についても記載され、回答期限が設けられていました。

さらに、Hさんが提出した給与資料には、過去の給与体系と最低賃金との関係を確認する必要がある可能性がありました。また、求人票には退職金共済へ加入している旨の記載があったものの、会社からは「退職金制度は存在しない」と説明されていました。

Hさんは、有給休暇の残日数や欠勤処理、賃金、退職金制度について事実関係を確認したいと考え、当組合へ相談しました。

2.本件の法的な問題点

(1)有給休暇の残日数は、付与と取得の記録を照合して確認する必要がある

有給休暇の残日数を確認するには、付与日、付与日数、前年度からの繰越日数、取得日および時効により消滅した日数などを整理する必要があります。

本件では、会社が「付与日数26日、取得日数27日、残日数0日」と説明していたため、取得日ごとの内訳や計算方法を確認することが重要でした。

また、計画年休として有給休暇を取得させるためには、原則として就業規則上の定めと労使協定が必要です。計画的付与の対象にできるのは、労働者が自由に取得できる5日を除いた部分に限られます。

(2)欠勤日を有給休暇へ振り替えた経緯の確認が必要となる

年次有給休暇は、原則として労働者が請求した時季に与える制度です。

そのため、欠勤日を後から有給休暇として処理した場合には、本人から申請があったのか、本人が処理内容に同意していたのか、どのような説明が行われたのかを個別に確認する必要があります。

会社側の記録と労働者本人の認識が異なる場合には、有給休暇の申請書、勤怠記録、給与明細、説明時の記録などが重要な確認資料となります。

(3)最低賃金との比較には、賃金と所定労働時間の資料が必要となる

最低賃金を下回っているかどうかは、給与の総支給額だけでは判断できません。

基本給や最低賃金の算定対象となる手当を時間額に換算し、勤務当時に適用されていた最低賃金額と比較する必要があります。時間外割増賃金、通勤手当、家族手当など、最低賃金との比較に含まれない賃金もあります。

そのため、本件で最低賃金との関係を確認するには、給与明細だけでなく、賃金台帳、所定労働時間、勤怠記録などを照合する必要がありました。

(4)退職金制度の有無は求人票だけでなく規程や加入状況を確認する必要がある

退職金は、すべての会社に法律上当然に設けられている制度ではありません。

一方、会社が退職金制度を設けている場合には、適用される労働契約、就業規則、退職金規程、共済制度への加入状況などを確認する必要があります。

本件では、求人票に退職金共済加入との記載がある一方、会社は退職金制度がないと説明していました。そのため、求人票の記載だけで結論を出さず、制度の具体的内容や加入実績を確認することが必要でした。

3.労働組合による会社への対応

当組合は、労働組合法第6条に基づき、組合員のために会社へ通知および団体交渉の申入れを行いました。

実際に会社へ申し入れた内容は、次のとおりです。
 

  1. 有給休暇の取得日数について、算出根拠を明らかにすること
  2. 欠勤日を有給休暇へ振り替えた際の申請記録または同意記録を提示すること
  3. 会社が説明する欠勤日数19日の算出根拠を提示すること
  4. 最低賃金との関係を確認するため、賃金台帳等の資料を確認すること
  5. 退職金制度および退職金共済の有無と、その制度内容を確認すること
     

会社からは、タイムカードや賃金台帳等の資料が提示されました。

また、欠勤日を有給休暇へ振り替えたことについては、給与明細の内容を説明した際に、Hさん本人の同意を得て処理したとの回答がありました。

4.結果および成果

会社から資料と説明が示された後、Hさんは労働基準監督署にも相談し、提出資料や会社の説明内容を伝えたうえで、行政機関の見解を確認しました。

労働基準監督署の担当者からは、次の趣旨の説明がありました。
 

  • 有給休暇の処理については、法的な問題があるとまでは判断できない
  • 最低賃金についても、違反と断定できる資料状況ではない
  • 本件について、行政指導等の対象とはならない
     

この説明は、有給休暇の残日数を行政機関が0日と確定したことや、会社のすべての処理が適正であったと認定したことを意味するものではありません。提出された資料と説明内容からは、行政指導等を行う状況とは判断されなかったというものです。

当組合は、会社から提示された資料と労働基準監督署の見解を改めて整理し、Hさんへ説明しました。

その結果、Hさんは本件の内容を理解し、納得したうえで退職手続を進めることとなりました。

なお、退職金については退職金制度の通り共済金は返戻されました。

5.組合としての総括

有給休暇の残日数を巡っては、会社が管理している勤怠記録と、労働者本人の認識が一致しないことがあります。

特に、欠勤日を有給休暇へ振り替えている場合や、計画年休が設定されている場合には、単に残日数だけを見るのではなく、付与日、取得日、本人の申請または同意、就業規則、労使協定などを確認することが重要です。

本件では、会社に計算根拠と資料の提示を求め、会社の説明だけでなく、Hさん自身が労働基準監督署へ相談して公的機関の見解を確認しました。そのうえで、当組合が双方の資料と説明内容を整理し、Hさんへ説明したことが重要な点でした。

労働基準監督署が行政指導等を行わなかった場合でも、それだけで会社と労働者の認識が自動的に一致するわけではありません。労使間の疑問を解消するためには、資料を確認し、処理の経緯や計算方法について具体的な説明を求めることが必要です。

当組合は今後も、雇用関係に関する有給休暇、賃金、退職金制度等の問題について、使用者が処分可能な事項の範囲内で、労働組合法に基づく団体交渉を通じて組合員の権利を守ってまいります。

6.本件で問題となり得た主な法令・参考判例

労働基準法

第39条(年次有給休暇)

一定の要件を満たした労働者に対し、年次有給休暇を付与することを定めています。有給休暇は原則として労働者が請求した時季に与え、計画的付与を行う場合には労使協定等が必要です。

参考:労働基準法|e-Gov法令検索

第89条(就業規則の作成および届出)

常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則の作成および届出が必要です。退職金制度を設ける場合には、適用される労働者の範囲、計算方法、支払方法、支払時期などを就業規則に記載することが求められます。

参考:労働基準法|e-Gov法令検索

第108条(賃金台帳)

使用者には、事業場ごとに賃金台帳を作成し、賃金計算の基礎となる事項や賃金額等を記録することが求められています。

参考:労働基準法|e-Gov法令検索

民法

第627条(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)

期間の定めのない雇用契約では、当事者は原則として解約の申入れをすることができ、申入れから2週間を経過することで雇用契約が終了すると定められています。

参考:民法|e-Gov法令検索

その他の労働関係法令

最低賃金法第4条

使用者は、労働者に対して適用される最低賃金額以上の賃金を支払う必要があります。月給制の場合は、最低賃金の対象となる賃金を時間額へ換算して比較します。

参考:最低賃金法|e-Gov法令検索

労働組合法

第6条(交渉権限)

労働組合の代表者または労働組合から委任を受けた者が、使用者と労働条件その他の事項について交渉する権限を定めています。

本件では、有給休暇の残日数、欠勤処理、賃金資料および退職金制度など、Hさんと会社との雇用関係に関する事項について確認および交渉を行いました。

参考:労働組合法|e-Gov法令検索

参考判例・公表事例

※本事例は、個人および会社を特定できないよう、一部を匿名化・一般化しています。
※記載した法令は、会社の具体的な対応によって問題となり得る法令であり、本件において法令違反が確定したことを意味するものではありません。
※法的評価は、雇用契約の内容、会社の対応、証拠その他の個別事情によって異なります。

退職代行はローキにお任せください