歯科医院におけるセクシュアルハラスメント事案に対する救済申入れ
- 2025.09.04
- 2025.09.04
実行日 | 2025年8月 |
---|---|
組合員 | Rさん |
年齢 | 20代 |
地域 | 大阪府 |
職種 | 歯科衛生士 |
雇用形態 | 正社員 |
トラブル種別 | セクシュアルハラスメント |
Rさんは歯科医院において歯科衛生士として勤務していたが、使用者である理事長から長期にわたり職場におけるセクシュアルハラスメントを受け続けていた。
具体的には、業務上の指示を装ったミーティングと称する食事の場において、個室のマッサージ店への同行を強要される、いわゆる愛人契約を持ちかけられるなど、職務とは一切関係のない不適切な言動が反復継続して行われていた。Rさんは精神的苦痛に耐えかね、ハラスメント行為を記録した音声データとともに当組合に相談を寄せられた。
2. 組合の対応
当組合は、本件が労働施策総合推進法(パワハラ防止法)および男女雇用機会均等法に基づくセクシュアルハラスメントに該当し、使用者として防止措置義務を怠った重大な労働問題であると判断した。
組合員であるRさんの安全確保と労働環境の改善を第一として、以下の対応を行った。
(1)法的整理と方針決定
理事長の行為が職務上の地位を利用した対価型セクシュアルハラスメントに該当することを確認し、不当な報復や不利益取扱いを防ぐため、慎重かつ実効的な交渉方針を策定した。
(2)使用者への申入れ
書面にて以下の事項を申し入れた。
• ハラスメント行為の即時中止
• 組合員に対する一切の不利益取扱いの禁止
• 安全かつ円滑な退職手続きの保障
• 音声記録に基づく具体的なハラスメント内容の文書化および提示
3. 結果および成果
申入れ後、理事長からの接触および不適切な言動は完全に停止した。しかしながら、Rさんは理事長と同じ職場で働き続けることに著しい精神的苦痛を感じ、自らの意思により退職する道を選択された。当組合はRさんの判断を尊重し、退職手続きが円滑に進むよう支援を継続した。
その後、当該医院では他の従業員からも労働環境に対する不満が表面化し、相次いで退職者が発生した。最終的には職員の大半が入れ替わる事態となり、問題のある職場環境および経営体制が見直される契機となった。
4. 組合としての総括
本事案は、職場におけるセクシュアルハラスメントが労働者の尊厳と労働権を著しく侵害する重大な問題であることを改めて示すものである。
労働組合の役割は、組合員が安心して働き続けられる環境を実現することにあるが、同時に、被害を受けた組合員が安全に職場を離れる権利を守ることもまた重要な使命である。当組合は、Rさんが自らの意思に基づき、尊厳を保ちながら新たな一歩を踏み出せるよう、最後まで寄り添い支援を行った。
今後も当組合は、労働関係法令に基づき、ハラスメントをはじめとするあらゆる労働問題に対して、組合員の権利擁護と労働環境の改善に向けた取り組みを継続していく。