退職代行ローキ(労働基準調査組合)

退職後も源泉徴収票の発送時期が示されなかった会社に交付を求め、税務署からの連絡後に発行された事例

  • 2025.03.10
  • 2025.03.10
実行日 2025年3月
組合員 Yさん
年齢 30代
地域 東京都
職種 営業職
雇用形態 正社員
トラブル種別 源泉徴収票の交付の遅延

1.相談に至るまでの経緯


Yさんは、会社を退職した後、しばらく経っても給与所得の源泉徴収票が届かない状況に置かれていました。

源泉徴収票は、転職先での年末調整や確定申告などで必要となる重要な書類です。そのため、交付時期が分からない状態が続けば、退職後の税務手続にも支障が生じる可能性があります。

Yさんが会社へ連絡したところ、会社からは「繁忙期のため対応が遅れている」との回答がありました。

しかし、具体的にいつ発送するのかは示されませんでした。その後も発送時期が明確にならない状態が続いたため、Yさんは当組合へ相談しました。
 

2.本件の法的な問題点

(1)中途退職者の源泉徴収票には交付期限があります


給与を支払った会社は、年の途中で退職した労働者に対し、原則として退職日後1か月以内に源泉徴収票を交付しなければなりません。

これは、所得税法第226条に定められている義務です。会社の繁忙状況にかかわらず、法令上の交付期限が当然に延長されるものではありません。

 

(2)「繁忙期で遅れている」という回答だけでは交付時期が分かりません


会社が事務処理中である場合でも、労働者としては、いつ源泉徴収票を受け取れるのかを確認する必要があります。

特に、法令上の交付期限を経過しているにもかかわらず、会社が具体的な発送時期を示さない場合には、所得税法第226条との関係で問題となる可能性があります。

なお、元記事では、会社が源泉徴収票を「交付しない」と明示的に回答した事実までは記載されていません。本件で確認できるのは、会社が遅延理由のみを回答し、具体的な発送時期を示さなかったという事実です。
 

(3)交付期限後は税務署へ不交付の届出を行う方法があります


国税庁は、交付期限を過ぎても源泉徴収票が交付されない場合の手続として、「源泉徴収票不交付の届出書」を設けています。

届出書は、交付期限を経過した後に、受給者の納税地を所轄する税務署へ提出できます。給与明細書の写しや、会社へ源泉徴収票の交付を求めたことが分かる資料などがある場合は、添付することとされています。

届出後、税務署は勤務先に対して行政指導を行います。ただし、この行政指導には法律上の拘束力はなく、会社の自主的な対応を促す手続です。
 

(4)退職後の書類交付について労働組合が会社へ申し入れることができます


退職後であっても、雇用関係に伴って会社が交付すべき書類に関する問題が残っている場合、労働組合は組合員のために会社へ対応を求めることができます。

労働組合法第6条は、労働組合の代表者または委任を受けた者が、組合員のために使用者と交渉する権限を定めています。

本件では、源泉徴収票を発行するかどうかを税務署に代わって判断したのではなく、退職後の雇用関係に伴う書類交付の問題として、会社に法令上の期限を示し、対応を求めました。
 

3.労働組合による会社への対応


当組合は、労働組合法第6条に基づき、組合員のために会社へ源泉徴収票の交付を求める通知および団体交渉の申入れを行いました。

実際に行った対応は、次のとおりです。
 

●源泉徴収票の交付について、所得税法第226条が定める期限を会社へ示すこと

●退職後の必要書類として、源泉徴収票の発行を求めること

●Yさんに対し、税務署へ「源泉徴収票不交付の届出書」を提出する方法を案内すること

●会社への申入れと並行して、税務署への手続を進めること
 

当組合が行ったのは、会社に対する書類交付の申入れと、Yさんへの行政手続の案内です。

税務署による会社への連絡や行政上の対応は、税務署の権限と判断によって行われるものであり、当組合が税務署に代わって処分や交付命令を行ったものではありません。
 

4.結果および成果


相談前、会社はYさんに対し、「繁忙期のため対応が遅れている」と回答していました。

一方で、具体的な発送時期は示されず、源泉徴収票が届かない状態が続いていました。

当組合が会社に対して所得税法上の交付期限を示すとともに、税務署への手続を案内した結果、税務署から会社へ連絡が入りました。

その後、会社から源泉徴収票が速やかに発行されました。

最終的に確認できた成果は、税務署から会社への連絡後、Yさんの源泉徴収票が発行されたことです。
 

5.組合としての総括


退職後、源泉徴収票が届かないまま発送時期も分からない状況が続けば、「転職先の手続に間に合わないのではないか」「確定申告ができないのではないか」と不安になる方も少なくありません。

中途退職者の給与所得の源泉徴収票は、原則として退職日後1か月以内に交付することが所得税法で定められています。会社の担当者から「繁忙期なので遅れている」と説明された場合でも、交付予定日を確認することが重要です。

会社へ交付を求める際は、連絡した日時、担当者、連絡方法、会社からの回答などを記録しておくことが実務上有用です。国税庁も、不交付の届出に当たり、会社へ交付を求めたことが分かる資料や、やり取りの記録を残すよう案内しています。

本件では、会社への申入れだけでなく、国税庁が設けている不交付時の手続を並行して進めたことが、源泉徴収票の発行につながりました。労働組合による交渉と行政機関の手続は、それぞれの役割を区別して進める必要があります。

当組合は今後も、源泉徴収票その他の退職後に残る雇用関係上の書類交付問題について、使用者が処分可能な事項の範囲内で、労働組合法に基づく団体交渉を通じて組合員の権利を守ってまいります。
 

6.本件で問題となり得た主な法令・参考判例

所得税法


所得税法第226条(源泉徴収票)

給与の支払者は、給与所得の源泉徴収票を作成し、給与を受けた本人へ交付する義務を負います。年の途中で退職した居住者については、原則として退職日後1か月以内が交付期限です。

参考リンク:
e-Gov法令検索「所得税法」
 

労働組合法


労働組合法第6条(交渉権限)

労働組合の代表者または労働組合から委任を受けた者は、労働組合または組合員のために、使用者と交渉する権限を有します。本件では、退職後に残っていた雇用関係上の書類交付問題について、会社への申入れを行う根拠となります。

参考リンク:
e-Gov法令検索「労働組合法」
 

参考公表資料


源泉徴収票不交付の届出手続

公表機関:国税庁

源泉徴収票の交付期限を経過しても会社から交付されない場合に、受給者が税務署へ届け出るための手続です。中途退職者の交付期限、提出方法、添付資料および提出先が案内されています。

参考リンク:
国税庁「源泉徴収票不交付の届出手続」

「源泉徴収票不交付の届出書」を提出される前に、ご確認ください

公表機関:国税庁

会社へ交付を求めた際の記録方法や、届出後に税務署が行う行政指導の位置付けなどが示されています。

参考リンク:
国税庁「源泉徴収票不交付の届出書を提出される前に、ご確認ください」

※本事例は、個人および会社を特定できないよう、一部を匿名化・一般化しています。
※記載した法令は、会社の具体的な対応によって問題となり得る法令であり、本件において法令違反が確定したことを意味するものではありません。
※法的評価は、雇用契約の内容、会社の対応、証拠その他の個別事情によって異なります。

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