歯科医院におけるセクシュアルハラスメント・盗聴・傷害事件に対する緊急救済申入れ解決事案
- 2025.07.30
- 2025.07.30
実行日 | 202●年●月 |
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組合員 | Aさん |
年齢 | 30代 |
地域 | |
職種 | 歯科助手 |
雇用形態 | 契約社員 |
トラブル種別 | 緊急救済申入れ解決事案 |
1. 相談に至る経緯
Aさんは歯科医院において歯科助手として勤務していたが、使用者である院長から日常的かつ執拗なセクシュアルハラスメント行為を受けていた。
具体的には、バックヤードにおいて腰に手を回される、臀部を触られるなど、意に反する身体的接触が繰り返されていた。これらの行為は業務上必要性のない明白な性的嫌がらせであり、労働者の人格権を著しく侵害するものであった。
(1)プライバシー侵害(盗聴)の発覚
加えて、職場内では「院長がスタッフルームに盗聴器を設置しているのではないか」との疑念が複数の従業員間で共有されていた。実際に、職員間でのみ共有した情報が院長に把握されている事実が複数回確認されたことから、Aさんは自費で市販の電波探知機を購入し、スタッフルーム内を調査した結果、コンセント内部に盗聴器が設置されていることを発見した。
これは労働者のプライバシー権および通信の秘密を侵害する違法行為である。
(2)傷害事件の発生
Aさんは終業後、セクシュアルハラスメントおよび盗聴行為について院長に対し直接抗議したところ、院長は逆上し、Aさんの腹部を蹴るなどの暴行を加えた。Aさんは直ちに警察へ通報し、事業場内に設置されていた防犯カメラの映像記録等の客観的証拠が確認されたことにより、本件は刑事事件として立件され、院長は傷害罪の容疑で逮捕された。
2. 組合の対応
当組合は、本件が労働問題の枠を超えた刑事事件に発展した極めて重大な事案であると認識し、組合員であるAさんの生命・身体の安全確保および権利回復を最優先に、以下の支援を実施した。
(1)緊急時の安全確保
事件発生直後より、Aさんの安全確保と心身のケアを最優先とし、必要に応じて相談窓口や医療機関との連携を図った。
(2)法的支援の実施
• 被害届提出時の同行支援
• 弁護士との連携および法的助言の提供
(3)再就職支援
Aさんが安心して新たな職場で働けるよう、再就職活動における相談対応および情報提供を行った。
3. 結果および成果
警察による捜査の結果、院長は傷害罪の容疑で逮捕され、刑事責任を問われることとなった。また、Aさんは当組合の支援のもと、安全に退職手続きを完了し、新たな職場での勤務を開始するに至った。
本件は司法機関の介入により、加害者の刑事責任が明確化された点において、労働現場における暴力行為に対する毅然とした対処の重要性を示す事例となった。
4. 組合としての総括
本事案は、職場におけるセクシュアルハラスメント、プライバシー侵害(盗聴)、そして傷害行為が複合的に発生した極めて悪質かつ重大な事件である。
労働者が安全かつ尊厳をもって働く権利は、労働基準法、労働契約法、男女雇用機会均等法をはじめとする労働関係法令によって保障された基本的権利である。これらの権利が暴力や違法行為によって侵害された場合には、労働組合として法的機関との連携を含め、断固たる対応を取ることが求められる。
当組合は、今後も組合員の生命、身体、尊厳を守るため、あらゆる手段を講じて権利擁護活動を継続していく所存である。