退職から3週間以上離職票が届かなかったため、会社に交付手続を求めて受領に至った事例
- 2024.10.14
- 2024.10.15
| 実行日 | 2024年10月 |
|---|---|
| 組合員 | Kさん |
| 年齢 | 50代 |
| 地域 | 京都府 |
| 職種 | 警備業 |
| 雇用形態 | 正社員 |
| トラブル種別 | 離職票の交付遅延・退職後手続 |
1.相談に至るまでの経緯
Kさんは、警備業を営む会社に正社員として勤務していました。
退職後、雇用保険の手続に必要な離職票が会社から届くのを待っていましたが、退職から3週間以上が経過しても送付されませんでした。
Kさんが会社へ連絡しても応答はなく、離職票の交付手続がどのような状況にあるのかも分からないままでした。
離職票は、雇用保険の基本手当などの受給手続を進める際に、原則として必要となる書類です。会社からの連絡も書類の送付もないため、Kさんは手続を進められない状態となり、当組合へ相談しました。
2.本件の法的な問題点
(1)会社には雇用保険の資格喪失手続を期限内に行うことが求められる
事業主には、労働者が雇用保険の被保険者でなくなった場合、所定の期限内に資格喪失に関する届出を行うことが求められます。
雇用保険法第7条は、事業主に対し、労働者が被保険者でなくなったことなどを届け出るよう定めています。
また、雇用保険法施行規則第7条第1項では、原則として、被保険者でなくなった日の翌日から起算して10日以内に、雇用保険被保険者資格喪失届を管轄のハローワークへ提出することとされています。
離職票そのものはハローワークで交付されますが、その前提となる離職証明書や資格喪失届などの手続は、会社が進める必要があります。
(2)離職票の遅れは雇用保険の受給手続に影響する
離職票が交付されない状態が続くと、退職者が雇用保険の受給手続を速やかに進められない可能性があります。
厚生労働省のハローワークインターネットサービスでも、会社から離職票が交付されない場合には、住所地を管轄するハローワークへ問い合わせるよう案内されています。
ハローワークによっては、会社の手続が遅れている場合、退職日の翌日から数えて12日目以降に、離職票がない状態でも失業給付の仮手続を受け付けています。具体的な必要書類や取扱いについては、管轄のハローワークへ確認する必要があります。
(3)退職後の離職票に関する問題も会社への交渉対象となる
離職票の交付は退職後に行われる手続ですが、元の雇用関係に基づいて会社が行うべき清算手続の一つです。
労働組合法第6条では、労働組合の代表者または労働組合から委任を受けた者に、組合員のために使用者と交渉する権限が認められています。
本件でも、会社が対応可能な離職票の交付手続について、労働組合から通知し、対応を求めることが重要となりました。
3.労働組合による会社への対応
当組合は、労働組合法第6条に基づき、組合員のために会社へ通知および団体交渉の申入れを行いました。
実際に行った対応は、次のとおりです。
●雇用保険法および雇用保険法施行規則に基づく資格喪失・離職票交付手続について、会社へ文書で通知しました。
●退職から3週間以上経過しても離職票が届いていない状況を伝え、必要な手続への対応を求めました。
● Kさん本人が住所地を管轄するハローワークへ相談できるよう、ハローワークが公表する相談窓口、離職票が交付されない場合の対応および仮手続に関する一般的な情報を案内しました。
ハローワークへの相談、申出および雇用保険上の手続はKさん本人が行い、当組合はこれらの行政手続を代理していません。
当組合が行ったのは、会社に対する離職票交付手続の申入れと、Kさん本人に対する公的な手続情報の案内です。
4.結果および成果
当初、Kさんが会社へ連絡しても応答はなく、離職票の交付について進展がない状態が続いていました。
その後、ハローワークから会社への確認が行われ、会社が必要な手続に対応しました。
最終的に、Kさんのもとへ離職票が届きました。これにより、Kさんは離職票を使用して、雇用保険に関する手続を進められる状態となりました。
本件では、会社が法令違反を認めた事実や謝罪した事実までは確認されていませんが、長期間届かなかった離職票について、最終的に交付を確認することができました。
5.組合としての総括
退職後に離職票が届かないと、「失業給付の手続が遅れてしまうのではないか」「会社へ連絡しても返事がない場合はどうすればよいのか」と不安を感じる方は少なくありません。
離職票は会社が独自に作成して発行する書類ではなく、会社が資格喪失届や離職証明書をハローワークへ提出し、ハローワークの確認を経て交付される書類です。そのため、会社による前提手続が進まなければ、退職者への交付も遅れる可能性があります。
本件で重要だったのは、退職から3週間以上経過していること、会社へ連絡しても応答がないことを整理した上で、会社に対して法令上必要となる手続を文書で通知した点です。
また、離職票が届かない場合には、会社への連絡だけを続けるのではなく、住所地を管轄するハローワークへ早めに相談することも重要です。状況によっては、離職票がない状態で仮手続を進められる場合があります。
当組合は今後も、離職票をはじめとする退職後の必要書類の交付や、雇用関係上の清算手続等の問題について、使用者に処分可能な事項の範囲内で、労働組合法に基づく団体交渉を通じて組合員の権利を守ってまいります。
6.本件で問題となり得た主な法令・参考判例
その他の労働関係法令
雇用保険法第7条
事業主は、労働者が雇用保険の被保険者となったことや、被保険者でなくなったことなどを、厚生労働大臣へ届け出なければならないと定められています。
雇用保険法施行規則第7条
事業主が雇用保険被保険者資格喪失届を提出する期限や、離職証明書に関する手続などを定めています。資格喪失届は、原則として被保険者でなくなった日の翌日から起算して10日以内に提出する必要があります。
労働組合法
労働組合法第6条
労働組合の代表者または労働組合から委任を受けた者が、労働組合または組合員のために、使用者と交渉する権限を有することを定めています。
本件では、退職後も残っていた離職票の交付手続について、会社へ通知し、対応を求める根拠となる規定です。
参考判例・公表事例
厚生労働省およびハローワークの公表資料を参考情報とします。
※本事例は、個人および会社を特定できないよう、一部を匿名化・一般化しています。
※記載した法令は、会社の具体的な対応によって問題となり得る法令であり、本件において法令違反が確定したことを意味するものではありません。
※法的評価は、雇用契約の内容、会社の対応、証拠その他の個別事情によって異なります。

