労働基準調査組合

雇用保険資格喪失確認通知書における退職日の誤記載を訂正させた事例

  • 2025.08.29
  • 2025.08.29
実行日 2025年7月
組合員 Mさん
年齢 20代
地域 東京都
職種 サービス業
雇用形態 正社員
トラブル種別 退職日の誤記載
1. 相談に至る経緯

Mさんは退職後、ハローワークにおいて失業給付の手続きを行うため、会社から交付された雇用保険被保険者資格喪失確認通知書を確認したところ、記載されている資格喪失日(退職日の翌日)が実際の最終勤務日と一致していないことが判明した。

具体的には、通知書には2025年7月末日を最終勤務日とする記載がなされていたが、Mさんは実際には2025年8月上旬まで勤務しており、勤怠記録においてもその事実が明確に確認できる状況であった。

退職日の誤記載は、雇用保険法に基づく失業給付の受給開始時期、給付日数の算定基礎となる被保険者期間、さらには国民健康保険および国民年金への切替手続きにも影響を及ぼす重大な問題である。Mさんは不利益を被ることを懸念し、当組合へ相談を寄せられた。


2. 問題点の法的整理

当組合は本件について、以下の法的問題点を確認した。

 (1)雇用保険法上の資格喪失日の誤記載

雇用保険法第9条に基づき、被保険者資格喪失日は「退職した日の翌日」と定められている。会社が実際の退職日と異なる日付をハローワークに届け出ることは、法令に基づく正確な手続きを怠った行為であり、労働者の社会保障上の権利を侵害するものである。

(2)失業給付受給への影響

退職日が実際よりも早く記載された場合、被保険者期間の算定に誤りが生じ、失業給付の受給資格、給付日数、受給開始時期等に影響を及ぼす可能性がある。

 (3)その他の社会保険手続きへの影響

退職日は、健康保険・厚生年金保険の資格喪失日とも連動しており、誤った日付が記載されることで、国民健康保険および国民年金への切替手続きにおいても混乱が生じる恐れがある。


3. 組合の対応

当組合は、組合員であるMさんの権利擁護および社会保険手続きの適正化を目的として、以下の対応を行った。

(1)客観的証拠の整理

Mさんの勤怠記録、タイムカード、給与明細等の客観的資料を精査し、実際の最終勤務日が2025年8月上旬であることを明確に確認した。

(2)会社への訂正申入れ

書面にて以下の事項を申し入れた。

・雇用保険被保険者資格喪失確認通知書に記載された退職日(資格喪失日)が勤務実態と相違していることの指摘
・勤怠記録等の客観的証拠に基づく正確な退職日への訂正
・ハローワークへの訂正届出および訂正後の通知書の再交付
・退職日の誤記載が組合員に与える不利益の説明および適正な対応の要請

(3)ハローワークへの情報提供

必要に応じて、ハローワークに対しても事実関係を説明し、会社による訂正手続きが適切に行われるよう連携体制を確保した。


4. 結果および成果

当組合の申入れを受け、会社は以下の対応を行った。

・雇用保険被保険者資格喪失確認通知書における退職日の誤記載を認める
・ハローワークに対し、雇用保険被保険者資格喪失届の訂正届出を提出
・正確な退職日に基づく訂正後の雇用保険被保険者資格喪失確認通知書をMさんに再交付

これにより、Mさんは正確な被保険者期間に基づき、失業給付の受給手続きを円滑に進めることができた。また、その他の社会保険手続きにおいても、誤った情報に基づく不利益を回避することができた。


5. 組合としての総括

本事案は、退職に伴う雇用保険の資格喪失手続きにおいて、使用者が誤った情報をハローワークに届け出たことにより、労働者が不利益を被る可能性が生じた事例である。

退職日の誤記載は、失業給付の受給資格や給付内容に直結する重要な事項であり、決して軽視できない問題である。しかしながら、実務上はこのような誤記載が少なからず発生しており、労働者自身が気付かないまま不利益を被るケースも存在する。

当組合は、組合員が退職後も安心して生活再建を図ることができるよう、社会保険手続きの適正化を含めた包括的な支援を行うことの重要性を改めて認識した。今後も、退職時の手続きにおける誤りや不備に対し、迅速かつ的確な対応を行い、組合員の権利擁護に努めていく。
 
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