退職代行ローキ(労働基準調査組合)

育児休業からの復職前面談で人格否定とも取れる発言が繰り返され、会社都合退職の取扱いを確認した事例

  • 2025.03.19
  • 2025.03.19
実行日 2025年3月
組合員 Uさん
年齢 30代
地域 鳥取県
職種 事務職
雇用形態 正社員
トラブル種別 パワハラにつき会社都合退職

1.相談に至るまでの経緯


Uさんは育児休業を取得しており、会社への復職を控えていました。

ところが、復職に向けて会社と面談をするたびに、人格否定とも取れる発言を繰り返されたとのことでした。

こうした面談が続いたことで、Uさんは精神的に疲弊してしまいます。最終的には復職を断念し、会社を退職したいと考えるようになりました。

一方で、Uさんが退職を希望するようになった背景には、復職前の面談における会社側の発言がありました。そのため、単純な自己都合退職として処理されるのではなく、退職に至った経緯を踏まえて会社都合退職として取り扱ってほしいという問題がありました。

そこでUさんは、退職手続と離職理由の取扱いについて、当組合へ相談しました。
 

2.本件の法的な問題点

(1)人格否定とも取れる発言がパワーハラスメントに当たる可能性


職場で繰り返される人格否定的な発言は、その内容や頻度、発言者と労働者との関係などによっては、職場におけるパワーハラスメントに該当する可能性があります。

労働施策総合推進法では、優越的な関係を背景とした言動であり、業務上必要かつ相当な範囲を超え、労働者の就業環境を害するものが職場のパワーハラスメントとして位置付けられています。

ただし、発言が直ちにパワーハラスメントに該当するとは限りません。具体的な言葉、発言の目的、面談の状況、継続性、労働者が受けた影響などを踏まえて判断する必要があります。
 

(2)育児休業の取得や復職と発言との関連性


育児・介護休業法では、育児休業の申出や取得を理由とする解雇その他の不利益な取扱いを禁止しています。また、育児休業等に関する言動によって労働者の就業環境が害されないよう、事業主には必要な雇用管理上の措置を講じることが求められています。

本件では、Uさんが育児休業からの復職を控えた面談で発言を受けていました。

育児休業の取得や復職と発言との間に関連性がある場合には、育児・介護休業法との関係でも問題となる可能性がある、という整理になります。
 

(3)退職に至った経緯と離職理由の取扱い


会社に退職の意思を伝えた場合でも、退職に至った事情によっては、離職理由をどのように取り扱うかが問題となります。

本件では、Uさんが自ら退職を希望したという事情だけでなく、復職前の面談で人格否定とも取れる発言を繰り返され、精神的に疲弊して復職を断念したという経緯がありました。

そのため当組合は、面談時の発言内容と退職に至った経緯を会社へ示し、退職理由を会社都合として取り扱うよう交渉しました。

なお、会社が会社都合として取り扱う旨を回答した場合であっても、雇用保険上の最終的な離職理由は、事業主と離職者双方の主張や資料を確認したうえで、ハローワークが判定します。
 

(4)録音記録を踏まえた事実確認


ハラスメントに関する問題では、「どのような言葉が、いつ、どのような状況で発せられたのか」が争点になることがあります。

本件では、会社との面談時の発言が録音されていました。当組合は、その記録を踏まえて、Uさんが復職を断念し、退職を希望するに至った経緯を会社へ説明しました。

録音があるからといって、発言の法的評価が自動的に確定するものではありません。しかし、当事者間で認識が食い違った場合に、実際の発言内容を確認するための重要な資料となり得ます。
 

3.労働組合による会社への対応


当組合は、労働組合法第6条に基づき、組合員であるUさんのために会社へ通知および団体交渉の申入れを行いました。労働組合法第6条は、労働組合の代表者等が、組合員の労働条件その他の労働関係に関する事項について使用者と交渉する権限を認めています。

