働くためを考える労働基準調査組合

ぱやぱやくんの「ゆるくてもいいんだよ」

ぱやぱやくんが教える「残業するな、でも納期は死守。という理不尽から身を守るための処方箋」

  • 2025.03.02
  • 2025.03.02
ぱやぱやくんが教える「残業するな、でも納期は死守。という理不尽から身を守るための処方箋」
こんにちは、ぱやぱやくんです。

今回は「残業するな、でも納期は死守しろ」と言われた時の対策についてお伝えします。

開発部で働く31歳男性から次のような質問をいただきました。
 

質問:

システム開発部で働く31歳です。

会社全体で残業削減を推進していますが、現場は困惑するばかりです。

上司からは「残業は禁止。でも納期は死守。何とかしろ」と言われ続けています。 

先月から新規プロジェクトも始まり、既存業務と合わせると物理的に定時では終わらない量なのですが、上司は「工夫が足りない」の一点張りです。

かといって、残業代なしで家に持ち帰るわけにもいきません。 

同僚たちも疲弊していて、チーム全体のモチベーションが下がっています。

理不尽な状況ですが、この状況を改善する方法はないでしょうか?

『残業するな、でも終わらせろ』という理不尽


「残業するな。でも納期は死守しろ」と言われ続ける会社員の皆さん、この状況はなかなかキツイですよね。

心が折れそうになる理不尽な現場で、どうやって自分を守っていけばいいのでしょうか。

これは作戦において「弾薬を節約しろ。でも敵を撃破しろ」という矛盾した命令を受るようなものです。しかも敵の数はこちらの2倍いる状況。明らかに弾薬が足りなくなれば、隊員たちはみんな困惑し、士気も下がってしまいます。

この状況、システム開発の現場にもよく似ています。「残業するな。でも納期は死守しろ」という矛盾した命令。しかも既存業務に新規プロジェクトが加わり、仕事量は明らかに定時では終わらない量になっています。

こういう理不尽な状況で私たちがまず知っておくべきことは、「無理な要求を出す上司は、その要求が無理だということを理解していない」ということです。

上司の視点からすれば「工夫すれば何とかなるはずだ」という思い込みがあり、現場の苦労が見えていないのです。

私の経験から言えば、こういう状況で「頑張ってなんとかしよう」と無理を重ねると、必ず心が折れます。

戦場で一番怖いのは敵の攻撃ではなく、無理な作戦による味方の崩壊なのです。

そこで最初にすべきことは、「現状をデータで可視化する」ことです。

業務量、必要工数、リソース配分など、客観的な数字で示していきます。感情的な訴えや雰囲気での説明ではなく、「このプロジェクトには〇〇時間必要で、現在のリソースでは△△時間しか確保できない」といった具合に、冷静に事実を伝えていくのです。

次に、「チームの限界を明確にする」ことです。

人間には限界があり、それを超えて頑張ることは逆効果だということを、データをもとに説明します。工数が足りない分を残業なしでカバーしようとすれば、ミスが増え、手戻りが発生し、結果的にプロジェクト全体に支障をきたすことになります。

そして最後に、心を守るために覚えておいてほしいことがあります。

それは「この状況は自分のせいではない」ということです。矛盾した指示を出す組織の問題であって、あなたの能力や努力が足りないわけではありません。

どんなに優秀な人でも、物理的に不可能なことは不可能です。それを「工夫が足りない」と片付けられるのは、明らかな間違いです。そのことをしっかりと認識して、必要以上に自分を責めないことが大切です。

現場の第一線で働く人たちは、往々にして真面目で責任感が強い人が多いもの。

だからこそ、理不尽な状況に直面すると「自分に問題があるのでは」と考えがちです。でも、それは違います。まずは自分の心を守ることを最優先に考えましょう。


必要なのは「無理な要求に応えること」ではなく、「現状を正しく把握して、適切な対策を講じること」なのです。

「現場を追い詰める『理不尽な指示』の正体とその対処法


会社から「残業するな。でも納期は死守しろ」という矛盾した指示が出る背景には、いくつかの理由があります。その正体を知ることで、より効果的な対処が可能になります。

私が人材会社に勤めていた時、様々な企業の内情を見てきましたが、このような理不尽な指示が出る会社には共通点がありました。それは「現場を知らない経営層」と「板挟みになっている中間管理職」の存在です。

経営層は株主や世間体を気にして「残業削減」を掲げますが、実際の業務量や人員配置については把握していません。一方、中間管理職は上からの圧力と現場の実情の間で板挟みとなり、結果として「何とかしろ」という無責任な指示を出すことになります。

この状況で特に警戒が必要なのは「工夫が足りない」という言葉です。この言葉には「あなたの努力不足が原因だ」というメッセージが含まれており、社員の自己肯定感を徐々に奪っていきます。

では、こういった理不尽な指示にどう対処すべきでしょうか。

まず、上司の「工夫が足りない」という指摘に対しては、具体的な工夫の提案を求めることです。

「具体的にどのような工夫が考えられますか?」と質問することで、上司側の思い込みを浮き彫りにすることができます。

次に、現状の業務フローを文書化して「ここを省くとこういうリスクが発生します」という形で説明します。

これは自衛隊でよく使う手法で、「安全管理」や「品質管理」の観点から、必要な工程を示していくのです。

また、「前例」を探すことも有効です。

同じような状況で失敗した他社の事例や、残業削減に成功した企業の取り組みなど、客観的な情報を集めることで、より説得力のある提案ができます。

ただし、これらの対応をする際に気をつけなければならないのは、決して個人攻撃にならないようにすることです。

「上司の判断が間違っている」という形ではなく、「組織としてより良い方向を目指すには」という建設的な姿勢を保つことが重要です。

さらに重要なのは、こうした状況をチーム全体で共有することです。

一人で抱え込まず、同僚と情報や対応策を話し合うことで、より効果的な解決策が見つかることもあります。

もし、それでも状況が改善されない場合は、上司の上司や人事部門に相談することも検討しましょう。ただし、この場合も感情的な訴えは避け、あくまでも客観的な事実とデータに基づいて説明することが大切です。

