年末年始の繁忙期を理由に退職を認めず引き止め続けた会社
- 2025.12.26
- 2025.12.22
| 実行日 | 2025年12月 |
|---|---|
| 組合員 | Dさん |
| 年齢 | 30代 |
| 地域 | 千葉県 |
| 職種 | 百貨店販売員 |
| 雇用形態 | 正社員 |
| トラブル種別 | 退職妨害・メンタルヘルス |
組合員Dさんより、精神的な体調不良により業務の継続が困難となっているにもかかわらず、年末年始の繁忙期を理由に強く引き止められ、退職できずにいるとの相談が寄せられた。
Dさんは上司へ体調面の不調を伝えた上で退職の意思を示していたが、「この時期に辞められると現場が回らない」「正社員なのだから責任を果たしてほしい」などの発言が繰り返され、事実上退職を認めない対応が続いていた。
2. 問題点の法的整理
当組合は本件について以下の点を整理した。
(1) 繁忙期や人手不足は退職を制限する法的理由にならない
正社員(期間の定めのない労働契約)であれば、民法第627条第1項により労働者は退職の意思表示をすることができ、原則として2週間の経過で雇用契約は終了する。
繁忙期・人員配置の都合は、退職の効力を否定する理由とはならない。
(2) 心身不調の申告があるにもかかわらず引き止めを継続することの問題
労働契約法第5条は、使用者に安全配慮義務を課しており、精神的な不調が疑われる労働者に対しては健康状態に配慮した対応が求められる。
体調不良を申し出ている労働者に対し、強い引き止めや心理的圧力を継続することは、健康状態を更に悪化させ得るものであり相当でない。
(3) 直接連絡の継続は紛争拡大の要因となる
退職局面での直接連絡が、労働者の精神的負担を増幅させる場合、連絡窓口を当組合へ一本化することが合理的である。
退職手続の適正化の観点からも、連絡体制の整理が必要である。
3. 組合の対応
当組合は、Dさんの意向と健康状態に配慮しつつ、会社へ以下を正式に申し入れた。
① 退職意思表示の有効性(退職の自由)を前提に、退職手続を進めること
② 以後、Dさんへの直接連絡を停止し、連絡窓口を当組合とすること
③ 最終賃金の適切な精算・支払い、および退職に伴う必要書類の交付を行うこと
④ 会社貸与物・社内手続等は、Dさんの負担が過大とならない方法で整理すること
4. 結果および成果
会社は当組合の申入れを受け、これ以上の引き止めを行わないことを認め、退職日が確定した。
最終給与の支払いおよび退職に伴う必要書類についても問題なく対応され、Dさんは精神的負担を軽減した状態で退職に至った。
5. 組合としての総括
年末年始等の繁忙期であっても、労働者の心身の健康および退職の自由が後回しにされることは許されない。
本件は、メンタル不調を抱える労働者に対する不当な引き止めに対し、当組合が介入し連絡体制と法的整理を行うことで、適正な退職手続が確保された事案である。
当組合は今後も、労働者の健康と尊厳が侵害される事案に対し、法令に基づき必要な対応を尽くす。

