この記事の著者
谷本 祥子
労働基準調査組合の執行委員長。
自身の現場経験をもとに、退職や労働問題に悩む方へ寄り添った支援を行う。
たびたびメディアを賑わせる「ブラック企業」の文字。
ブラック企業といえば「パワハラ」「過労死」「過労自殺」などが思い浮かぶでしょう。
ブラック企業は若い労働者が使い捨てのように使っているため、日本の若い労働力が失われるという深刻な状況を招いています。
ブラック企業は解決すべき大きな社会問題なのです。
ここではブラック企業の定義を説明し、そのような企業の特徴について紹介します。
ブラック企業の定義
ブラック企業について、厚生労働省は具体的な定義をしていません。しかし、ブラック企業の特徴として以下のような特徴があるとしています。
・労働者に過重な長時間の労働を課す
・賃金未払いやパワハラをするなどコンプライアンス意識が低い
・若い労働者を使い捨てのように消費する
厚生労働省のホームページには、ブラック企業の特徴について、以下のように書かれています。
厚生労働省においては、「ブラック企業」について定義していませんが、一般的な特徴として
① 労働者に対し極端な長時間労働やノルマを課す
② 賃金不払残業やパワーハラスメントが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低い
③ このような状況下で労働者に対し過度の選別を行う、などと言われています。
厚生労働省では労働基準法などに違反した企業のリストも作っています。
全国のブラック企業リスト一覧
このリストは実質的な「ブラック企業リスト」とみなされています。気になる企業がブラック企業リストに入っているかどうかをチェックしてみるのもよいでしょう。
それでは、ここから実際にブラック企業の特徴を見ていきましょう。
ブラック企業の特徴①「不当な長時間労働を強いる」
不当な長時間労働を社員に強いる
ことは、ブラック企業の大きな特徴の一つです。
労働基準法では、労働時間の上限を1日8時間、週に40時間までと定めています。
つまり、会社は社員に1日8時間、週に40時間以上働かせることはできないということです。
この上限を超えて社員に時間外労働をさせる場合、残業などに関する取り決めを定めた
時間外労働協定(36協定)
を結んでおかなければなりません。
さらに、労働時間が6時間を越える場合には最低45分間、労働時間が8時間を越える場合には最低1時間の休憩を、会社が与える義務があります。この義務も、労働基準法で決められていることです。
労働基準法に定められたこの休憩を会社が与えなかった場合、労働基準法違反となります。
労働時間の上限である1日8時間、週に40時間を超えた労働時間は、残業となります。
残業時間にも上限が定められており、その上限は、月に45時間、年間で360時間です。
ただし、月に45時間を超えて働かせて良いのは年間で6回までとなります。
特別な事情でやむを得ない場合でも、会社は社員の残業時間と休日労働を月に100時間未満、年間で720時間以下にしなければなりません。
会社がこれらの上限を無視して社員に働かせた場合、やはり労働基準法違反となります。
労働基準法で定められた分を超えた不当な労働時間を社員に強いる
ことが、ブラック企業の大きな特徴なのです。
ブラック企業の特徴②「休日が少ない」
休日をなかなか取らせてくれない
のも、ブラック企業の特徴です。
労働基準法では「法定休日」というものが定められています。会社は社員に対し、最低でも週に1日の休日、または4週間のなかで4日の休日を与えなければなりません。
土曜日、日曜日、祝日、お盆休み、年末年始休暇などを合算すると、1年間の平均休日は120日ほどです。つまり、通常の会社であれば、社員は年間120日の休みを取得できることになります。
年間で80日も休日が取れないような会社は、ブラック企業とみなしてよいでしょう。
また、有給をはじめ、体調不良なのに休みをもらえなかったり、育児や介護児や介護で休みが必要なときも認めてくれないようなブラック企業は、特に悪質といってよいでしょう。
ブラック企業の特徴③「無理なノルマを課す」
社員に対して無理なノルマを課す
のもブラック企業の特徴です。
社員1人当たりがこなせる仕事量をはるかに超えた無理なノルマを課すことで、肉体的・精神的に大きなストレスを与えるだけでなく、ノルマを達成できなかった時に罰を課したり給与を下げられるなどする場合もあります。
このような無理なノルマを課すブラック企業には、理不尽な精神論をかざしたり、上下関係を利用したパワハラによって社員を服従させ、無理に働かせようとする風潮があります。
ブラック企業の特徴④「パワハラ、モラハラ、セクハラが横行している」
パワハラ、モラハラ、セクハラが横行している
企業もブラック企業です。
会社はコンプライアンスを遵守し、職場環境を健全に保つ義務があります。ブラック企業ではコンプライアンス意識が低く、パワハラ、モラハラ、セクハラが行われていても適切な措置を取らないことが多いのです。
また、本来であれば、このようなハラスメント防止策として、会社は相談窓口を設けておく必要があります。このような相談窓口を設置していない企業は、ハラスメントに対する問題意識が低く、問題が起きても見てみぬふりをする風潮があります。
ハラスメントを会社に相談することで、相談者が逆に不利益を被るような扱いをされたり、問題をもみ消そうとする場合は、とりわけ悪質です。
職場環境でのハラスメント問題が是正されず放置されれば、被害を受けている社員は心身に深刻な影響を受ける危険があります。
ブラック企業の特徴⑤「残業代の未払いなどが常態化している」
サービス残業が日常茶飯事となっている
場合も、ブラック企業の特徴です。
労働時間の上限である1日8時間、週に40時間を超えて残業させる場合、この残業について会社は割り増しの賃金を社員に支払わなくてはなりません。
この規則は労働基準法で定められていますが、実際には残業代を適切に支払っていない企業が少なくありません。
当然のようにサービス残業をさせるような会社は、法令を遵守する意識がきわめて低いため、ブラック企業とみなされます。
ブラック企業の特徴⑥「給料が低い」
ブラック企業の特徴として、
そもそも給料が低い
ことが挙げられます。
サービス残業を含め、労働している時間に見合った適切な給料が支払われていなければ、それは労働基準法違反となります。
企業は、都道府県別に定められた最低賃金を労働者に支払う義務があります。例えば東京都の最低賃金は時給1,041円、沖縄県の最低賃金は820円です。
残業がない場合、企業は、労働時間にこの最低賃金を掛け合わせた金額以上の給料を労働者に支払わなければなりません。
もし会社がこの金額に満たない給料しか労働者に支払っていないとすれば、それは違法でありブラック企業とみなされます。
ブラック企業の特徴⑦「離職率が高い」
これまで説明してきたように、ブラック企業では、ハラスメントが横行していたり、社員に不当な長時間労働を課したり、無理なノルマを課したりするため、
労働者が次々と辞めていきます。労働者を使い捨てのように扱うため、不足した人材を確保するために常に求人を出し、大量に雇用しています。
その結果、過酷な労働環境に耐えられる人だけが選別され、限界を超えるまで労働させられます。離職率が高くなるのはブラック企業の必然的な特徴といえるでしょう。
まとめ
以上、7つのブラック企業の特徴を挙げてきました。
あなたが勤める会社がこれらの特徴のいずれかに当てはまる場合、ブラック企業と考えてよいかもしれません。
ブラック企業は社員を使い捨ての道具のように扱うため、
我慢して働いていると心身に深刻なダメージを負うリスクが高くなります。
もしもあなたがブラック企業で心身の許容範囲を超えたストレスを受けているようでしたら、
自分の身を守るためにも、国の機関や労働組合など適切な窓口へ相談したり、退職を検討することも必要でしょう。