本件では、次の対応を行いました。
 

● Uさんが復職を断念し、退職を希望するに至った経緯を会社へ説明すること

● 復職前の面談における発言の録音記録を踏まえ、会社側へ事実関係を伝えること

● 人格否定とも取れる発言が繰り返されていた事情を踏まえ、退職理由を会社都合として取り扱うよう申し入れること

● 会社側の回答を確認し、退職手続を進めること
 

交渉に当たっては、会社を一方的に非難するのではなく、録音された発言と、Uさんが復職を断念するまでの経緯を具体的に示しました。
 

4.結果および成果


会社は、Uさんとの面談において、人格を否定するとも受け取られ得る発言が繰り返されていた事実を重く受け止めました。

その結果、会社からは、Uさんの退職理由を会社都合として取り扱う旨の回答がありました。

Uさんについては、希望していた退職手続が進められ、退職が実現しました。

本件で確認できた成果は、復職前の面談における発言内容と退職に至った経緯を録音記録に基づいて会社へ示し、会社が会社都合退職として取り扱うことを認めた点にあります。

なお、雇用保険上の離職理由や受給資格については、会社の回答だけで最終的に確定するものではなく、ハローワークによる確認および判定の対象となります。
 

5.組合としての総括


育児休業からの復職を控えている時期に、会社との面談で人格を否定されたと感じる発言を繰り返されれば、「本当にこの職場へ戻れるのだろうか」と不安を抱くことがあります。

会社には、職場におけるパワーハラスメントを防止するための措置を講じることが求められています。また、育児休業の申出や取得を理由とする不利益な取扱いは禁止されており、育児休業等に関するハラスメントを防止するための体制整備も必要です。

もっとも、面談で厳しい発言があったという事情だけで、直ちに法令違反や会社都合退職が確定するわけではありません。発言内容、回数、前後の経緯、退職との因果関係などを、客観的な資料に基づいて整理することが重要です。

本件では、面談時の発言が録音されていたため、会社との交渉において具体的な発言内容を示すことができました。感情的な主張だけではなく、記録を踏まえて退職に至った事情を説明したことが、離職理由の取扱いを確認するうえで重要な点となりました。

当組合は今後も、育児休業からの復職、職場におけるハラスメント、退職理由および退職手続等の雇用関係上の問題について、使用者に処分可能な事項の範囲内で、労働組合法に基づく団体交渉を通じて組合員の権利を守ってまいります。
 

6.本件で問題となり得た主な法令・参考判例

労働基準法


本件の中心的な論点は、復職前の面談における発言、育児休業等に関するハラスメントおよび離職理由の取扱いです。

元記事に記載された事実からは、賃金、労働時間、有給休暇など、労働基準法の個別条文に直接関係する具体的な問題は確認できないため、条文の掲載は省略します。
 

民法


民法第627条

期間の定めのない雇用契約では、労働者は使用者に対して退職を申し入れることができ、原則として申入れから2週間を経過することで雇用契約が終了すると定められています。

本件では会社との交渉を経て退職が実現しているため、退職の効力そのものが争われた事案ではありません。

参考リンク:民法|e-Gov法令検索
 

その他の労働関係法令


労働施策総合推進法第30条の2

事業主に対し、職場におけるパワーハラスメントによって労働者の就業環境が害されないよう、相談体制の整備その他の必要な措置を講じることを求めています。

参考リンク:労働施策総合推進法|e-Gov法令検索

育児・介護休業法第10条

労働者が育児休業を申し出たことや、実際に育児休業を取得したことを理由として、解雇その他の不利益な取扱いをすることを禁止しています。

ただし、本件の発言が育児休業の取得を理由としたものであったかは、元記事からは確認できません。

育児・介護休業法第25条

育児休業等に関する上司や同僚の言動によって、労働者の就業環境が害されることのないよう、事業主に相談体制の整備その他の必要な措置を求めています。

参考リンク:育児・介護休業法|e-Gov法令検索
 

労働組合法


労働組合法第6条

労働組合の代表者等が、組合員の労働条件その他の労働関係に関する事項について、使用者と交渉する権限を認める規定です。

本件では、この規定に基づき、退職に至った経緯と離職理由の取扱いについて会社と団体交渉を行いました。

参考リンク:労働組合法|e-Gov法令検索
 

参考判例・公表事例


厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」

職場におけるパワーハラスメントや、妊娠・出産、育児休業等に関するハラスメントについて、事業主が講ずべき雇用管理上の措置を案内しています。

参考リンク:職場におけるハラスメントの防止のために|厚生労働省

厚生労働省「雇用保険の具体的な手続き」

雇用保険上の離職理由については、事業主の記載だけでなく、離職者の主張や関係資料を確認したうえで、ハローワークが判定することが案内されています。

参考リンク:雇用保険の具体的な手続き|ハローワークインターネットサービス

※本事例は、個人および会社を特定できないよう、一部を匿名化・一般化しています。
※記載した法令は、会社の具体的な対応によって問題となり得る法令であり、本件において法令違反が確定したことを意味するものではありません。
※法的評価は、雇用契約の内容、会社の対応、証拠その他の個別事情によって異なります。

退職代行はローキにお任せください