現場を追い詰める理不尽な指示は、往々にして組織の歪みから生まれています。その正体を理解し、適切に対処することで、自分と同僚を守ることができるのです。

疲弊する前に、賢く生き残るための具体的な戦略


理不尽な職場で戦い続けると、いつか必ず限界が来ます。大事なのは生き残ることです。そのための具体的な戦略をお伝えします。

最初に必要なのは「同盟者を作ること」です。

理不尽な状況に一人で立ち向かうのは、非常に困難です。チーム内で信頼できる同僚と情報を共有し、お互いの状況を理解し合える関係を作りましょう。時には愚痴を言い合うことも、精神衛生上、重要です。

そして、具体的な「撤退ライン」を決めておくことも大切です。

これは自衛隊での「後退計画」に似ています。「この状況になったら転職を考える」「このラインを超えたら休職する」など、自分の限界を明確にしておくのです。

私は人材会社で働いていた時、こんな方法で現場を改善したことがあります。

1.    まず、業務の「見える化」を徹底しました。誰がどの業務に何時間かけているのか、エクセルで管理表を作成。
2.    次に、この表を基に「これ以上は無理です」というラインを明確にし、上司に説明。
3.    さらに、チームメンバーと定期的に短時間のミーティングを持ち、お互いの状況を確認し合いをする。
4.    最後に、業務の優先順位を明確にし、「これはできません」と言えることは言うようにする。

ここで重要なのは、決して感情的にならないことです。データと事実に基づいて冷静に説明し、「組織として改善が必要」という視点を保ち続けることが大切です。

もし状況が改善されない場合は、「撤退」も視野に入れましょう。

「計画的な撤退」を心がけることで、撤退後の道に進みやすくなります。貯金を増やす、スキルアップを図る、転職市場の情報を集めるなど、準備をしっかりと整えてから行動を起こすのです。

私の経験から言えば、「何とかなるだろう」と耐え続けるより、「ここまでやって、それでもダメなら代替案を考える」という冷静な判断ができる人のほうが、長期的には良い結果を得られています。

組織の中で生き残るためには、時には妥協も必要です。しかし、自分の健康と心を守ることは決して妥協してはいけません。賢く生き残るための戦略を持ち、冷静に状況を判断しながら、自分の道を切り開いていきましょう。

理不尽な環境で戦う前に知っておくべきこと


最後に、理不尽な職場環境で戦う前に、絶対に知っておいてほしいことがあります。

まず覚えておいてほしいのは、「あなたは一人ではない」ということです。

システム開発の現場に限らず、多くの日本企業で「残業するな、でも成果は出せ」という矛盾した要求に苦しむ人がたくさんいます。あなたの能力が低いわけでも、努力が足りないわけでもありません。

人間の体と心には限界があります。それは誰もが持っている自然な特性です。その限界を超えようとすると、必ず歪みが出てきます。まるで、エンジンの限界を超えて回し続けると、必ずどこかが壊れてしまうように。

理不尽な環境で戦うときに一番大切なのは、「自分を守る」という意識です。

「自分がもっと頑張れば何とかなるはず」と思いがちですが、それは危険な考え方です。なぜなら、そう考える人ほど、自分の限界を超えて疲弊してしまうからです。

こういった理不尽な環境で戦う前に、以下のことを心に留めておいてください。

あなたの価値は、会社での成果だけで決まるものではありません。

残業なしでこなせない量の仕事を与えられて、それをこなせないからといって、あなたの人生の価値が下がるわけではないのです。

また、「工夫が足りない」という言葉に過剰に反応する必要はありません。

確かに工夫は大切です。しかし、物理的に不可能なことは、どんなに工夫しても不可能です。それは能力の問題ではなく、単純な事実なのです。

そして何より、あなたの人生を守れるのは、あなた自身だけだということを忘れないでください。

会社は「体調を崩したら代わりはいくらでもいる」と考えるかもしれません。でも、あなたの人生は一つしかありません。

自分の心と体を守りながら、賢く戦っていってください。そして、必要なら撤退することも、選択肢の一つとして持っておいてください。

それが、長期的に見て、あなたの人生を守ることになるのです。

本日のコラムはここまでです。

それでは、また次回!

コラムのバックナンバーはこちらから


大阪の労働問題無料相談【労働基準調査組合】

退職代行ローキは、あなたの代わりに退職を代行します。

もしものトラブル(損害賠償、懲戒解雇など)には弁護士が追加料金なしで会社に対応。

絶対あんしんの退職代行です。

ご相談はLINEからお気軽にどうぞ。

コラム編集者

コラム編集者

著者プロフィール
ぱやぱやくん

防衛大学校を卒業し、陸上自衛隊に幹部自衛官として勤務をしていたが、退職後にのら猫になった男。文章を書く事が好き。「意識低い系」で、自分が主役になるのが嫌い。
ミリタリーよりも可愛いものが好き。名前の由来は、幹部候補生学校で教官からよく言われた「お前らはいつもぱやぱやして!」という叱咤激励に由来する。
【著書】陸上自衛隊ますらお日記/飯は食えるときに食っておく寝れるときは寝る/弱さを抱きしめて、生きていく/など

Twitter